バトルスピリッツ 王者の鉄華2   作:バナナ 

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第11話「さらば、バトルスピリッツ」

 

 

 

 

大空を突き抜けた先、黒く輝く宇宙。私こと鉄華ヒカリは、その美しさに喜ぶ間もなく、かのDr.Aが残した最大の遺産、エボルトとの最終決戦に臨もうとしていた。

 

 

「さぁどうする。大人しくこの世界から手を引くか、それとも今、私達に倒されるか……!!」

 

 

数百を超える、闇バトル参加者達から借りたAカードの進化の力を束ねた私は、いつもの力強い口調で、エボルトに二択を問い掛けた。

 

 

「どうするだと?……貴様ら猿如きに、そのような口を聞く権利はない」

 

 

苛立った様子で、ミツキの身体を依代としたエボルトが言い返して来た。

 

自分の兄弟にも等しい存在であるAカード達の力を束ねてここまで来た私が、気に食わないのだろう。

 

 

「何故だAカード達よ。何故そんな猿に加担する。何故私に抗う」

「何故何故うるせぇよ。そんなの、自分達の大事なパートナー、カードバトラーを守りたいからに決まってるだろ」

 

 

Aカード達の進化の力により、髪の毛から足の先、全身に炎を纏っている私は、右手の拳を固めながら、エボルトに告げた。

 

 

「私はAカード達に訊いている。貴様に口を聞く権利はないと言ったはずだ」

「いいや、聞いてやるね。オマエだって、もうとっくにわかってるはずだ。カードとカードバトラー達の、熱く固い、絆を」

「そんなものはないと、散々言っただろう」

「じゃあ私のこの姿はなんだ、どう説明する」

「ッ……」

 

 

一瞬。全身の炎、進化の力が強まるのを感じた。私とガヴに眠る、Aカード達の意思が共感してくれているのだろう。

 

 

「オマエは、あのDr.Aのカードであったと同時に、世界を救った英雄、芽座椎名とも対峙した。芽座椎名は、誰よりもカードとの絆を大切にする伝説のカードバトラーだ。本当は、その時から、カードとカードバトラーの絆の力に気がついていたんじゃないか?」

「……」

「だから実験した。闇バトルなんて物騒なイベントを開いて、私達を試したんだ」

「……」

「で、結果はNO。キッカケは闇バトルを利用していたハバキリだろ?…それ以外にも、闇バトル参加者は、私含め、自分勝手な願いを抱いていた奴らが奴が大勢いた。オマエが人間を全てカード化したいと思うには十分だ」

 

 

私の推理は、多分正しい。

 

じゃないと、エボルトは、イスルギは、あの時、ハバキリから私を助けてくれなかったはずだから。

 

本当は優しい奴なんだ。だからずっと揺れていた。カードだけで世界を創るか、人との絆を信じて歩んで行くかの、二択で。

 

 

「そう思いたくば、勝手にそう思っているがいい。どちらにせよ、これからの戦いに関係はない」

「……」

 

 

エボルトは左腕から闇の瘴気を出すと、それをBパッドの形に変形させ、そこへ自分のデッキを装填した。

 

因みに、私は既にBパッドも展開しているし、デッキの装填も完了している。あとは始めるだけだ。

 

 

「あぁ。ミツキを、私の妹は返してもらうぜ」

「行くぞ。これが正真正銘、最後の戯れだ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

広大な宇宙と、廻り続ける地球を背景に、私とエボルトによる、夜明けを賭けた、最後のバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻は私だ。世界とミツキのため、エボルトを倒すべく、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。契約ガヴを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1(1S)BP2000

 

 

私の第一陣は、契約ライダースピリット。グレープ味のグミの装甲を持つ、ガヴ ホッピングミフォームだ。

 

 

「契約ガヴの効果。手札1枚をコストに、私のカウントを+4。ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

いつもの効果だ。手札1枚を犠牲にすることで、カウントを上昇させて、私はターンエンドを宣言。

 

エボルトのターンとなる。

 

 

[ターン02]エボルト

 

 

「メインステップ。バーストをセット。私も契約スピリットを呼ぼう、我が分身、契約エボルト」

 

 

ー【エボルト(怪人態)[2]】LV1(1)BP3000

 

 

エボルトの初手は、アイツ自身。怪人の姿をした契約スピリット、契約エボルトだ。

 

 

「アタックステップ。契約エボルトでアタック。効果でカウント+2。その後私のカウント以下のコア数の相手スピリット、即ち契約ガヴを破壊」

 

 

早速来た。契約エボルトの掌から放たれた闇のエネルギー弾が、私の契約ガヴの胴体を貫き、爆散させる。

 

 

「この効果で破壊した時、デッキから1枚ドロー」

「契約ガヴは魂状態で残す。アタックはライフで受けてやるぜ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華ヒカリ

 

 

「ぐっ!?」

 

 

浮遊し、私の元まで接近して来た契約エボルトが、その拳で、私のライフバリア1枚を砕く。

 

踏ん張る大地がないため、慣性に従って吹き飛ばされるが、宙返りし、体勢を立て直す。

 

 

「全人類のカード化まで、残り4点。ターンエンド」

手札:4

場:【エボルト(怪人態)[2]】LV1

バースト:【有】

カウント:【2】

 

 

「4点も奪わせるわけねぇだろ。こっからギア上げてくぜ」

 

 

次は私のターンだ。

 

感情の昂りに合わせて、炎のような赤いオーラとなって溢れ出る進化の力がさらに強まって行く。

 

 

[ターン03]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。【契約煌臨】発揮。魂状態となった契約ガヴを、ザクザクチップスフォームに」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】LV1(1)BP7000

