バトルスピリッツ 王者の鉄華2   作:バナナ 

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第2話「仮面ライダーガヴ」

 

 

 

雀の囀りが聞こえて来る早朝。カーテンの隙間から差し込む旭光を浴びて、私こと鉄華ヒカリは就寝から目覚める。

 

寝癖で四方八方に散らかった、自慢の赤い髪を指先で軽く下ろしながら、勉強机に置いたバトスピのデッキを目に映す。

 

 

「やっぱ、夢じゃないのか」

 

 

昨夜0時。優勝すればどんな願いも叶えられると言う「闇バトル」の会場、アンダーグラウンドスタジアムに強制召喚された。

 

その手と脳内は、そこで行った激しいバトルスピリッツをはっきりと記憶している。

 

 

「これから毎晩バトスピか」

 

 

私の大嫌いなバトルスピリッツ。

 

これから闇バトルで勝ち上がる手段として、毎日それをしなければならないのが、考えるだけで億劫だ。

 

だけど。

 

 

「でも、まだ完全には信用できねぇが、勝てばバトスピをこの世から消せるかもしれない」

 

 

ふと、自分が闇バトルで優勝した未来を想像する。

 

それは、バトルスピリッツがこの世から抹消されたことで、大手を振って「鉄華ヒカリ」のフルネームを名乗り、インスタでバズり、やりたいことをやりたいだけやる。好きなことを好きなだけやる。自分にとっての最高に輝かしい未来。

 

 

「よし。いっちょ頑張るか」

 

 

両頬を叩き、眠気を覚ます。

 

皮肉にも、バトルスピリッツを抹消すると言う願いが、私のバトルスピリッツへのモチベーションになっていたんだ。

 

 

******

 

 

あれから少しだけ時間が経った。今は通っているなんの変哲もない中学校。時間帯は昼休みだ。この時間は決まって親友の女子、鈴木イチカと雑談しながら、校庭のベンチで弁当を食べるのが、私の日課。

 

 

「で、昨日アンタが言ってた不審者から貰ったカードって何?…見せなさいよ」

 

 

ブロンドヘアを結ったポニーテールが特徴的な女子、鈴木イチカが私に訊いた。因みにイチカにはガヴのカードのことは話しているけど、闇バトルのことは一切話していない。流石にな。

 

 

「どしたイチカ。興味津々じゃねぇか」

「いや、気になるでしょ、純粋に一介のカードバトラーとしてはさ」

「まぁいいけど」

 

 

薄緑色の制服のポケットに入れていたガヴのデッキを取り出し、イチカへ手渡す。

 

 

「へぇ。紫と黄属性のライダースピリット。確かに見たことない。効果も強そう。だけどなんか、見てるとお腹空いてくるな」

「わかる。飯食ってるのにな。グミとかポテチとかのお菓子がモチーフっぽいから」

「多分売ったら相当儲かるよコレ。バトスピ嫌いなら売ったら?」

 

 

またイチカが訊いた。私は弁当を一口食すると返答する。

 

 

「売りたいのは山々だけど、一旦持っとくよ」

「意外。いつもなら鋭い顔つきで『じゃあ放課後売りに行くぞ』とか言いそうなのに」

 

 

イチカが私の顔真似しながら言った。あんまり似てはいない。

 

 

「まぁちょっと訳ありだ。もっと高くなるまで寝かせておくよ」

「必ず高くなるとは限らないけどね」

 

 

そう告げながら、イチカはガヴのデッキを返却してくれた。

 

私の言う「訳あり」とは、もちろん闇バトルのことだ。私の「バトルスピリッツをこの世から消す」と言う野望のため、今ガヴを手放すわけにはいかない。

 

 

「ちな、売却するなら親と一緒じゃないとダメだから」

「そうなのか?」

「中学生のウチらがお金貰ったらマズイでしょ」

「マズイか?」

「何かあったら、ウチらだけじゃ責任取れないじゃん」

「何かって何だよ」

「色々だよ色々。その辺は知らん」

 

 

段々と適当になって行く会話。私はベンチに背もたれながら、「責任ね〜そんなに重たく考えなくてもいいと思うけどな」と、我ながら呑気な一言を発する。

 

 

「大事ですよ責任は。それを学ぶために、僕らはこうして学舎の園に通っているのですから」

「うわ、誰!?」

 

 

そんな折、坊ちゃん刈りの男子生徒が声をかけて来た。大人びた雰囲気であるが、胸元のバッジに数字の1が刻まれていたため、1年生であることは直ぐにわかった。

 

 

「急に声を掛けてごめんなさい。僕は1年の二階堂ツツジと申します」

「あぁ知ってる知ってる。校内でバトスピがめっちゃ強いって噂になってる子じゃん」

 

 

1年の男子生徒ツツジの自己紹介にそう反応を示したのはイチカだった。それに対して私は「へぇ」と生返事。「バトスピ」と言うワードが気に食わなかった。

 

 

「そんなに噂になっているんですか?…嬉しいような、恥ずかしいような」

「で、なんの用だ?」

「コラヒカリ、喧嘩腰になるな」

 

 

露骨に機嫌が悪くなる私を、イチカが宥める。

 

本当はいけないことなのはわかるけど、私にとって、他人からされるバトスピの話はできるだけ避けたいんだ。

 

 

「鉄華ヒカリさんと、鈴木イチカさんですよね?…あのレジェンドカードバトラー、鉄華オーカミと鈴木イチマルの娘さん」

「あ」

「今回は、是非バトルの手合わせをと思いまして!!」

 

 

爽やかな笑顔と己のデッキを2人に向けるツツジ。

 

