無限世界への飛翔   作:ミコト

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別視点のお話になります。



閑話・動き出す歯車

~~サティアから見たセリカ~~

妹を探して一体幾つの歳月が流れただろう。

私たち古神は先の大戦で現神に敗れ、その大半が消滅か封印をされてしまい、中立を保っていた古神は現神のお情けでこの世界で生きているような状況だ。

その現神を刺激しないよう、息をひそめて探す日々。私たち神は精気という生命エネルギーを外部から供給しなければ満足に動くことが出来ず息のつまる生活を送らざるを得なかった。

見つからない家族、襲いかかってくる魔物や盗賊、目減りする精気。

そんな日々を過ごしていた。

 

ふと風に誘われ廃れた都の岸辺に着く。そこにはまるで風のような人間が一人。

 

(……あぁ)

 

一目見て、この人に会うためにここに来たのだ。と理解した。

人間離れした魔力と精気、青年と言っていい歳のようだがどこか達観した賢者の佇まいの彼。私を下卑た目で見る人たちも多い中、まるで親しい誰かを見ているかのような、不思議な人。

私は、この長く苦しい旅路がようやく終わるのだと、彼を見て思った。

 

 

彼と会ったその日から、彼の家に厄介になった。彼とその仲間たちと過ごす日々はとても楽しかった。

彼にはカヤという姉が一人いて、その姉のまなざしがとても暖かく仲の良い家族なのだろう。とすぐにわかるほどだった。

また彼にはダルノスという友がいて、まるで家族であるかのように、兄であるかのような雰囲気だった。すこしニヒルな顔をして、彼を見守る瞳。大切にされているのがよくわかるほどに暖かかった。

また彼の故郷へも赴いた。彼が幼かったころの話や、雪に覆われた山での探索、生命の神秘にも触れ、暗くなりがちだった私の旅の疲れを穏やかに癒していった…

 

 

しかし、その日々も長くは続かなかった。彼に導かれ辿り着いた鉱山の谷の奥。

そこには変わり果てた妹がいた。瘴気をまき散らし、全ての生物に恨みを吐くように攻撃する妹が…

呆然とする私を彼が叱責する。早く逃げろと。

未だ呆ける私をダルノスが手を引き、彼は私たちを逃がすため単身立ち向かう。と言った。

そんな!妹は古神である。いくら穢れた存在に堕ちたと言っても魔神並の強さを持つだろう。そんな相手に一人で挑むだなんて死にに行くようなものだ、と。

しかし私の手を引くダルノスは不敵に笑った。

 

魔神?あいつは確かに勝てないだろう。だけど絶対に負けることもない。昔一度化け物のような魔神と出会ったことがあった。だけどあいつは決してひるむことなく単騎で囮になった。あいつのお陰で何十人という戦士が命を救われたんだ。ならあいつは今回も無事に帰ってくる。あいつの戦術眼はバリハルト一だからな。

 

そして、結局なんてことないとでも言うように、彼は怪我ひとつすることもなく帰ってきた。むしろこっちのことすら心配していた。古神相手に一人、一刻という長い時間戦って逃げてきたのに、だ。私はおかしいやら驚くやらで、ようやく妹を見つけたということさえ実感できなかった。

 

その次の日。彼と一緒に跡地へと赴く。妹との戦闘跡を見て、まるで魔神同士が戦ったかのような錯覚に陥った。一体どうすれば人間がここまで人間のままで強くなれるのだろう。確かに神格位と呼ばれる勇者であらば可能だろう。神の力をその身に宿す、そういった存在になれば人間とは比べ物にならない戦闘力を手に入れられる。もちろん神の尖兵になったり信者を増やすために行動しなければならない、等と言った制約があるが…

しかし、彼は違う。彼は確かにバリハルト神殿の戦士ではあるが、神格位を頂いた存在ではない。普通の人間である。ましてや魔術などで肉体を改造することもなく、召喚魔術で悪魔や天使等といった存在と契約を交わしている様子もない。

 

ふと、彼を見ると何かをためらった後、こう呟いた。

 

君の妹さんについて聞きたい。

 

私は混乱した。なぜ彼が妹のことを聞くのか!なぜ私を古神だと知っているのか!

しかし、ふと私は思い出していた。彼と出会ったときのことを。

私は何も言わず、そして彼も何も言わずに私を受け入れてくれたあの時。

 

そうか。貴方は最初から知っていたのか…

知っていて尚私を受け入れてくれたのか。

 

…それなのに、私は彼に真実を告げることを最後までしなかった。

それでも彼は私を責めなかった。ただあるがまま私を受け入れていた。

 

そのことに気付いた私は、あまりにも酷いことをしていたことに気付き顔を青褪めさせた!

 

私は彼を裏切った!!

 

彼の優しさに甘え、真実を告げることをせず、あまつさえ度重なる接触で精気を奪ってさえいたのだ!

もちろん私は奪おうと思って精気を奪ったわけではない。だが、余りにも少なくなった精気を補おうと無意識のあまり彼から精気を奪っていたのだ!

 

その事実に愕然とした私は断罪の時を待った。余りにも酷いことをした私を彼は詰るだろう。しかし…私は許された。

 

そして語られる救済の道筋。今はまだ曖昧な道程だが、彼とならやり遂げられる気がした。

 

あぁ…彼と共にあれる幸せ。彼と出会えたことに感謝を……

 

 

 

 

~~???~~

あやつ…魔神ナベリウスと語らうていた時、ふと尋ねられた。

セリカという人を知らない?

 

あやつは死者の門を守ること以外に興味を持つことが無かった故、その質問を聞いた時大層驚いた。

 

あやつが人間に興味を持っただと!?

 

詳しく話を聞いてみると、魂の状態のまま死者の門に訪れた者がいたらしい。

その者と少しの間語らいさまざまな教えを受けたらしい。

我も知らぬ魔術体系とこの世の外にある世界。その歴史をとつとつと語り始めた。

 

ふむ。あやつが初めて興味を持った人間か…

 

ディジェネール地域に住んでいるとしか分からなかったそうだが…調べてみるのも一興。存外に面白そうなことになりそうよの。

 

我はそのセリカなる人間を探しに、大空へと駆け上がった………

 




現状の変化:???はセリカを探しにディジェネール地方へと進出した!
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