 

 

半透明の姿なっていた契約ガヴが、今度はポテトチップスの鎧と剣を装備してフィールドへ復活。

 

 

「ザクザクチップスの煌臨時効果。デッキ上から3枚オープンし、その中の変身ガヴ、ブルキャンバギーを手札に。さらにオープンされたマジックカード『ガヴ』の効果。自身を手札に」

 

 

要するに3枚だ。私はザクザクチップスの効果でオープンされた3枚のカードを全て手札に加えた。

 

 

「今加えた変身ガヴを配置。配置時の神託でコア+2」

 

 

ー【変身!!仮面ライダーガヴ】LV2(2)

 

 

ライダースピリットデッキ専用の創界神ネクサス、変身カードを配置。

 

いつもなら紫と黄色のオーラをその身に纏うが、今回は赤い進化の力が溢れ出ていたためか、そうはならなかった。だが、ガヴの力は感じる。

 

 

「契約煌臨元の契約ガヴの効果。手札にあるブルキャンバギーを破棄し、カウント+4。破棄されたブルキャンバギーの効果。自身を配置」

 

 

ー【ブルキャンバギー】LV2(1)

 

 

私の背後に、アメリカのキャンディーみたいなカラーリングの車両が出現。例の如くフィールドが宇宙であるため、動きづらそうだ。

 

 

「アタックステップ。反撃行くぜ、ザクザクチップスでアタック。効果、カウント-1することで、契約エボルトからコア2つをリザーブに置く」

 

 

ザクザクチップスの手に持つポテトチップスの双剣から放たれる斬撃が、契約エボルトを切断。爆散へ追い込む。

 

 

「契約エボルトは魂状態で残す」

「アタックステップ中にカウントが減ったことで、契約ガヴのもう1つの効果を発揮。1枚ドロー。さらにブルキャンバギー、LV2の効果、カウントが減った時、トラッシュのソウルコアをザクザクチップスに置く」

「アタックはライフで受けよう」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉エボルト

 

 

「ぐぉ!?」

 

 

ザクザクチップスの斬撃が、エボルトのライフバリアをも斬り裂く。

 

その際、エボルトの、いやミツキの身体から、黒い瘴気が漏れ出し、霧散する。

 

 

「久方ぶりの痛みだ。Aカードを束ねて進化したことで、私を消去する力も強まったか」

「あぁ。この力で、テメェを倒す。ターン……」

 

 

ガヴの力が強まったことと、エボルトに通用することを理解した私は、勢いのまま「ターンエンド」を宣言しようとするが。

 

その前に、エボルトの伏せていたバーストが闇で覆われて。

 

 

「バースト発動」

「!」

「自惚れるなよ人間。ガヴが私を消す力を持とうとも、扱う貴様が私を上回らなければ、意味などない。ライフ減少後のバースト、ジョーカー。効果により、ザクザクチップスからコア1つをボイドへ置き、召喚」

「なに、コアをボイド送り!?」

 

 

ー【ジョーカー】LV1(1)BP8000

 

 

闇で覆われたバーストが開いた瞬間。ザクザクチップスの体内に宿るコア1つが塵芥となり消滅。

 

その後エボルトのフィールドへ現れたのは、黒いカミキリムシのような姿をした怪人、コアをボイド送りにするワイルドカード、ジョーカー。

 

 

「ターンエンドだ」

手札:5

場:【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】LV1

【変身!!仮面ライダーガヴ】LV2(2)

【ブルキャンバギー】LV2

バースト:【無】

カウント:【7】

 

 

私は、ようやくターンエンドを宣言。エボルトへそれを譲る。

 

ジョーカーによって総コア数は減らされたが、手札は増えてし、フィールドも温まって来た。勝負はまだこれからだ。

 

 

[ターン04]エボルト

 

 

「メインステップ。【契約煌臨】を発揮。魂状態の契約エボルトを、仮面ライダーエボル ドラゴンフォームへ」

 

 

ー【仮面ライダーエボル ドラゴンフォーム[2]】LV1(1)BP4000

 

 

「ドラゴンフォームの煌臨時効果、デッキから2枚ドロー」

 

 

開始早々、エボルトは【契約煌臨】で契約スピリットをフィールドへ復帰させて来た。

 

契約エボルトは、怪人の姿から、ドラゴンの意匠を感じさせるライダースピリットの姿へ。

 

 

「ネクサス、財団XをLV2で配置」

 

 

ー【財団X】LV2(1)

 

 

「配置時効果、手札の仇敵1枚を破棄することで、カウント+1し、2枚ドロー」

 

 

フィールドに変化がないタイプのネクサスカードを配置するエボルト。効果でカウントと手札を伸ばす。

 

 

「バーストをセットし、アタックステップ。ドラゴンフォームでアタック。契約煌臨元の契約エボルトの効果、カウント+2。ザクザクチップスフォームを破壊し、1枚ドロー」

 

 

エボルトが攻撃に転じて来た。ドラゴンフォームは、右の拳に闇の炎を滾らせ、ザクザクチップスを殴る。

 

ザクザクチップスは、ポテトチップスの鎧を粉砕され、爆散した。

 

 

「仇敵スピリットが、敵スピリットを葬った時、財団Xのさらなる効果を発揮。カウントを+1する。さらにアタックステップ中に私のカウントが上昇した時、契約エボルトの第二の効果、トラッシュにあるカウント以下のコストを持つ仇敵スピリット1体の軽減シンボルを全て満たし、召喚できる」

 

 

さっきのミツキのバトルを見ていたから、その効果は知ってる。今のアイツのカウントは6。コスト6以下のスピリットが出る。

 

 