だが、そのあたかもバトスピをしている前提の発言は、私にとっての地雷。

 

「この触れ込み方はマズイ」と、イチカがそう感じた頃には、既に手遅れだった。

 

 

「人違いだ、バトスピやるならよそでやりな」

「えぇ!?…じゃあ、その手に持ってるデッキは」

「これはただの換金アイテムだ。テメェにはやらねぇよ」

「いや、そんなつもりは」

 

 

その後、ツツジの一言で完全に機嫌を損ねた私は、手に持っていたデッキをポケットにしまい、軽く舌打ちをすると、弁当を片し、この場から立ち去って行く。

 

 

「ごめん。アイツ、バトスピ嫌いだから。気を落とさないでね」

「あ、いえ、何も考えてなかった僕も悪いし、お気遣いありがとうございます」

「バトルなら今度ウチが相手してあげるよ。じゃあね」

 

 

必要最低限のフォローを入れると、イチカは立ち去った私の後を追い掛けて行く。

 

その2人の背中を目に映しながら、ツツジは。

 

 

「バトスピが嫌い。へぇ、手の内を隠すためにしては、下手な嘘つきますね」

 

 

柔和な顔つきから一変。鋭く冷たい表情を浮かべながら、そう呟いた。

 

その手に握っていたデッキの先頭には「仮面ライダーアギト」と言う名の刻まれたカードが確認できて。

 

 

******

 

 

「クッソォ、あの1年坊主、マジムカつくぜ。バトスピじゃなくて、絶対父さんが目当てだっただろ」

 

 

深夜、日付が変わる直前の0時前。私は自宅の部屋の腰掛けに腰を下ろしながら、昼間のことに対して愚痴を吐き散らしていた。

 

 

「つか時間、深夜0時って言ってたよな。ホントに待ってるだけでまた闇バトルの会場に行けるのかよ。昨日と違って一応準備はしたけど」

 

 

寝巻き一張羅だった昨日とは違い、今の私は、有名ブランドの白いパーカーに黒い短パンと、如何にもオシャレな女子と言った服装を着用している。今日の準備は万端だ。

 

到着後直ぐにバトルスーツへの衣装チェンジを許容されるから、あまり意味はないと思うかもしれないけど、それは間違い。今時の女子はオシャレこそ正装。気合いを入れる意味でも、必須なんだ。

 

 

「0時まで、5、4、3、2、1……」

 

 

Bパッドの時計を目視しながら、0時までのカウントダウン。

 

それが0になり、深夜0時を回った瞬間、私は昨日と同様、白い輝きに包まれ、この場から消え去った。

 

 

******

 

 

「……」

「こんばんはヒカリちゃん。昨日のバトル、観てたわよ。強いじゃない貴女」

「……」

 

 

目を開けた途端、その先に広がっていたのは、昨日と似たような更衣室と、黒ローブを羽織った女性、ウィンドの、人を小馬鹿にしたような、釣り上がった口元。

 

正直腹が立った。

 

 

「はぁ……」

「ちょっと、人の顔見るなりいきなりため息つくのやめてもらえる?」

「そのセリフ、ローブ外してから言えば?」

「ダメよ。黒いローブは闇バトルの運営スタッフの証なんだから」

 

 

ひょっとしたら昨日のことは全て夢で、本当はもうこれ以上バトスピしなくていいのではと密かに想像していた分、心底現実にガッカリした。

 

 

「ヒカリちゃんは冷たいなぁ。せっかく今日はスペシャルゲストもいらしているのに」

「スペシャルゲスト?」

 

 

ウィンドがそう告げると、私は彼女が指先で指して示した方向へと振り向く。

 

その先にいたのは。

 

 

「やぁ、会いたかったよ。鉄華ヒカリ君」

「アンタ、あの時の、大会主催者」

「如何にも。私が闇バトル主催者のイスルギだ。よろしく」

「ども」

 

 

そこにいたのは、黒服鉄仮面の長身男性。直ぐにそいつが闇バトルの大会を主催したイカれた男であることを思い出した。

 

 

「昨日のバトル後、ヒカリちゃんが宣言した『願い』の詳細を彼に教えたら、えらく関心を示されてね」

「うむ。嫌いなバトルスピリッツをこの世から消すために、自らがバトルスピリッツを遂行する。実に不思議で面白い事象だと思ってね」

「はぁ」

 

 

なんとも言えねぇな。面白いかはさて置き、バトルスピリッツを消すためにそのバトルスピリッツをプレイするってのは、他の奴らからしたらかなり変なのかもしれない。

 

 

「ところで訊きたいんだけど」

「なんだね」

「優勝したら、本当に願いは叶えてもらえるんだよな?」

 

 

私はイスルギに訊いた。おそらく、闇バトルに参加している誰もが抱いている疑問だ。

 

 

「もちろん。当然限度はあるが、それくらいなら可能だよ」

「結構範囲が広くて助かるよ。じゃあ約束してくれ。私が勝ったら、必ず私の願いを叶えるってな」

「元より、そのつもりさ」

「あと、着替えるから出て行け」

「それは失敬」

 

 

イスルギはこの場を後にしようと、私から背を向けて、控え室の扉の取手に手を掛ける。

 

 

「そうそう。君のバトルにも期待しているが、彼、Aカードのガヴにも期待しているよ」

「彼?」

 

 

最後に一言言い残すと、イスルギはヒカリの更衣室を後にする。

 

 

「普通、カードに『彼』って使うか?」

「変な方よね」

「ウィンドもほら、早くどっか行けよ」

「いいじゃない私は、女の子同士なんだし」

「誰が女の子だ、おばさんのくせに」

 

