ちょっとただの村人がもってて良いチートじゃなさすぎる 作:コナハズ
異世界に転生した時、なんとなく自分にはチートじみた能力が宿っていると感じた。
そりゃあ異世界転生なんだし、チートの一つ二つはあるだろうな、とその時は何も考えずにそれを受け入れたのだ。
これがヤバいな、と思ったのは物心ついて、一人である程度自由に歩けるようになった時のこと。
俺は早速、手に入れたチートを試してみようと森の中に入った。
軽く魔物でも狩って、両親に「罠にかかって死んでた」とでも嘘をついて夕飯のおかずにでもしてもらおうとか企みながら。
だから獲物は当然、罠にかかって死んでいてもおかしくな雑魚魔物。
使う能力も、別にそこまで強力だとはこれっぽっちも思っては居なかった。
だから魔物に向かって手をかざして、そして使った。
直後、村の近くの森は一部が焦土と化し――村はヤバい魔物が出た、と大騒ぎになった。
無論、倒そうと思った魔物は消し炭。
跡形も残らず、食べれる部位なんてあるわけもなく。
それどころか、村は厳戒態勢でしばらくの間、狩りとか力を試すとかそんなどころではない状態に。
王都から騎士団まで派遣されて、国中を上げての大騒ぎになってしまった。
これだけでも、一体どれだけの国家予算が消えたのか考えると、胃がキリキリ痛む案件なのだが――残念ながら、ここまではあくまで前座。
本題は、この後に起こったできごとなのだ。
いやなんというか、多くの大人に迷惑をかけた騎士団派遣と比べると、むしろこっちは良いことなのだけど。
というか騎士団を派遣した結果、”それ”につながるわけだから、俺の行動は特大ホームランレベルなんだけど。
胃が痛む度合いでいうと、多分こっちのほうが大きいのではないかと、俺は思う。
+
その日、俺は朝早く起きると朝食の支度を整えてから家族を起こす。
両親は遅くまで働きに出ているし、妹はまだ八歳。
現在、家の家事は主に俺がになっている状態だった。
といっても、俺もまだ十一歳の若輩なんだけどな。
前世の記憶があるせいか、「この子は幼い頃からしっかりしている」との評価を受け、最終的には家の家事を一手に任される立場になったのである。
「おー、おはようラーク」
「おはよう父さん、母さんも。支度はもうできた?」
「ああ、いつも悪いなぁ」
「ごめんねぇ、ラーク」
ラーク、というのは俺の名前。
チートを手に入れ楽々人生を送る俺にはぴったりな名前、と昔は思っていた。
まぁ、名前自体は今の両親から送ってもらった良い名前だと思うので、別に文句はない。
その後妹のシルリを起こして、三人にはご飯を食べてもらう。
両親はそのまま”ギルド”へ出勤、妹は友人たちと遊びに行くそうだ。
俺は家に残ってひとしきり家事を済ませた後、村の手伝いに行くことになっている。
この世界だと十歳を超えると半人前として認められ、十五歳で成人。
俺はもう、村の手伝いをするのが当然の年齢になっていた。
「じゃあ、言ってらっしゃい」
「行ってきます、ラーク、シルリ」
「いってあっしゃーい」
シルリの呑気な声に癒されながら、
基本的に、この世界は中世風ファンタジー世界だ。
辺境の村人が着るには、どこか似つかわしくない服装。
だが、ギルドの職員の制服としてはそこまで違和感がない感じの装いを両親はしていた。
「じゃあシルリも、いっぱい遊んでくるんだぞ。
「あーい」
続けて、ふんわりとした黒髪の、見た目通りふわっとした雰囲気の妹を送り出す。
んで、家事の片付けをしてから、俺も今日の手伝いのため戸締まりを確認してから家を出た。
そこには、ある光景が広がっている。
それは、あちこちで行われる村の拡張工事だ。
俺が生まれた村は、山奥にある辺境の村だった。
特産品と言える特産品もなく、数十人の村人が質素な生活を送る、ファンタジー田舎村だったのだ。
それがある時から一変した。
原因は――ダンジョン。
この世界には冒険者やギルド、そしてダンジョンが存在していて、特にダンジョンは資源の宝庫だ。
魔物を倒すと素材がドロップし、宝箱からは貴重な魔道具とかが出てくる。
当たれば一攫千金が手に入る夢の舞台。
六年ほど前に行われた
両親はギルドの職員として就職、それまでとは比べ物にならない高給取りとなり、家の食糧事情は大きく改善。
俺も最近は、拡張が行われる村の工事を手伝うことになっている。
俺のやらかしによって、村はとんでもない発展を果たすこととなった。
