バトルスピリッツ 王者の鉄華2   作:バナナ 

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第9話「双子の決着」

 

 

 

遂に始まった闇バトル決勝戦。

 

勝ち上がった私とミツキによるバトルスピリッツが幕を開けた。

 

ウィンドの言葉を信じ、イスルギの野望を阻止するために戦う私。逆に徳川フウの言葉を信じず、私を守るために戦うミツキ。

 

どちらの選択が正しいのかは、まだわからない。その答えは、このバトルスピリッツの決着の先にあるのだから。

 

 

******

 

 

「メインステップは終わりだ。行くぜミツキ」

「来い、ヒカリ」

「ヴラムアラモードでアタック」

 

 

アンダーグラウンドスタジアムの頂上。見上げれば闇。見渡せば観客達の中、私とミツキはバトルスピリッツを繰り広げる。

 

銀の鎧を纏うライダースピリット、ヴラムアラモードが、ミツキのフィールドにいるキングジョーストレイジカスタムの頭上を飛び越え、その先から弓矢を放つ。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華ミツキ

 

 

放たれた矢が、ミツキのライフバリア1枚を射抜く。砕かれたライフバリアは、まるでガラス細工のように弾け飛んだ。

 

 

「痛い」

「だったらもうちと痛そうな顔しろよ。ターンエンド」

手札:6

場:【仮面ライダーヴラム アラモードモード】LV1

バースト:【無】

 

 

バーストと手札誘発の打ち合いから始まった、私達のバトルスピリッツ。

 

闇バトル参加者だけでなく、主催者のイスルギやウィンドが見守る中、ミツキの次のターンが始まる。

 

 

[ターン03]鉄華ミツキ

 

 

「メインステップ。先ずは創界神ネクサス、歴戦の勇者 ウルトラマンゼロを配置」

 

 

ー【歴戦の勇者 ウルトラマンゼロ】LV1

 

 

「創界神ネクサス!?」

「配置時の神託でコア+3」

 

 

ミツキの背後に、青いマントを翻す、赤と青の、ゼットではない別のウルトラマンが出現。

 

 

「さらに、お呼びください奴の名を。Aカード、ウルトラマンゼット、召喚」

 

 

ー【ウルトラの絆 ウルトラマンゼット】LV1(1)BP3000

 

 

ここでミツキは自分のAカードを投入。胸部に『Z』の文字が刻まれたウルトラマン、ゼットが力強く姿を見せる。

 

 

「キングジョーのLVを2に上げて、アタックステップ。ゼットで攻撃。効果でカウント+2。1コアブースト」

 

 

来た。ミツキのファーストアタック。

 

でも一度のアタックだと大したアドバンテージは取れない。まだ時間は………

 

 

「フラッシュ、創界神ゼロの【神技】を発揮」

「!」

「効果で攻撃中のゼットを回復」

「なに!?」

 

 

回復された。

 

つまりそれは、このターンだけで二度目のアタックを行えると言うこと。

 

それ即ち、二度もアタック時効果を行えると言うこと。

 

 

「一度目の攻撃は継続中」

「……ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華ヒカリ

 

 

向かって来たゼットの拳が、私のライフバリア1枚を貫いた。

 

完全に砕け散る前に、ゼットはもう一度その拳を構える。

 

 

「ゼット、二度目の攻撃。効果でカウント+2、1コアブースト。ゼットはLV2になる」

「それもライフだ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華ヒカリ

 

 

「ぐっ!?」

 

 

二度目の拳骨。私の2枚目のライフバリアが砕け散って行く。

 

ただ問題なのは、私のライフが減ることじゃない。ミツキのカウントが4まで進んだことだ。

 

カウントが進めば進むほど、それだけ強いスピリットを【契約煌臨】で呼べるようになる。

 

 

「ターンエンド」

手札:2

場:【ウルトラの絆 ウルトラマンゼット】LV2

【特空機3号キングジョーストレイジカスタム[2]】LV2

【歴戦の勇者 ウルトラマンゼロ】LV1(0)

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

ようやくミツキのターンが終わった。

 

ネクサスの除去を優先したのが少しだけ裏目に出た。こっちもさっさとカウントを貯めないと展開が間に合わなくなる。

 

 

[ターン04]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。こっちも創界神ネクサス、変身ガヴを配置」

 

 

ー【変身!! 仮面ライダーガヴ】LV1

 

 

「配置時の神託でコア+3。さらに私の相棒、Aカード、契約ガヴを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1(1)BP2000

 

 