 

イスルギと違ってなかなか出て行こうとしないウィンドを追い出そうと、私は彼女の背中を押し始める。

 

 

「はいはい。それじゃ、頑張ってね」

「べ、別に頑張らねぇよ、バトスピなんて」

「ニッヒヒ。可愛い」

 

 

口元しか見えないが、屈託のない笑顔と言う名の期待を向けられて、少しだけ照れくさくなった。

 

 

 

 

******

 

 

 

バトル場が何層にも積み重なっている巨大な塔、アンダーグラウンドスタジアム。そこで今宵も闇バトルだ。多分他の1000人近くいた参加者達は、今頃別の階層で凌ぎを削りあっているんだろう。

 

 

「ニッヒヒ。ヒカリちゃん、似合ってるじゃない。バトルスーツを着けたら、あとは頭しか飾る所がないものね」

 

 

ほぼほぼガラ空きの観客席に腰を下ろしているウィンドが、私の被っているニット帽を見ながらそう呟いた。

 

因みに私には聞こえない。

 

 

「そんなことをする必要があるのかね?」

 

 

そんなウィンドの横にいるイスルギ。彼女に質問した。

 

 

「オシャレはしたいものですよ。特にあれくらい若い女の子なら」

「外見を気にするとは。不思議だな、人間は」

 

 

2人が雑談している間に、バトル場のもう一方の入り口の扉が開く。

 

私の今宵の対戦相手だ。皆の注目がそこへと集中する。そのカードバトラーは。

 

 

「アレ、ヒカリさんじゃないですか」

「アンタ、昼間の!!」

「二階堂ツツジです」

 

 

なんの因果か、今宵の対戦相手は、今日の昼間にバトスピの話を出して私の機嫌を損ねさせた、長身で坊ちゃん刈りの少年、二階堂ツツジだった。

 

 

「オマエ、なんで闇バトルに」

 

 

私はツツジに訊いた。正直、おっとりとした見た目だから、あんまりこう言う危ない橋を渡ろうとする奴には見えない。

 

 

「それはこっちのセリフですよ。バトスピ、されてないんじゃなかったでしたっけ?」

「……」

「まぁ僕は昨晩から知ってましたけどね。ウサギ柄のパジャマを着た貴女が困惑されるお姿を拝見しましたから。こんなに早く当たるとは思わなかったですが。ウサギ、お好きなんですね?」

「う、うるさい。いいから早く構えろよ」

 

 

話を強引に切り捨てると、私はBパッドを展開し、それを左腕にセット。そこへデッキを装填した。

 

余裕綽々の表情を浮かべるツツジも、同様の動作でバトルの準備を完了させた。

 

 

「んじゃ行くぞ」

「えぇ。どこからでも」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

ウィンドとイスルギが観客席で見守る中、私と二階堂ツツジによる、今宵の闇バトルが開始される。

 

先攻は私。大嫌いなバトルスピリッツを早めに終わらせるべく、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。契約ライダースピリット、ガヴ ホッピングミフォームをLV1で召喚」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1(1)BP2000

 

 

「ライダースピリットですか」

 

 

前屈みの状態で出現したのは、グレープ味のグミを纏った装甲を持つ、おかしなライダースピリット、ガヴ。

 

強くて便利な、私に与えられたAカードだ。

 

 

「契約ガヴの効果。私の手札からガヴか菓族カードを破棄することで、カウント+4」

 

 

私が手札のカード1枚を破棄すると、契約ガヴの腹部にあるベルトから生きた小箱が4体排出される。

 

 

「生きた箱?」

「このデッキのカウントだ。ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

「なるほど。やはりこの闇バトル用に各々が渡されたAカード達は、皆特別と言うことですか」

 

 

手札周りは良いな。あとはアイツのデッキ次第だ。

 

あの坊ちゃん。たしか昼間、イチカがバトル強くて有名とか言ってたけど……

 

 

[ターン02]二階堂ツツジ

 

 

「メインステップ。それにしても奇遇ですね。まさか、貴女のAカードもライダースピリットとは」

「!」

「僕は、契約ライダースピリット、アギト グランドフォームをLV1で召喚します」

 

 

ー【仮面ライダーアギト グランドフォーム】LV1(1)BP3000

 

 

ツツジが召喚したのは、ガヴと同じライダースピリット。二角のツノ、赤い複眼を持つ戦士、アギト。

 

 

「赤属性のライダースピリット」

「シンプルなデザインで素敵でしょう?…アタックステップ、契約アギトでアタックします」

 

 

後攻のプレイヤーは1ターン目からアタックができる。その権利を有効に活用するためか、ツツジは早速契約アギトへアタックの宣言した。

 

 

「アタック時効果。カウント+2、1ドロー」

「効果もシンプルだな」

「シンプルイズベスト。単純でわかりやすい効果程強いものですよ」

 

 

フィールドの地を蹴り、走り出すアギト。そのドが付く程シンプルな効果により、ツツジはカウントと手札を増やす。

 

 

「単純な効果が強い?…強い効果が強いんだろ」

 

 

私は軽いマジレスで返答すると、手札のカード1枚を引き抜く。

 

 

「フラッシュ。契約ガヴの効果。ターンに一度、私の手札1枚を破棄することで、カウント+4」

「その効果、僕のターンでも使えるのか」

「それだけじゃねぇ。その後、カウントを-1して、相手のコア2個以下のスピリット1体を破壊する」

「!」

「アタック中のスピリット、契約アギトを破壊」

 

 

