ガルマ(転生者)、シャアと出会う
そして、自らを愛するイセリナのためにも宇宙世紀を生き抜くことを改めて決意したとか
ちなみに時系列的にはコロニー落としが行われて間もない頃で、コロニー落としの際のガルマくんは生死の境を彷徨っていた状態だったらしい
「ガルマ様、よく似合ってますよ」
「ありがとう、イセリナ」
軍服の襟を正しながらそう言うイセリナに対し、ニコッと笑う俺。
俺がガルマ・ザビとして目覚めた後....イセリナの支えもありながらリハビリに専念した結果、医者の予想よりも早く軍に復帰することが出来た。
ただ、そのことをガルマの兄であるギレンは好都合だと認識したようで、ザビ家の末弟の奇跡の復活という名目でスピーチをすることが決まったのだとか。
ドズルは復帰したばかりの俺にスピーチなど....と言った感じで不満たらたらだったのだが、結局はギレンの判断に従ったらしい。
それにあのギレンのことだ、どうせ俺が復帰したことをプロパガンダとして利用するつもりなのだろう。
だが、それは言い換えればこちらとしても好機とも言える状態だ。
ガルマ・ザビとして転生したからには、この状況を利用させてもらうだけだ。
あと、これは余談だが.....ガルマをテロに巻き込ませた犯人は既に捕まっているらしく、ジオン公国の国民達からは極刑にしろ!!との声が強くなっているとドズル経由で聞いた。
そういや、ガルマってジオン公国内では結構な人気者だったよな。
「ガルマ様はまだ軍に復帰したばかりだと言うのに....こんなことを引き受けても大丈夫なのですか?」
「僕はザビ家の人間だ。なら、これもザビ家としての役目の一つだからね」
心配そうにするイセリナに対し、大丈夫だと言わんばかりに微笑む俺。
そんな俺を見たイセリナはホッと一安心するような顔になった後、俺の手をギュッと握った。
おっふ、女の子の手って柔らかいな.....って、何思ってんだ俺は!?
まだ結婚もしていない婚約者の段階の女性に邪な感情を抱くなんて....俺もまだまだだな。
そう思いながら、頬をパンパンと叩いて気合いを入れる俺。
そんな俺の姿を見たイセリナはフッと微笑むと、俺に向けてこう言った。
「ガルマ様」
「ん?」
「スピーチ、頑張ってくださいね」
「....あぁ!!」
イセリナとそう言葉を交わした後、舞台袖から表舞台へと向かっていく俺。
スピーチ会場では、ジオン軍の総帥であるギレンの演説が行われていたが....あのアニメ史上最も有名なスピーチを行った人間なだけに、会場が静かではあるものの盛り上がっていたのは言うまでもない。
てか、あのギレンの後で喋るとかどんな罰ゲームだよ!?
俺、スピーチの才能もクソも無いんだぞ!!
心の中でそう悪態を突きながらも、俺はスピーチ会場へと顔を出すように現れた。
そして、俺の姿を見た軍人達は当たり前だが騒ついていた。
そりゃそうだろう。
何せ、俺は例のテロに巻き込まれたことによって、世間からは顔の左側に深い傷を負った悲劇の貴公子扱いされているのだから、そういう反応になるのは無理はないよな。
ザワザワしている人々を尻目に、俺は一息ついた後....聴衆に向けてこう言った。
「私の名前はガルマ・ザビ。皆さんもご存知の通り、ザビ家の男としてこの世に生を受けた存在です」
そう言い放った後、その場に流れるのは何が始まるのかという期待と俺の言葉を聞き流すまいとする静寂感だった。
これがスピーチをするってことなのか.....