前傾の姿勢で現れたのは、私の相棒、契約ライダースピリット。グレープグミの鎧を纏う契約ガヴ。

 

 

「これで互いのAカードが出揃ったな」

 

 

スタジアムの高台で見下ろすイスルギがそう呟いた。

 

 

「ミラージュとして、マジック『ガヴ』をセット。さらに契約ガヴの効果、手札にあるブルキャンバギーを破棄してカウント+4。破棄されたブルキャンバギーの効果でトラッシュからこれを配置」

 

 

ー【ブルキャンバギー】LV1

 

 

カウントを伸ばしつつ、キャンディで構成された車輪を持つ車両、ブルキャンバギーを配置する。

 

 

「これでカウントはイーブンだ。アタックステップ、ヴラムアラモードでアタック。効果でキングジョーのLVコストを+2にして消滅」

 

 

今度は私の攻撃だ。ヴラムアラモードが銀の盾をブーメランの要領で投擲。キングジョーを切断し、破壊する。

 

 

「これでブロッカーはいない。ライフは削らせてもらう」

 

 

ヴラムアラモードは舞い戻って来た盾を手に取るなり、すぐさまフィールドを駆け出す。

 

無論、ミツキのライフバリアを破壊するためだ。

 

だが。

 

 

「ヒカリは1つだけ忘れている」

「?」

「私のデッキは、防御に秀でた白属性だ」

 

 

すると、ミツキはフィールドで片膝をつくゼットへと指を刺して。

 

 

「ゼットのさらなる効果。私のカウント以下の特空機を1コストで召喚できる」

「なに、まだそんな効果を!?」

「私のカウントは4。よってコスト4の特空機、セブンガーをLV2で召喚」

 

 

ー【特空機1号セブンガー[2]】LV2(3)BP6000

 

 

私との1戦目では使わなかった、ゼットの効果がここで発揮。

 

ミツキのフィールドに、右手にドリルを装備した、愛らしい見た目のロボットが召喚された。

 

 

「不足コストはゼットをLV1にして確保する。セブンガーの召喚時効果。デッキから3枚オープン。その中の対象カード、デルタライズクローを手札に」

「デルタライズクロー!?」

 

 

デルタライズクロー。ゼットの強化形態だ。

 

それがミツキの手札に加わると言う情報を得た。私は、アイツの着地をなんとしても阻止しなければならなくなる。

 

 

「それだけじゃない。その後手札に加えたカード1枚のコスト以下の相手スピリット1体をデッキ下に戻す」

「!」

「加えたデルタライズクローのコストは8。同じコスト8のヴラムアラモードをデッキ下に落とす」

 

 

セブンガーのドリルを用いた突貫が、ヴラムアラモードの銀の盾ごと胴体を貫き、粒子化へと追い込む。

 

 

「ならこっちは変身ガヴの【神技】の効果。ゼットを消滅させる」

 

 

私がゼットに手をかざすと、その体内に宿るコアが弾け飛び、消滅。半透明の魂状態にまで追い込む。

 

 

「ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーガヴ ホッピングミフォーム[2]】LV1(1)BP7000

【変身!! 仮面ライダーガヴ】LV2(2)

バースト:【無】

ミラージュ:【ガヴ】

カウント:【4】

 

 

ライフは砕けなかったが、アドバンテージ量は追いついた。私はここでターンエンドを宣言し、ミツキにそれを譲る。

 

 

「ゼットにはまだあんな効果が。この前のヒカリちゃんとのバトルは本気ではなかったというの」

 

 

観客席で腰を下ろし、観戦している黒ローブを羽織った女性、ウィンドがそう呟いた。

 

 

「デルタライズクローの【契約煌臨】の条件はカウント5以上」

「……」

「言ってる意味わかるよなミツキ。今のオマエのカウントは4。契約も魂状態にした。これで次のターン、オマエはデルタライズクローを呼べないぜ」

 

 

視点はすぐさまバトル場へ戻る。

 

私は、今ミツキが置かれている状況を口頭で説明する。するとミツキは、やや呆れたような表情を見せて。

 

 

「だからゼットを優先して潰したんだ。でもねヒカリ。それ、意味ないよ」

「!」

 

 

そう告げると、ミツキは巡って来た己のターンを始める。

 

 

[ターン05]鉄華ミツキ

 

 

「メインステップ。特空機2号ウィンダムのカードをミラージュへセット」

 

 

このタイミングで、ミツキもミラージュをバーストゾーンへセット。

 

その効果は、私の作戦を容易く覆せるもので。

 

 