契約ガヴは、8体に増えた生きた小箱を1体握り、ベルトにセット。回転式ハンドルを回し、その力を己の身体へ凝縮。

 

右腕に巨大なソーダグミの拳を纏い、それを振るって契約アギトを吹き飛ばし、爆散。返り討ちにして見せる。

 

 

「アタックステップ中に私のカウントが-された時、契約ガヴのさらなる効果で1ドロー」

「カウントを-することで、力を発揮できるのか」

 

 

ツツジはドローなど、シンプルイズベストな効果を持つアギト。

 

対して私は、搦め手が多く強力だが、様々な要素が複雑で緻密に絡み合うガヴ。

 

まだ2ターン、互いに1ターンずつしかプレイしていないが、私達は互いに相手のデッキの特徴を早くも理解。そして、それが正反対だと言うことも。

 

 

「今回のバトルは、パワーVSテクニックと言ったところでしょうか。なら、ゴリ押して見せます。フラッシュ、魂状態となった契約アギトを対象に【契約煌臨】を発揮」

「!」

「アギトストームフォーム」

 

 

ー【仮面ライダーアギト ストームフォーム[2]】LV1(1)BP5000

 

 

半透明の魂状態として生き長らえていた契約アギト。ベルトの央部を青く輝かせると、青い身体とジャベリンを武器に戦う戦士、ストームフォームとなって、フィールドへ復帰。

 

 

「契約アギトのもう1つの効果。【契約煌臨】した時、ターンに一度だけ、ソウルコアをトラッシュからスピリットの上に戻す」

「ソウルコア回収効果!?」

 

 

アギトを契約煌臨で復帰させるばかりか、ソウルコアまで回収して来た。

 

言うだけはある。シンプルに強い。

 

 

「そして、ストームフォーム煌臨時効果。このスピリットのコスト以下の相手スピリット1体を破壊します」

「!」

「僕が選ぶ対象は契約ガヴ。破壊しろ」

 

 

竜巻を纏うストームフォームの斬撃が、契約ガヴを八つ裂きに切断。爆散させ、魂状態に追い込まれる。

 

 

「ストームフォームでアタック。契約煌臨元の契約アギトの効果でカウント+2、1ドロー。さらにストームフォームの【OC:3】を達成したことで、その効果を発揮。カウント+1。2ドロー後、2枚破棄」

 

 

手札入れ替え効果。青属性特有の効果だ。青くなったことで、属性も青になってんのかよ。

 

 

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華ヒカリ

 

 

「ぐっ!?」

 

 

ストームフォームの斬撃が、今度は私のライフバリアを襲う。それ1枚は紙切れのようにスライスされ、散って行った。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーアギト ストームフォーム[2]】LV1

バースト:【無】

カウント:【5】

 

 

僅か2ターン目にして、カウント5と大量ドローを行ったツツジは、そのターンをエンドとする。

 

私のカウンターは、結果としてツツジのデッキ回転率を高める結果になってしまったわけだ。

 

 

「どうですか僕のアギトは、強いでしょう」

「はいはい、強い強い」

 

 

だけど全然余裕だ。ツツジへの返事を生返事で返すと、私は巡って来た自分のターンを進めて行く。

 

 

[ターン03]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。こっちも復帰だ。【契約煌臨】を発揮、魂状態の契約ガヴを、ザクザクチップスフォームに契約煌臨」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】LV1(1)BP7000

 

 

魂状態となり、色素を失っていたガヴが、ポテトチップスの鎧とポテトチップスの形をした二振りの剣を持つライダースピリット、ガヴ ザクザクチップスフォームとして、フィールドへ復活。

 

 

「煌臨時効果。3枚オープンし、対象カードを手札に加える」

 

 

ザクザクチップスフォームの効果でオープンされる3枚のカード。私はそれを視認するなり、思わず口角を上げる。

 

 

「よし。効果で変身ガヴ、ヴラムを手札に。残ったマジックカード、ガヴの効果。オープンされたこのカードも手札に加えられる」

 

 

つまり全てだ。オープンされた3枚のカードは総取り。

 

 

「創界神ネクサス、変身ガヴを配置」

 

 

ー【変身!! 仮面ライダーガヴ】LV1

 

 

ライダースピリット特有の創界神ネクサス、変身カードを配置。フィールドには何も出現しないが、ガヴの力を得たことで、私は紫と黄色のオーラを身に纏う。

 

 

「配置時の神託。デッキ上3枚を破棄して、コア+2。落ちたネクサスカード、ブルキャンバギーの効果。トラッシュから配置する」

 

 

ー【ブルキャンバギー】LV2(1)

 

 

次いでに呼び出したのは、赤と青の固いキャンディーを車輪とした全地形対応車、ブルキャンバギー。

 

いいぞ。デッキは良い調子で回転してる。

 

 

「契約ガヴの効果。手札1枚破棄。カウント+4。その後-1してコア2個以下のストームフォームを破壊」

 

 

ザクザクチップスフォームは、生きた小箱1体をベルトに装填し、その真の力を発揮。

 

割れたチップスを束ねたような二刀の剣にエネルギー蓄積させ、そのままストームフォームへ二段斬り。武器であるジャベリンごと切断し、爆散へ追い込んだ。

 

 

「アタックステップ。ザクザクチップスでアタック。効果でゴチゾウ-1。-されたことで契約ガヴの効果でドロー。ブルキャンバギーの効果でソウルコアをザクザクチップスへ」

「ッ……貴女もソウルコアの回収を」

 

 

システムは複雑だが、私だって強い効果がないわけじゃない。カウント-時に誘発する効果を多用し、ドローを行い、ソウルコアを回収する。

 

