バトルスピリッツ 王者の鉄華2   作:バナナ 

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第3話「英雄の子、2人目」

 

 

 

「ぐす……うぅ」

 

 

屋根に大粒の雨が強く打ち付ける、薄暗い廃工場の中で、およそ5歳程度の黄みがかった短い白髪の幼い女の子が、何かに怯えているように啜り泣いていた。その直ぐそばには、同じ歳くらいの短い赤髪の女の子も確認できる。

 

2人とも、傷だらけで、泥だらけ。しかもその傷は、明らかに故意につけられたモノで。

 

 

「おら泣くんじゃねぇクソガキ。黙ってろ。この場所がバレたらどうしてくれんだ」

 

 

雷鳴とそれに伴う電光によって、この場にいるもう1人の人物の姿がはっきりと見えた。

 

そこにいたのは、細身で筋肉質、蛇のように長い舌を持つ男だ。痛々しく頬に刻まれた『W』の文字の傷跡が、そいつの印象の悪さをより加速させる。

 

 

「う、うぁぁあん!!…お父さん、お母さぁぁあん!!」

「泣き止めっつってんだろが!!」

 

 

男が理不尽に与える恐怖のせいで、尚も泣き止まない白髪の女の子。はらわたが煮えくり返った男は、鞭を取り出し、脅すようにそれをしならせ、地面に叩きつける。

 

 

「ミツキにてをだすなぁ!!」

「うお!?」

 

 

それを庇ったのが赤髪の女の子。勢いよく男の足元に飛び込んで行く。

 

全体重を乗せた体当たりは、一度こそ男を怯ませたものの、所詮はまだ幼い子供の小さな抵抗。直ぐに首根っこを摘まれ、身体ごと持ち上げられる。

 

 

「は〜な〜せ〜!!」

「暴れんじゃねぇ!!」

「ぶは!?」

 

 

赤髪の女の子を持ち上げた男は、そのままその子を廃工場の鉄の壁に投げつける。

 

 

「なんで言うことを聞かねぇ。あぁ!?…オレが、黙ってろっつったら、黙れよ、なぁ!?」

「うぁぁ!?」

 

 

男の苛立ちはそれだけでは終わらなかった。今度は鞭打ちだ。しならせて赤髪の女の子の小さな身体に、何度も何度も打ち付ける。

 

 

「ヒカリ!!…お願いです、もうやめて、もうやめてください!!」

 

 

泣いていた白髪の女の子が、赤髪の女の子を守るために前に出るが、男は執拗に鞭をしならせ、2人を交互に打ちつけ続ける。

 

 

「うるせぇ!!…うるせぇうるせぇ。主人の言うことを聞きやがれ。オマエら2人は、これからオレの手となり足となり働くだけのコマとなるんだからな!!」

 

 

男の目的は2人を調教することだった。何が狙いなのかは定かではないが、己に従順な道具が欲しいみたいだ。

 

 

「ヒャーハッハッハ!!…鉄華オーカミの娘2人をゲットできるなんざぁ、今日は最高についてるぜ」

 

 

園児虐待、暴力で気分が高揚したのか、男は上機嫌になり不気味な笑顔を見せる。このままだと2人は、一生親元には帰れず、地獄を見続ける日々を送ることになるだろう。

 

しかし、その時だった。

 

 

「!!」

 

 

男が気がついた時には、廃工場の屋根が吹き飛ばされていて、雨粒が自分の頭に降りかかっていた。

 

 

「な、なんだ……ッ!?」

 

 

屋根がなくなったことだけを取り敢えず認識した男が、黒雲を晒した天上を見上げると、そこには邪悪なオーラを纏う、黒き巨人。

 

おそらくその巨人が廃工場の屋根を損壊させたのだと、男は直感的に理解した。

 

 

「いつの時代も、こう言う馬鹿は蔓延るんですね」

「誰だ!?」

 

 

黒き巨人と共に姿を現したのは、黒く、長い髪を持つ美しい女性。

 

おそらく彼女が黒き巨人を召喚したのだろう、彼女は左腕に装着したBパッドからカードを1枚引き離すと、その黒き巨人は粒子化してこの場から消滅した。

 

 

「女?……ヒャーハッハッハ。なんだ、驚かすなよ界放警察かと思ったぜ。良い顔してんな。コイツは高く売れそうだ」

「その穢らわしい口を閉じろ、下衆が」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

男は女性を捕えるべく、Bパッドを装着し、彼女とバトルスピリッツを開始。

 

しかし、試合は終始女性のペース。男の繰り出すスピリット達は、彼女の使うカード達に手も足も出ず。

 

 

「トドメだ。ベリアル!!」

「ウソだ、ウソだァァァァ!!!」

 

 

ベリアルと呼ばれた黒き巨人が、棍棒のような武器を振い、男の最後のライフバリアを、彼の野望と共に粉砕。

 

いわゆる、瞬殺だった。

 

 

「ガ……ハ!?」

 

 

