地図にも載っていないような田舎で僕ベル・クラネルは暮らしていた。7年前までは祖父との二人暮らしだった。祖父は良く僕に英雄譚を読み聞かせてくれた。おかげであまり遊ぶ場所がなかった田舎でも楽しく暮らせていた。それでも時折村で親子が楽しそうに歩いているところをみると言葉にできない感情が胸にこみ上げてきてそのたびに僕はその感情を誤魔化すようにおじいちゃんの手を力強く握っていた。でもそんな祖父との二人暮らしは突然と終わりを迎えた。僕とおじいちゃんが畑で農作業をしていたとき灰色髪の綺麗なお姉さんがいつの間にか僕の後ろに立っていて気が付いたときには僕はそのお姉さんに抱きかかえられていた。お姉さんのはアルフィアと名乗り、自分は僕の母のお姉さんだと言っていた。そのことを聞いた僕は自分の家族がいたことが心の底から嬉しくて瞳か涙がこぼれていた。それから僕とアルフィアお義母さんとおじいちゃんの3人での楽しい暮らしが始まった。
「ベル準備はできたか?」
「うん!オラリオやダンジョンについての知識はお義母さんがたくさん教えてくれたから!」
「ああ、そうだな。私がこれだけお前を鍛えて知識も教えて(頭に叩き込んで)きたんだからもしダンジョンの怪物(ゴミども)やオラリオにいる第一級(クソ)冒険者(ガキ共)に負けたりしてみろ?そのときは分かっているな?」
「イエスマム!決して負けたりせずあきらめません!また福音(ゴスペル)拳骨(パンチ)を受けるのはもういやー!!」
「その返事をやめろと何度言わせれば分かるんだ?全く、あの好々爺め。なんど埋めても次の日には生えてきて、あのベルの教育の癌今度会ったときは本気の魔法で吹き飛ばしてやる」
「お義母さんやめて!そんなことしたらほんとにおじいちゃん死んじゃうから!」
「五月蠅い。私の耳元で喚くな」
「痛い!!」
ベルの頭にはアルフィアの必殺福音(ゴスペル)拳骨(パンチ)が浴びせられていた。
「ごほっごほっっ」
アルフィアはしばし苦しそうに咳込みその咳にはわずかに血が含んでいることをベルは知っていた。アルフィアには不治の病があり、その治療が不可能のことそしてその病気のせいでアルフィアの余命は残り幾ばくかであることをアルフィアから聞かされていた。
「お義母さん大丈夫?」
ベルはとても心配そうに義母により添う。自分の義母の理不尽さや化け物具合は自分が一番わかっていると思っているベルだが、それでも病で苦しめられている義母を見ると何よりも心配が勝つ。ベルに残された唯一血の繋がった家族であり、自分のことを大切に育ててくれた母親なのだ。アルフィアの修行は正に地獄の様な日々であったが、それでも自分のことをとても愛してくれていたし、ベルにとってもこの世界で最も大切なひとなのだ。
義母には伝えていないが、オラリオに行けばアルフィアの病を治す方法が見つかるかもしれないというのもベルがオラリオに行きたいと思った理由の一つだったりする。
「ああ、大丈夫だ。心配するな、ベル。私はお前が英雄になるまでここで待っていてやる。だから私のことは気にせずいってこい」
「お義母さん…いってきます」
幼き頃夕暮れのなか義母に誓った最後の英雄になるという決意をもとに後に英雄の末席に名を連ねるベル・クラネルは今日英雄の都オラリオへと旅立つのだった。