 

「アタックはライフで受けます」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉二階堂ツツジ

 

 

ザクザクチップスの斬撃。ツツジのライフバリア1枚を斬り裂く。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】

【変身!!仮面ライダーガヴ】LV2(2)

【ブルキャンバギー】LV2

バースト:【無】

カウント:【10】

 

 

手札とカウントも増えた上、盤面も整った。怖いくらい順調だな。負ける気がしないぜ。

 

 

「弱いですね」

「はぁ?」

 

 

次のターン開始直前、ツツジがほざいて来た。

 

主語こそなかったけれど、絶対「弱い」って私のことだよな。

 

 

「まさか、あの鉄華オーカミの娘が、この程度の雑魚だとは」

「父さんは関係ないだろ」

「この数ターンの攻防で理解しました。貴女は僕の敵じゃない」

「薄々感じてたけど、オマエ、学校では猫被るタイプか。やっぱバトスピしてる奴ってろくな奴がいないな」

 

 

徐々に冷たい本性を露わにするツツジ。アイツのターンが再びスタートする。

 

 

[ターン04]二階堂ツツジ

 

 

「メインステップ。【契約煌臨】を発揮。魂状態の契約アギトを、もう一度ストームフォームにします」

 

 

ー【仮面ライダーアギト ストームフォーム】LV1(1)BP8000

 

 

「契約アギトの効果でソウルコアを回収。煌臨時効果でザクザクチップスを破壊」

 

 

再びストームフォームとして復活した契約アギト。竜巻を纏う斬撃で、ザクザクチップスへ反撃。それの持つ剣ごと斬り裂き、爆散させた。

 

 

「続けますよ。緑のライダースピリット、ギルスを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーギルス】LV1(1)BP3000

 

 

「今度は緑」

「召喚時効果で1コアブースト。カウント+1」

 

 

ここでツツジは、アギトとは別のライダースピリットを召喚。緑の身体を持つライダースピリット、ギルスだ。効果によりコアとカウントを増やす。

 

 

「さらに青、G3を召喚」

 

 

ー【仮面ライダーG3】LV1(1S)BP3000

 

 

「召喚時効果でカウント+1。デッキからアギト フレイムフォームを手札に」

 

 

続けて現れたのは、他2体よりもメカメカしいデザインの青属性ライダースピリット、G3。効果でカウントを+し、ツツジに新たなカードを与えた。

 

 

「ミラージュ、オルタリングをバーストゾーンにセットし、アタックステップ。ストームフォームでアタック。契約アギトの効果でカウント+2、1ドロー。ストームフォームの効果でカウント+1、2ドロー後、2枚破棄」

 

 

またカウントと手札の増加。

 

フルアタックされてライフをたくさん持っていかれると厄介だ。なら、この防御札は今使っておくか。

 

 

「フラッシュマジック、仮面の魂」

「!」

「不足コストはブルキャンバギーのLV1に下げて確保。効果でこのターン、私のライフは1つしか減らされない。ストームフォームのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華ヒカリ

 

 

ストームフォームが、ジャベリンで私のライフバリア1枚を叩き斬る。

 

しかし、私が直前で発揮させたマジックカードの効果により、このターン、ライフはそれ以上砕けない。

 

 

「ライダースピリット専用の防御マジック。お持ちでしたか。ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーアギト ストームフォーム】LV1

【仮面ライダーG3】LV1

【仮面ライダーギルス】LV1

バースト:【無】

ミラージュ:【オルタリング】

カウント:【10】

 

 

前のターン以上に多くのアドバンテージを獲得したツツジ。一度そのターンをエンドとし、自らが「雑魚」と評した私ヘそれを譲る。

 

 

「どうですかイスルギ様、ヒカリちゃんとガヴのバトルは」

 

 

私とツツジがバトルを続ける中、観客席で腰を下ろしているウィンドが、横にいる高身長黒服鉄仮面、イスルギに訊いた。

 

 

「運の良さ、判断力、思考力。どれをとっても素晴らしい。しかし、違和感も感じる」

「違和感?」

「うむ。まるで何かに無理矢理蓋をして、軋轢が生じているような」

「蓋、ですか」

 

 

イスルギの率直な感想に、何か思い当たる節があるのか、ウィンドは指先で顎を撫でる仕草を見せる。

 

 

「確かに、どんなに美味しく焼けたお菓子も、蓋をしていたら食べられないですよね」

「これでは全ての力を解放できない。ガヴが気の毒でしょうがないよ」

 

 

誰にも聞こえない、2人の掴みどころのない会話。

 

その具体的な内容を耳にすることもなく、私は巡って来た自分のターンを進めて行く。

 

 

[ターン05]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。ヴァレンを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でヴァレン フラッペカスタムを手札に。さらにヴラムを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーヴラム プリンカスタム】LV1(1)BP4000

 

 

「召喚時効果で1ドロー。カウントを-2することで、下からも1ドロー」

 

 

ライダースピリットにはライダースピリット。私も別種のライダースピリットを2体召喚。

 

割れた板チョコのような装甲を持つライダースピリット、ヴァレンと、キャラメルとろけるプリンのような装甲を持つヴラムだ。

 

 

「まだ行くぜ。手札のヴァレン フラッペカスタムを提示。私のカウントが減った時、自身をノーコスト召喚できる。コレを2枚だ」

「!」

 

 

ー【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV2(2)BP8000

 

ー【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV2(2)BP8000

 

 

ヴァレンの強化形態、チョコフラッペのような形をした装甲を持つライダースピリット、ヴァレン フラッペカスタム。私はそれを2体召喚する。

 