蓄積されたダメージで、身体が限界を迎えたか、男は気を失い、その場に仰向けで倒れる。

 

それを確認した女性は、Bパッドを閉じ、役目を終えたベリアルがゆっくりと消滅して行く。

 

 

「怪我はない?…いや、あるか。界放警察もしっかり呼んであるから、保護はそっちでしてもらいなさい」

 

 

女性は女の子2人に告げると、「じゃあね」と、手をヒラヒラと振りながら、この場を後にする。

 

2人は「助けてくれてありがとう」と言い返したかったが、これまでの恐怖と体の痛みが、それをさせてくれなかった。

 

結果として、バトルスピリッツに命を救われたことになる2人。しかし、その感じ方はそれぞれ違っていた。

 

白髪の女の子は、助けてくれた女性のバトル、勇ましい背中を見て、「強いカードバトラーへの憧れ」を抱いた。

 

だが、赤髪の女の子は。

 

 

「カードバトラーには、ろくなヤツがいない」

 

 

自分たちを誘拐し、女性からバトルスピリッツと言う名の天誅が下った男を、まるでゴミを見るような眼差しを向けながら、赤髪の女の子は呟く。

 

そう。その子は、白髪の女の子とは違い、強いカードバトラーに憧れを抱くことはなく、この日を境に、バトルスピリッツそのものを嫌悪するようになった。

 

その子の名は、鉄華ヒカリ。私のことだ。

 

 

******

 

 

「なんで今更昔の夢見るかな。うわ、汗やば」

 

 

早朝。起床した私は、ベッドの上で仰向けになりながらそう呟いた。

 

 

「ガチ寝不足。闇バトルのせいだ。あぁマジでダリぃ」

 

 

机に置いてある手鏡で自分の顔を見てみる。目の下に隈ができていた。そのせいで、また少し萎えた。

 

 

「ったく、こんだけ頑張ってまだ2ポイントかよ。10ポイントまで最短8日。決勝戦合わせて+1日。後最低でも9回か、ダル〜」

 

 

闇バトル優勝のため、夜な夜な大嫌いなバトルスピリッツに明け暮れることとなった私。優勝までは、まだまだ先が長い。

 

 

「今日は祝日で学校休みだし、さっさとシャワーでも浴びて、もうひと眠り決めとくか」

 

 

シャワーを浴びるために、部屋を出て浴場へと向かう。私の家は結構広いが、部屋から浴場まではそんなに距離はない。

 

直ぐに辿り着いて、その戸を開けようと手を伸ばした。

 

 

「ん?」

 

 

思わずその手が止まった。浴場の扉が勝手に開いたからだ。

 

私は一瞬、自分よりも早起きして来た母さんが風呂掃除でもしていたのだと思ったのだが。

 

 

「あ、ヒカリ」

「な!?」

 

 

そこから母さんの猫柄の寝巻きを着用して出て来たのは、黄みがかった長い白髪のスレンダーな少女。

 

この家には、私と彼女の母さん以外は住んでいない。だが、私はこの少女のことを誰よりも知っている。

 

 

「ミツキ、なんでいんだよ」

「なんでって。ここ私の家」

 

 

コイツの名は鉄華ミツキ。同じ血を分けた、私の双子の妹である。

 

 

******

 

 

「ごめんごめん、そう言えばヒカリには言ってなかったね。ミツキ、今日から2週間家に帰省するから」

「母さん、そう言うの早く言ってくんない?」

 

 

少しだけ時間が経過し、朝食の時間。私はいつもより窮屈に感じながら朝食を食していた。

 

理由はもちろん、私の横にいるこの女、ミツキだ。

 

 

「どうよミツキ、久しぶりの母のお味は」

 

 

鉄華ライ。私の母さんがドヤ顔でミツキに訊いた。ミツキの黄みがかった髪色は母さん譲りだ。正直ちょっと羨ましい。私は父さん譲りの赤い髪の毛だから。

 

 

「うん。美味しい」

「そうだろそうだろ。もっとあるから、たくさん食べな」

「そんなにたくさんは食べれない」

「……」

 

 

母さんの言葉を、ミツキは淡々と返答して行く。コイツのこう言う陰気くさい話し方は父さん、鉄華オーカミに似ている。

 

大好きな母さんをミツキに取られている気がするから、私はこの2人が会話している時間が嫌いだ。

 

 

「で、どう?…プロになった感想は」

 

 

久しぶりに娘と再会したことで、やたらテンションの高い母さん。またミツキに訊いた。

 

そう。何を隠そうこの鉄華ミツキ、14歳と言う若さでプロになった有名カードバトラーだ。当然最年少プロであるのはさることながら、抜群のプロポーションとクールな性格で人気も高い。

 

私の口から説明すると、ちょっと腹立つな。

 

 

「まぁまぁかな。もうちょっと強い人いるかと思ってたけど」

「今のセリフ、お父さんっぽい。お父さんには会えた?」

「お父さんとはまだランクが違うから、まだ会ってない。けど、そのうち行く」

 

 

