貞操逆転世界で悠々自適にオタ活生活 作:オタコウ
俺が転生したのは、いわゆる貞操逆転世界。
男女比と貞操観念が逆転する、前世の創作だとたまに見かける世界観だ。
いや実際、最初転生した時は度肝抜かれたね。
男が全然いないし、女はいっぱいいるしなんか男みたいだし。
女が男キャラつかって女に「こいつエロだー」って言われる光景を見た時は、ここが貞操逆転世界なんだなぁ、と強く実感した。
とはいえ、正直なところ俺の人生にあまり大きな変化はなかった。
まずこの場合想定される変化は、「異世界に転生して生活レベルがぐんと下がる」ことだ。
異世界転生にはチートがつきものだから死ぬことはないだろうけど、衣食住とオタ活の保証されない生活はちょっと激変ってレベルじゃないぞ。
っていうかチートがなかったら普通に死ねる。
その点、現代日本に変わらず転生できた俺は幸運と言えるだろう。
とはいえ特にチートといえるチートはないし、正直勉強もあまりやってこなかったから転生による利点を活かせたとはあまり言えない。
しかし、この世界の男女比が偏っている現状と、前世とそこまで社会が変わらない世界に転生したという事実だけで、優位性としては十分だった。
ただまあ、やっぱりオタクコンテンツが前世とはほとんど真逆になっていることには色々と度肝抜かれたね。
この世界における北斗の拳は主人公や他のメインキャラがほとんど女性だし、むっちむちだし、バインバインだ。
豊満で、肉感的な女性像が前世におけるムキムキでパワフルな男性像とだいたいイコールになっている世界。
正直、俺が抱いた感想は「これはこれで!」だ。
なんというか、前世とは全く違う味わいなのに、これはこれで悪くないみたいな。
そんな異世界のオタクコンテンツに触れて、俺はそれを楽しもうと思った。
だって、それはそれで色々とワクワクするだろ?
美少女とロボとか、前世だとオタクは好きだけどあんまりメジャーとは言い難い組み合わせだった。
だけどこの世界だと、それを大手を振ってメジャーコンテンツとして楽しめるのだ。
そんな特殊極まる楽しみ方してるのは俺だけだけど、正直自分だけの楽しみ方っていうのもそれはそれでオタクっぽくていいと思う。
それに普通に楽しむ分には、この世界には男性の数倍以上の比率で存在する女性陣の中で、極まったオタク達が相手をしてくれる。
特に幼馴染のシロネが話の分かるオタクだったおかげで、それはもうオタ活が捗るってものだ。
表で自分を男だと明かしたうえでオタ活しようとすると、それはそれで色々と問題があるからな。
何より俺は、この世界においてはかなり恵まれた立場なのだ。
それこそチート染みた境遇にあるわけだけど、せっかくの転生、ちょっとくらい良い生活を送っても許されると思わないか?
◯
休日はとにかく眠れるだけ寝ていたい。
かといって、自堕落すぎる生活を送っていると、それはそれで将来的に地獄を見るのは前世でさんざん教わったことだ。
故に、休日の俺は深夜一時に就寝し、九時から十時に起きる生活を送っている。
これならギリギリ朝食は朝食として食べれるし、睡眠時間もきっちり確保できているし、悪くないのではなかろうか。
というか、こういう生活が前世においては”理想”だったんだよな。
社畜生活で疲れが抜けきれないまま、何も出来ずに一日を終えていた前世の末期。
あんな生活は、二度とごめんだ。
人は好きなことだけして生きていき、それによって充実を得るべき生き物なのである。
というわけで、朝起きたらさっさと朝食を済ませる。
昼はだいたいそれなりにちゃんとしたものを食べることになるから、朝は軽いものがいい。
パンとジャムか、昨日の残り物か、出来合いの惣菜か。
何にせよ、ぱぱっと食べて片付けを済ませているとインターホンが「ぽーん」と鳴る。
やってくるのは、十割がシロネ、残り二割が学校の友人だ。
つまりシロネは必ず毎日やってきて、他の友人が時折一緒にやってくるということ。
今日はシロネだけだった。
『おっははー』
「おはよう、シロネ」
インターホン越しにシロネが挨拶をしてくる。
いつもと変わらぬゆるい表情になんとなくほっこりしつつ、シロネの情報をインターホンにスキャンしてもらう。
問題なくシロネであると証明され、俺に部屋のロックを解錠するか求められる。
タッチパネルに表示された「解錠」のボタンを押して、シロネを中に招き入れた。
「今日もきったよー」
「お疲れ様」
シロネは両手にカバンを抱えながら、ふふんと自慢げだ。
中にはゲーム機やパソコン、漫画などが入っている。
「んー、カムバックソウキ宅ー!」
リビングに通されたシロネは、持ってきた荷物を床に置くと勢いよくリビングのソファへとダイブした。
高級かつ俺がこだわり抜いて選んだ沈み込むようなふかふかソファは、一瞬でシロネをだめにしていく。
「あああああ、これだよ、このソファにダイブするために私はここにきてるんだぁー」
いいながら、シロネはソファに顔を擦り付ける。
アレ、俺の匂い嗅いでないよな?