「現れよ、ブラッドスターク」

 

 

ー【ブラッドスターク[2]】LV1(1)BP2000

 

 

「コスト3のスピリット?」

「召喚時効果。手札の仇敵1枚を破棄できる。そうした時、カウント+1。その後ターンに一度だけ、1枚ドロー」

 

 

エボルトが呼び出したのは、赤い胴体に青いバイザーのようなもので顔面を覆った謎のスピリット。

 

コストは3で、そんなに強くはなさそうだ。目的はカウントの上昇だろうか。

 

 

「何企んでるか知らねぇけど、こっちはこっちでやらせてもらうぜ。フラッシュ【契約煌臨】発揮。魂状態のガヴを、ケーキングフォームに」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ケーキングフォーム】LV1(1)BP10000

 

 

私は、魂状態のガヴを、今一度【契約煌臨】で復活。

 

今度は、白きマントを翻すケーキの騎士、ケーキングフォームだ。

 

 

「変身ガヴの【神域】の効果で1枚ドロー。ケーキングの煌臨時効果、ジョーカーからコア2つを取り除き、消滅」

 

 

ケーキングは登場するなり、ホイップの詰まった短剣で、エボルトのジョーカーへ一閃。斬り裂き、破壊する。

 

 

「相手の煌臨時効果発揮後により、バースト発動」

「またバースト!?」

「ハートロイミュード。効果により自身をノーコストで召喚」

 

 

ー【ハートロイミュード】LV1(1)BP8000

 

 

「その後、相手手札1枚をランダムで破棄する」

「手札を!?」

 

 

バーストが反転した途端に出現したのは、赤みを帯びる程の熱気を纏った怪人、ハートロイミュード。

 

ハートロイミュードが吠えると、その凄まじい振動により、私の手札1枚が吹き飛び、トラッシュへと落ちた。

 

 

「チッ。だけど、手札破壊如きで臆する私じゃないぜ。フラッシュ、契約煌臨元の契約ガヴの効果。自分の手札1枚を破棄し、カウント+4。その後、カウントを-1することで、コア2個以下のスピリット、ハートロイミュードを破壊」

 

 

ケーキングは、ホイップを内包した短剣からホイップを放出。

 

それはハートロイミュードへと付着した途端、その熱により水分が抜け、硬化。ハートロイミュードの動きを封じる。

 

ケーキングはその好きにライダーキックを放ち、ハートロイミュードを爆散させる。

 

 

「契約ガヴの効果で1枚ドロー。さらに変身ガヴの【神技】を発揮。ブラッドスタークを消滅」

 

 

私は掌から紫色の波動を放ち、ブラッドスタークの体内のコアを吹き飛ばして消滅へ追い込む。

 

これでエボルトのフィールドは、アタック中のドラゴンフォームだけだ。

 

 

「ドラゴンフォームのアタックは、ライフで受ける!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華ヒカリ

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

ドラゴンフォームは【OC】でケーキングのBPを上回っている。この攻撃はライフで受ける他なかった。

 

ドラゴンフォームの拳骨が、私のライフバリア1枚を容赦なく砕く。

 

 

「ターンエンド」

手札:6

場:【仮面ライダーエボル ドラゴンフォーム[2]】LV1

【財団X】LV1

バースト:【無】

カウント:【7】

 

 

大量にスピリットを展開されたが、ガヴデッキ得意の除去効果を活用して、なんとかライフ1つで凌げた。

 

攻防の末、私のカウントは10。アイツらの出番だ。

 

 

[ターン05]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。ライダースピリット、ヴァレンを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果。マスターガヴを手札に」

「……来るか」

 

 

私は手始めにチョコ板の鎧を持つライダースピリット、ヴァレンを召喚。

 

その効果で探していたカード、マスターガヴを手札に加える。

 

 

「マジックカードの『ガヴ』をミラージュとしてセット。【契約煌臨】発揮。ケーキングを、マスターガヴに!!」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ マスターモード】LV2(2)BP10000

 

 

「ミラージュの『ガヴ』の効果。カウント+1。変身ガヴの効果、1枚ドロー」

 

 

ケーキングが、紫色のオーラをその身に纏い、さらなる進化を迎える。

 

ホッピングミをより刺々しくした姿を持つ、電光石火のライダースピリット、マスターガヴだ。

 

 

「契約ガヴの効果で手札1枚を破棄してカウント+4。ブルキャンバギーのLVを2に戻し、アタックステップ。行くぜ、マスターガヴ」

 

 

私の言葉を耳にするなり、マスターガヴはクラウチングにも近い姿勢を披露し、猛々しい雄叫びを上げる。

 

 

「アタック時効果。カウント-1することで、このターン、オマエはこのスピリットのアタック中のみ、マジック、アクセル、チェンジを使用できない。ブルキャンバギーLV2の効果で、トラッシュのソウルコアをマスターガヴへ移動」

「……」

「そして【OC:12】の効果。マスターガヴはブロックされない」

 

 

スタートしたマスターガヴ。宇宙空間であるにもかかわらず、目が追いつかない程の速度で、フィールドを縦横無尽に駆け巡る。

 

 

「……ライフで受ける」

「その瞬間。マスターガヴのさらなる効果で、手札のオーバーガヴを、マスターガヴに【契約煌臨】……!!」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ オーバーモード】LV2(3S)BP30000

 

 

マスターガヴが、エボルトの眼前へと迫った瞬間。マスターガヴは、腰部のベルトにある小箱を回転させ、その姿を、オレンジでマッシブな形態、オーバーガヴと入れ替える。

 

 

「ミラージュの『ガヴ』の効果でカウント+1。変身ガヴの効果でドロー。オーバーガヴの煌臨時効果、ドラゴンフォームから全てのコアを取り除く」

 

