前回、私こと鉄華ヒカリは、闇バトルで双子の妹、鉄華ミツキと激戦を繰り広げた結果、その翌朝に突然倒れて病院行きとなった。
診察の結果は疲労困憊によるただの貧血。今日の夕方には帰れるみたいだ。
今宵の闇バトルには間に合いそうで一安心している。
「ブレイドラでアターック!!」
「ライフで受ける」
ところで今、その病院の中にある病室でだ。私は、1人の小さな女の子とバトスピをしていた。
その子のアタック宣言に対し、私はベッドの上に置いた、最後のライフのコアをリザーブに移動させる。私の負けだ。
「わぁい!!…あたしのかち!!」
「負けたぜ。強いんだな、キコは」
この藍色の髪の5、6歳くらいの女の子の名前はキコ。入院着を着用しているから、おそらく病弱で、入院生活が結構長いことが伺える。
「ヒカリちゃんホンキだしてた?」
「もちろんだ」
私はキコに屈託のない笑顔を向けながら、そう告げたが、本当はウソ。全力で手抜きした。ちびっ子とやるなら、普通は誰でもそうするよな。
「ね、もう1回やろ?…ねぇいいでしょ〜」
私の袖を引っ張りながら駄々をこねて来るキコ。可愛い。
「あぁいいぜ。次は負けねぇ」
いくら嫌いなバトルスピリッツであろうとも、私にはそれを断る理由がない。
今一度デッキを握り、シャッフルする。ガヴには悪いが、この試合もわざと負けるつもりだ。
「今日はラッキーだな、しあわせだな〜。あこがれのミツキちゃんに会えたし、ミツキちゃんのいもーとのヒカリちゃんにもあそんでもらえるし」
「……」
小さい手で一生懸命カードをシャッフルしながら、キコがそう言った。
可愛いけど、私のことを「ミツキちゃんのいもーと」と言ったのは見過ごせねぇな。
「キコ。私はミツキの妹じゃなくて姉だ。アイツが妹、私がお姉ちゃん。OK?」
そうだ。私は姉だ。お姉ちゃんだ。
これは天地がひっくり返っても覆らない事実。
断じて、あのポンコツミツキの妹などではない。
「えぇ見えなーい」
「……」
キコの子供らしいドが付く程の直球な感想に少しショックを受ける。
ミツキの方が身長が高いから、しゃーないと言えばしゃーない。
いや、しゃーなくねぇ。もっと伸びろ、私の身長。クソチビの親父の遺伝に負けんな。なんで同じ遺伝子が刻まれた妹の方が打ち勝ってんだよ。
「キコは病院生活長いのか?」
身長とか姉妹とか、そう言う話題から変えよう。そう思い、私は咄嗟にキコ自身のことを訊いた。
正直踏み込み過ぎたかと思ったが、キコは私に不変の笑顔を向けながら答えてくれる。
「ながーい。キコね、もう1年くらいここにいるの」
「そっか。本当は幼稚園とか行きてぇよな」
病院生活は長いみたいだ。なんの病かはわからないけど、辛いだろうな。本当はもっと外で友達と伸び伸び遊びたいだろうに。
「でも今日は大丈夫!!…だってヒカリちゃんがいるもん!!…じゃあ次はヒカリちゃんのセンコーね」
「っしゃぁ、やるか」
とやかくしているうちに、キコはバトルの準備を整えていた。手品の如く、私も一瞬で準備を終わらせる。
クソチビの遺伝子には負けんなとは言ったが、このバトルももちろんわざと負けるつもりだ。
「キコ」
「パパ!!」
「パパ?」
突然聞こえて来た声を聞くなり、私にもカードにも目を向けなくなったキコ。その視線の先へ目を向けると、そこにはスーツを着用した、茶髪で清潔感満載のおっさん。
どうやらキコの親父さんらしい。
「すまないキコ。約束の時間に間に合わなくて」
おじさんが、自身の胸元に飛び込んで来たキコを抱っこしながら言った。遅れた理由は、仕事の都合か何かか?
「いいの、さびしかったけど、今日、あこがれのミツキちゃんに会えたから!!」
「ミツキ、まさかプロの鉄華ミツキのことか!?…会ったのか?」
「うん!!…それにね、ミツキちゃんのいもーとのヒカリちゃんにあそんでもらえたんだよ!!」
「ヒカリ?」
余程楽しかったのか、キコは今日あった出来事を、早速父親に報告。
野暮だし、また私のことを「ミツキのいもーと」と呼んだのは触れないであげておこう。
「ヒカリ。鉄華ミツキの妹と言うことは、まさか、鉄華ヒカリ」
「どもっす。因みに、私が姉で、ミツキの奴が妹だから、そこんとこよろしく」
悪りぃ、やっぱり触れさせてくれ。これでも私、お姉ちゃんだから。
子供ならともかく、大人なら、私の言ってること信じてくれるだろ。
「き、君は」
「あぁ?」
「……」
なんだこのおっさん。急に睨みつけて来やがって。私に喧嘩でも売ってんのか?
