貞操逆転世界で悠々自適にオタ活生活 作:オタコウ
倉沢シロネは俺の幼馴染だ。
生まれた時から実家が隣同士で、何かある度にシロネとペア扱いを受けてきた。
これには色々と理由があって、一つはシロネに父親がいないこと。
この世界は男性が少ないもんだから、それに纏わる技術は前世より明らかに発展している。
人工授精による試験管ベイビーってやつだな。
んで、俺はこの世界だと非常に珍しい両親がいる家庭で育った。
大抵は一夫多妻か夫が居ないかのどっちかだっていうのに、前世みたいな一夫一妻の家庭だったなよな。
だからまぁ、シロネの母親は仕事に出てるから、家に人がいることの多い俺の家にシロネは預けられ、俺とシロネは一緒にいることが多かったのだ。
シロネは、昔はガキ大将気質な奴だった。
弱きを助け強きを挫くといえば聞こえは良いが、困ってる人を放って置けず、何かと無茶しがちなのは隣で見ている分にはハラハラする。
というかそもそも背が低く喧嘩に強い方じゃなかったから、下級生をいじめている上級生に喧嘩を売って、俺が助けに行って事なきを得るなんてこともたまにあったんだよな。
それでもまぁ、果敢に人助けをするシロネはそこそこにカリスマ性があり、多くの人に好かれていた。
ただ男子はあまりシロネのグループには関わらず、別の女子グループに囲われていることが多かったんだが、これはもしかしたら俺のせいかもな。
とはいえ、そういう状況が変化したのは小学校も四年生位になった頃だ。
この頃から俺の両親は投資で結果を出し始め、俺の家庭はだいぶ裕福になった。
じゃあ何が起きるかというと、色々と漫画やアニメを好きに買えるようになったのである。
すると俺と一緒にいることの多いシロネは、自然とそういった漫画やアニメを俺と一緒に鑑賞するようになり――ハマった。
それはもう、すごい勢いで。
これまでのガキ大将気質が何だったのかっていうくらい、オタク方面にどっぷりと使っていったのだ。
あのハマりっぷりはすごかったね。
一時期口調まで変だったし、「フォカヌポウ」とか言いそうだった。
で、まぁ。
面白いことに俺達のグループそのものがオタクに染まっていき。
高校になって俺が一人暮らしになってからは、完全に俺の部屋がたまり場扱い。
とはいえ、この生活には割と楽しみを見出しているのが俺だ。
なんたって、他人とオタク談義をするのは楽しいからな。
◯
「んだあー、また擦り付けられたっすぅ!」
「あっははー、突出した一位になるのが悪いのですよー、リネちー。ほらほら、ここで一気に逆転いくよー、ソウキぃ」
「わかってる」
俺達は現在、この世界における桃鉄みたいな友情破壊ゲームをプレイしていた。
ここにいるのは俺とシロネ、それからあとからやってきた少女、リネである。
赤坂リネ、名字がそのまま漢字になったのではないかという、特徴的な赤髪の少女。
背丈はシロネより少し高く、服装はちょっとパンクな感じ。
もう一人来る予定だったショーコは突然バイトのシフトを入れられて涙ながらに「今日は無理」とのこと。
なもんで、三人で友情破壊ゲームをやっているわけだ。
「やっぱー、三年決戦はダイナミックでいいよねん」
「配信でもよくやってる人いるけど、なんだかんだコレが一番無難だからな」
リネがやってきてから、シロネの定位置は俺の頭の上になった。
こう、ソファに座っている俺の頭の上に自分の頭を乗せて、腕だけ前に出してプレイしているのだ。
ギリギリでかい胸があたるかどうかという、何とも危うい態勢。
腰が辛くなるから、個人的にはやめたほうが良いと思うんだけどなぁ。
なお、この状態であんまり胸を意識してはいけない。
基本的にこの世界の男女間のあれこれは、感じたら合法ならぬ、反応したら合法レベルのアレだからな。
楽しいゲーム会場をくんずほぐれずなアレの会場にしたくはないぞ、俺は。
掃除が面倒なんだよ、ここは俺の部屋だぞ。
「よし、逆転」
「あわー! それはないっすよソウキくーん!」