「ミラージュ効果。魂状態のゼットを1コストで再召喚する」

「!」

「戻れ、ゼット」

 

 

ー【ウルトラの絆 ウルトラマンゼット】LV2(3)BP8000

 

 

ゼットが、半透明の状態から色素を取り戻し、復活する。

 

しかも今の流れ、ミツキはソウルコアに手をつけていない。デルタライズクローを呼び出す布石が、完全に整ってしまった。

 

 

「アタックステップ。先ずはセブンガーの効果。自身を手札に戻す」

「ッ……自分から手札に帰りやがった」

 

 

セブンガーは自らを粒子化し、ミツキの手札へと戻る。ミツキは、またゼットの効果で呼び出せる受け札として使うつもりなのだろう。

 

 

「アタックステップ続行。ゼットで攻撃。効果でカウント+2。1コアブースト」

 

 

今の効果でミツキのカウントが6になった。

 

アイツが来る。

 

 

「フラッシュ【契約煌臨】を発揮。闇を呑み込め、黄金の嵐。ウルトラマンゼット デルタライズクロー」

 

 

ー【ウルトラマンゼット デルタライズクロー[4]】LV2(4)BP16000

 

 

口上通りの黄金の嵐を纏い、ゼットがデルタライズクローに進化。

 

そのパワーと効果が、また私を苦しめる。

 

 

「煌臨時効果。コア4個以下のスピリット、契約ガヴを破壊」

 

 

デルタライズクローは登場するなり、契約ガヴの懐へと高速移動すると、一瞬の内に何十発ものパンチをぶち込む。

 

私の契約ガヴはたちまち爆散し、魂状態となる。

 

 

「さらにトラッシュにある幻界魔剣ベリアロクの効果。ゼットが【契約煌臨】した時、トラッシュから1コストで出せる」

「!」

「アタック中のデルタライズクローに合体」

 

 

ー【ウルトラマンゼット デルタライズクロー[4]+幻界魔剣ベリアロク】LV2(4)BP22000

 

 

デルタライズクローは何もない空間へと手を伸ばす。

 

すると、その先から異次元の裂け目が現れ、そこから黒い巨人の顔が付いた短剣が、伸ばした手へと収まる。

 

 

「……」

「まだ怖い?」

「なわけ」

 

 

ベリアロク。あの剣に付いた顔は、私にとってのトラウマだ。既に克服はしてるが、未だに急に出て来られると冷や汗をかく。

 

だけど。

 

 

「寧ろ待ち望んでいたぜ」

「?」

「【契約煌臨】発揮。魂状態の契約ガヴを、ケーキングフォームへ」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ケーキングフォーム】LV1(1)BP5000

 

 

今度は私の【契約煌臨】が発揮。魂状態になっていた契約ガヴは、ケーキを纏う騎士の姿、ケーキングフォームとなって復活する。

 

 

「変身ガヴの【神域】で1ドロー。ミラージュ『ガヴ』の効果でカウント+1。そして、ケーキングの煌臨時効果。デルタライズクローのコアを2個リザーブに置く」

 

 

ケーキングは、剣の先からホイップを放出し、デルタライズクローを汚す。その際、体内に宿るコアが弾け飛び、4つから2つとなる。

 

 

「コアを取っても無駄。デルタライズクローのLV2の維持コストは2。LVに変化は」

「契約ガヴの効果。忘れてんぜ」

「!」

「手札1枚を破棄。カウント+4。その後カウントを-1にすることで、コア2個以下のスピリットを1体を破壊する。デルタライズクローをぶった斬れ」

 

 

ケーキングは剣に膨大なエネルギーを蓄積させ、剣先から放出。それを受けたデルタライズクローはたちまち爆散する。

 

 

「……ブレイヴのベリアロクも共にトラッシュへ送る。まさか、これも狙ってた?」

 

 

ミツキが、デルタライズクローとベリアロクのカードをトラッシュに送りながら訊いて来た。

 

 

「そのまさかだぜ。あの状況からデルタライズクローを呼ぶためには、別のカードとコアを浪費する必要があったからな」

 

 

ついでに創界神ゼロの神託で、トラッシュにベリアロクが落ちたのは確認していた。

 

あとはミツキの総コア数から使うコアを引き算すれば、除去範囲は自然と絞り出せる。

 

 

「へぇ。やっぱりいいねヒカリ。やればできるじゃん。それでこそ、私のライバルだ。ターンエンド」

手札:2

場:【歴戦の勇者 ウルトラマンゼロ】LV2(4)

【ウルトラの絆 ウルトラマンゼット】(魂状態)