 

オーバーガヴは姿を見せるなり、気迫と共に赤いオーラを噴出し、周囲にいたドラゴンフォームを吹き飛ばし、消滅へ追い込んだ。

 

 

「オーバーガヴの【OC:12】の効果。トリプルシンボルだ!!」

「ッ……!!」

 

 

〈ライフ4➡︎1〉エボルト

 

 

「ぐ……ぐぉぉぉぉお!?」

 

 

オーバーガヴの固く重い拳から繰り出されるアッパー攻撃が、エボルトのライフバリアを一度に3枚も粉砕するばかりか、エボルトを遥か真上へと吹き飛ばして見せる。

 

 

「よし、あと1点。ヴァレンで」

「絶甲氷盾」

「!」

「手札にあるこのカードの効果を発揮。貴様のアタックステップは終わりだ」

 

 

エボルトが手札にある絶甲氷盾のカードをBパッドへ叩きつけながら、同じ座標まで降りて来た。

 

 

「絶甲氷盾は手札にある時、相手の効果を受けない。故にマスターガヴの効果は通用しない」

「……ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーガヴ オーバーモード】LV2

【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1

【変身!!仮面ライダーガヴ】LV2(3)

【ブルキャンバギー】LV2

バースト:【無】

カウント:【15】

 

 

怒涛のコンボでエボルトを残りライフ1まで追い詰めたが、ここまでだった。

 

絶甲氷盾の効果によってアタックを阻まれた私は、苦渋に表情を歪めながらも、そのターンをエンドに。

 

 

「今の攻撃が惜しいと思ったか?」

 

 

エボルトが私に訊いた。

 

 

「なに!?」

 

 

反射的にそんな声が出た。

 

それもそのはず。エボルトのスピリットを全て倒し、残りライフ1つにまで追い込んだのだから。

 

 

「惜しいと思ったかと訊いている。いくら進化の力を束ねようとも、所詮は人の子。30年近く進化を繰り返して来た私には、到底敵いはしない」

「……!!」

 

 

次の瞬間。エボルトから噴き出て来たのは、これまでのものよりも遥かに濃ゆく、禍々しい闇の瘴気。

 

感じる。遂に本気を出して来たのだと。

 

 

[ターン06]エボルト

 

 

「メインステップ。ブラッドスタークを召喚」

 

 

ー【ブラッドスターク[2]]】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果、手札の仇敵を捨て、カウント+1。さらにターンに一度、1枚ドロー」

 

 

このバトルで2枚目となるブラッドスタークを呼び出した。

 

今の効果で、アイツのカウントは8になる。

 

 

「アタックステップ。ブラッドスタークでアタック。アタック時にも、召喚時と同様の効果を発揮できる。手札の仇敵を捨て、カウント+1」

 

 

3コストの弱いスピリットだけでアタックして来た。

 

今の効果で、アイツのカウントは9。一体何を企んでいるんだ。

 

そう思った矢先、エボルトは手札にあるカード1枚を引き抜く。

 

 

「進化とは未知なるモノ。誰にも到達できぬ未知を見せてやる。【契約煌臨】発揮。魂状態の契約エボルトを、ライダースピリット、エボルXへ……!!」

「ッ……!?」

 

 

ー【仮面ライダーエボルX】LV2(3)BP14000

 

 

魂状態の契約エボルトが、突如として黒き稲妻を纏い、その姿を少しずつ、大きく変化させて行く。

 

こうして誕生したのは、ライダースピリット、エボルX。文字通り、限界知らずのエボルトの進化が齎した、未知の存在。

 

見た目や形はブラックホールフォームに近いが、装甲が赤と青になっており、身体の節々の至る所に「X」の文字が刻印されている。

 

 

「エボルX。まだこんなカードを……」

「貴様らの脆い絆など、この手で引き裂いてくれるわ。エボルXの煌臨時効果。我がトラッシュに眠るスピリットの数2体につき、1つ、敵スピリット2体のコア1つをリザーブに置く」

「!!」

「今、私のトラッシュにあるスピリットは6枚。よって3つ、オーバーガヴとヴァレンからコアを取り除き、消滅させる」

 

 

エボルXは、爆音のような雄叫びを張り上げると、その身体から「X」の文字の形をした黒い電撃を放出。

 

私のフィールドにいるオーバーガヴとヴァレンは、それに飲み込まれ、爆散してしまう。

 

 

「この効果で消滅させた時、カウント+1。これでカウントは10。エボルXの【OC:10】の効果が界放される」

「!」

「カウントが増えたことで、契約エボルトの効果、トラッシュから仇敵スピリットを呼ぶ。この時、エボルXの【OC:10】の効果により、支払うコアは、私のリザーブではなく、貴様のリザーブとする」

「なんだって!?」

 

 

刹那。

 

私のBパッド上のリザーブのコア2つが、トラッシュへと移動してしまう。敵であるはずの私からコアを奪って、スピリットを呼び出すつもりなのだ。

 

 

「現れよ、ライダースピリット、キルバス」

 

 

ー【仮面ライダーキルバス】LV2(3)BP12000

 

 

エボルXが手を翳し、闇の瘴気を放つと、それは赤い装甲とドリルのような剣を持つライダースピリット、キルバスとなる。

 

 

「キルバスの召喚時効果、ネクサス、ブルキャンバギーを破壊」

「くっ」

 

 

私のコアを使って現れたキルバスは、ドリル剣を、私の背後にあるブルキャンバギーへ向かって投げ飛ばし、貫通させ、爆発へ追い込んだ。

 

 