 

「召喚時効果。相手スピリット2体のコア1個ずつをリザーブに置き、その後相手スピリット1体のBPを-12000。0になったらそれをデッキ下に戻す。2体召喚したら、コレを2回使って、アンタのフィールドを全滅させる」

 

 

2体のフラッペカスタムの氷塊を纏う拳骨が、ツツジのフィールドにいる3体のライダースピリット達を殴り付け、粒子化。全滅へ追い込んだ。

 

 

「これで私のスピリットは4体。アンタの残りライフは4。リーサル圏内だ」

 

 

戦況を覆した。私は「アタックステップ」を宣言し、その指先をフラッペカスタムへと添える。

 

 

「フラッペカスタムでアタック。LV2からのアタック時効果で下から1枚ドロー」

 

 

攻撃を開始する。「リーサル圏内」と言った通り、今いる全てのスピリット達のアタックが全て通れば、その時点で私の勝ちだ。

 

 

「フ。リーサル圏内?…やはり貴女は雑魚だ。僕のデッキも、ライダースピリットのデッキであることをお忘れですか。フラッシュマジック、仮面の魂」

「……」

「このターン、僕のライフは1しか減らない。フラッペカスタムのアタックはライフで受けます」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉二階堂ツツジ

 

 

そう易々と勝たせちゃくれないか。

 

フラッペカスタムの拳が、ツツジのライフバリア1枚を殴り壊すものの、ツツジも仮面の魂のカードを使用したことで、このターン、それ以上は破壊不可能になる。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1

【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV2

【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV2

【仮面ライダーヴラム プリンカスタム】LV1

【変身!! 仮面ライダーガヴ】LV2(6)

【ブルキャンバギー】LV1

【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】(魂状態)

バースト:【無】

カウント:【8】

 

 

このターンはいくらスピリットでアタックしても無駄だ。私は一度ターンをエンドとし、ツツジへそれを譲渡する。

 

その途端、ツツジは分かりやすく勝ち誇ったような表情を見せる。

 

 

[ターン06]二階堂ツツジ

 

 

「メインステップ。さて、ここらで華麗にフィニッシュと行きましょうか。アギトの真の力をお見せしますよ」

 

 

このバトルを締め括るつもりか、ツツジは毎ターン質を高め続けて来た手札のカードを1枚引き抜き、それを自分のBパッドへと叩きつけた。

 

 

「【契約煌臨】を発揮。魂状態の契約アギトを、フレイムフォームに」

 

 

ー【仮面ライダーアギト フレイムフォーム[2]】LV2(8)BP10000

 

 

魂状態の契約アギトが、今度は剣を装備した赤い戦士となって復活した。

 

 

「契約アギトの効果でソウルコアを回収。アタックステップ。フレイムフォームでアタック。契約アギトの効果でカウント+2、1ドロー。フレイムフォームの【OC:4】の効果、BP4000以下のスピリット3体を破壊。ヴァレンとヴラムを焼き菓子にしてしまえ」

 

 

フレイムフォームの炎の剣撃が、私のフィールドにいるスピリット、ヴァレンとヴラムを焼き斬り、爆散させる。

 

 

「そして、戻って来たソウルコアを使い、僕は二度目の【契約煌臨】を行う。溢れ出る輝きを解き放て、アギト シャイニングフォーム!!」

 

 

ー【仮面ライダーアギト シャイニングフォーム】LV2(8)BP25000

 

 

フレイムフォームが輝きを放ち、アギトは真なる姿を解放。

 

二刀の剣を武器として握る、頭の先まで赤く染まった最強形態、シャイニングフォームだ。

 

 

「シャイニングフォームの煌臨時効果。シンボル2つ以下のスピリット、回復しているフラッペカスタムを破壊」

 

 

シャイニングフォームは、二刀の剣を振い、光速の斬撃を披露。瞬きする間もなく、フラッペカスタム1体を細切れにし、爆発させた。

 

 

「契約アギトの効果で、契約煌臨元となったフレイムフォームを手札に。オルタリングの効果、アギトが【契約煌臨】した時、それを回復。さらにシャイニングフォームの【OC:9】の効果。このスピリットのバトル終了時、相手ライフを2つ破壊する」

「!」

「名前負けの雑魚でもお気付きですか。そうです、このスピリットのアタックが一度でも通れば合計3点分のライフを破壊が可能。仮にフラッシュでブロッカーを呼べたとしても、シャイニングフォームを超えるスペックを持つカードを出さなければ、どの道二撃目のアタックで終わりになる」

 

 

よく口が回るなアイツ。自分の勝利が嬉しくてたまらないんだろうな。

 

 

「要するに、貴女の負けってことですよ」

 

 

シンプルに強いスピリットによる強力なアタック。バトルスピリッツにおいては、もっとも単純で、有効な勝ち筋だ。

 

 

「ハハハ」

「!?」

 

 

だけど、自分の勝利が嬉しくてたまらないのは、私も同じだ。笑っちまうぜ。

 

 

「いいねぇ単純な奴は、決め手の作り方が雑で」

「なに!?」

「おかげでカードの打ち所がわかりやすいぜ。フラッシュマジック、ガヴ」

 

 

瞬間。私が使ったマジックカードは、ガヴのベルト部分と全く同じイラストが描かれたもの。

 

それこそが、勝利の鍵だ。

 

 

「効果でトラッシュにあるガヴか菓族のカード2枚と手札と好きなだけ入れ替える。私はこの効果でケーキング。フラッペカスタムを手札へ。そして【契約煌臨】を発揮。魂状態の契約ガヴを、ケーキングへ契約煌臨!!」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ケーキングフォーム】LV2(3)BP12000