意気込むミツキに、私は小声で「なんでそんな自信満々なんだよ」と愚痴る。

 

 

「ヒカリは」

「ん?」

「バトスピやってる?」

「んなもんやってねぇよ。今時流行んねえっつの」

 

 

ここのところ、主に闇バトルによって、ただでさえふんだんにストレスを感じていた私は、バトスピの話題を振られた瞬間に爆発。キレると、「ごちそうさん」と雑に告げながら、ロビーを出て行く。

 

 

「ごめんミツキ。ヒカリ、まだバトスピ嫌いみたいで」

 

 

気まずくなった空気の中、母さんがミツキに言った。

 

 

「お母さんが謝ることじゃない」

「本当はヒカリとバトスピしたいんでしょ?」

「別に。ただ訊いてみただけだよ」

 

 

そこまで話すと、ミツキも「ごちそうさまでした」と丁寧に告げて、この場を後にする。

 

 

「本心をひた隠しにする所も、お父さん譲りか。2人とも私達に似て来たな。良いところも、悪いところも」

 

 

娘2人が、少しずつ自分と夫に似て来たことを嬉しく思う母さん。ただその反面、昔は自分も夫もかなりやんちゃをしていたからか、不安でもあるみたいだ。

 

 

 

******

 

 

時刻は間もなく深夜0時を回る。

 

私は自室でパジャマから白パーカーと黒い短パンの私服に着替え直す。

 

昼間は睡眠で疲れを癒し、目覚めの後はお菓子を食べて幸せな気分になることで、これ以上ない休日を満喫できた。闇バトルへの準備は万端だ。

 

 

「さぁて、今日も頑張るか」

「何を?」

「何をって、そりゃ……ってうわ、ミツキ!?」

 

 

軽く腕を伸ばすストレッチをしていると、知らぬ間に双子の妹、ミツキが部屋に入っていたことに気がつく。

 

危ねぇ。危うく「そりゃ闇バトルに決まってるだろ」って教えちまうところだったぜ。

 

 

「いつ入って来たんだよ」

「さっき」

「ノックぐらいしろよな」

「で、何を頑張るの?」

 

 

昔から、なかなか話を逸らさせてくれないんだよなコイツ。

 

 

「ほら、アレ。宿題だよ宿題。早く終わらせないと」

「私服で宿題するの?…さっきまでパジャマだったのに」

「気合い入れる時はオシャレするのが、現代女子の常識だろ」

「ふーん」

 

 

ミツキからの質問攻めを、適当なウソで誤魔化してるけど、常に無表情で感情の変化に乏しいミツキのリアクションだと、それが通じているのかは疑問だ。

 

妙な緊張感の中、「ミツキにバレませんように」と神様にお祈りしてみる。

 

 

「そ。じゃあ頑張ってね」

「お、おう」

 

 

私の祈りは神に通じた。ミツキは私の部屋を出て行く。

 

 

「危ねぇ。流石にバレるわけにはいかないからな。よし、ちょうど0時まで、3、2、1」

 

 

0。次の瞬間、私の身体は白い光に包み込まれ消滅。闇バトル会場、アンダーグラウンドスタジアムへと向かった。

 

同じくして、部屋の外に出ていたミツキも消えていたことには気が付かずに。

 

 

******

 

 

「ハローヒカリちゃん」

「……」

 

 

目を開けると、そこはいつも通り、バトル場の更衣室兼控え室。出迎えたのもいつも通り、黒ローブの女性、ウィンドだ。

 

 

「今日は3戦目ね。頑張って」

「なんでいつも私のとこに来んだよ」

 

 

ウィンドに訊くと、ウィンドは口角を上げ、「そりゃヒカリちゃんの大ファンだからよ」と即答。だけど多分、暇人なだけだと思う。

 

 

「そ・れ・よ・り。今日の相手、これまでの2人とは格が違うから、気をつけてね」

「随分とそいつのことを棚に上げるじゃん。そんなに凄い奴なの?」

 

 

私の質問に、ウィンドは唇に人差し指を当てながら「それは会ってからの、お・た・の・し・み」と返答して、答えをはぐらかす。

 

それを見た私は反射的に「キモ」と、辛辣に言い返した。

 

 

「でも大丈夫。ヒカリちゃんとガヴならきっと勝てるわ。3ポイント目獲得、頑張って」

「はいはい」

 

 

いい加減ウィンドの扱いにも慣れて来た。彼女を適当にあしらうと、闇バトルの準備をすべく、私はロッカーを開けて白いバトルスーツを取り出す。

 

 

「ほら。着替えるから出てけよ」

「……」

 

 

昨夜と同じように、ウィンドの背中を押す。昨夜は少し引き下がったが、今回はすんなりと退場してくれた。言いたいことは全部言ったからだろうか。

 

 

「ニッヒヒ。今夜は、美味しいお酒が飲めそうね」

 

 

閉じられた更衣室の扉を見ながら、ウィンドは不気味な表情のまま、そう呟いた。

 