中にはその変化についていけないものもいるが、多くの村人は手に入るようになった美味しい食材や着るものに目を輝かせ、毎日を充実した様子で過ごしている。
やらかしたことはアレだが、結果として村の生活レベルはもう過去には戻れないくらい成長してしまった。
これもまた、俺の胃を痛める要因の一つ。
ちょっと俺の能力が想像を超えたチートだっただけなのに――
「親方、こっちの作業終わりましたー」
「おー、おつかれラーク。やっぱお前さんは仕事が早いなぁ」
「ありがとうございます」
それはそれとして、俺は今日も大工仕事の手伝いをしていた。
チートのお陰で人より力があり、転生者故に要領も人よりいい。
そりゃあ、手伝いで俺が無双できるのは当然のことだ。
正直、こういうのは割と気分がいい。
俺はさ、ほどほどに無双したいんだよ。
明日食っていくのに困らないくらい稼げて、バカにされない程度に実力が評価される。
そんな人生を送りたかったんだ。
少なくとも、こういう日常的な仕事で褒められるとそれが満たされるし、充実感もある。
だけど、残念ながら周囲は俺をその立場にはとどめてくれない。
「いやしかし、このままラークが大工になってくれればいいんだがなぁ、やっぱ冒険者になるんだろ?」
「そうですねぇ、十二になったらギルドに登録して、村の手伝いをしながら少しずつダンジョンにも潜ってみようかと」
「ははぁ、期待してるぜ、お前さんは村でも一番の力持ちなんだから」
俺は周囲に冒険者となることを期待されていた。
そりゃあ、村に突如としてダンジョンが見つかり、村の中で一番将来有望なのが俺なのだ。
これがただの田舎村だったら、ちょっとした期待程度で済んでいただろう。
でも、この村は既に冒険者の拠点として開発が始まってしまった。
既に多くの冒険者がこの村を訪れ、活動拠点としている。
その中で、俺の素質はそういった冒険者に見抜かれてしまったのだ。
この子はいずれ特級冒険者になるかもしれないぞ、と。
村人を喜ばせる世辞のようなものではあるのだけど、あながち間違いとも言い切れない。
「んじゃ、今日はもう上がってもいいぞ」
「ありがとうございます、お疲れ様でしたー」
なんてことを考えながら作業をしていれば、いつのまにか昼前。
基本的に子どもの手伝いは午前中までだ。
午後からは家の手伝いをしたり、大人に剣を習ったり、遊んだりする。
俺の場合は――家の家事をする場合がほとんどだ。
理由は、単純に俺以外に家事をする人間がいないのと――
『あ、おかえりなさーい、そーぞーしんさまぁ』
昼頃になって起き出してくる、こいつの相手をするためだ。
そいつは一言でいうと、光の精霊だった。
体が淡い光に包まれていて、如何にも精霊っぽい厳かな格好をしている。
背丈は小柄で、多分150くらい。
透き通るような白髪、やたらとでかい胸。
そんな少女が――俺の前にはいる。
「……ただいま、それと俺は創造神じゃない」
『えー、いいじゃないですかそーぞーしんさまぁ。ほらほら、今日も鍛錬始めましょうよぉ』
「わかってるよ、シフ」
こいつの名前は、シフ。
俺とシルリにしか見えず、俺を創造神と呼称する。
俺は普段、手伝いから帰るとこのシフと能力の鍛錬をしていた。
ちなみに強くなるための鍛錬ではない、
で、こいつが何かと言えば――
『たとえラーク様が創造神さまじゃなくてもぉ、
ダンジョンに封印されていた精霊、だそうだ。
俺はあの日、うっかり力加減を間違えて森の一帯を焦土に変えた。
結果としてその余波でシフは目覚め、外に出てきたのである。
そしてシフが外に出てくる際の痕跡から騎士団はダンジョンを発見し、この村は発展してきた。
以来、俺を見つけたシフは俺を”創造神”だと呼んでいる。
なんでも俺はこの世界を作り出した神の生まれ変わりなんだとか。
でも、違う。
どれだけ俺自身の手で俺を調べても、俺はただの村人でしかなかった。
前世の知識があって、ちょっとチートをもっているだけの。
このチートも、創造神とは何も関係のない”自然発生”のチートらしい。
なの、だけど。
『それにぃ、アレだけ力を持ってて、私を目覚めさせたんですよぉ?
状況証拠は、そう言っていない。
まるであの日、俺が気まぐれにチートを使うことが運命だったかのように。
全てはあの日から始まっていた。
ああもしあの時、俺がもっと気をつけて力を使っていたら。
こんなにも胃が痛むことはなかったのだろうか。
悠々自適な転生者生活を、送っていられたのだろうか――
やらかした転生者が、なんとか実力隠せないかなぁとか考えながら色々やるお話です。