バースト:【無】

ミラージュ:【特空機2号ウィンダム[2]】

カウント:【6】

 

 

できることがなくなったか。ミツキはここでターンエンドを宣言。

 

 

「別にオマエのライバルになった気はねぇ」

「そう言わないでよ。私はずっとそう言う存在を待ち侘びていたんだから」

「あ?」

「私は昔からカードの声が聞こえる。カードから、お父さんの武勇伝を聞いてたって言ったよね」

「あぁ」

 

 

なんか急に始まった自分語り。コイツ、意外とそう言う話するんだよな。

 

いや、相手が双子の姉の私だからこそするのか。

 

 

「その武勇伝には、お父さんと優劣を競ったライバル達の話がいくつも出て来た。いつかきっと、私にもそう言った存在が現れるんだと、心の底から信じていた」

「けど、現れなかった」

「……」

 

 

私の返答に、ミツキは、『図星』とでも言いたそうな表情を見せる。

 

 

「そう。プロの世界でさえも、私のライバルは現れてくれなかった。私はあまりにも強すぎたんだ」

「自分で言うか」

「でもヒカリがバトスピをやってくれた。同じ血を分けたヒカリなら、私と互角だ。互角のバトルは楽しい。心が躍る。それができるライバルと言う存在は尊い。ねぇヒカリ。これからもずっと、バトスピしてよ。だから徳川フウとは縁を切って」

 

 

めちゃくちゃな。なんて自分勝手な奴。

 

でもずっと、自分と同等の実力を持つカードバトラーを、アイツは待ち望んでいたんだ。私が、バトルスピリッツが存在しない世界を望んでいたように。

 

 

「それとこれの話に、ウィンドは関係ねぇ。これからもずっとバトスピをしたいなら、サレンダーするか、今ここで私に負けろよ」

 

 

私がミツキに告げた。

 

そうだ。私がこのバトルに勝って、イスルギにガヴのウィルスを注ぎ込まなければ、全人類は漏れなくカードにされる。

 

そうなったら、バトスピどころの騒ぎじゃなくなる。

 

 

「目を覚まして。ヒカリはアイツに騙されてる」

「その話はもう散々しただろ。真実を知るためには、どの道この決勝戦を終わらせるしかない。そしてもちろん私は、負けるつもりはない」

 

 

胸の奥を灯す熱い闘志をさらに燃やして、私は巡って来たターンを進めて行く。

 

 

[ターン06]鉄華ヒカリ

 

 

「メインステップ。ヴァレンを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でヴラムと仮面の魂を回収。そしてこのヴラムも召喚」

 

 

ー【仮面ライダーヴラム プリンカスタム】LV1(1)BP4000

 

 

ケーキングを中心に、チョコ板のライダー、ヴァレンと、とろけるプリンで変身するライダー、ヴラムが続々と登場して行く。

 

 

「ケーキングのLVを2に上げ、煌臨元の契約ガヴの効果、カウント+4。アタックステップ。ケーキングでアタック。効果でデッキ下から1枚ドロー」

 

 

ケーキングの効果によるドロー。そのドローにより、デッキ下に送られた「ヴラムアラモード」のカードが私の手札へ戻って来る。

 

 

「フラッシュ。魂状態のゼットの効果。手札からセブンガーをLV2で召喚」

 

 

ー【特空機1号セブンガー[2]】LV2(3)BP6000

 

 

前のターンに手札へ戻っていたセブンガーが、このタイミングでまたフィールドへと呼び出される。

 

 

「召喚時効果。デッキ上から3枚オープンし、その中の対象カードを手札に加え、内1枚のコスト以下の相手スピリットをデッキ下に置く。私が手札に加えるのは、コスト2、ウィンダム」

「コスト2……?」

 

 

妙だ。コスト2のカードを手札に加えても、私のスピリットは誰も倒せないはず。

 

 

「そして、共にオープンされた白のマジック、アルテミックシールドの効果。これも手札に加える」

「!」

「今加えたアルテミックシールドを使用。このバトルが終了した時、ヒカリのアタックステップは終了する」

 

 

その理由は直ぐに明らかになる。

 

オープンカード内に白の防御マジック「アルテミックシールド」のカードが見えたから、高いコストのカードを選ぶ必要がなくなったんだ。

 

そして、今の私の手札に、そのカードをどうにかする手段はない。

 

 

「それなら、フラッシュ【契約煌臨】を発揮。ケーキングをブリザードソルベに」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ ブリザードソルベフォーム】LV2(2)BP18000

 

 