明らかな企みを孕んでいるその表情の真意を確かめられる者は、まだ誰もいなくて。

 

 

******

 

 

「これまでの2人とは格が違う、か。一体どんな奴なんだ」

 

 

ヨーロッパのコロッセオに似たバトル場にて、もはやお馴染みとなった白を基調としたバトルスーツを着用した私は、またしても今宵のバトル相手を待ち続けていた。

 

脳裏には常にウィンドからの言葉がしつこくこびり付いている。もちろん自分が負けるとは一寸たりとも思ってはいないが、彼女の言い方が妙に引っかかるのだ。

 

 

「いや、今はそんなことどうでもいっか。よくわからんけど、ガヴがあれば勝てんだろ」

 

 

闇バトルが始まって3日。私は既にガヴを信用していた。

 

とは言っても、それは性能面の話だ。「これがあれば嫌いなバトルスピリッツをさっさと終わらせられるから」と言う程度の浅い信用だ。闇バトルで優勝して、バトスピをこの世から消せれば、お役御免。とっとと捨てるさ。

 

 

「あらイスルギ様。今宵もヒカリちゃんの試合の観戦ですか?」

 

 

バトル場の観客席。闇バトル運営スタッフ、ウィンドがその一席へ腰を下ろす。その横には闇バトルの主催者、鉄仮面の大男、イスルギが既に着席していた。

 

 

「ウィンドか。君は相変わらず鉄華ヒカリ君のことがお気に入りのようだね」

「そう言うイスルギ様もじゃないですか」

「私がお気に入りなのはあの子じゃない。ガヴさ」

 

 

瞬間。イスルギの鉄仮面の奥底が鈍い黒色に輝く。その眼が捉えているものは、私が持つAカード、ガヴ。

 

 

「お、扉が開く」

 

 

そんな折、眼前の扉が開き出す。ようやく今宵の対戦相手の準備が整ったのだ。

 

これまでの対戦者とは格が違うと箔を押される程のカードバトラーだ。私はてっきり屈強な大男をイメージしていたが。

 

そのシルエットは、まるで自分と同じ血を分けた、あの人物で。

 

 

「み、ミツキ……!?」

 

 

「まるで」ではなく「まさしく」が適切であった。私の目の前に現れたのは、双子の妹、プロのカードバトラー、鉄華ミツキ。

 

母譲りの黄身がかった白髪に、白いバトルスーツがよく映えている。が、今の私の感情はそれどころの騒ぎではない。

 

 

「は、はぁ!?…ウソ、なんでアンタが闇バトルなんか」

「ヒカリも。バトルはしてないって言ってたよね?」

「いや、それは。リアクションに困るな」

 

 

慌てふためいて声が上ずる私とは真逆に、ミツキはいつも通り、冷静な口調で話す。

 

 

「でも、嬉しい」

「?」

「どんな形であれ、ヒカリとバトルできるの、久しぶりだから」

「……」

「小さい時以来だよね」

 

 

クールな表情から、僅かに暖かな笑みを見せるミツキ。私がその顔を見たのは、およそにして10年前。自分達が人攫いに遭遇した時以来だ。

 

 

「この大会で優勝すれば、なんでも1つだけ願いが叶う。ミツキは何をお願いする気だ?」

 

 

ミツキに訊いた。そうだ。ミツキが何もなしでこんな危険な大会に挑むわけがない。

 

きっと、何かやむを得ない事情が。

 

 

「誰もが仲良く、笑顔でバトスピができる世界」

「……」

 

 

訊いてて恥ずかしくなるような壮大な夢を、さも抱いて当たり前だと言わんばかりに答える。

 

忘れていた。コイツ、美形でクールな外見とは裏腹に、中身は天然でアホだった。

 

 

「オマエ、それ言ってて恥ずかしくないのかよ」

「別に。ヒカリは?」

 

 

今度はミツキが私に訊いて来た。私の願いはもちろん……

 

 

「私は、バトスピをこの世から消してもらう」

「……ヒカリこそ、そんなこと言ってて恥ずかしくないの?」

「なに!?」

 

 

ミツキにそう言われると、なんか恥ずかしく思えて来たな。だけど、バトスピがない世界は私の理想。それだけ譲れねぇ。

 

 

「は、恥ずかしくないやい!!…一々鉄華オーカミの、父さんの娘だからとか言われるの嫌なんだよ、面倒くさいし」

「ヒカリらしいね、子供じみてて」

「オマエが言うな!!」

 

 

私の願いは「バトスピのない世界」に対して、ミツキの願いは「誰もが笑顔でバトスピができる世界」

 

方向性は真逆だが、似た系統の願いだ。認めたくはないけど、やっぱ私達、双子なんだな。

 

 

「私達の願いはそれぞれ真逆。なら、ここで負けるわけにはいかないよね」

「……」

 

 

先に展開されたBパッドを左腕に装着し、バトル開始の準備を整えたのはミツキの方だった。

 

バトスピ嫌いな私は、乗り気ではなかったが、渋々Bパッドを展開し、左腕に装着する。

 

