「こちらコードネーム青葉、目の前から複数の人影を確認。
コードネーム紅葉、敵に気付かれ無いように行動せよ。繰り返すこちらコードネーム......」
「......なにやってんの?」
いつの間にか変わっていた服。全身黒ずくめの。私の部屋には無かったような服を着て、黒のサングラスをかけている。
「んもぉ! 今屋上に侵入しようとしてるんだから少しでも悪者っぽい雰囲気ださないとぉ〜
設定では私たちはスパイそして屋上にある”お宝”を盗もうとしているの」
「ついていけないわ......
それとその衣装どこから取り出したのよ......」
その問いには答えず。淡々と話し始める。
「私たちはスパイ......誰にも見られては行けないの。
はっ!? 目の前の廊下角から人影を感知コードネーム紅葉注意せよ!」
手を横にして。立ち止まれと言わんばかりの合図。ただ私はそれを無視して進む。
「な、何をやっている紅葉ダメだそれだと気づかれてしまう!!」
「こんにちは〜」
「はい。こんにちは〜」
「んな!?通り抜けただと......!?
やりおるな紅葉!!まさか一般人を装うとは......」
会釈をしながら普通に挨拶した。ただそれだけ。
「いい加減その設定辞めない? 疲れたわ」
「そうだね屋上前だし」
そう言った次の瞬間。服とサングラスが突然地面に落ちた。見たことない。そんなことが出来たの......?という疑問。当たり前にそれをする青葉に驚いた。
「それじゃ行くぜ〜」
肩を回しながら扉に近づく。すり抜けた。外から鍵をいじる音。
「ふぅ〜開いたぜ〜」
鍵穴が回った。錆びた扉が開く。出入りが出来ないからか。開けると悲鳴にも聞こえる高い声がした。
「良くやったわ」
「......」
外の光が廊下を照らした一瞬。あらわになった写る影。重音が鳴り、扉が閉められた。
「来たぜ屋上〜!!」
「初めて来たけどこんな感じなのね」
特になんの変哲も無いコンクリートの床。そこらに鳥の。白い後が残る程度。
「さてさてどこに座るか〜」
「バレたらまずいからあまり見えない所にしましょ......」
「さて、この辺にしましょうか。」
校舎から見えなそうな死角に腰を下ろす。
「さてさてご飯は何かな〜?
おほー美味そうじゃないか!炊き込みご飯!
そしておかずは大好物ばかり!!
紅葉!全部とは言わないから半分くれ!」
「食べすぎよ! 私の分がないじゃない」
「ちぇーー......」
快晴。九月だと言うのにまだまだ暑い。風が首を通っても幾分かマシな程度。
「所で紅葉、学校は平気か?」
「んふぅ?」
ハムスター......?見間違えるほど口をパンパンにした紅葉。
「なんとも言えないわね今回テストだけだし」
「それもそうかぁ〜......うん〜うみぁい!
冷えてても美味しいとは流石は紅葉ママ......
うーーんこれもうまぁい!!」
紅葉の箸から次から次へと口に運ばれる。
(完全にこれ餌付けよねこれ......まぁ青葉には言わないで置こうかしら......)
雛鳥のように。口を開けてただ待ってるだけ。
「青葉?」
「んーー? どったの紅葉?」
口にたくさん含みながら答える。
「食べ過ぎなんだけど?」
隙間だらけのお弁当。無くなったのもチラホラ。
「......ぜ、全部美味しかったよ!」
苦し紛れの笑顔一つ。
「そんなこと見ればわかるわよこの馬鹿青葉!
今夜のご飯抜きだからね!!」
「うそだろ!? それはあまりに厳しすぎるぜ!
私の楽しみが減ってしまうではないか!!」
「食べたお弁当は帰ってこないのよこの馬鹿幽霊!」
おしりを叩いた。障害物ひとつない青空に音が響いた。
「いた! 何するのよ紅葉! 私は叩かれるより叩く派なんだけど!? 手を出してきたのはそっちだからな!」
紅葉の両腕を掴んで。馬乗りに。
「この! お前の体は私が知り尽くしてるんだ私に勝てると思うなよ!」
脇腹にこちょこちょ。
「あ、ちょやめ......ばかどこ触って......ふざけるな......だ、ダメだってそこ......んもぉやめろぉ......」
「はぁはぁ......なんで学校に来てこんなことしてるの私たち......」
「こ、これが青春でやつだぜ......紅葉」
二人して息切れをしながら大の字に空を見る。
「馬鹿なこと言わないでよこれの何が青春なのよ......
全く。早くご飯食べて教室戻りましょうか......」
「そうだね〜私の分も残しといてね〜」
「張り倒すわよ」
「さて、戻りますか〜」
「そうね......それじゃ行きましょか。」
お弁当箱片手に来た道を引返す。青葉が鍵を閉めて証拠隠滅。
「ふぅ〜......ご飯食べたし眠くなってきたなぁ」
大きなあくび。見てるこっちにまで移りそう。
「そんな事言わないでよまだテスト残ってるのに......」
「ごめんごめん〜残りも後少しだから頑張れ〜」
「あ、あの!」
「ん?」
屋上からすぐの階段。突如姿を現した。
「......え! い、いちごさん......?」
「や、やや、やっべぇーよ! 紅葉!!
見られた? もしかしなくても見られてた!?」
「ど、どうしたのかしら......」
混乱する青葉。恐る恐る話を聞く。
「あ、あの......その......えっと......」
なかなか言い出さないいちご。
「ど、どうしたの?」
それが不安を煽る。
「あ、あの!」
突如出した声。やまびこのように廊下全体から響き渡る。
「あっ!うぅ......恥ずかしい......」
「......」
赤面するいちご。それを見て二人。同じことを思った。
(もしかしてこの子ドジ......?)
「えーーっと......いちごさん? 何か用がないなら教室に戻るんだけど?」
「あ!待ってください!あの、えーっと......好きです!!」
「......? はい?」
聞き間違い?あまりに意味がわからない。
「はぁぁぁぁぁ!? お前何言ってんの!?
ふざけてんのか!? 誰がお前なんかに紅葉を渡すか!私がいるんだぞ!」
「うるさい」
意味不明な発言に敵意むき出しになる青葉。場が余計混乱する。わざと足を踏んだ。
「いっっ! も、紅葉ぃ......」
今にも泣き出しそうな顔。ただ、それを無視して話しかけた。
「えーーっとごめんなさい。私が好きだって聞こえたんだけど......聞き間違いかしら?」
「うえっ!? 私好きって......うああああぁ......!!」
走り出すいちご。すぐに姿が見えなくなる。
「え?ちょっと!どこ行くの!?......何あの子?」
どっと疲れる。とりあえず今は後回しに......
「ん?」
気のせい?すすり泣く声が聞こえる。
「青葉何この......え......」
振り向くと。
顔を真っ赤して滝のように涙を流しながら、喚く姿。
「うわぁぁん!!」
「......」
空いた口が塞がらない。声を上げて子供みたいに泣きじゃくる。
「......帰りたい......」