「さぁ、ブラッドスタークのアタックは継続中だぞ」

 

 

長いフラッシュタイミングだったが、これはブラッドスタークのアタック中に起こった出来事。

 

ブラッドスタークは、今更浮遊を始め、私のライフバリア目掛けて闇のエネルギー弾を放つ。

 

 

「確かに、オマエの進化の力はすげぇよ」

「?」

「だけど、私が束ねたのは進化の力だけじゃねぇ。みんなの熱い想いも、一緒なんだ」

 

 

ふと、私の脳裏に過ったのは、闇バトルで戦って来た面々と、ミツキと、ウィンドの顔。

 

そして………

 

 

「ヒカリちゃん……!!」

「キコ!?」

 

 

キコの声がした。

 

ピンチだと言うにもかかわらず、バトルを無視して辺りを見渡す。そして、それが直ぐに幻だと言うことに気がつくと、私は口角を上げて、手札にある1枚のカードを引き抜いた。

 

 

「ふ。あぁ任せろ。フラッシュマジック、仮面の魂」

「!」

「このターン、私のライフは1つしか減らない。アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鉄華ヒカリ

 

 

「ぐっ!?」

 

 

ブラッドスタークの闇のエネルギー弾が被弾し、私のライフバリア1枚を破壊するが、直ぐに仮面の魂の影響下になった。

 

これでこのターンは無敵。エボルトがこれを解除するには、一度ターンを終了するしかない。

 

 

「コアを使い切ることで首の皮一枚繋がったか。妹に似て、しぶとい猿だ。ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーエボルX】LV2

【仮面ライダーキルバス】LV2

【ブラッドスターク[2]】LV1

【財団X】LV1

バースト:【無】

 

 

仮面の魂の効果を解除するべく、エボルトはここでターンエンドを宣言。

 

私にターンが巡って来ると同時に直感した。

 

これが最後のターン。人類の存亡がかかった、運命のラストターンなのだと。

 

 

「エボルト。例え全ての人をカードにしようとも、オマエの望んだ結末が訪れることはない」

「なんだと?」

「人がカードになろうとも、カードが人になろうとも、人は人、カードはカードだ。そして、人はカードを手にした時、カードバトラーとなり、カードと絆を結ぶ。形を変えようとしても、その絆までは決して変えられない」

「何をまたわけのわからんことをほざいている!!」

「そのわけのわからないものが、私達の力の源だ!!」

 

 

行くぜ。

 

私は、大嫌いなバトルスピリッツで、大好きなモノを守る。

 

 

[ターン07]鉄華ヒカリ

 

 

「ドローステップ……!!」

 

 

私は、気合を込めてデッキからカードをドロー。

 

そのドローカードは、当然、私が望んだカードだ。

 

 

「メインステップ。行くぞエボルト、これが私とガヴの全力だ。【契約煌臨】発揮。魂状態の契約ガヴを、真紅纏いし凄まじき戦士、ライダースピリットガヴ、アメイジングミフォームへ……!!」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ アメイジングミフォーム】LV2(8)BP18000

 

 

魂状態になっていた契約ガヴが、最後の力を振り絞り、覚醒。

 

今の私と同じ、いやそれ以上の赤い進化の力、熱を帯び、新なる深い赤をその身に宿した凄まじき戦士、アメイジングミフォームとなって、フィールドへ復帰する。

 

 

「ガヴ、貴様、その真っ赤な姿。似ている、20年以上前、まだ私がDr.Aに仕えていた頃、唯一この私を倒した芽座椎名の切り札、デュークモン クリムゾンモードに」

 

 

この土壇場で進化した新たなガヴに、エボルトは動揺を隠せない様子。

 

しかしそれは怯えの動揺ではなく、懐かしさの動揺。不思議とこの状況を楽しんでいるようにも見える。

 

 

「ミラージュの『ガヴ』の効果でカウント+1。さらに契約ガヴの効果でカウント+4。これで私のカウントは20だ」

「ッ……何をするつもりだ」

 

 

準備は整った。

 

次の一撃に全てを掛ける。

 

 

「アタックステップ。アメイジングミフォームでアタック」

 

 

その瞬間、私は、アメイジングミフォームの効果を発揮させる。

 

 

「アメイジングミフォームの【OC:20】の効果。相手ライフ2つを破壊する!!」

「なに、アタックした瞬間にライフを破壊する効果だと!?」

 

 

私が効果の説明を終えると、アメイジングミフォームは、拳を構え、そこへ己の熱、炎を蓄積させ………

 

 

「これで終わりだ、エボルトォォォ!!!」

 

 

アメイジングミフォームの拳圧と共に放たれた炎の渦は、エボルトのフィールドにいた3体のスピリット達を吹き飛ばし………

 

そのままエボルトのライフバリアを焼き尽す。

 

そのはずだった。

 

 

「………」

 

 

〈ライフ1➡︎1〉エボルト

 

 

勢いよく巻いていた炎の渦が、エボルトのライフバリアを目前にして霧散して行った。

 

何故こうなったのか。

 

それは、私こと、鉄華ヒカリのみが知っている。

 

 

「何故だ、鉄華ヒカリ。何故トドメを刺さない」

「……」

 

 

そう。

 

わざと外した。

 

正確には、直前で効果を発揮を停止させた。

 

そうした理由は、たった1つ。

 

 

「やっぱり、ダメだ。私は、父さんと母さん、キコやみんなが愛したバトルスピリッツで、誰かの命は奪えない。奪いたくない」

 

 

そうだ。

 

正直、最後までどうするか悩んだが、最終的には、たったそれだけの理由で、私はこの全人類カード化を目論むエボルトを見逃そうとしている。

 

 