ケーキングは凍てつく冷気を纏い、新たなる姿、ブリザードソルベへと進化を果たす。

 

 

「変身ガヴの【神域】でドロー。ミラージュの『ガヴ』の効果でカウント+1。ブリザードソルベの煌臨時効果。セブンガーはデッキ下に送らせてもらう」

「このターンでは勝てないと見て、除去に徹して来たか」

 

 

ブリザードソルベは、口内から冷気を放出し、ミツキのセブンガーを凍りつかせて粉々に粉砕する。

 

 

「さらにフラッシュ、ブリザードソルベの【OC:8】の効果。1ターンに一度だけ回復」

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華ミツキ

 

 

ブリザードソルベは赤い剣を振い、ミツキのライフバリアを1枚斬り裂く。

 

 

「この瞬間、アルテミックシールドの効果が適用され、ヒカリのターンは終わる」

「ターンエンド」

手札:4

場:【仮面ライダーガヴ ブリザードソルベフォーム】LV2

【仮面ライダーヴァレン チョコドンフォーム】LV1

【仮面ライダーヴラム プリンカスタム】LV1

【変身!! 仮面ライダーガヴ】LV2(5)

【ブルキャンバギー】LV1

バースト:【無】

ミラージュ:【ガヴ】

カウント:【13】

 

 

互いにカードと神経を擦り減らしながら激闘を繰り広げる私とミツキ。

 

それもようやく最終盤。ここからが正念場だ。私は、今から来るであろうミツキの本気を受け止めるべく、手札を強く握り締め、構える。

 

 

[ターン07]鉄華ミツキ

 

 

「メインステップ。ウィンダムを召喚」

 

 

ー【特空機2号ウィンダム[2]】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果。カウント+1。トラッシュに1コアブースト」

 

 

細長いフォルムのロボット。ウィンダムが、ミツキのフィールドに呼び出される。どうやらミラージュでセットされているカードと同じ物のようだ。

 

 

「負けない。私は勝つよヒカリ。必ず勝って、ヒカリの目を覚まさせる」

「それは、私のセリフだぜ」

「【契約煌臨】発揮」

 

 

ソウルコアをコストに、ミツキは新たなる【契約煌臨】の効果を発揮。

 

その瞬間、魂状態となっていたゼットが、黒い闇の瘴気、暗黒を己の身1つで受け止める。

 

 

「ウルトラマンゼット デスシウムライズクロー。LV2で契約煌臨……!!」

 

 

暗黒の力を纏い、ゼットは新たなる境地、デスシウムライズクローへと進化。その姿はさながら黒いデルタライズクローだ。

 

 

「カウント7以上が条件の契約煌臨スピリット!?…ミツキの奴、まだあんな切り札を」

「さらにトラッシュにあるベリアロクの効果。トラッシュから召喚し、デスシウムライズクローに合体」

 

 

ー【ウルトラマンゼット デスシウムライズクロー+幻界魔剣ベリアロク】LV2(7)BP18000

 

 

再び出現した異次元の裂け目より、ベリアロクが復活。デスシウムライズクローの手へと収まる。

 

 

「Aカード、ゼットが教えてくれた。このバトル、勝つのは私、鉄華ミツキだと」

「……」

「アタックステップ。デスシウムライズクローで攻撃」

 

 

満を持してデスシウムライズクローでアタックを仕掛けて来たミツキ。

 

その脅威的な効果も、その瞬間に発揮させて。

 

 

「デスシウムライズクローの効果。コスト合計15まで、相手スピリットをデッキ下に送る」

「!」

「対象はブリザードソルベ、ヴァレン、ヴラムの3体」

 

 

要するに、私のスピリット全てだ。

 

デスシウムライズクローは、手に持つベリアロクから闇の衝撃波を放ち、私の全てのスピリットを闇へと葬り去る。

 

 

「こうして戻したスピリットの合計コスト5につき、相手の手札1枚をランダムに破棄する」

「なに、ハンデス効果!?」

 

 

ここに来て、まさかの手札破壊効果。私の手に紫電が迸り、手札のカードが4枚中3枚、トラッシュへと叩き落とされる。

 

しかもその中には、誘発カードの「ヴラムアラモード」と、防御マジックの「仮面の魂」があって。

 

 

「ヴラムのコストは4、ヴァレンのコストは3。そしてブリザードソルベのコストは8。そのコストの合計は15。よってヒカリの手札は3枚破棄される」

「くっ」

「契約煌臨元のゼットの効果、カウント+2と1コアブースト。さらにベリアロクの効果。変身ガヴから全てのコアを取り除く」

 