「ふんすふんす」
「……とりあえず、飲み物もってくるよ」
「ホワイトゥオーターでおねがーい」
「あいよ」
独特なイントネーションで体にピースな飲料のバーターを所望するシロネ。
今日の服装は、白一色のパーカー。
そんなに白が好きか、と言われたら「そんなに好きじゃないけど、イメージ的にぴったりだから統一している」と答えそうなシロネだ。
「それで、今日は他に誰か来るのか?」
「んー、リネとショーコが来るかもって言ってたー」
さて、そんな俺の自宅だが、一言でいうと――広い。
リビングがあって、部屋が三つあって、風呂も前世の実家だった一軒家より広い。
かなりの高級マンションに、俺は入居しているのだ。
結果、俺の部屋はなんというか、友人の女子たちのたまり場になっていた。
そう、たまり場。
俺には結構女友達が多いのだが、その殆どが休日になると俺の部屋に集合する。
まず、俺の部屋が人がいっぱい集まっても問題なく広いということ。
というのも――実を言うと俺、かなり稼いでいるのだ。
正確に言うと、俺の両親が俺の助言を受けて、投資で。
さっきも言ったが、一部を除いて――その一部がクソでかいが――前世とそう変わらない社会が構築されているこの世界において、転生者はいろいろな方法でお金を稼ぐことができる。
投資はその中でも特に有効な手段で、両親が俺の助言を聞いてくれたこともあってか、俺の家はかなり裕福な家庭になっていた。
こうして俺が、一人でクソ高級なマンションに住めるようになれるくらいには。
家具もかなりいいものを揃え、パソコンだって最新のゲーミングPCを用意している。
何だかズルをしている気もするが、チートというのはそういうものだ。
それに俺は、前世での社畜生活をもう二度と送りたくない。
楽ができるところは、とことん楽をしてやるぞ。
加えて、金持ちでオタクな男とか、この世界の女子からすれば垂涎の存在だろう。
だから俺がこういうでかい部屋を用意していなくても、女子は勝手に俺の部屋に集まろうとするはずだ。
そういう時、俺はきちんと自衛をしなきゃいけない。
さっきの生体認証だってそう、アレをしないと見知らぬ女が勝手に部屋に入り込んで来るのがこの世界だとあり得ない話じゃないのだ。
というか、こういうセキュリティのしっかりしてるマンションじゃないと両親が一人暮らしなんて許してくれないしな。
ただまぁ、そういう環境に自分を置いたうえで、それでも集まってくる女子は信頼のできる者たちばかりだ。
特にシロネは幼い頃から俺を守ってくれているし、仲の良いオタク友達として今も寄り添ってくれている。
この関係は、大事にしないと行けないだろう。
それになんだかんだ――
「今日はさあ、アレもってきたんですよ。電車に乗ってぇ、友情破壊ゲームぅ」
「お、いいな。みんなが集まったら、早速やろうぜ。……それまではどうする?」
「いい加減、一年放置してる百年モードの続きやらない?」
「え、面倒だからいいかな……」
「そっかぁ……」
こうして、友人と集まってゲームをするっていうのは、前世だと社会人になってからとことん無縁だったことだ。
無論、ネット上には友人がいるし、オンラインプレイでつながったりもしていた。
でも、実際に顔を合わせてゲームを遊ぶことって、なくなってたんだよな。
だから俺はなんというか、この環境を大事にしたいのだ。
悠々自適に生活するって、多分そういうことだと思うからさ。