屋上で一人、空を見る。
「⋯⋯」
目を閉じて、動かない。
「⋯⋯ッ!」
目をかっぴらいて。
「とう!」
空中で一回転。
「フォルムチェーンジ! 青葉お魚モード!
ジャキンジャギーン!」
両腕を頭の上に、手を合わせる。
「私は今産卵時に川を昇るサーモン!いざゆかん!」
リアル鯉のぼり。空に浮かんで魚のように動く。
「ぐるぐるぐるぐる⋯⋯これはいいや」
「次は⋯⋯死んだ魚! ヒラメの開き! 海の中の昆布!」
そのほか色々試した。
「はぁ⋯⋯何やってるんだ私」
ただ、雲を眺める。
「はぁあ〜紅葉が居たらこんなことでも楽しめるのになぁ〜」
目を閉じて昔のことを思い出す。それがどれだけの時間だったか。
ただ、青葉にとってとても長い⋯⋯紅葉との思い出。
***
「最初の記憶は⋯⋯多分保育園。泣いてる私にぐちゃぐちゃの泥団子をくれた。今思えば出来の悪い物。ただ、私はそれが嬉しかった。
小学校に入ってから、ますます私たちは仲良くなって、毎日おしゃべりしてた。
私は紅葉以外の友達もいたけど、紅葉は私にとって一番の親友⋯⋯
高校に入ってからは色々できることも増えた。
初めての化粧、お互い下手で笑いあったりしたなぁ⋯⋯
紅葉ママに見せたらものすごく笑われたっけ。
街中で一緒にクレープ食べたこともあったなぁ。
目的地も決めないで電車に乗って、知らない街に行って、むちゃくちゃ紅葉に怒られたけど、それもいい思い出。
あぁ――もっと紅葉と一緒に居たいよ――
最近紅葉は私以外の友達が出来た。隣の席のいちごさん。彼女は紅葉の事が好きらしい? 友達になりたいとかそれっぽい事言って誤魔化してたが、あいつは危険だ。⋯⋯違うこれは嫉妬だ。
私には時間が残されてないのにあいつは紅葉とこれからも居られる。
ずーっと紅葉の隣には私が居たけど、これからはあいつが⋯⋯
なんで――なんでなんでなんで――私が一番紅葉のそばに居たのに⋯⋯
紅葉に新しい友達が出来て嬉しいはずなのに⋯⋯」
***
「貴方なにしてるの⋯⋯」
「うぇ!? も、紅葉さん!? い、いつから見てたの!?」
「ずーと見てたわ⋯⋯正直、私の頭がおかしくなったのかと思ったんだけど」
「いやん///見てたなら言ってよも〜恥ずかしいじゃん! ⋯⋯で何の用?」
「なんの用って貴方ねぇ⋯⋯
いつまでもふてくされてないで、私のそばに居て。
ずーっと一緒に居てくれるんでしょ?」
私はそう言いながら手を伸ばした。
「も⋯⋯紅葉⋯⋯」
名前を呼んで、手を握り返してきた。全く⋯⋯手間がかかるんだから⋯⋯
「早く行きましょ、次の授業が始ま⋯⋯」
「ねぇ紅葉。紅葉は私とずーっと一緒にいて欲しいんだよね?」
「そうだけど、それが何?」
「それじゃあさ⋯⋯いちごさんと友達になるのやめてよ」
「⋯⋯何言ってるの貴方?」
「私はさ⋯⋯紅葉が一番好きなの。世界一愛してるの⋯⋯だから私、紅葉がほかの人と話したり、私以外の人の事を考えてたりするのが嫌なの」
「青葉⋯⋯冗談を言うのはやめて」
「冗談? どこが? 紅葉は私が冗談を言ってるように見えるの?」
「⋯⋯」
そんな事分かってる。だから言った。貴方の顔が真剣で、冗談一つ言ってないのが。
「ねぇ紅葉? 私前に言ったよね?
死んだからには私を縛るものは何も無い、
欲望のままに私は生きるってさ⋯⋯
私の欲望⋯⋯望みは貴方。紅葉を私だけのものに⋯⋯
誰にも見られない場所で、二人だけで生きるの。
紅葉、あなたを独り占めする為に。
紅葉⋯⋯一緒に行こ? 私たちだけの――」
「あおは⋯⋯」
「場所はどこがいいかな?
やっぱり誰にも見つからない場所ってなると山奥?
だけど虫苦手だしなぁ――」
「青葉⋯⋯」
「うーん⋯⋯いっその事海外でも行っちゃう?
なーんて⋯⋯私たちだけじゃ厳しいよね〜」
「青葉!!」
「な、何⋯⋯そんな大声出して⋯⋯」
紅葉の聞いたことない大声。思わず耳を覆った。
「⋯⋯」
何も言わず、近づいて来て。私を抱きしめた。
「え!? ちょ紅葉!?」
「青葉⋯⋯私も貴方が好きよ。
けど、貴方の考えに乗ることは出来ないわ」
「⋯⋯そっか。まぁ当たり前だよね〜⋯⋯
じょ、冗談だってー! やだなぁ紅葉ったら本気にしちゃって〜ほら行こ! 授業間に合わなくなっちゃうよ⋯⋯」
いくら口で繕っても、体は正直。自然と。自分の意思とは関係無しに流れ落ちた。
「青葉⋯⋯教えて⋯⋯貴方が不安な事。
どうすれば貴方の涙を止めることが出来るのか」
「ごめん紅葉⋯⋯」
「いいのよ。謝らないで」
「ご⋯⋯ごめん⋯⋯」
「いいのよ。気にしないで」
その言葉に私は、膝から崩れ落ちた。
「大丈夫⋯⋯何があっても私は貴方のそばに居るわ」
それを支えるように私はもっと強く、何があっても離さないように。腕の中で泣く青葉の頭を撫でながら
誓った。
授業のチャイムが聞こえる。
「授業始まっちゃったよ⋯⋯」
「そうね⋯⋯」
「行かなくていいの⋯⋯?」
「逆に聞くけど貴方より授業を優先した方がいい?」
泣き声で、手で涙を拭う青葉。
「⋯⋯だめ⋯⋯」
「ええ⋯⋯わかったわ⋯⋯」
私の肩に寄り添って。包むように、手を繋いだ。