スターチス   作:黒犬2匹と老犬

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反抗期

 登校から数日がたったお昼の時間⋯⋯青葉は怒っていた。

 

「んむぅ!!」

 

 ほっぺを膨らませて、いまにも破裂しそうなほど。

 

「それでねそれでね〜!!

 その漫画がすっごい面白くて!!」

 

「あらそうなの? それは気になるわね」

 

 ここ数日、話してみてわかったこと。いちごさんは思ったよりおしゃべりだったって事。初日のオドオドした態度とは一変、最近はかなり話せるようになってきた。

 

 終わりを告げるチャイム。

 

「あ! 時間だ! 戻らなくちゃ!」

 

「そうね、戻りましょうか。」

 

 二人して本が好きと分かってから図書室に入り浸るようになった。その帰り、

 

「でさでさ〜!」

 

「⋯⋯」

 

「それで!!」

 

「いちごさん」

 

「ん? どうしたの?」

 

「私ちょっとトイレに行くから先に行ってて」

 

「あ、うん! わかった! 先戻ってるね!」

 

「ええ、それじゃ」

 

 いちごさんの後ろ姿を確認して。トイレの個室に入った。

 

「⋯⋯で、貴方はさっきから何してるのよ」

 

「べっっつにぃ? 本当なら私が紅葉とご飯食べてイチャイチャする所を〜?

 毎日毎日邪魔されて怒ってなんてないですけどぉ?」

 

 明らかに不貞腐れてる青葉。

 

「貴方ねぇ⋯⋯(青葉って元々こんな性格だったかしら? セクハラは⋯⋯まぁ変わらないけど、こんなに私に執着してたかしら。⋯⋯当たり前か。死んじゃって見えるのは私だけ。青葉は私以外の友達も多かったけど、今は⋯⋯私は誰にでも見えて話せるけどこいつは私しか居ない......)」

 

「##しもーし!!」

 

「も#じ? もみ#〜?」

 

「どうしたの紅葉!!」

 

「!? な、なによ。そんな大声出して⋯⋯」

 

「はぁぁぁあ!? 紅葉が石みたいに固まって動きもしないし、返事もしなかったんじゃん!!」

 

「私が? いつ?」

 

「紅葉もしかして⋯⋯」

 

 訝しんだ顔をして。私の前髪を掻き分けておでこをつけてきた。

 

「う〜ん? 紅葉! あんた熱あるよ!!」

 

「⋯⋯はい? 何言ってるの貴方」

 

「絶対熱あるよ!! 早退した方が絶対いいよ!!」

 

 突然の意味不明な発言。私は思わず手で目を覆った。

 

 「青葉⋯⋯家に帰ったちゃんと構ってあげるから変なこと言わないで。

 確かに貴方を放置したのは悪いと思ってるわ。

 青葉は私が不安な時いつも力を貸してくれたし、今も隣にずーっと居てくれてる。私はその事をほんとに感謝してるわ。ただ、遅れを取り戻したり、貴方が居なくなった今、少しずつ前に進もうと⋯⋯」

 

「ちょちょ! ちょっと待って紅葉!

 まじでウイルスに脳が犯されちゃってるよ!

 早く帰って休まないとだよ!!」

 

 二度目のチャイム。

 

「やばい、遅刻するわ⋯⋯」

 

 私はトイレの鍵を開けて走った。

 

「ちょ!? 紅葉! 早く帰って休まないと!?」

 

 すぐに後を追いかけたが、紅葉の姿は見えなかった。

 

「oh⋯⋯見たことないぐらい俊敏ですやん⋯⋯紅葉さん」

 

 

「うーーし、授業始めるぞ〜」

 

「はぁはぁ⋯⋯何とか間に合った⋯⋯」

 

「も、紅葉さん大丈夫?」

 

「大丈夫⋯⋯よ⋯⋯心配しないで⋯⋯」

 

 久しぶりに走ったからか、息が上がる。

 

「わ、わかったよ⋯⋯」

 

 明らかに大丈夫じゃない雰囲気。隣にまで聞こえる荒い息が耳に残る。

 

「――であるかして――」

 

(はぁ⋯⋯青葉の事どうしよう。

 もちろん青葉も本気では怒ってないと思うけど

 毎日毎日いじけられても困るし⋯⋯)

 

「はぁ......」

 

 心の中で吐いたため息。ただ、実際に出ていた。

 

(ん? いちごさん?)

 

 その様子を見てか、紙を渡された。

 折りたたまれた紙を開ける。

 

「紅葉さん大丈夫? 体調悪い?

 それとも私お昼になにかしちゃった!?」

 

(いちごさんに悪いことしちゃったわね)

 

 ノートの端を破って、私も返事を書いた。

 

「心配しないで。ちょっと考え事してただけだから

 いちごさんとの会話私は好きよ。(これだけだとちょっと固いかしら......)」

 

 書いた紙をこっそり、いちごの机に置いた

 

「⋯⋯!! (なんともなくて良かったぁ......紅葉さんの悩み事ってなんだろう? もっと私を頼って欲しい⋯⋯っていやいや!! まだ友達になって数日! そんな踏み込んだら嫌われるし変なやつだと思われちゃう!)」

 

 大きく息を吸って吐いた。

 

(せっかく紅葉さんと友達になれたんだ! 今はまだ互いの事あまり知らないけどもっと仲良くなって頼られる存在になるんだ!

 ⋯⋯ところでこの犬さんの絵はなんだ?)

 

「青葉戻って来ないわね⋯⋯何してるのかしら⋯⋯」

 

 先生の声やエアコンの音そしてクラス全員のシャーペンや消しゴムの音がする。ただ、そんなのも耳に入らない。

 

(青葉⋯⋯貴方が居ないと何も楽しくない。

 青青しい空も、風に揺られて声を出す木々達に声を傾けても、中庭にある木⋯⋯今は緑の葉だけど来年になったら咲く満開の桜。来年また一緒に見ようと誘ってくれていたけど私一人で見ても⋯⋯

 この空の下、太陽に照らされて暑いと思う感情も、それを分かち合えない事も、貴方が居ないと全てが虚しい⋯⋯)

 

「青葉⋯⋯私は貴方がいないと淋しい⋯⋯」

 

(えっ? 聞き間違い? 今青葉って⋯⋯)

 

 終わりを告げるチャイム。

 

「う〜し今日はここまで〜」

 

 授業が終わるや否や、私はすぐさま教室を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

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