「キコ。すまないがもう少し待っていてくれないか。パパはこのお姉さんと話がある」
「……?」
キコの親父さんの言動の意味は不明だが、険悪なムードになっているのだけはよくわかる。
初見のはず、なんだけどな。
「パパ。ヒカリちゃん、わるい人じゃないよ」
子供ながらにこの悪い空気を察してくれたのか、キコが私を庇ってくれた。嬉しい。
「私なら大丈夫だぜキコ。リンゴでも食って待ってな」
「……うん」
そう言いながら、私はミツキが剥いてくれたでこぼこのリンゴをキコに手渡すと、キコの親父さんと共にこの病室を後にする。
******
もう間もなく始まる夜を警告するかのように輝くオレンジ色の光。それに照らされながら、私とキコの親父さんは、病院の屋上で顔を見合わせていた。
「で、おっさん。話ってなんだよ」
「……」
タメが長ぇ。こちとら暇じゃねぇんだ。さっさと答えろよ。
私がそう思った矢先、キコの親父さんが口を開く。
「君は、何をしに病院へ来た。ただの偵察か?…それとも大事な娘を人質に取りに来たのか!?」
「あ?」
「答えろ!!」
な、なんだこのおっさん。急にブチ切れて。
娘を人質?
まさかキコ、結構有名どころのお嬢さんなのか?
いや、それはねぇか。そんな奴が病気して一般の医療施設なんか行くわけねぇし。
「いきなり意味のわかんねぇこと言うな。私はただ貧血で運ばれただけのパンピーだっての。キコとは、偶然同じ病室になっただけだ」
「惚けるな。キコを人質にすることで、次の闇バトルの対戦者である、この私とのバトルで優位に立とうという魂胆だろ」
「や、闇バトル!?」
知らないおっさんの口から聞こえてきた、聞き慣れたフレーズに戸惑う。
まさか、この冴えないおっさんも、闇バトルの参加者?
「アンタも闇バトルに。待てよ、じゃあなんで私とアンタが今日の夜、闇バトルで対戦するってわかんだ!!」
そうだ。私は今まで、試合直前まで対戦相手がわからなかった。このおっさんがそんなことわかるわけがない。
「……闇バトルの対戦カードの見方を知らないのか?」
「対戦カードの、見方?」
「闇バトル参加者のBパッドは、既に闇バトル運営スタッフによってハッキングされている。君のBパッドにも、闇バトルのルール確認や、対戦表を見ることが可能なアプリが強制ダウンロードされているはずだが」
私はすぐさま、端末、Bパッドをつける。
ここ最近は、主に闇バトルのせいで、バトルモード時以外は全く使っていなかった。普通に使うのは、大体4日ぶりくらいか。
「……」
画面がめっっちゃ暗い。
インスタのアプリが消し飛んでる代わりに「闇」って書かれた謎アプリがインストールされてる。
明らかにハッキングだな。やばいだろコレ。ライン超え過ぎじゃね?
「君、本当に知らなかったの?」
「……」
闇バトル運営スタッフによる行き過ぎた行動に、私は絶句。
しかし、色々と大事なデータは飛んだみたいだが、それと同時にキコの親父さんの猜疑心もどこかへ行ってくれたようで。
「……悪かった。どうやら君は、本当に娘と遊んでくれていただけだったんだね」
「だから、最初からそう言ってるだろ」
よかった。キコの親父さん。ようやくまともに話を聞く気になってくれたみたいだ。
つか、ぶっ飛んだデータどうしよう。今日の夜、ウィンドをしばき回して修理させるか。
「なら、話すことはもうないな。今日の夜は、お互いの願いのため、正々堂々と戦おう」
「……」
「約束、してくれるかな」
「あ、あぁ」
キコの親父さんの眼差しは鋭く、真剣だった。闇バトルに対しての強い意気込みが伝わって来る。
そんなに叶えたい願いがあるのか?
「ありがとう。ではまた今宵、アンダーグラウンドスタジアムで会おう」
「……」
私にそう告げて来たキコの親父さんは、身体を屋上の出入り口へと向ける。
「パパ!!」
「キコ!?」
「ゴホッ、ゴホッ。ヒカリちゃんをいじめちゃダメ!!」
屋上の扉を勢いよく開け、キコが飛び出して来た。私のことが心配でついて来てくれたらしい。優しいな。
咳き込んでるけど、大丈夫か?