 

次の対象は創界神ネクサス。デスシウムライズクローの手に握られているベリアロクの顔部の目が赤く輝くと、変身ガヴの上に乗っていたコアが全て消滅した。

 

これで【神技】も使えない。フィールドのスピリット0。残り手札1枚の私が、今打てる手は。

 

 

「フラッシュマジック、仮面の魂」

「ッ……2枚目」

「このターン、私のライフは1つしか減らない」

 

 

素引きで手札に加えていた、2枚目の仮面の魂をここで発揮。手札は0枚になってしまうものの、このターンはなんとか生き延びることができそうだ。

 

 

「だけど、今更延命しても、ヒカリに勝ち目はない。フラッシュ、デスシウムライズクローの【OC:8】の効果。1ターンに一度、回復し、相手のトラッシュのコア1つをボイドに置く」

「なに、コアをボイド!?」

 

 

私のトラッシュ置かれていたコアが1つ、完全に消滅。

 

これで次のターン、私は最低限の数のコアで戦わないと行けなくなる。ただでさえ手札がないこの状況だと、まさに泣きっ面に蜂だ。

 

 

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華ヒカリ

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 

デスシウムライズクローが、ベリアロクを振るうことによって発生する闇の衝撃波。仮面の魂の効果によって生み出された虹色のバリアが、それを受け止め、ダメージを緩和する。

 

 

「ターンエンド」

手札:1

場:【ウルトラマンゼット デスシウムライズクロー+幻界魔剣〈R〉】LV2

【特空機2号ウィンダム[2]】LV1

【歴戦の勇者ウルトラマンゼロ】LV2(7)

バースト:【無】

ミラージュ:【特空機2号ウィンダム〈R〉】

カウント:【9】

 

 

凄まじいパワーを持つデスシウムライズクローの攻撃によって、スピリットと手札とコアとライフを同時に持って行かれた。

 

ライフは互いに3とは言え、既にバトルの決着はついたと思われても、なんら不思議ではない状況だ。

 

 

「スピリット0。手札も0。完全に終わったね」

「……」

「サレンダーは認めない。私のライバルなら、ライフかデッキが尽きる、その瞬間まで、正々堂々と」

「なぁミツキ。カード兵士って知ってるか?」

「?」

 

 

私は、ミツキの言葉を遮りるように言葉を発し、訊いた。

 

 

「知ってるよ。カードに教えてもらった。たしかバトスピで代理戦争とかするためのカードバトラーでしょ。ほとんど奴隷や道具のような扱いを受けてるらしいね」

「……あぁ」

「なんで急にこんな話を?」

 

 

今度は逆に、ミツキが訊いて来た。

 

 

「私はずっと、バトスピなんて、ただつまんねぇだけの遊びだって思ってた。だけど、闇バトルを戦い抜く中で、自分の利益のためだけに、それを悪用して、他人を傷つけている連中が大勢いることを知ってしまった」

 

 

瞬間。私の脳裏には、キコと、あの子の命を奪った憎き男、ハバキリの顔が同時に浮かび上がる。

 

 

「知ってしまったら、もう後戻りはできねぇ。私はいつか必ず、この世に蔓延る全ての悪しきバトルスピリッツを根こそぎ滅ぼす。闇バトル優勝は、その記念すべき第一歩だ」

 

 

自分の進むべき道を語る私に、ミツキはまた苛立った様子で。

 

 

「御託はいらない。カードバトラーなら、口よりも、カードで示してよ」

 

 

そう告げて来た。それを耳にするなり、私は自然と笑みがこぼれ落ちる。

 

 

「あぁ。言われなくてもそうするさ。私とガヴは今日、オマエを超える」

 

 

Bパッドを伝って、ガヴのカードから「勝とう」と言う熱い想いが伝播して来た。

 

身体中の血が滾る。今の私とガヴなら、誰にも負ける気がしない。イスルギにも、もちろんミツキにも。

 

 

[ターン08]鉄華ヒカリ

 

 

「ドローステップ……!!」

 

 

勝利を胸に秘めた最後のドローステップ。Bパッドから引いたそのカードを目に映すなり、私は口角を上げる。

 

 

「メインステップ。【契約煌臨】発揮。魂状態の契約ガヴを、マスターガヴに」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ マスターモード」LV2(3)BP22000

 

 

静かなる青い力が、魂状態のガヴを包み込み、より刺々しく変化した姿、マスターガヴへと進化する。

 

 

「私も知らないガヴ?」

「あぁ。オーバーガヴとは違う、ガヴの新しい進化だ」

 

