「金田……?」
自身の名を叫ぶ声に気を取られ、島鉄雄はそちらを振り返る。
それは、上条当麻と御坂美琴も同じだった。
「あいつは―――ッ!?」
上条は振り返った瞬間、瓦礫の上でバランスを崩し、後ろへよろける。
そこは、金田が構えたレーザー銃の射線上だった。
「わっ、馬鹿―――」
金田は当惑し、引き金を中途半端に引いてしまう。
脇へ軌道の逸れたレーザーが、上条のすぐ足元の地面を抉り、更に鉄雄の変異した腕へと照射される。鉄雄は熱に触れたかのように、伸長した腕を引っ込め、その反動でふらついた。
「何だよ!あの腕は?」
金田が驚き、照準から目を離していると、体勢を立て直した鉄雄がこちらを憤怒の形相で睨みつけてきた。
「この野郎ォ!!」
危険を直感した金田が、慌てて踵を返し、瓦礫の坂を転げ落ちる。
それは上条も同じだった。
その直後、辺りの地面が連続して、地雷を踏んだかのような爆発を起こし、衝撃と共に濃く煙を巻き上げ、バラバラと土や瓦礫が吹き飛んだ。
頭を抱えて倒れこみ、伏せていた上条は、自身の体の無事を確かめる。
「……御坂!?」
御坂の姿が見当たらない。
まだ煙が立ち込める周辺を見渡す。
あちらこちらに瓦礫が散らばるばかりの風景には特徴がなく、御坂がどこにいるのか見当も付かない。
「くそっ、どこだ―――」
探そうと身を起こしたその時、上条の背後でがらがらと足音が近づいてくる。
島鉄雄か―――身構えた上条の襟元を、力強く2つの手が掴み上げた。
「こンの馬鹿野郎ォ!!邪魔すンじゃねェよ!!」
頭にひどく砂を被った金田が、上条に掴みかかるなり怒鳴った。
「てめえ、さっきはチャンスだったのに!台無しじゃねェか!」
「おま―――こんなことやってる場合か!!」
自分を締め上げてくる金田の手首をどうにか振りほどいて、上条は憤慨して言った。
「いきなり現れるなり撃ってきやがって―――しかも何だよそれ!?そんなビームライフル知らねえぞ!どっから持ってきた!!」
「ごちゃごちゃとうるせえ!―――あっ」
顔を紅潮させていた金田が、何かを思い出したように人差し指を作って上条へ向ける。
「てめえ、そのウニ頭―――学生街で俺たちの邪魔をしやがったろ!?西条だか東条だかっていう」
「上条だ!!西でも東でもねえし!」
金田の唐突な言葉に、上条も徐々に怒りを沸かせて言葉を返す。
金田は腕をまくり上げ、威嚇するように上条へ詰めよろうとする。
「……ンなことどうだっていい!なんでこんな所にいるンだよ!」
「はァ!?それはそっちこそ―――」
「鉄雄は俺のチームのメンバーだ!」
足元の瓦礫が崩れ、金田はよろめくが、なおも上条へ近づこうと試みる。
「仲間を大勢やられてる!いいか、これは俺たちの問題だ!正義ヅラして口挟むンじゃねえっつってンだよ」
上条は呆れたように表情を歪める。
「お前らバイカーズが散々身勝手しているせいで、この街全体が滅茶苦茶になってるんだぞ!」
金田の言い分は、上条には理解しがたいものだった。
「それをお前らだけの下らないお友達ルールで何とかしようってか?どこまで自分勝手なんだ!お前たちは!少しは頭を使えよ能無しめ!」
「言わせておけば……」
金田もいよいよ顔を真っ赤にしている。
「てめえに何が分かンだよ!この―――上条ォォォ!!」
「年上にはな、『さん』ぐらい付けろよ、このチャリンコ野郎!!」
「ちょっと、アンタ達!」
2人が言い争いをしている所へ、美琴が戻ってきた。転倒してすり切れたのか、スカートの裾が大きくほつれている。
「揉めてる場合じゃないでしょ!……アイツ、まだ何か仕掛けてくる気じゃない?」
美琴が振り返った方を、金田と上条が見る。
爆発の衝撃で地面が露になりやや開けた場所に、鉄雄が息を切らしながら、立っていた。先ほど奇妙な変異を起こしていた右腕を庇うように、ボロボロになった深紅の幕で覆っているが、それは不自然に膨張しているように見えた。
「そっちの男と女は……七学区で偉そうに吠えてたっけなあ……」
前髪から垂れてきた汗が目に沁みたようで、鉄雄は頭を振った。それから、金田を見て嘲り笑う。
「どういう風の吹き回しだよォ、金田。こんな奴らといつの間にお友達になったんだ?腑抜けたじゃねェか随分と」
「てめえが知ったこっちゃねえぜ鉄雄ォ」
金田が上条を押しのけ、一歩進み出て挑発するようにせせら笑いを浮かべた。
「そういうお前こそ、どうしたよ?顔色悪ィぜ。医務室に駆け込んでお寝ンねした方がいいンじゃねェの?」
金田はそう言うと、レーザー銃のバッテリー表示に一瞬目を落とし、背後の上条と美琴を振り返った。
「手ェ出すンじゃねえ。チームのメンバーが死にかけてる。アイツがやりやがったんだ。落とし前をつけさせる」
「へェ?誰が死にかけてるって?」
鉄雄が嘲るように金田へ言った。
「山形だ!」
金田が怒りを込めて叫ぶと、鉄雄は一瞬、呆けたような表情をして、その後、笑みを取り戻す。
「そりゃあ知らねぇよォ。勝手に一人で事故ったんじゃねェのかよ、そうだ……いつもそう言って俺を馬鹿にしてたよなァ」