というか、こういうのが得意なギレンって本当に凄いよな。
そう感じつつ、俺は壇上にて更に一息ついた後.......こう言葉を続けた。
「私は兄のような立派なスピーチをすることは出来ないと思うが、それでもどうか耳を貸していただきたい」
俺はそんな言葉を言うと、会場の空気は少しずつガルマ・ザビのモノとなりつつあった。
よしよし、これは良い流れだな。
そんなことを内心ボヤキながら、聴衆に向けて言葉を紡ぐ俺。
その姿をギレンがほぅ....?と言葉を漏らしたのは、多分俺の気のせいだろう。
「諸君も知っての通り、我々ジオン公国はスペースノイドの自治権や自由のために宣戦布告を行なった。もちろん、それが将来的に愚行や虐殺と呼ばれることを覚悟の上でだ」
俺が聴衆達に向けてそう言い放つと、軍人達は自分達の戦いに身を出している意味を理解したのか、ギュッと拳を握っているのがほんの少しだけ見えた。
ジオンという国は、元々はジオン・ダイクンがスペースノイド達の自由のために建国したと言っても過言ではない。
最も、今はザビ家が牛耳っているけどな。
だけど、地球連邦がスペースノイドに対して不当な扱いをしているのも事実。
だからこそ、当時のスペースノイド達にとってジオンは希望の星....だったのかもしれない。
「自由には犠牲は付き物だとよく言うが.....それは言い換えれば、自由のために戦った勇者達がかつて存在していたことを示しているとも言えるだろう」
俺の言葉に対し、軍人達は話が始まる前よりもキリッとした顔つきになり始めていて、それは彼らが何のために自分達が地球連邦軍と戦うのか、何のために自分達が立ち上がったのかという問いに対し、一つの答えを見つけたのかのような表情になっていた。
俺の演説とその顔を見たドズルは、自身の弟であるガルマ・ザビが立派になったことが誇らしく思ったようで、その顔には漢泣きと言っても過言ではない程に泣いていた。
そういや、ギレンの野望のガルマルートの時もドズルは泣いてたっけ?
ある意味でドズルは良い兄ちゃんってとこだな。
そう感じながら、俺は覚悟の色を見せ始めた軍人達に対して言葉を紡ぎ始めていた。
「だからこそ....私は問いたい!!諸君らは何のために戦うのかを!!何のためにスペースノイドとして生まれ、何のために反逆者としてのレッテルを自ら貼るに至ったのかを!!」
俺が一言一言そう言う度に、会場のボルテージは高まっていき......やがて、そうだ!!やスペースノイドの自由のために!!と言う声が続々と飛び交うようになっていった。
あっという間に俺の演説を聞き入ってしまった軍人達を見た俺は、内心興奮した様子で武者震いしつつ舞台袖を見ると、そこには頑張って!!と言わんばかりのイセリナの姿が見えたため、俺は胸を張ってこう人々に告げた。
「私はザビ家の人間として!!ジオン公国を率いる者として!!いつかスペースノイドがスペースノイドであることを誇り!!スペースノイドが宇宙と共に胸を張って生きれるような世界にするために!!ガルマ・ザビは諸君らと共に戦うことをここに誓おう!!」
私がそう宣言した結果、会場に居た軍人達の興奮は最高潮を越える程の状態に達していて、皆ガルマ・ザビの演説に魅了されている様子で鳴り止まない拍手を俺に対して送っていた。
そんな軍人達の拍手喝采とは裏腹に、演説を終えた俺が息を整えていると.....ギレンやドズルからも拍手が送られたため、どうやらギレン的には一応は良い演説という認識になっているようだ。
あとドズル、お前泣きすぎじゃね?
そして、そう思いながら俺が舞台袖へと戻って行ったその瞬間、イセリナは俺に抱きつくと
「ガルマ様.....立派な演説でしたわ!!」
婚約者として俺の演説が聞けたからなのか、涙目になりながらそう告げた。
「僕はザビ家の人間として成すべきことをやった。それだけだよ」
そう言った後、イセリナに向けて微笑む俺。
だけど、この時の俺は知らなかった。
この演説がギレン....と言うよりかはデギンの親バカとも言える行為によって、ズムシティどころかコロニーや地球でも中継されていたことを。
そして、その影響で俺はジオン公国内での立ち位置が変わりつつあることを。
ただ、そんなことになるとは知らなかった当時の俺はというと、イセリナの手を握りながら演説が無事に終わったことに対して安堵していたのだった。
ガルマ(転生者)、二番煎じの演説をするつもりがその場的の空気的に名演説をしてしまうの巻。
ガルマ(転生者)的にはギレン程の演説は出来ないと思っているようだけども、結果的に後々歴史に名を残すような演説をしてしまったため、ギレンからほんの少しだけ一目置かれた模様。
なお、ドズルとイセリナは自慢げな様子だったらしい。
ドズルはドズルでギレンの野望のガルマルートの際に泣いていたから、やっぱ弟想いだったんだろうなぁ。