 

私がミツキに勝つならここしかない。

 

そう思い、アタックステップの開始を宣言しようたした直後、マスターガヴはそれを察したのか、クラウチングに近い姿勢を取り、咆哮を張り上げる。

 

 

「アタックステップ。マスターガヴでアタック。その効果、カウントを-1することで、このターン、マスターガヴのアタック中、相手は手札にあるマジック、アクセル、チェンジが使えない」

「!」

「さらにカウントが減ったことで、契約ガヴの効果。1枚ドロー」

 

 

私がマスターガヴの効果を説明した途端、ミツキは残り1枚の自分の手札へと目を向ける。

 

僅かに驚いたリアクションから、私はそのカードが防御マジック、おそらく、「白晶防壁〈R〉」だと察する。

 

 

「マスターガヴの【OC:12】の効果もここで発揮。ブロックされない」

 

 

駆け出したマスターガヴ。まるで跳弾のように、フィールドを縦横無尽に駆け巡る。

 

その凄まじい速度は、ゼット最強の姿、デスシウムライズクローを持ってしても捉えられない様子。

 

だが。

 

 

「敵のマジックとスピリットを封じ込め、確実に1点を捥ぎ取る効果。でも、オーバーガヴと比べて、パワーは落ちたみたいだね」

「……」

「シンボル1つじゃ、私の3つのライフは全て砕けない。次のターン、再びデスシウムライズクローの攻撃で、私の勝ちだ」

 

 

そう。

 

単体のマスターガヴは、敵のライフ1つを確実に破壊することのみに長けている。

 

これ1枚で、残り3つのライフを破壊することなど、到底不可能。

 

しかし。

 

 

「そう興奮すんなよ。確かにマスターガヴだけなら、オマエのライフは全て奪えない。マスターガヴだけなら、な」

「!?」

「見せてやるぜ。マスターガヴの真骨頂。マスターガヴがブロックされなかった、この瞬間、さらなる効果を発揮。マスターガヴを対象に、ソウルコア無しで【契約煌臨】を行う」

「ライフを破壊する直前に【契約煌臨】を行う効果!?」

 

 

刹那。私はアタックする際にドローした、正真正銘最後の1枚を、己のBパッド、マスターガヴのカードの上へと叩きつける。

 

 

「マスターガヴを、オーバーガヴに……!!」

 

 

ー【仮面ライダーガヴ オーバーモード】LV2(3)BP30000

 

 

デスシウムライズクローの背後を取り、ミツキの眼前へと接近したマスターガヴ。

 

拳をミツキのライフバリアへと向けた直後、もう片方の拳で腰部のベルトのスイッチを回転させ、その姿をオレンジの体と剛腕を持つ超パワー形態、オーバーガヴへと切り替える。

 

 

「オーバーガヴの【OC:12】の効果。自身をトリプルシンボルにする!!」

「そんな」

「これで終わりだ、ミツキ!!」

 

 

〈ライフ3➡︎0〉鉄華ミツキ

 

 

迎えた最後は突然。あっという間に。

 

マスターガヴに変わって突如姿を現したオーバーガヴの放った剛腕による一撃は、ミツキの残り3つのライフバリアを全て粉々に粉砕。

 

ミツキの勝利を掻っ攫い、逆に私にそれを齎してくれた。

 

 

「……」

 

 

フィールドに最後まで残った両者のスピリット、オーバーガヴとデスシウムライズクローは、何を思っているのか、互いに視線を送りながら、役目を終えたように粒子化し、消滅して行った。

 

その時私は、始まる前は罵声混じりだった歓声が、知らない間にほぼ純粋な歓声へと変化していたことに気がついた。

 

 

「私がヒカリに負けるなんて」

「ミツキ」

 

 

最後のオーバーガヴによる一撃は流石に応えたのか、痛みで片膝をついていたミツキ。だが、体の痛みよりも、敗北したショックの方が大きいみたいだ。

 

 

「腹立たしい。本当は越えるべき相手、ライバルができて嬉しいはずなのに。全てはアイツだ、フウのせいだ。アイツがヒカリをたぶらかすから」

「おい、まだそんなことを」

「優勝おめでとう」

「!!」

 

 

油断した。知らない間に背後を取られていた。

 

この闇バトルの大会主催者。鉄仮面の大男、イスルギに。

 

それに気がついた私は瞬時に距離を取る。

 

 

「ふふ。何をそんなに警戒しているんだい?」

「いや別に」

「優勝おめでとう、鉄華ヒカリ君。実にブラボーな試合だった。君は晴れてこの闇バトルの頂点、闇の王となり、願いを叶える権利を得た」

「……」

 