さて、ゲームは終盤。
俺はここまで溜め込んでいたカードをふんだんに使って、逆転を図る。
一位をなんとか死守していたリネもこれにはたまらず撃沈。
ここまでの推移を簡単に話すと、最初はリネが独走状態だった。
そこを俺とシロネが一時的な共闘によって蹴落とし、ここで俺がトップに躍り出たわけだ。
しかし、それをヨシとしない人間が、ここに一人いる。
「うおー、キングを擦り付けて逃走ー」
「あ、おま、シロネ!」
そしてこのキングを俺は他人に擦り付けられず……なんて。
そんなアレヤコレヤがあって、最終的にトップを取ったのはシロネだった。
いやぁ、あそこでキング擦り付けはやってるよ。
「うぃーん」
「うあー、負けたっす」
「おめっとさん、シロネ」
しかしまぁ、なんというか。
こういうパーティゲームの楽しさは、前世も今も変わらない。
そもそも、他人と肩を並べて遊べるって環境がまず貴重なんだよ。
前世で社会人になってから、そういう時間がめっきり減ったことを考えると、本当に今の時間は大切にしたいと思う。
特に、パーティゲームって本当に前世とデザインが変わらないからな。
基本的にこの世界は、前世と創作の方向性が似通ってることは非常に多い。
桃鉄みたいな友情破壊ゲーは、不思議と電車にのって日本各地を旅することは変わらない。
強いて言うならボンビーがグラマラスな美人のねーちゃんに変わっているくらいか。
デフォルメされてて、あんまりかわいくないけどな。
「あ、もうちょうどいいじかーん。昼食はどうするー?」
「今日は外食いかないっすか? 出前だと五割でピザになるから、ヘルシーなものを食べたいっす」
「あー、たしかにな。いやソレだったら別にヘルシーな物を出前してもいいんだが」
今の時代、Uber Eats的なアレもあるしな。
「ああでも、ついでに見に行きたい本があるんだった。じゃあ、外食でいいか?」
「さんせーいっす」
「あーい。何買うの?」
「今日出るラノベの特装版、電子じゃ特装版のアクスタついてこないからなあ」
「通販でもいいのにぃ」
「店に行って、なかったら通販するよ」
いいながら、俺達はゲームを片付けて立ち上がる。
パタパタとリネが一足先に玄関へ向かい、俺達もその後を追う。
――自然と、シロネの手が俺の手を掴んだ。
そのまま、お互いに言葉なくリビングを出た。
「ほらほら行くっすよー」
「わかってるって」
なんでお互いに言葉がないかっていえば、シロネが俺の手を掴むのは自然なことだからだ。
休日になると、毎日シロネは俺の部屋にやってくる。
これは本当に比喩ではなくて、俺が一人暮らしをしてからシロネが俺の部屋にやってこなかった日はない。
多分、この世界ではそういうものなのだろう、と思う。
男の一人暮らしなんて、いくらセキュリティがしっかりしていても危険すぎる、というのがこの世界の常識。
だから休日は幼馴染で信頼できるシロネが毎日やってくるし、シロネがいなければ俺は他の女子と一緒に遊ぶなんて危険なこと、そうそうできない。
こうして外食に行くのも、シロネを含めた数人の友人が俺に連れ添っているから、当たり前のこととして成立しているだけなのだ。
コレに関して、正直俺はあまりピンと来ていない。
仮に女子が俺を襲ったとしても、それは性欲が暴走した結果のことで、冷静じゃない。
だからいくらでも対処の仕方はあると思うんだが、それはあくまで俺の考え。
この世界の考え方じゃない。
ただまぁ、一つだけ俺自身も気にしていることがある。
それは、シロネをオタクの沼に引きずり込んでしまったこと。
そりゃ自分の足でシロネはオタクになっていったのは事実だけど、きっかけを与えたのは俺だ。
もっと言えば、俺の存在は、シロネの人生を半ば強制的に決めてしまっているのではないか?
男と幼馴染の女なんて、その男を守るのが自然というのがこの世界の常識だ。
そのことで色々と、俺は思うところがないわけではない。