「ごめんよキコ。パパが悪かった。パパの勘違いだったんだよ」
「ゴホッ。ホント?」
「本当さ。もうヒカリさんを疑ったりはしない。さ、病室に戻ろう。今日はとことんバトスピしてあげるぞ」
父親らしい笑顔を見せたキコの親父さん。キコを肩車すると、屋上の扉へと歩いて行く。
「わぁい!!…ありがとパパ!!…あ、ヒカリちゃん」
「どうした?」
肩車によって、今だけは私より上背となったキコが話しかけて来た。
「ゴホッ。今日あそんでくれたオレイ」
「お、サンキュー」
そう言って、咳き込みながらも、私に1枚のバトスピカードを手渡してくれた。
そのカードは、ガヴ。
いや、白紙のカードにガヴのイラストをクレヨンで描いてくれただけの、ただのラクガキだ。そのクオリティはキコの年齢相応だが、私にとっては、これ以上に貰って嬉しいものはなかった。
「またあそぼうね。ぜったいだよ」
「あぁ」
「ぜったいのぜったいの、ぜったいだよ」
「約束するぜ」
約束を結んだ直後、私は受け取ったカードを、着用しているジャケットのポケットに入っているデッキへと差し込んだ。
******
時刻は深夜0時を回った。
その瞬間に、私は今日も今日とて、アンダーグラウンドスタジアムの更衣室へと強制転送。
そこにはまた、黒ローブを羽織った、闇バトル運営スタッフ、ウィンドが待ち構えていて。
「ボンジュール、ヒカリちゃん」
「……」
「昨日のバトル、凄かったわ!!…オーバーガヴ、今後の貴女のバトルでも切り札になってくれそうじゃない?」
「テメェ。私のインスタのアカウントどこにやった?」
闇バトルの運営スタッフが、参加者のBパッドをハッキングしていると言う話を耳にしていた私は、開口一番でウィンドにそのことを訊いた。
「インスタ?…なんのこと」
「惚けんじゃねぇ!!…テメェらが闇バトル用の変なアプリ入れたせいでBパッドがおかしくなってんだよ!!」
「今さら気がついたのね」
「私のインスタのフォロワー何人いると思ってんだ!!」
私の怒りを抑えようと、ウィンドが「まぁまぁ」と宥めるように掌を前に出す。
「いいじゃない別に。闇バトルに勝てば、ヒカリちゃんのバトルスピリッツを消すと言う願いが叶うんだから」
「闇バトルが終わったら、ちゃんと元に戻るんだろうな!?」
「そこは技術部に訊いてみないと」
「闇バトルの運営スタッフ、オマエしか見たことねぇぞ」
「意外と人数いるのよ」
飄々としていて、掴みどころのないウィンドの相手は疲れる。
私は彼女の相手を止め、その場で闇バトルの準備を始めた。バトルスーツに着替えるため、先ずは上着を脱ぎ捨てる。
「あら。今日は私に出て行けって言わないのね」
「うるせぇ。テメェに使うだけの元気が残ってねぇんだよ」
それは流石にウソ。本当の理由は、今宵の対戦者、キコの親父さんを待たせては悪いと考えたからだ。
「ニッヒヒ。そのお陰で、私はヒカリちゃんの生着替えを堪能できるわけね」
「おっさんか。やっぱ出て行け、キモいんだよ!!」
「いやん反抗期〜」
いや、やっぱり本当ってことにしとこう。このおばさんのウザ絡み、マジダリィ。無駄に疲れるんだよな。
******
少しだけ時間が流れた。
もはやお馴染みとなった白いぴっちりサイズのバトルスーツと、黒いニット帽を着用した私は、アンダーグラウンドスタジアムのバトル場へと足を踏み入れる。
その先には、同じ服を着用した、キコの親父さん。
「ヒカリさん。昼間はキコと遊んでくれてありがとう」
「いや別に、成り行きつーか」
「名乗っていなかったね。私は佐々木タダツネ。見ての通り、ただの一般的な、パパだ」
キコの親父さん、タダツネの変な自己紹介にはツッコまず、私はBパッドを展開し、それを左腕に装着する。
「で、その一般的なパパさんが、なんでこんな怪しげな大会に参加してんだ?」
装着したBパッドにデッキを装填したのち、私はタダツネに訊いた。
すると、途端にタダツネは神妙な面持ちになり。
「全てはキコのためだ」
「え、キコ?」
「キコの病を治すために、私は闇バトルに参加している」
「な!?」
「さぁ、始めようか」
「あ、いや、ちょっ」
……ゲートオープン、界放!!