 

「私とバトルする時くらい、楽しそうにしたら?」

「しねぇよ。面倒だから、さっさと終わらせるぞ」

「強気だね。私に一度も勝ったことないの忘れた?」

「ガキの頃の話だろ?…バトスピ以外で私に勝ったことないくせに」

「でも、今からやるのはバトスピ。バトスピなら、ヒカリには負けない」

「残念だけどそれも叶わないぜ。なんてったって、今の私の手には最強カード軍団が揃ってるからな」

 

 

私達は、互いに言い合いながら、初手となる4枚のカードをドロー。

 

私が言った「最強カード軍団」とは、紛れもなくAカード、ガヴのカード達のことだ。コレさえあれば、相手がたとえあのミツキでも負けないだろ。

 

 

「それがどんなに強くても、ヒカリが私に勝つことはない。棄権するなら今のうちだよ」

「棄権?」

「怖い思い、したくないならね」

 

 

ミツキは根が真面目で、冗談を言わないことは誰よりも知っている。今の言葉も、当然嘘ではなく真を語っているように見えたけど。

 

 

「んなハッタリ通じるかっつの。逆にオマエに怖い思いさせてやる」

「そう。じゃあもう止めない。バトルを開始しよう」

「覚悟しろよ、ミツキ!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

コールと共に、闇バトルの第三夜、鉄華オーカミの娘である、私達双子の姉妹同士によるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻は私、鉄華ヒカリだ。ミツキの言葉をハッタリだと聴き流し、意に返さぬまま、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。私のAカード、契約ガヴをLV1で召喚」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1(1)BP2000

 

 

前屈みの姿勢で召喚されたのは、グレープ味のグミを纏った装甲を持つ、おかしなライダースピリット、ガヴ。

 

 

「紫と黄のライダースピリット。なるほど、ヒカリって感じするね」

「どう言う意味だよ。契約ガヴのフラッシュ効果で手札1枚を破棄することで、カウントを+4」

 

 

契約ガヴの効果を使うために、私は手札1枚をトラッシュへ破棄。すると、ガヴのベルト部分から4体の生きた小箱が出現する。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

「一度の効果発揮でカウント+4。最強カード軍団と言うだけあって強いね。だけど、強いAカードが配られたのは、ヒカリだけじゃないよ」

 

 

先攻にはアタックステップが存在しない。私はターンを終了。そのままミツキのターンとなる。

 

セリフから、アイツも自分のAカードに自信があるみたいだ。

 

 

[ターン02]鉄華ミツキ

 

 

「メインステップ。行くよ、ヒカリ」

「……」

 

 

まだ2ターン目、ミツキにとっては最初のターンであると言うにもかかわらず、私は妙に重苦しいプレッシャーを感じた。

 

そうだ。忘れていたけどコイツ、ウィンドの言っていた「格の違うカードバトラー」だ。これくらいのプレッシャーなんて、飛ばせて当たり前じゃないか。

 

 

「お呼びください、奴の名を。私のAカード、ウルトラマンゼット。LV1で召喚」

 

 

ー【ウルトラの絆 ウルトラマンゼット】LV1(2)BP3000

 

 

ミツキの1枚目。名を昌和されてフィールドへと姿を見せたのは、胸部にアルファベットの「Z」の文字が刻まれた光の巨人。

 

 

「白属性の契約ウルトラマン!?」

「バーストを伏せて、アタックステップ。ゼットで攻撃」

 

 

颯爽と呼び出したゼットへアタックの指示を送るミツキ。その効果も当然ここで発揮させて行く。

 

 

「アタック時効果。カウント+2。その後バーストをデッキ下に戻し、戻せなかった場合、スピリットに1コアブースト」

 

 

私はバーストを伏せていない。要するにカウント+2と1コアブーストか。自信満々だった割には地味な効果だな。

 

 

「フラッシュ。契約ガヴの効果、手札1枚を破棄して、カウント+4」

 

 

私は、間髪入れずに契約ガヴの効果でカウントを伸ばす。さらに、このターンはそれだけじゃない。

 

 

「その後、カウント-1し、コア2個以下のスピリット1体を破壊する」

「だけど、ゼットはさっきのコアブーストでコアは3個になってる。破壊は無理」

「言われるまでもねぇ。契約ガヴのもう1つの効果。アタックステップ中に私のカウントが減った時、デッキから1枚のカードをドロー」

 

 

アタックステップ中にカウントを減らせればドローできる契約ガヴの効果を活かし、私は1枚のカードをドローする。

 

さて、次はアタック中のゼットのアタックをライフで受けるか否かって感じの選択をしないといけないんだけど。

 

 

「ゼットのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華ヒカリ

 

 

ここはやはりライフで受けるしかないか。

 

瞬間、ゼットの拳が、私のライフバリア1枚を砕き割る。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【ウルトラの絆 ウルトラマンゼット】LV2

バースト:【有】

カウント:【2】

 

 

「へ。大そびれたことを言ってた割には大したことねぇじゃんか」

「ウォーミングアップは大事」

 