 

 

トラッシュと手札のカードを2枚入れ替え、回収したカードを即座に使用。魂状態となっていた契約ガヴが、白きホイップを纏うケーキの王、ケーキングフォームとなって復活を果たす。

 

 

「煌臨時効果で相手スピリット1体のコア2つをリザーブへ。シャイニングフォームから取り除く」

「フ。何を出すかと思えば、僅かコスト5のスピリット。シャイニングフォームのコアは8つ。その程度のコア除去効果では消滅しません」

 

 

ケーキングは、生成したケーキとホイップで構成されたような見た目の白い槍の先端からホイップを放出して遠隔攻撃を行うが、シャイニングフォームはそれに被弾してもほぼ無傷。全く通用していない。

 

コアが8個も乗ってるんだ。そりゃそうか。

 

 

「その後、カウントを-1することで」

「ッ……しまった。真の狙いはこれか」

 

 

今更ガヴがカウントを-して行くことで力を解放できることを思い出したツツジ。途端に焦り始める。

 

 

「相手の創界神ネクサスのコア3つをボイドに送る」

「は?」

 

 

私の口から告げられた効果の説明を訊くなり、ツツジは拍子抜けを絵に描いたような表情を見せる。

 

無理もない。何せ、今その効果を使っても、全くの無駄。意味がないんだから。

 

フィールドでは、生きた小箱1体が、ケーキングの武器のホールケーキ状の部分にセットされ、消費されるも、何も起こらなかった。

 

 

「ふふ、フハハハハ!!……なんだよその効果、僕のフィールドに創界神ネクサスは無し。カウントを-にするだけで、全く意味がないじゃないか。やっぱり貴女は名前が強いだけのただの雑魚。僕の力には遠く及ばない」

「……」

「何が鉄華オーカミの娘だ。親の栄光だけでチヤホヤされやがって、生意気なんだよ」

「……」

「これで僕の勝利は確定した。最高のフィアンセを貰うと言う僕の願いにまた一歩近づいたよ」

 

 

訊いてもいないことを早口で語り出すツツジ。

 

中1のくせに、素敵なお嫁さんって。ジジイかよ。ませてんな。

 

因みに、もう勝ってると思ってるみたいだけど、それはアイツのとんだ思い過ごしだ。ここで種明かしと行こうか。

 

 

「ここで問題。私がケーキングと一緒に回収したカードはなんでしょうか?」

「ケーキングともう1枚?……ッ」

 

 

意外と早く思い出したみたいだな。私はトラッシュに戻したもう1枚のカード、「フラッペカスタム」を提示する。

 

 

「正解はフラッペカスタム。3枚目と合わせて、また2枚提示。ノーコスト召喚する」

 

 

ー【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV1(1)BP6000

 

ー【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV1(1)BP6000

 

 

手札で誘発したフラッペカスタムが再度2体フィールドに投下され、合計で3体となる。

 

その召喚時効果も、当然このタイミングでの発揮だ。

 

 

「2体の召喚時効果。相手スピリット2体から1つずつコアをリザーブに置き、その後相手スピリット1体のBPを-12000」

「それが2回。ってことは」

「そう。BP25000のシャイニングフォームのBPは、-24000され、1000になる。アタックはケーキングでブロック。返り討ちにしろ」

 

 

2体のフラッペカスタムによる氷塊纏う拳骨が、シャイニングフォームを宙に飛ばす。

 

その飛んで行った先で待ち構えていたのは、上空へ跳び上がったケーキング。白き槍でシャイニングフォームの腹部を貫き、破壊する。

 

 

「なんで、こんな偶然が」

「偶然だと思うか?」

「!」

「契約アギトは、自身の効果で、【契約煌臨】した際、一度だけソウルコアを戻せる。つまりそれは、デッキコンセプトが、初めから2回の【契約煌臨】を想定しているってことだ」

「!!」

「だから私は、オマエが2回契約煌臨して来るのを待った。仮面の魂を切らせる程度には攻めつつな」

 

 

結果、私のその推理は的中していた。ツツジのソウルコアは今やトラッシュへ置き去り。

 

次の自分のターンが回って来るまで、【契約煌臨】は封じられた。もっとも、次のアイツのターンは回って来ないけどな。

 

 

「まさか、貴女は初めからこの状況を想定していたのですか!?」

「当てずっぽうでやる程、脳味噌は腐っちゃいないさ」

「くっ。ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーアギト グランドフォーム】(魂状態)

バースト:【無】

ミラージュ:【オルタリング】

カウント:【12】

 

 

このバトルを締め括るべく、疲労していたケーキングやフラッペカスタムが立ち上がる。

 

決めるぜ。

 

 

[ターン07]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。全てのスピリットをLV2に揃えてアタックステップ。フラッペカスタムでアタック」

 

 

ケーキングと3体のフラッペカスタムを従えた、私のアタックステップ。1体目のフラッペカスタムが、ツツジの残り3枚のライフバリアを破壊すべく走り出した。

 

その効果により、私は、デッキ下からさりげなく1枚ドロー。

 

 

「ライフだ!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉二階堂ツツジ

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

フラッペカスタムの拳骨が、ツツジのライフバリア1枚を粉砕。

 

 

「2体目のフラッペカスタムでアタック」

「それもライフだ」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉二階堂ツツジ

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 

間髪入れずに2体目の攻撃。また1枚ライフバリアが殴り壊され、その数はとうとう1枚。

 

 

「どうする。ここでサレンダーするか、それとも今、私に倒されるか」

 