Bパッドを左腕に装着したタダツネのコールにより、今宵の闇バトルが幕を開ける。
先攻はタダツネ。困惑する私をよそに、ターンシークエンスを進めて行く。
[ターン01]佐々木タダツネ
「メインステップ。ネクサス、ダブルチェイサーを配置」
ー【ダブルチェイサー】LV1
タダツネのそばに、緑のサイドカー付きの赤い大型バイクが配備される。
このネクサスのシンボルは赤と緑の2つ。私と同じ2色デッキか。
「ターンエンド。さぁ約束通り、正々堂々の真剣勝負だ。本気で来てくれ」
手札:4
場:【ダブルチェイサー】LV1
バースト:【無】
タダツネは、Aカードらしきカードは出さないまま、ターンを終了。
早々に私のターンが開始する。
[ターン02]鉄華ヒカリ
「メインステップ。来い、契約ガヴ」
ー【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1(1)BP2000
初手はいつも通り。契約ライダースピリット、私のAカードにして相棒、ガヴだ。今日も頼りにしてるぜ。
「それが君のAカードか」
「アタックステップ。契約ガヴでアタック。このフラッシュで手札1枚を破棄。カウント+4。その後カウント-1。もう1つの効果。アタックステップ中に私のカウントが減った時、1枚ドロー」
色々やったが、要するに手札1枚を犠牲にすることで、1ドローとカウント+3だ。
後攻の初手なら、この行動が一番強い。
「アタックはライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉佐々木タダツネ
ジューシーなグミで覆われた契約ガヴの拳が、タダツネのライフバリア1枚を砕く。
「ターンエンド」
手札:4
場:【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1
バースト:【無】
カウント:【3】
先制点を貰ったところで、私はターンエンドを宣言。タダツネのターンに移行される。
[ターン03]佐々木タダツネ
「メインステップ」
「おい、キコの病を治すためって、アイツそんなに身体弱ってんのかよ」
タダツネが手札から1枚のカードを引き抜き、今にもBパッドへと叩きつけようとした瞬間、私は彼に訊いた。
「弱っているもなにも、いつ死んでもおかしくない状況だ」
「!?」
「Aカード、契約スピリット、虎徹&バーナビー、LV2で召喚」
ー【鏑木・T・虎徹&バーナビー・ブルックス Jr.】LV2(3)BP6000
怒り籠った返答の直後、タダツネのフィールドに、タダツネに似た、日本人らしき茶髪の男性と、メガネを掛けたアメリカ人みたいな金髪の青年が姿を見せる。
「いつ死んでもって、あんなに元気だったのにか!?」
「苦しそうに咳き込んでいた、あの子を見ただろう?」
「……」
「本来は決して治らない病気ではない。が、それを患うには、キコはまだ幼過ぎたんだ。【契約煌臨】を発揮。バーナビーをBARNABY BROOKS Jr.に契約煌臨」
ー【BARNABY BROOKS Jr.[3]】LV2(3)BP6000
メガネを掛けた金髪の青年が淡い赤の光を纏い、ライダースピリットにも似た、赤い装甲纏う戦士に契約煌臨。
日本人の方がフィールドに残ったままなのはどう言うことだ?
「煌臨時効果で2枚ドロー。さらにネクサス、ダブルチェイサーの効果。私が契約煌臨した時、スピリットに1コアブーストする」
2ドローとコアブースト。赤と緑の混色デッキの強味が出て来たな。
「アタックステップ。BARNABYでアタック。契約煌臨元のカード効果により、BP+5000」
アタックして来た。BPが高いだけなら、まだいいんだけど。
「アタック時効果。シンボル1つのスピリットかネクサスを破壊できる。契約ガヴは破壊させていただく」
やっぱりそれだけじゃ終わらなかった。BARNABYの強烈な上段蹴りが、契約ガヴに直撃。爆散させられてしまう。
「契約ガヴは魂状態で残す」
瞬間。破壊された契約ガヴが、色素を失った状態で私のそばに帰還する。
「BARNABYのさらなる効果。私の手札にある『WILD TIGER』1枚を、このスピリットの隣にソウルコア無しで【契約煌臨】できる」
「隣?」
バトルスピリッツで、もっと言えばカードゲームであまり聞かない「隣」と言う単語に、私は首を傾げる。
「なんだよ隣って」
「いるじゃないか。BARNABYの隣に、相棒となるもう1人の契約スピリットが」
「!!」
まさか、フィールドに残っている日本人の方か?