 

互いにドロー、コアブースト、カウントアップ等のアドバンテージを少しずつ獲得していきながら迎えたバトルニ周目。ターンプレイヤーは私、鉄華ヒカリとなる。

 

 

[ターン03]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。【契約煌臨】を発揮。契約ガヴを、ザクザクチップスフォームに」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】LV1(1)BP7000

 

 

契約煌臨の力を持つガヴは、その姿をグミ纏う姿から、チップス纏う姿へと変化させる。

 

主に序盤と中盤を担う中型の契約煌臨スピリット、ザクザクチップスフォームだ。

 

 

「煌臨時効果。ヴァレンを手札に」

 

 

私はそのカード効果で、別種のライダースピリット、ヴァレンのカードを手札へ加えた。

 

だが、その行動は裏目となる。

 

 

「相手の煌臨時効果発揮によりバースト発動。キングジョー ストレイジカスタム」

「!」

「効果でノーコスト召喚」

 

 

ー【特空機3号キングジョー ストレイジカスタム[2]】LV2(2)BP8000

 

 

ザクザクチップスの効果に反応したミツキのバーストが反転すると共に現れたのは、ゼット同様巨大な体格を持つ、無機質な鋼鉄ロボ。

 

 

「召喚時効果。コスト4以下のスピリット1体をデッキ下に戻す」

「!」

「対象はザクザクチップスフォーム。去れ」

 

 

現れた巨大ロボ、キングジョーは、ボディ全体からミサイルを発射。その爆発の威力により、ザクザクチップスを蹴散らし粒子化させられた。

 

 

「くっ。契約ガヴは魂状態となって私のフィールドに残る」

 

 

色素が抜け、半透明な状態となって、契約ガヴは私のそばで復活を果たす。

 

だけど、魂状態はアタックもブロックもできねぇ。このターン、動きは殆ど封じられたも同然だ。

 

 

「今加えたヴァレン チョコドンフォームを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でガヴ ブリザードソルベを手札に。ターンエンド」

手札:4

場:【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1

【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】(魂状態)

バースト:【無】

カウント:【7】

 

 

チョコ板纏う戦士、ヴァレン チョコドンフォームを召喚できたはいいものの、迂闊だった。メインステップ中に契約ガヴを倒された影響はでかい。これ以上は何もできないと判断した私は、一度ターンエンドを宣言。

 

頑強な白属性のスピリット2体を従えたミツキのターンが始まる。

 

 

[ターン03]鉄華ミツキ

 

 

「メインステップ。ネクサス、対怪獣特殊空挺機甲隊ストレイジ本部をLV2で配置」

 

 

ー【対怪獣特殊空挺機甲隊ストレイジ本部〈R〉】LV2

 

 

ここでミツキはネクサスカードを配置。フィールドには何も出現しないタイプだ。

 

このカードが、私をさらに追い詰めることになる。

 

 

「ストレイジ本部LV2の効果。私のフィールドにキングジョーがいる限り、私の全てのスピリットは【重装甲:紫/黄】を得る」

「ッ……紫と黄!?」

 

 

さり気なく説明された効果に、私は鳥肌が立った。

 

紫と黄の【重装甲】なんて言われたら、ガヴやその関連カード達の効果が通じないと言われたのと同じじゃねぇか。

 

 

「ニッヒヒ。紫と黄の【重装甲】。これでヒカリちゃんのデッキのカード達は、ミツキちゃんのスピリットを倒し辛くなる」

「嬉しそうだねウィンド。お気に入りの鉄華ヒカリ君がピンチだと言うのに」

 

 

唐突に窮地となった私を見るや否や、観客席にいるウィンドは笑みを浮かべる。

 

そのことを隣にいるイスルギに触れられるが、ウィンドは何事もなかったかのようにスルーした。

 

 

「アタックステップ。ゼットで攻撃。効果でカウント+2。1コアブースト」

 

 

再びミツキのゼットが攻勢に回る。ガヴの色に対応した【重装甲】が与えられていることで、これをBPバトル以外で突破することは不可能。

 

唯一フィールドにいるヴァレンのBPではゼットを越えられない。つまり、ここで私が取れる選択肢は、実質ひとつだけだ。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華ヒカリ

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

そう。ライフで受けると言う選択だ。このターンもゼットの拳が、私のライフバリア1枚を粉砕した。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【ウルトラの絆 ウルトラマンゼット】LV2

【特空機3号キングジョー ストレイジカスタム[2]】LV2

【対怪獣特殊空挺機甲隊ストレイジ本部〈R〉】LV2

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

「どうした、もう1体でも来いよ」

「そうやって煽っても無駄。ブロッカーは大事」

 

 

マズイ。バーストや【重装甲】で、じわじわと私が劣勢になって行く。

 

余裕のあるフリをして、ミツキを煽るが、アイツにそんな小細工は通用しない。結局、ブロッカー、キングジョーを残してターンエンドを宣言された。

 

 

