ガルマ転生   作:サクラモッチー

6 / 7
【前回のあらすじ】
ガルマ(転生者)、シーマの運命を変える。

コメントでもあったけど、本作のガルマ(転生者)に影響されて覚悟ガンギマリなジオン兵は続出すると思います。
それに加え、その影響は他の兄弟にも及ぶ模様。


Side story:キシリア

私にとって、弟であるガルマは坊やだからと言わざるを得ない程に色んな面で未熟な存在だった。

我が一族の末弟という立場上、ガルマは父上からの愛を一身に受けていた。

まぁ、末弟だからこそそれは仕方ないが....いずれにしても、それが未熟さと心の隙を生み出したのだろう。

その結果、ガルマはとあるコロニーにてテロに巻き込まれた末に生死の境を彷徨う羽目になった。

 

だが....ガルマはいつ死んでもおかしくはない状況から復活し、この世に舞い戻った。

しかも、己の未熟さを自覚した上でそれを受け入れているという成長を遂げた状態で。

あの日.......軍に復帰した記念に演説をした時も、父上から名目上の地球方面軍司令官に指令された時も、ガルマの中で一つの信念の炎が燃えたぎっているように感じた。

 

そんなガルマの変化に伴い、ジオン内外問わず変化が現れ始めているのは事実だ。

現に....あのガルマの演説を聞いた人々の中には、ガルマの掲げている『スペースノイド自由平和圏』という考え方に賛同、共感した人々によってジオンへの支援が行われているという事実がある以上、その影響力は我がジオン公国内はおろか、その余波ですら連邦にもたらすだろう。

.....一体、何がどうしてそうなったのやら。

 

父上とギレン兄はこのことを好機だと睨み、ドズルはガルマが成長したのだと我々の中で誰よりも喜んでいた。

父上やドズル兄はともかく、ギレン兄は今のガルマの影響力を利用する気なのだろう。

いかにもギレン兄らしいと言えばらしいが....

 

「キシリア姉さん。今、大丈夫でしょうか?」

 

まさか、そのガルマ本人が私と話し合うためだけに自室に訪れるとは思わなかったがな。

 

「....何のようだ?ガルマ」

「姉さんと折り入って話をしたいことがあるがため、ここにきました」

 

しっかりと私の目を見てそう言うガルマの瞳には、何かしらの目的のためにこのキリシア・ザビと話し合うという意思が、地球方面軍司令官という役職に就く人間としての強い意思が感じられた。

....それはまるで、ザビ家として自らの使命を全うするかのように。

私はとりあえず話とやらに付き合うため、弟であるガルマを自室へと迎え入れた。

 

あのテロ事件の後遺症により、容姿端麗と褒め称えられたガルマの顔には大きな傷が残った。

父上やドズル兄はその傷のことをとても気にしていたが、当のガルマ本人はこれでザビ家の男として相応しくなったと言い張り、特に気にするそぶりを見せなかった。

....だからこそ、ガルマの人気はより一層高くなったのだろうな。

 

「それで?私に対する折り合った話とはどういう話なのだ?」

 

どうせ、自身の部下に対する愚痴なのだろう。

それに、そんなくだらない話に付き合う程に私は暇だと思われているのか?

私自身、ガルマから話があると言われた時点でそう思っていたのだが....その弟本人の口から出たのは、予想だにしていなかった言葉だった。

 

「.....僕は今日、ドズル兄さんと話し合ってシーマ・ガラハウをゼナさんとミネバの護衛に推薦することを決めました」

「....何だと?」

 

シーマ・ガラハウ。

確か、アサクラ大佐の部下でブリティッシュ作戦を決行した軍人の一人.....だったか?

しかし、何故私の配下の者をドズル兄の嫁と娘の護衛に推薦することにしたのだ?

彼女は今、処罰房に入れられているというのに.....