そう思い、視線をそこへ向けた途端。それは淡い緑色の光に包まれていて。
「契約煌臨。WILD TIGER」
ー【WILD TIGER】LV1(1)BP5000
今度は緑色の装甲纏う戦士。明らかに緑属性だ。
「煌臨時効果で2コアブースト。LV2にアップ。さらに、君のトラッシュのカード2枚をゲームから除外。ネクサス、ダブルチェイサーで、さらに1コアブースト」
つまり3コアブーストか。
さっきの赤い方と合わせて2ドロー4コアブースト。二度目のターンの動きじゃねぇぞ。
いや、そんなことよりも。
「なんで、1枚のカードに2枚の契約煌臨スピリットが乗れるんだ!?」
そうだ。契約煌臨は煌臨。
煌臨はスピリットカードに重ねないといけない。だから、1枚のカードで2枚の契約煌臨スピリットを出すなんて不可能なはずだ。
「私のAカードは、他と比べて少しだけ特別だ。このカードは左右に1枚ずつ契約煌臨スピリットを重ねることができる」
「左右に契約煌臨!?」
わけわかんねぇ。なんでもありかよ。
「インチキ効果だろそれ」
「インチキ効果を使ってでも、キコのため、私は勝たねばならないのだ。BARNABYのアタックは続いているよ」
「……ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華ヒカリ
「ぐっ」
BARNABYによる、さっきとは逆足を使った上段蹴り。
重たい一撃だった。私のライフバリア1枚は鈍い音を立てながら砕け散る。
「ターンエンド」
手札:5
場:【WILD TIGER】LV2
【BARNABY BROOKS Jr.[3]】LV2
【ダブルチェイサー】LV1
バースト:【無】
緑の方、WILD TIGERをブロッカーとして残して、タダツネはそのターンをエンド。
私にターンが回って来る。
「クソ、ふざけた効果しやがって。上等だ。2体に契約煌臨できるっつーなら、2体とも叩き潰してやるぜ」
バトスピは嫌いだが、今のターンで火がついた。私はやり返すべく、回って来たターンを進めて行く。
だが。
[ターン04]鉄華ヒカリ
「ドローステップ……ッ」
私がドローしたのは、キコがくれた、クレヨンで描いてくれたガヴのカード。
嬉しさのあまりデッキに差し込んでいたのを忘れてた。当然バトルでは使い物にならない。
「キコ……」
途端に頭の中を流れるのは、今日1日中遊んでいたキコとの思い出。短い時間だったけど、楽しかった。
「キコが、死ぬ?」
その瞬間。私の鼓動は弾けるように唸り始める。
そうだ。
私が勝てば、タダツネが優勝できなくなる。そうなったら、キコの病気が治らなくなって、死ぬ。
やめろ。余計なことは考えるな。バトルに集中しろ。
「……」
私は一旦深呼吸し、心と鼓動を落ち着かせると、手札から1枚のカードを引き抜いた。
「メインステップ。【契約煌臨】発揮。魂状態の契約ガヴを、ザクザクチップスに」
ー【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】LV1(1)BP7000
「煌臨時効果でデッキからヴァレン フラッペカスタムを手札へ」
魂状態の契約ガヴを元に、ポテトチップスの鎧と双剣を持つガヴ、ザクザクチップスフォームを契約煌臨させる。
「アタックステップ。ザクザクチップスでアタック。その効果でカウントを-1し、BARNABYのコアを2つリザーブに送る」
反撃開始だ。ザクザクチップスの二刀流から繰り出される斬撃が、BARNABYを襲う。
乗っていたコアは4つだったため、消滅はしない。だが、大事なのは、コアを2つ以下にすることだ。
「アタックステップ中にカウントが減ったことで、1枚ドロー。さらにフラッシュ。契約煌臨元の契約ガヴの効果。手札1枚を破棄することでカウント+4。その後カウントを-1して、コア2個以下のスピリット1体を破壊する」
「!」
「BARNABYを破壊」
ザクザクチップスの二度目の斬撃。十字を描くように繰り出されたそれは、今度こそBARNABYを切断。爆散へ追い込んだ。
「カウントが減ったことで、契約ガヴの効果、もう1枚ドローできる。その効果に合わせて、手札のヴァレン フラッペカスタムを提示。カウントが減った時、それが4以上なら、ノーコスト召喚できる」
ー【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV3(3)BP10000
ドローしつつ呼び出したのは、チョコフラッペを纏いし戦士。ライダースピリット、ヴァレン フラッペカスタム。
私のデッキも、だいぶ暖まって来たみたいだ。
「召喚時効果。相手スピリット2体のコア1つをリザーブに置き、その後相手スピリット1体のBPを-12000。0になった時、それをデッキ下に送る。WILD TIGERをぶっ潰せ」
氷塊纏うフラッペカスタムの拳が、タダツネの従えるWILD TIGERの顎にクリーンヒット。粒子化され、消滅した。
「煌臨先のいなくなった契約スピリット、虎徹&バーナビーは、魂状態で残します。フラッシュマジック、『NEXT能力「バリア」』を使用」
「!」
「このターン、私のライフは1つしか破壊できません。ザクザクチップスのアタックはライフで受けます」
〈ライフ4➡︎3〉佐々木タダツネ
ザクザクチップスの斬撃がタダツネのライフバリア1枚を斬り裂く。
だがその直後、彼の前方に、文字通り半透明のバリアが展開。このバリアを解くためには、私のこのターンをエンドにするしかない。
「ターンエンドだ」
手札:5
場:【仮面ライダーガヴ ザクザクチップスフォーム】LV1
【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV3
バースト:【無】
カウント:【5】
仕方がないから、私はここでターンエンドを宣言。相手スピリットの除去にドロー、防御マジックまで切らせたんだ。上々だろう。
[ターン05]佐々木タダツネ
「メインステップ。魂状態の契約スピリットを対象に、BARNABY BROOKS Jr.を契約煌臨させます」
ー【BARNABY BROOKS Jr.[2]】LV3(5)BP10000
「ネクサス、ダブルチェイサーの効果。スピリットに1コアブースト」
また金髪の青年だけが契約煌臨した。さっき同じ赤い戦士だけど、BPが違う。同じ名前だけど、種類が違うカードか?