「今さらまた新たな偽善を語るか。この私を倒さなければ、世界も妹も救えぬぞ」

「……」

 

 

それも知ってる。

 

本当に私は大バカ者さ。

 

でも。

 

そうであったとしても、私は。

 

 

「オマエは、Dr.Aに、悪しきバトルスピリッツに利用され続けて来た。人を恨むなんて、当たり前だ」

「……」

「そんな奴が、恨み抜いた先で、私と言う人間に消されるなんて、あんまりじゃねぇか!!」

 

 

そんなつもりはなかったのに、次から次へと涙がこぼれ落ちて来る。

 

同情。私の抱いた感情はまさにそれであり、おそらくエボルトが最も人間に望んでいないものだ。

 

 

「……私はオマエに勝つことができても、そんな未来は絶対望まねぇ。いつかオマエとも、手を取り合えるって信じてる。だから一緒に地球へ帰ろう、エボルト」

「愚かな。私がその手を拒み、貴様を倒したらどうする。その後で全ての人類をカード化したらどうする。貴様が私を倒さないことで、どれだけ多くの人間が消えると思っているのだ」

「ならその後、必ずみんなをカードから元の姿に戻してくれると信じてやる!!」

「!」

「何がなんでも信じ抜く。だってオマエ、本当は他のカードや人間達も気遣えるくらい優しい奴じゃねぇか」

 

 

コイツだって、最初はただのなんの変哲もない1枚のカードだったんだ。

 

それが運悪く悪のカリスマなんかに拾われて、改造されて。悪の片棒を担がされて。そんな奴が、人間を憎まないわけがない。

 

私達にも責任がある。だからここで、キチンと話し合って、和解しないといけないんだ。例えそれが、どんなに愚かな選択であっても。

 

 

「フラッシュマジック、ネクロブライト」

「!」

「効果により、トラッシュからブラッドスタークをノーコスト召喚」

 

 

ー【ブラッドスターク[2]】LV1(1)BP2000

 

 

徐にプレイを再開したエボルト。マジックカードの効果により、最初に倒した方のブラッドスタークがフィールドへ蘇って来る。

 

 

「召喚時効果。手札の仇敵1枚を破棄。私がこの効果で破棄するのは、ライダースピリットゲンム 無双ゲーマー」

 

 

ブラッドスタークの効果を発揮させ、捨てるカードを私に見せつけるように提示する。

 

 

「このゲンム 無双ゲーマーは、手札にある時、効果ダメージが発生した際、自身を召喚することで、その効果ダメージを無効にする効果を持つ」

「ッ……じゃあさっきのアメイジングミの効果も無効にできたのか!?」

 

 

エボルトは小さく頷く。

 

驚いた。つまりあのまま効果を発揮させていたら、私は確実に負けていたことになる。

 

 

「自惚れるなと言ったはずだ。誰を相手にしていたと思っている」

「くっ……」

「それに、私と貴様が和解したところで、世界は何一つとして変わりはしない。今後も進化の力を始めとした特殊な力や、次々と生まれて来る多様な文明、発明は、愚かで悪しき者達によって利用され続けることだろう」

「……」

 

 

何も言い返せない。

 

これまでの歴史がそれを証明している上、闇バトルの中で、実際にそう言った人物を目の当たりにしたからだ。

 

 

「それを無くすための手段は2つある。1つは人間を滅ぼすこと」

「……」

「そしてもう1つは、その悪用される力を、根本から抹消することだ」

「え」

 

 

エボルトがそこまで告げると、何故だか嫌な予感がした。

 

その刹那。エボルトは手を大きく広げる。まるで攻撃を受け入れるかのように。

 

 

「アメイジングミフォームの効果を止めても、既に宣言されたアタックは止められまい」

「まさか」

「鉄華ヒカリ。君の尊重する世界に、私と言う悪用されるだけの力は不必要だ。さぁガヴ、トドメを」

「待て、エボルト!!」

 

 

エボルトの言葉に待ったを掛ける私。

 

だが誰も待たない。アメイジングミは頷くと、エボルトの眼前、ライフバリアへと迫る。

 

 

「鉄華ヒカリ。君ともっと早く出会っていれば、私はこんな愚かなことをしなくて済んだだろうか?」

「!」

「君の選択は、いや、願っているものを叶えるためには、辛く険しい旅になるだろう。だが、挫けるな。叶えて見せろ。君のその手で」

「エボルト……」

「さらばだ。楽しいバトルだったよ、ライフで受ける」

「エボルトォォォォォォォォォオ!!!」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉エボルト

 

 

アメイジングミの炎の鉄拳が、エボルトの最後のライフバリアを砕いた。

 

その瞬間に、ミツキの中から闇の瘴気が飛び散り、霧散。ガヴのウィルスにより、エボルトが完全に抹消された証だろう。それと同時にフィールドに残っていた仇敵のスピリット達も塵芥となり消滅して行く。

 

 

「……」

 

 

私は、気を失い、宇宙に浮くミツキを優しく抱き締める。

 

宇宙とは言っても、まだ麓のような場所だ。少しなら酸素もある。実際呼吸もしてるし、無事なのがわかる。

 

 

「終わったんだよな。ガヴ」

 

 

私は、唯一フィールドに残ったアメイジングミ、ガヴに声を掛けた。

 

だが。

 

 

「ガヴ?」

 

 

アメイジングミは元の契約ガヴ、ホッピングミの姿に戻ると、少しずつだが、エボルトやそのスピリット達と同様、その身体が塵となって行く。

 

しかもスピリットだけじゃない。借りたウィンドのBパッドに装填されたデッキのカードごと徐々に消えようとしていた。

 