 

「ガルマ、それはつまり.....私の下からシーマ・ガラハウという軍人を引き抜きたいと言いたいのか?」

「と言うよりかは、彼女の精神的な状態を考慮したまでです」

 

そうキッパリと言うガルマの顔には、部隊の司令官としての職務と誇りを捨て去る覚悟が垣間見えていて、その弟の姿を見た姉である私ですら本当にあのガルマなのかと一瞬思う程の様子だった。

ガルマの性格上、圧を見せればすぐに自らの意見を取り下げていたが....今の様子を見るに、自らの意見を取り下げるということはなさそうだな。

 

....あのガルマが食い下がらず、自らの意見をちゃんと主張するとは。

これも成長、いうことなのか。

 

「今のシーマ・ガラハウは精神状態を鑑みるに、前線に出すのはいささか難しいと思います。それに恐らく、ブリティッシュ作戦に参加した者の中には彼女以上に精神状態が悪化している者もいるかもしれません」

「.....何が言いたい」

「一言で言えば、シーマ・ガラハウを含めた精神的な傷を負った軍人達の治療を行いたいのです。時間はかかるとは思いますが........それでも、人材という名の貴重な資源を失うよりかはマシですから」

 

我が弟がそう言った瞬間、私は思わず目を見開いていた。

....戦場で散るはずの命が?貴重な資源だと?

何を生易しいことを私は言いかけたものの、当のガルマの目が真剣そのものだったためか、私はその言葉を飲み込んだ。

 

だが、そんな私の様子にガルマは気がついたのか....ほんの少しだけ苦笑いをした後、姉である私から目線を晒さずにこう言った。

 

「僕が思うに、人間は一度死んでしまったらそれっきりな存在ですが....それは言い換えれば、替えの効かない唯一無二の資源であることを意味しています。だからどうか....その資源を守るためにも理解して欲しいのです」

 

.....これがあのガルマなのか?

偽りの司令官の座に座っているだけなのにも関わらず、その責務から逃げることなく、そして私に対してそれを隠すこともせずにそう言う弟に対してそう思う私。

 

いくら形だけの肩書きが与えられたとは言え、普通はここまでするものなのか?

そう思った私はガルマの言葉を聞いた後、こう言った。

 

「ガルマ....お前は何がしたいのだ?」

「僕は僕として....地球方面軍司令官ガルマ・ザビとして、出来る限りのことをなすべきだと思って行動しただけ。ただそれだけです。それに」

「それに?」

「人間誰しもテロに巻き込まれたのなら、物事を見る目が変わって当たり前ですから」

 

ニコッと笑顔を見せながらそう言うガルマを見た時、私は思わず震え上がった。

ガルマは最初から、形だけの司令官としてではなく人の上に立つ者として責務を行っていた。

それはまるで軍内部の権力闘争やザビ家の後継者とは関係無しに、ただ自分の意思に従ったかのように。

 

......どうやら私は、今の今までガルマの中にある素質を見抜けなかったようだ。

もし、今のガルマを敵に回せば我が陣営がどうなるのかは明白。

ならば、私が打てる手はただ一つのみ....か。

 

「ふっ....父上に甘えてばかりの甘ちゃんだったが、そこまでの戯言を吐くようになったとはな」

「僕も僕で、甘ちゃんのままではダメだと判断しただけですよ」

 

目も開いていない子猫が獅子へと成長を遂げた....か。

再び苦笑しながらそう言うガルマに対し、内心そう呟く私。

この様子だと、ガルマの配下の者達の士気が上がっても当然だろうな。

まぁ、それはそれの話だがな。

 

「そうか、ならば.....この話はお前の好きにするが良い」

 

フッと鼻で笑いながらそう言うと、分かりやすく顔色を明るく染めるガルマ。

.....そういうところは変わらんのだな。

だがまぁ、そこがお前らしいと言えるが。

 

それに......いつの日かガルマがギレン兄を超える姿を想像しただけでも、少しは話をした意味があったものだ。

....これで少しはザビ家が安定すると良いのだがな。




キシリア、自分の弟の変化っぷりに驚愕するの巻。

ガルマってザビ家の癒し枠的なポジションだったからこそ、その死が与えた影響って計り知れなかったんだなと思う今日この頃。
なので、本作のザビ家は比較的にギスギスはしない予定です。
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