「アタックステップ。BARNABYでアタック。効果で2枚ドロー。もう1つの効果で、このスピリットの隣に、WILD TIGERを契約煌臨」
ー【WILD TIGER[2]】LV3(5)BP12000
緑のおっさんの方も契約煌臨して来やがった。カードは違っても、やって来ることは変わらなさそうだな。
「ダブルチェイサーの効果で1コアブースト。さらにWILD TIGERの煌臨時効果。このスピリットの隣を契約煌臨」
「なに、三度目の契約煌臨だって!?」
しまった。カウントが増えないから油断してた。あるのか、Xレア級の強さを持つ切り札が。
「愛と世界を守るため、現れよ。WILD TIGER&BARNABY BROOKS Jr.!!」
ー【WILD TIGER&BARNABY BROOKS Jr.】LV3(6)BP23000
「ダブルチェイサーの効果で1コアブースト」
もう1体WILD TIGERが現れて、アタック中のBARNABYとタッグになった。
見た目に変化はないから、一見強そうには見えない。
「煌臨時効果。シンボル2つ以下のスピリット、フラッペカスタムを破壊」
「!」
瞬きしたほんの僅かな時間だった。私のフィールドにいたフラッペカスタムが、BARNABYに蹴り上げられ、上空でWILD TIGERの鉄拳を受けて爆散して行った。
さっきのは撤回。やっぱり恐ろしいほど強くなってやがる。
「契約煌臨をドリブルみたいに連鎖させて、強力なスピリットを呼び出せるのか」
「WILD TIGERとBARNABYは2人で1人。2人が組めば、誰にも負けることはない。WILD TIGER&BARNABYのもう1つの効果。このスピリットのアタック中。相手は効果でアタックステップを終了できず、フラッシュタイミング以外で手札のカードを使用できない」
私のライフバリアを粉砕しようと、WILD TIGERとBARNABYが迫り来る。
色々効果の説明をしてたけど、要するに、しっかりフラッシュタイミングでカードを使えってことだろ。それくらいなら。
「フラッシュマジック、仮面の魂」
「!」
「このターン、私のライフは1つしか減らない。さらにフラッシュ、契約ガヴの効果でカウント+4。アタックはライフで受けるぜ」
〈ライフ4➡︎3〉鉄華ヒカリ
どうってことねぇ。両サイドからWILD TIGERとBARNABYの攻撃を受けるも、仮面の魂でそのダメージを緩和。砕けるライフバリアの数を1に抑えた。
「バトル終了時。WILD TIGER&BARNABYは2コストを支払うことで回復。ターンエンドです」
手札:4
場:【WILD TIGER&BARNABY BROOKS Jr.】LV3
【WILD TIGER[2]】LV3
【ダブルチェイサー】LV1
バースト:【無】
回復もできんのかよ。仮面の魂がなかったら本格的にやばかったかもな。
[ターン06]鉄華ヒカリ
「ドローステップ」
来た。このターンのドローは、オーバーガヴのカード。ミツキとのバトルで進化した、最強のガヴだ。
コレさえ使えば、勝てる。
「メインステップ。ヴァレン チョコドンフォームを2体召喚」
ー【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1(1)BP2000
ー【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1(1)BP2000
「それぞれの召喚時効果を発揮。ブラム アラモードモードとヴァレン フラッペカスタムを手札に加える」
先ずは下準備。私は、ヴァレン フラッペカスタムの進化前のような存在、ヴァレン チョコドンフォームを2体呼び出す。
「ザクザクチップスの契約煌臨元にいる契約ガヴの効果。手札1枚を破棄してカウント+4」
今度はカウントの準備だ。今のプレイで合計13。オーバーガヴを使うには十分なカウント値に到達した。
「アタックステップ。ザクザクチップスでアタック。効果でカウント-1して、WILD TIGER&BARNABYから2つのコアをリザーブに。契約ガヴの効果でドロー」
ザクザクチップスが、双剣を握り、斬撃を飛ばす。それはWILD TIGER&BARNABYに直撃したが、LVが1つ下がっただけでほぼ無傷に終わる。
だけどそれでいい。倒せるかよりも、カウントを減らすことが大事だったからな。
「カウントが減ったことで、手札のフラッペカスタムの効果。ノーコスト召喚」
ー【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV1(1)BP6000