 

「オマエ……」

 

 

それに気がついた瞬間。私は進化の力を纏っていた、炎のような姿から、元の姿へと戻ってしまう。

 

 

「エボルトの言う通りだ。もう二度と利用されないために、悪用されないためにも、Aカード達は、ここで消えなければならない」

「ガヴ……?」

 

 

みんなの進化の力を集めたこの形態だからか、初めてガヴの声がハッキリと聞こえた。

 

 

「な、何辛気臭いこと言ってんだよオマエ。つか、喋れんならもっと早く……いや、そんなことより消えかかってるオマエの身体をなんとかしねぇと」

「もう無理だよ。全てのAカードの力の負荷には耐えられなかったみたいなんだ」

「!」

「だから、オレの最後の力で、君達を地球へ、地上へと送り届けるよ」

「ッ……おい!!」

 

 

次の瞬間。ガヴは私とミツキの身体を抱え、地球へ向かって急降下。

 

大気圏の摩擦により発生する高熱から私達を庇う。

 

 

「おいガヴ!!…無茶んすんな、ゆっくり帰ろう。そしたらウィンドに直してもらえるかもしれねぇ!!」

 

 

落下の最中、必死にミツキを抱きしめながら、私は大気摩擦を一身に受けるガヴに向かって言い放った。

 

ガヴも消えないようにするために、必死だった。

 

しかしガヴは。

 

 

「本当に君は諦めが悪いね。言っただろ、もう無理だと」

「無理なんかじゃねぇ。私の前で消えるなんて、絶対許さねぇからな!!」

 

 

また目に涙が浮かんで来た。

 

それと同時に、ガヴとの思い出が脳内にフラッシュバックする。最悪な出会いから、闇バトルでの戦いを経て、最高の相棒となるまでの記憶だ。

 

 

「やめろ、消えるな、いなくならないでくれよ、ガヴ……!!」

「……」

「私達、これからもずっとずっと相棒同士なんだ。もっともっとたくさん、バトスピするんだ。オマエとなら、バトスピを好きになれる。変われる、そう思ってたんだ。だから消えないでくれよ!!」

 

 

喉が掠れ、痛い程叫んだ。

 

それでも既に察していた。

 

もう何をしても、結果は変わらないことを。

 

 

「ヒカリ。君は大きな勘違いをしている」

「え」

「ずっと一緒に戦って来た、オレだからわかる。君はもうとっくにバトスピが大好きじゃないか。もう君にオレは必要ない」

「それは、理屈になってねぇよ!!」

 

 

涙が止まらない。拭うことすら許されない。

 

 

「ヒカリ。君ならきっと、オレ以上の相棒を見つけられる。心配しないで、世界は広いから」

「ガヴ……!!」

「ありがとうヒカリ。こんなどうしようもないオレを、最後に世界を救うかっこいいカードに変えてくれて。忘れないよ、君と言う、最高の相棒を」

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

ここは、界放市ジークフリード区にある公園、ヴルムヶ丘公園。

 

遊具が少なく、無駄に広い草原を有するこの場所のど真ん中に、私とミツキはいた。2人とも、来ているバトルスーツもボロボロで汚れだらけだった。

 

私が先に起き上がる。横で寝ているミツキの顔についた汚れを手で落とすと、左腕に装着し放しだったBパッドへと視線を移す。

 

そこに詰め込まれていたデッキのカード達は、もう1枚たりとも残ってはいなかった。

 

 

ー『ありがとうヒカリ。こんなオレを、世界を救うかっこいいカードに変えてくれて。忘れないよ、君と言う、最高の相棒を』

 

 

アイツの、ガヴの最後の言葉を思い出した。

 

また涙が溢れ出て来る。止まらない。止め方がわからない。

 

 

「私だって忘れるもんかよ。あぁ、あぁ……ガヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ!!!!!」

 

 

こうして、胸には大事なことが、手には無が詰め込まれた状態で、私の歪みに歪みまくった、おかしなバトスピ物語は幕を下ろした。

 

 

 

******

 

 

あれから、約1年の時間が経過した。

 

私こと鉄華ヒカリは、手提げのリュックを背負い、たった1人で、界放市の空港に来ていた。

 

大勢の人々で賑わうこの空港で、私が向かう先は………

 

 

「海外、楽しみね」

「わっ…ウィンド!?」

「ニッヒヒ。相変わらず可愛い驚き方ね、ヒカリちゃん」

 

 

私に声を掛けて来たのは、元闇バトル運営スタッフの女性、ウィンド。もう黒いローブは着用しておらず、徳川フウとしての顔を見せている。

 

こうして直に会うのは、闇バトル閉幕以降初めてだ。

 

 

「ウィンド、なんでここに」

 

 

私はウィンドに訊いた。

 

 

「なんでって。そりゃ、中学卒業後、海外に飛び回るって言うヒカリちゃんの面倒を見て欲しいって、アンタのお母様に頼まれたね」

「母さんが?」

「えぇ。それで仕方なく。貸しにしといたわ」

「驚いた。まさかウチの母さんとウィンドがそんなに仲良かったなんて。昔敵対してたとか話してなかったか?」

 

 

私とミツキの母、鉄華ライから頼まれて来たウィンドは、「そんなことより」と、言葉を続けて、あるものを鞄から取り出す。

 

 

「はい。約束のBパッド。最新モデルよ」

「おぉ!!…あの時めっちゃ勢いで口走ってただけなのに、ホントに買ってくれたんだ」

「もちろんよ〜。やっぱり赤色が似合うわね」

 

 

ウィンドは私に手渡したのは、レッドメタルカラーのBパッド。

 