 

トドメの一撃直前。私はガトー同様ツツジに二択を問いかける。

 

それに合わせるように、ケーキングは白き槍を大地に突き刺し、蝋燭が立ち並ぶクリームの道を形成。その先には当然ツツジが確認できる。

 

 

「サレンダーなんてするものか。僕はこれでも立派なカードバトラーなんだ!!」

「そうか」

 

 

私は、問い掛けに対して返って来た返答を聞き入れるなり、Bパッド上にあるケーキングのカードへ指先を添える。

 

 

「終わらせろ、ケーキング!!」

 

 

私の指示に応えるように、ケーキングは、クリームの道を加速しながら突き進み、ツツジの最後のライフバリアへ向けてライダーキックを放つ。

 

 

〈ライフ1➡︎0〉二階堂ツツジ

 

 

「う、うわぁぁぁ!?!」

 

 

そのライダーキックは見事に炸裂。ツツジの最後のライフバリアを蹴り砕く。

 

これにより、このバトルの勝者は私だ。1戦目と同じ、思ってたよりも楽に勝てた。これからはもっと強い奴が相手して来るんだろうか。

 

 

「そ、そんな。この僕が僅か2日目で初敗北なんて」

 

 

ほぼ全ての要素でツツジは完敗したが、己の敗北を受け止められないのか、両掌を地面に付けて項垂れる。

 

そんな彼に対し、私は「やっと終わった」と、額の汗を拭い、Bパッドを片付けた直後に歩み寄って。

 

 

「お嫁さんが欲しいなんて、可愛い所あんじゃねぇか。顔は良いんだから、闇バトルなんざやらなくても、その内向こうの方から近づいて来るさ」

「……」

 

 

ちょっと可哀想だし、励ましの言葉でも入れておこう。大人の女性の余裕っぽくていいな。

 

しかし私は、直ぐにその自分の行動を後悔することになる。

 

 

「本当に近づいて来た」

「あ?」

 

 

ツツジのリアクションを聞くなり、私は背筋から悪寒を感じ取り、半歩後ずさる。

 

 

「見つけた。遂に、僕の運命のフィアンセ。ヒカリさん。いえ、ヒカリ様。どうか僕とご婚約を!!」

「はぁ!?…冗談抜かせよ」

「そんなこと言わずに、今後の人生を一緒に考えましょうよ!!」

「キモ!!…私に近づくな!!」

「あ、待ってくださいよヒカリ様!!」

 

 

目の形をハートマークに変えたツツジが、逃げ出した私を追い掛け回し始めた。勘弁してくれ。

 

 

「こっちに視線をくださぁい!!」

「やっぱバトスピしてる奴はろくなのがいねぇ!!」

 

 

態度を180度変えたツツジに追いかけ回されながら、私はそう叫んだ。その様子を微笑ましくウィンドとイスルギが眺めている。

 

 

「ふふ。賑やかね」

「しかし、次の相手は、あの子だ。その余裕は時期になくなることだろう」

 

 

ウィンドが呟き、イスルギが告げた。彼の言葉の意味を瞬時に理解したのか、ウィンドは「なるほど」と反応を示して。

 

 

「あの子ですか。面白いマッチアップですね」

「うむ。期待しているよ、互いの持つAカードの煌めきを」

 

 

また掴みどころのない会話を繰り広げる2人。

 

それの意味が理解できるようになる時は、もうすぐそこまで迫っている。

 

 

******

 

 

いくつものバトル場を有している巨塔、アンダーグラウンドスタジアム。ここは、鉄華ヒカリ達とは、また違う階層のバトル場だ。

 

 

「つ、強すぎる」

 

 

スキンヘッドで体格の厳つい大男、鋼野ガトーは運が悪かった。

 

昨日から開催された闇バトル。彼はその第1戦目でヒカリと当たり大敗。そして今行われているバトルは、それ以上の大差で敗北を喫しようとしている。

 

直後、このバトルを終わらせるためなのか、彼の対戦相手である、黄みがかった長い白髪でスレンダーな体型の少女は、手札から1枚のカードを引き抜き、それを己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「お呼びください、奴の名を」

 

 

召喚されたのは、光の巨人。その胸部には、終焉を意味する「Z」の文字が刻まれていて。

 

 

「アタック」

「ぐ、ぐぉぉお!!」

 

 

光の巨人の攻撃。腕を十字に交差させ、そこから光線を放ち、ガトーの残りライフを全て破壊。

 

少女に勝利を齎した。

 

 

「なんで、オマエがこんな不合法なイベントに参加している」

 

 

地面に転がり、立ち上がれなくなったガトーが怯え、震え切った声色で少女に訊く。

 

 

「鉄華オーカミの娘である、オマエが」

 

 

そう。この少女もまた、ヒカリ同様、伝説の英雄、鉄華オーカミの娘。

 

彼女の存在が、闇バトルに大きな波乱を呼び込む。

 

 

 





第3話「英雄の子、2人目」

******

《闇バトルのルール》
・毎晩午前0時に、参加者はアンダーグラウンドスタジアムへ招かれ、運営がランダムで決めた相手とバトルしなければならない。
・参加者は、必ず白いバトルスーツを着用しなければならない。
・ポイント制。0ポイントからスタートし、勝てば+1ポイント。負ければ-1ポイント。ただしポイントは0を下回らない。
・先に10ポイント貯めた上位2名で決勝戦を行う。これに勝利した者が願いを叶えられる。
・使用するデッキは、運営が配布した「Aカード」を必ず投入しなければならない。だが、それ以外に制限はない。
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