「召喚時効果。相手スピリットの2体からコアを1個ずつリザーブに置き、その後、1体のBPを-12000。0になったら、デッキ下に戻す」
「まずい。今のWILD TIGER&BARNABYのBPは、LVがダウンして12000」
「その通り。ちょうどピッタリ、ぶっ潰せるぜ」
私は、このバトルで2体目のフラッペカスタムを召喚。
そいつが拳に氷塊を纏い、WILD TIGER&BARNABYの2体をぶん殴って粒子化。倒して見せる。
「私のエースカードが、こんな簡単に。いや、だがまだ諦めたりはしない。キコのために。フラッシュ【契約煌臨】を発揮。このカードはソウルコア無しで契約煌臨が可能。WILD TIGERを別のWILD TIGERに契約煌臨」
ー【WILD TIGER[3]】LV2(5)BP13000
「ダブルチェイサーの効果で1コアブースト」
「またWILD TIGER!?」
何種類同じカード抱えてんだよ。いい加減よくわからなくなって来たぞ。
「煌臨時効果。相手スピリット1体を重疲労させる。この時、私のフィールドにある赤シンボル1つにつき、その対象を1つ増やす。今の赤シンボルの数は、ダブルチェイサーの1つ。よって2体、フラッペカスタムとチョコドンフォームを1体重疲労」
「!」
新たに契約煌臨されたWILD TIGER。それが気合を入れて雄叫びを上げると、何故か竜巻が吹き荒れ、その風が私のフィールドにいるフラッペカスタムとチョコドン1体に片膝をつかせ、重疲労状態へと追い込んだ。
「これで君のアタックできるスピリットは2体。それだけでは私のライフを全て砕けない。次のターンに未来が繋がった」
「……」
タダツネの奴、めっちゃ喜んでるな。リーサル逸らせたんだし、そらそうか。
だけど残念だったな。こっちにはオーバーガヴがある。これを使えばそもそも一撃。私の勝ちだ。
そして、キコの病気は、もう治らなくなる。
「ッ……!!」
その思考に至った途端。オーバーガヴのカードを引き抜こうとした私の手は止まった。
何考えてやがんだ馬鹿。昨日優勝してやるってミツキ相手に啖呵切ったばっかりだろうが。
「フ、フラッシュ」
「!!」
使え。オーバーガヴのカードを。
使え。右手でカードを引き抜き、左腕に装着されたBパッドへ叩きつけろ。それだけで勝てるんだ。
たった、それだけで。
それだけで、キコが死ぬ?
「無い」
「ヒカリさん?」
「だから、フラッシュはねぇっつってんだろ」
「……ザクザクチップスのアタックは、WILD TIGERでブロック」
結局、オーバーガヴを使えなかった。
タダツネは戸惑いながらもWILD TIGERでザクザクチップスのアタックをブロック。ザクザクチップスの双剣が、WILD TIGERの鉄拳に粉砕されたのち、顔面を殴られて爆散。
「契約ガヴは魂状態に。ターンエンドだ」
手札:6
場:【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1
【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1
【仮面ライダーヴァレン フラッペカスタム】LV1
【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】(魂状態)
バースト:【無】
カウント:【12】
私は自分が恥ずかしい。タダツネは、自分の娘のために、身を削る思いで闇バトルに打ち込んでいるのに。
何が「バトルスピリッツをこの世から消す」だ。ただのわがままなガキじゃねぇか。
[ターン07]佐々木タダツネ
「メインステップ。【契約煌臨】を発揮。WILD TIGERの隣に、BARNABY BROOKS Jr.を契約煌臨」
ー【BARNABY BROOKS Jr.[3]】LV3(4)BP8000
「煌臨時効果で2枚ドロー。ダブルチェイサーの効果で1コアブースト」
また赤い方、BARNABYが出て来た。懲りずにドローとコアブーストを行う。
「アタックステップ。BARNABYでアタック。効果でシンボル1つのチョコドンを破壊」
始まるタダツネの反撃。BARNABYの上段蹴りが、私のフィールドにいる唯一のブロッカー、チョコドンを粉砕。
「さらにWILD TIGERの効果。WILD TIGERとBARNABYが相手ライフを破壊した時、追加でもう1つ破壊する」
「……」
実質ダブルシンボル。それでリーサルってことか。やるじゃねぇか。
このタイミングでオーバーガヴを使えば、まだ勝てる。なんなら他のカードを使っても勝てる。
だけど。
「ライフで受けるぜ」