[ターン05]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ……」

 

 

クソ、どうする。

 

【重装甲】が厄介過ぎる。なんとかミツキの契約煌臨スピリットが出る前に決着をつけないと。

 

 

「いくら考えても無駄。バトスピで、ヒカリが私に勝つことはない」

「さっきから無駄無駄うるせぇぞ。今勝つための戦術を考えてんだよ」

 

 

と言っても、今は高BPゴリ押しくらいしか思いつかねぇ。コイツに賭けるか。

 

 

「アタックステップ。ヴァレンでアタック」

 

 

メインステップは思考のみで、プレイは何もせず。私はそのままアタックステップへ直行。やる気満々のヴァレンが銃を構えてくれた。

 

その瞬間、私は、手札にある1枚のカードへと視線を送り、引き抜く。

 

 

「フラッシュ【契約煌臨】を発揮。魂状態の契約ガヴを、ガヴ ブリザードソルベに」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ブリザードソルベ】LV2(3)BP10000

 

 

魂状態の契約ガヴが、凍てつく冷気纏う戦士、ブリザードソルベへと姿を変化させて復活。

 

 

「煌臨時効果。LV2か3の相手スピリット1体をデッキ下へ。この時、私のカウントを-2することで【重装甲】【超重装甲】以外で防げなくなる」

「だけどストレイジ本部が与えている効果は【重装甲】。その効果でも貫通できない」

 

 

登場早々。ブリザードソルベは凍てつくブレス攻撃をキングジョーへと放ち、凍らせるが、キングジョーは瞬時に氷を砕く。

 

コイツでも、【重装甲】の壁は越えられない。

 

 

「だけど、契約ガヴの効果は使える。私のカウントが-されたことで、1枚ドロー。さらにフラッシュ、契約ガヴの効果、手札1枚を破棄して、カウント+4」

「ヴァレンのアタックはキングジョーでブロック」

 

 

ヴァレンが銃口からチョコの弾丸を発泡するが、キングジョーには全く通じず、そのまま蹴り飛ばされ、呆気なく爆散してしまう。

 

 

「ブリザードソルベでアタック。【OC:8】のアタック時効果。ターンに一度、回復。BPも上がって18000だ」

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華ミツキ

 

 

ブリザードソルベの攻撃。赤い剣による剣撃が、ミツキのライフバリア1つを砕く。

 

 

「ブリザードソルベの二撃目」

「それもライフ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華ミツキ

 

 

高いBPと回復による連撃。ミツキのライフバリアはさらに砕け散り、私と同じ、残り3枚となる。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーガヴ ブリザードソルベ】LV2

バースト:【無】

カウント:【9】

 

 

【重装甲】に対抗する手段は貫通効果か、物量か、高BPで殴り続けるしかない。だから、この試合はブリザードソルベが肝だ。コイツさえ維持できれば、勝率は大きく変動する。

 

 

「食らいつくのに必死だね。でも、白属性相手に長期戦は不利だよ」

「喧しい。それくらいのセオリー知ってるわ。私をナメんな」

 

 

だが、私こと鉄華ヒカリは、直ぐに思い知ることとなる。

 

双子の妹、鉄華ミツキは、自分が思っている以上に、自分以上に、両親からバトルスピリッツの才能を受け継いでいると言うことを。

 

 

[ターン06]鉄華ミツキ

 

 

「メインステップ。別にヒカリのことはナメてない。寧ろ凄いと思ってる。私と違って、なんでも卒なく器用にこなせるから」

 

 

双子の姉妹の2人。その片割れ、妹のミツキの発言は、私達の脳裏に幼い頃の日々を想起させる。

 

 

「でも、闇バトルは勝たせない。ヒカリに、私の夢は邪魔させない」

「……!」

 

 

大人しく控えめな性格のミツキからは想像もつかないような、荒々しい殺気が噴き出す。

 

 

「アンタの夢、確か『誰もが仲良く、笑顔でバトスピができる世界』だったな。ぶっちゃけ、オマエが闇バトルに勝って叶える必要もねぇだろ。街に出てみろ、みんな笑顔でバトスピしてるじゃないか」

 

 

そう。そして、その世界へ導いたのは、私達の父さん、伝説の英雄、鉄華オーカミだ。どう考えても、闇バトルに優勝してまで叶える願いじゃない。

 

ただ、ミツキが見ているのは、他の者ではなくて。

 

 

「本当は他の人なんて知らない。私が見てるのは、ヒカリだけだよ」

「私?」

「ヒカリとまた楽しくバトスピするために、私は戦ってるんだ」

「ッ……!?」

 

 

ミツキは突然、抱いていた激しい感情を吐露する。

 

私は言っている意味を理解できず、困惑した。当然だ。リアクションもしづらい。

 

 

「私達が誘拐された、あの日の夜、ヒカリは変わった。バトスピを怖がって、遠ざけるようになった」

「私がバトスピを怖がる?…何言ってんだよ」

 

 