 

普通なら喜ばしいことだろう。なんて言ったって、なんでも好きな願いが叶えられるのだから。

 

だが、唯一真実を知っている私だけは違う。

 

 

「叶える願いは、まだ『バトルスピリッツの抹消』かな?」

「……」

「返答するまでもないかい。そう、君の願いはバトルスピリッツをこの世から消すこと。そのために大嫌いなバトルスピリッツを11回も行って来たのだ」

 

 

勝手に話を進めながら、少しずつ距離を縮めて来るイスルギ。鉄仮面で表情は見えないが、笑っているのだけはわかる。

 

 

「鉄華ヒカリ君。私が何故闇バトルの序盤から、君のことを気にかけていたかわかるかい?」

「は、知るかよ。私の顔が良いからか?」

 

 

冷や汗が出て来た。「大丈夫だ」「落ち着け」と、自分の心に念じ続ける。

 

 

「それはね。私も、似たような願いを持っていたからだよ」

「!」

「ヒカリ!!」

 

 

その時は突然訪れた。

 

イスルギは自分の身体を黒い瘴気のようなものに変化させ、私の中へと入って来た。

 

身体の中が抉られ、食われるような感覚に襲われる。

 

 

「ぐぁっ!?」

「ずっと待っていた。私の進化の力に耐え得る強靭な肉体を手にし、地上へと飛び出す、この時を」

「イ、イスルギ。オマエやっぱり」

「安心したまえヒカリ君。君の願いは成就される。私が、全ての人類をカード化することによって、バトルスピリッツは滅びを迎えるのだから」

「が、ガヴ」

 

 

ウィンドの告げていた真実は、全て本当だった。私のBパッドに収まっているガヴのカードが、紫色の強い光を放つ。

 

ウィンドの言葉通りなら、おそらく、ウィルスとしての役割が働いているんだろう。

 

しかし。

 

 

「おっと、それは使わせないよ」

「なに!?」

 

 

イスルギは、黒い瘴気を私のBパッドへと伸ばし、それに圧力を掛けて粉砕。ガヴのカード、デッキが地面に落ち、散らばる。

 

 

「マズイ。ヒカリちゃん……!!」

 

 

ウィンドの慌てた声が聞こえて来た。

 

カードを拾えばまだなんとかなるかもしれない。だが、そう思っても、肝心の身体がピクリとも動かない。

 

 

「気が付かないとでも思っていたのか、ウィンド。いや徳川フウ。我が元主人の実の孫」

「ッ……私のことを」

「初めから知っていたさ。君が名を偽り、私の元で何かを企てていたことなど。それでも泳がせておいたのは、君が私の計画を利用し、強者を連れ込むことを知ったから」

「……!!」

「つまり。君達は全て、私の掌の上で転がされていたと言うことだ。この肉体は貰って行くぞ」

 

 

身体の感覚がなくなって行く。次第に侵食が早まっているんだろう。

 

 

「クソ、ダメだ。もう意識が」

 

 

鉄華ヒカリは、その言葉を最後に気を失う。

 

そして直ぐに目覚める。ただし、そこにはもう彼女の意思はない。緑だった瞳孔は赤黒く染まり、この私、Aカードの頂点、エボルトとして覚醒する。

 

 

「ひ、ヒカリ……?」

「ヒカリちゃん」

 

 

鉄華ミツキと徳川フウが、私に向かって言葉を発した。

 

残念だが、私はもう鉄華ヒカリではない。丁度良い。ここで改めて自己紹介でもしておくとしよう。

 

 

「今日この日を持って、我々スピリットを召喚し続けた、愚鈍なる人間達の世は終わりを迎え、我々スピリットが、人間達を召喚する側となるのだ。この、最強のAカード、エボルトの手によって」

 

 

肉体を得るためとは言え、歯痒かった。闇バトルで他のAカード、兄弟達を戦わせることが。

 

だから今ここで誓おう。もう二度と、兄弟や同族達を、人間共の醜い争いの道具にはさせないことを。

 

私の本当の戦いは、これから始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回、第10話「エボルト」


******


最後までお読みいただき、ありがとうございました!
次回は待ちに待ったラスボス、契約エボルト登場回となります。
エボルト自体に強い人気があることはもちろん。オーバーエヴォリューションズや王者の鉄華本編でも重要なファクターとして度々登場していたエボルトの契約カードがようやく出せるところまで行けて、作者の私自身とても嬉しいです( ̄∀ ̄)
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