しかも大手メーカーの最新モデルだ。子供の私が気軽に買える金額はしてないと思われる。

 

 

「ん?……コレって」

 

 

Bパッドのデッキを収めるポケットに、デッキが装填済みになっているのを確認した。

 

その中にあったカードは………

 

 

「S、EE、S。制式戦闘服アイギス???…名前無駄に長」

「あぁそれね。デッキがないと不便だと思って。ガヴの代わりが務まるかは、わからないけど」

「……気ぃ遣ってくれたんだな。サンキュー。まぁ確かにないと不便だし、ありがたく使わせてもらうよ」

 

 

私は一度デッキを引き抜き、Bパッドを着用していたスカジャンの懐に仕舞う。

 

そしてデッキはどこに直そうか検討していた、その時だ。

 

 

「そのカード、『私の一番の大切は、貴女の側にいることであります』って、言ってる」

「なんじゃそりゃ……え、ミツキ!?」

 

 

ふと気がついた時には、双子の妹、ミツキがいた。色違いの旅行用手提げリュックを背負っている。

 

 

「来ちゃった」

 

 

無表情でピースサインを出しながら、ミツキが私に言った。

 

 

「来ちゃったって、なんでオマエここに」

「私もヒカリと海外行くことにしたから」

「はぁ!?」

 

 

立て続けに同行者が現れたことに驚き、私は声を荒げる。

 

 

「ダメ?」

「いや、ダメってわけじゃねぇけど。オマエ、プロの仕事どうすんの?」

「あぁ、それなら昨日辞めて来た」

「はぁ!?」

 

 

また同じように驚きで声が弾けた。

 

 

「オマエ、プロの収入額を捨ててまで私の所に来たのかよ」

「うん。そっちの方が楽しそうだから」

「楽しそうって、オマエなぁ」

「そう言えば、ヒカリちゃんはなんで海外を飛び回ろうと思ったの?」

 

 

私とミツキの会話の最中、ウィンドが私に訊いた。ミツキが怪訝な表情を見せる。

 

 

「エボルトの野望は阻止できたけど、まだバトスピで悪いことを企んでいる奴は大勢いるだろうからな。そいつらを手当たり次第ボコって、撲滅して回るのさ」

「ニッヒヒ。ヒカリちゃんらしいわね」

 

 

その後すぐに、窓から目的地行きの飛行機が空港に着陸した様子が目に入る。

 

それは、もう間もなく旅が始まると言う合図だ。

 

 

「2人とも、私の旅は相当長くて険しいものになっちまうと思う。それでもついて来てくれるのか?」

 

 

私がミツキとウィンドに訊いた。

 

すると2人は優しい笑みで微笑んで。

 

 

「もちろん」

 

 

2人は声を揃えて私に告げた。

 

偶然揃ったのか、ミツキはまた怪訝な表情を浮かべる。

 

 

「ウィンドは要らない。私とヒカリだけで行く」

「いやん。相変わらずつれないわね、ミツキちゃんは」

「ハハハ!!…いつもの調子が出て来たなウィンド。飛行機も来たし、そろそろ行くぜ」

 

 

新たなデッキを、スカジャンの右ポケットに仕舞うと、私は歩き出した。その後ろをミツキとウィンドが続く。

 

1枚のカードとの唐突な出会いから始まった、私の歪に歪んだバトスピ物語は幕を下ろした。

 

だけど、終わりの次に訪れるのは、いつだって新たな始まり。私は、自分の願いを叶えるため、今度は真っ直ぐでドストレートな道を歩き出した。

 

まるで、かつての鉄華オーカミ、父さんのように。

 

 

 

 




次回、王者の鉄華2。

最終回「アメイジングな世界へ」


******


AカードのAの文字には「相棒」「Dr.A」「アメイジング」の意味が込められていました。
ガヴのアメイジングミを見た時から思いついた設定ですが、個人的にはかなり気に入っています。
熱を帯びていると言う点も、Dr.Aが悪役を務めていた当時の主人公の切り札「デュークモン クリムゾンモード」と酷似していますし。ガヴは、今作において、これ以上にない程、主役適正があったかと思われます。
最後、新たにヒカリが手にしたカード、アイギスも頭文字がAです。ガヴのプレバンデッキ公開前は、こちらがヒカリの相棒となる予定でした。因みにこのアイギスのカードは、前作、王者の鉄華で、鉄華オーカミの父(ヒカリにとっての祖父)鉄華カグヅチが所有していたものと同一です。

バトスピの新しいコラボ先が、1月30日に公開されると、先日公式YouTubeで発表されました。
今年のコラボは漏れなく全て、2026からの新スタンに対応したものになります。
私事になりますが、今年は新スタン環境の小説を連載したいと思っているので、この発表はかなり重要なんですよね。いつものようにモンスターやロボットがたくさん出る作品とコラボしてくれれば創作がしやすいのですが、日常ものの作品やファンシーな世界観の作品など、あんまり召喚しても「カードバトル映え」しないものが来ると、途端に執筆意欲が失せてしまうためです。
個人的にはモンハンとかとコラボしてくれると嬉しいです。ペルソナ行けたんなら行けるでしょのマインドです笑
新コラボ先発表後、私の活動報告にてクソキモお気持ち表明(コラボ先に対してコメント)したいなと考えておりますので、その際是非みなさんのお考えもお聞かせいただけたら幸いです。


短い間でしたが、王者の鉄華2は、次回で最終回を迎えます。
予定では今回のバトルで最後と言っていましたが、ごめんなさい、もう1回行けました。なので次回が正真正銘、ヒカリのラストバトル。ガヴなき今、最後にどのようなバトルを繰り広げるのか、ご期待ください。
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