ますます言っている意味がわからねぇ。「あの日の夜」って言うのは、昨夜夢でも見た、あの時のことだと思うが。

 

 

「わからないなら教えてあげる。ヒカリがバトスピをやめた、本当の理由」

 

 

刹那。ミツキは、己の纏う荒々しい殺気をカードに乗せ、バトルを続行する。

 

 

「アタックステップ。ゼットで攻撃。その効果でカウント+2、1コアブースト」

 

 

三度目となるゼットの攻撃。その効果により、ミツキのカウントは遂に6に到達。

 

このカウント6と言う数値は、一般的な契約スピリットデッキだと、いつ強力な契約煌臨スピリットが呼び出されてもおかしくない値だ。

 

 

「フラッシュ、契約ガヴの効果。手札1枚を犠牲にしてカウント+4。その後カウントを-1して、1枚ドロー」

 

 

それなら、今のうちにできることをやって置こうと考え、私は契約ガヴの効果でカウントの増加とドローを行う。

 

 

「【契約煌臨】を発揮」

 

 

予想通り、ミツキは【契約煌臨】を発揮。

 

その瞬間。契約スピリット、ゼットは光輝く黄金の嵐に身を包まれる。

 

 

「闇を飲み込め、黄金の嵐。ウルトラマンゼット デルタライズクロー、LV2で契約煌臨……!!」

 

 

ー【ウルトラマンゼット デルタライズクロー[4]】LV2(3)BP16000

 

 

黄金の嵐を気迫で吹き飛ばし、ゼットは進化した姿をお披露目。

 

銀を基調としたボディに、赤、青、金の派手なカラーリングが随所に埋め込まれた、コスト8の大型スピリット、デルタライズクローだ。

 

その風格と、呼び出す際に口上を述べたことから、私はこれこそが、今のミツキのエースカードであると悟る。

 

だが、それだけでは終わらなかった。

 

 

「ゼットが【契約煌臨】した時、このカードは手札、トラッシュから1コストで召喚できる。来て、紫ブレイヴ、幻界魔剣ベリアロク。デルタライズクローに直接合体」

 

 

ー【ウルトラマンゼット デルタライズクロー[4]+ 幻界魔剣ベリアロク〈R〉 】LV2(3)BP22000

 

 

何もない空間から突如開いた次元の裂け目。そこからデルタライズクローが手を伸ばし、掴み取ったのは、黒き刃、幻界魔剣ベリアロク。

 

その剣の最も特徴的な外見は………

 

 

「な、アレは……」

 

 

私はデルタライズクローが掲げた黒き刃を見るなり、身体中が小刻みに震え出した。

 

自分でも理屈がわからない。だが、その黒き刃には見覚えがある。

 

 

「ベリアロクについてる顔。覚えてるよね。あの夜、私達を救ってくれた人が操っていた、あの黒い巨人のスピリットにそっくりなの」

「……」

 

 

ミツキが私に告げた。

 

そうだ。私も黒い剣に付いている魔人の顔を覚えている。あの日の夜、私とミツキはこれに命を救われた。

 

ミツキにとっては、強いカードバトラーを目指すキッカケとなった、言うなれば憧れの対象。だけど、私にとっては。

 

 

「う、あ。ぁぁぁぁぁあ!!?!」

 

 

小刻みな身体の震えが恐怖から来るものだと理解した途端、私は声が抑えられなくなった。

 

いつも強気な自分からは到底考えられないほどに、その声色は情けないもので。

 

 

「無意識だったんだろうね。ヒカリは周囲にはバトスピが嫌いになったって言って、ずっと誤魔化して来たけど。本当は違う」

「……う、あぁ」

「ヒカリがバトスピを遠ざけて来た本当の理由は、いつかトラウマのこの黒い巨人のスピリットに再会するかもしれないから。ヒカリはあの日の夜、私達を誘拐した犯人よりも、助けてくれた黒い巨人のスピリットに恐怖を抱いていた」

「ぁぁぁぁぁあ!!?!」

 

 

私の幼き日の頃の記憶が蘇る。ミツキの言う通り、あの日の夜に見た黒い巨人に恐怖を抱いていた。自分達の命を助けてくれたカードバトラーのスピリットだと言うにもかかわらずだ。

 

だから逃げた。バトルスピリッツを避け続けて来た。しかし、知らない間にそんなことさえ忘れ去り、今、こうしてトラウマを爆発させる結果になってしまった。

 

目の瞳孔が定まらない程のパニック状態に陥ってしまった。もうバトルどころじゃない。私はどうすればいい。誰か、助けてくれ。




次回、第4話「目覚めよオーバー」


******

《キャラクタープロフィール》

【鉄華ミツキ】
性別:女
年齢:14
身長:164cm
髪:黄みがかった長い白髪
誕生日:11月11日
使用デッキ:【ウルトラマンゼット】
概要:ヒカリの双子の妹。ヒカリとは違い、クールな性格でバトスピが好き。14歳ながらプロにまで上り詰めている。ただしバトスピ以外の才能はなく、実はかなりポンコツ。
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