〈ライフ3➡︎2➡︎1〉鉄華ヒカリ
BARNABYの蹴りに合わせ、WILD TIGERの鉄拳が炸裂。2体の攻撃が、私のライフバリアを次々と破壊して行く。
「WILD TIGERでアタック」
宣言された、このターン二度目のアタック。WILD TIGERが、再度鉄拳を繰り出そうと、拳を構え直す。
これを通したら、私の負けだ。
「……ライフで受ける」
「ヒカリさん。貴女は」
でも防御カードは切らない。
私はこのバトル、勝つ資格がないから。
キコの命を救うために身体を張って闇バトルに参加しているタダツネを、たかが私のわがままな夢なんかで邪魔をしたらダメだ。
「……決めろ。WILD TIGER」
タダツネもなんとなく、途中から私が手を抜いていたのは察していたようだが、わかってくれたか、改めてWILD TIGERへ向けてトドメの宣言。
だが………
「!!」
タダツネのBパッドに着信が入ったことで、バトルがストップ。WILD TIGERの動きがピタリと止まる。
「ッ……主治医の先生。まさか」
着信をかけてきた人物が誰なのかを確認するなり、タダツネの顔色は青ざめる。
そして。恐る恐る、その着信に応じて。
「………キコ」
この時の私は、タダツネが誰と何を話していたのかはわからなかったが、この世の終わりを見ているような表情だったことから、ただならぬことが起こったことだけは察していた。
「すまない。私はこのバトル、サレンダーする」
「……は?」
何言ってんだ。
そう思った時には、既にBパッドのバトルモードは解除され、フィールドに残っていた全てのスピリット達が消滅して行った。
私のBパッドに「WIN」の文字が表記され、このバトルの勝者は不本意ながら私こと鉄華ヒカリで確定となる。
「おいタダツネ。なんで急にサレンダーなんて。もうちょっとで勝てたかもしれなかったのに」
慌てた様子でバトル場を飛び出そうとしていたタダツネを呼び止める。
「君こそ、何故本気を出さなかった。私は言ったはずだ。本気で来てくれと」
「そ、それは」
何も言い返せない。
向こうは確かに真剣勝負を望んでいた。それなのに私はこのバトルで手を抜き、負けようとした。カードバトラー以前に人間失格かもしれない。
でも仕方ねぇよ。だって勝ったらキコが死ぬんだぞ。どうしろって言うんだ。
「すまないが、私にはもう、こんな所で油を売っている時間はない。キコが」
「……キコに何かあったのか!?」
タダツネは私の言葉に耳を傾けることなく、このアンダーグラウンドスタジアムを飛び出して行った。
アイツの震えた唇と、そこから発せられた「キコ」の名前に、私は妙な胸騒ぎを覚える。
「まさか」
タダツネの「いつ死んでもおかしくない」と言う言葉を想起する。
妙な胸騒ぎとそれが重なった瞬間。私は最悪の予想を思いついてしまう。
「キコ!!」
私も慌ててバトル場を飛び出して行った。最悪の予想が当たらないことを信じて。
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自宅。今宵の闇バトルが終わったのも束の間、私は白いバトルスーツを着用したまま、自分の部屋を出て、走り出した。
「ヒカリ。どうだった?」
「……」
「ヒカリ?」
おそらく闇バトルの結果についてだろう。双子の妹、ミツキが私に声をかけて来たが、そんなこと今はどうでもいい。無視して家を出る。
******
「ハァッ……ハァッ!!」
暗闇の深夜。大粒の雨が、疲労した身体に容赦なく降り注ぐ中、私は残った気力を振り絞り、走っていた。
目的地は当然、病院。
「ハァ……ハァッ!!」
元々病み上がりなのもあって、身体はとっくに限界だ。今直ぐにでも足を止めて歩きたい。
だけど、頭の中にこびりついているキコの声と言葉が、それを許してはくれなかった。
やがて私は、傘で雨を凌ぎ、病院の入り口前で待ち構えていたタダツネと再会する。
「た、タダツネ。キコは、キコは無事なのか!?」
「……」
「どうなんだ、教えてくれ!!」
タダツネの高そうなスーツが濡れるのもお構いなしに、私は彼の胸ぐらを掴み、突き詰めた。
それ程必死だった。
「……」
悲壮感漂うタダツネの表情。この時全てを察した。
心の中で「そんなわけない、そんなわけない」と強く念じ続けたが、その願いは通じなくて。
「キコは、天国に旅立ったよ」
「……」
私は、決して忘れない。
人生の中で、最も「バトスピさえやっていなければ」と思った、この日のことを。
次回、第6話「Wの悪夢」
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