金田は、鉄雄の言葉を聞いて、レーザー銃を握る手に力を込める。
「鉄雄……許さねェぜ」
「そんなチャチな
金田に疑問を挟んだのは美琴だ。
「アイツ、様子が変。さっきも腕が妙なことになってた……ここは私に任せといて、素人は引っ込んでなさい」
「はァ?何様だてめえ」
「お前たち、言い争ってる場合じゃないだろ!」
今度は金田と美琴が険悪な雰囲気になり、上条がたまらず間に割って入る。
「さっきからゴチャゴチャと!」
鉄雄が苛立ちの声を上げると、辺りの地面に再び地響きが起こる。
「まとめてどっかいっちまえェ!」
ヤバッ、と上条が声を漏らし、金田もふらつく。
鉄雄の前方を起点として、衝撃波が地割れとなって3人へ襲い掛かってきた。
次の瞬間、上条と金田の立つ場所は急に日陰になった。
「相変わらず力任せの能力ね」
美琴が右手を差し出し、地面を倒れていた巨大な配管に触れていた。配管はめりこんでいた瓦礫ごと、磁力操作により持ち上がり、ビル3階程の聳え立つ防壁となって鉄雄の放った衝撃波を防いでいた。
美琴は配管沿いに壁を駆け上がると、その頂点に立ち、鉄雄を見下ろす。
金田があんぐりと口を開けてその様子を見守る。
「えぇ……あの女、もしかして凄ェ能力者だったりする?」
何言ってるんだコイツ、とでも言いたげに上条は呆れた表情で金田を見た。
「答えなさい!」
美琴は鉄雄を見下ろして言った。
「私は、
「俺が知ったこっちゃねェよ」
眉間に皺を寄せて、鉄雄が吐き捨てるように言った。
「アレを作ったのは俺じゃねえしな。先生に聞けよ」
鉄雄の返答に、美琴の表情が鋭くなる。
「
「さァ?探してみろよ……生きてりゃいいけどな」
鉄雄がにたりと残酷な笑みを浮かべると、美琴の髪の毛が逆立つ。
「アンタ……やっぱり一発入れないと気が済まない!!探させてもらうよ、アンタをぶちのめした後でね!」
そう言うが早いか、美琴の体から、青白い光が跳ねるような軌道を描いて瞬く間に鉄雄へと迸った。
バシィッと強烈に叩きつけるような音が響き渡る。しかし、鉄雄の立っていた場所は黒い焼け焦げが残るだけだった。
美琴は当惑する。
「ッあれ!?どこに―――」
「気を付けろ、上だ!!」
上条が後ずさりながら美琴へ警告する。
美琴が空を見上げると、ギラつく太陽を背に、黒い影が見えた。
美琴は咄嗟に危険を感じ、その場を飛び退く。その次の瞬間、黒い影が弾丸のように降り、美琴が立っていた瓦礫の壁へ着弾し、激しく破壊した。
上条と金田は命からがらその場を転がるように退避する。
辺りの瓦礫を利用した磁力操作で何とか地に降り立った美琴は、鉄雄が降り立った地点に立ち込める土煙を睨みつける。心臓が鼓動を一気に早めるのを感じる。
「電撃を見切った……?いや、ただのまぐれか―――」
「いいこと教えてやるよ」
土煙の向こうから、鉄雄の声が聞こえる。
「てめえがどこのお嬢様か、ンなこと俺はちっともキョーミがねェ。だけどよ、レベルが高ェからって勝ち誇るヤツが、俺は大嫌いだ……そういや、あの女も喚いてたなァ、
「あの女って……」
美琴が確実に面識のある女性のレベル5は一人しかいない。その、第5位の
それ以外の人物、となると、美琴は会ったことはなかったが、同じレベル5として、噂程度には聞いたことがあった。
「アンタ、まさか、第4位を―――」
美琴はそう口に出した瞬間、妙に体がだるいことに気づく。
足に痛みを感じて見下ろすと、細かな石礫が、自分の靴や踝、膝へと集まっていた。素肌に食い込み始めていて、痛い。
「お喋りしてる場合かッてンだよ」
いつの間にか、鉄雄が煙の奥から姿を現していた。右腕が明らかに膨張し、幕の下でグロテスクに蠢いているが、その表情は汗に塗れながらも勝ち誇っている。
「いつまでその重力に耐えられるかな……」
重力操作。美琴がその言葉を思い浮かべた時には、体が鉄の塊になったように重くなっいた。美琴は体を屈め、知らず知らずの内に膝から下を礫の小山へと埋めている。そうしている間にも、周囲の瓦礫や石は自身の体を覆おうと集まり、体中が悲鳴を上げ始めていた。
瓦礫それぞれの金属の磁力を操作して、脱出を。いや、電気を思い切り放って破壊できるか―――美琴の脳裏に様々な脱出の考えが走るように浮かぶ。集中を試みるが、経験したことのない状況に思考はパニックになり、演算するどころではなかった。
ミシミシと石同士が耳元で押し合い圧し合いしている。その嫌な音を縫うように、高笑いが聞こえてくる。
「ざまァねェなエリート様がよォ!!」
助けて―――美琴は体が切り裂かれるような痛みに悶え、声にならない叫びを上げる。
「止めろおおお!!」
上条は、美琴が鉄雄の攻撃を受け危機に陥っているのを目にする。瓦礫の上を駆けつけようと必死に足を動かすが、遠い。右腕を伸ばすが、まだ空を掴むだけだ。
その時、上条の隣を、強烈に唸る音を轟かせて何かが駆け抜けていった。ドップラー効果でグリッサンドをかけたようなそのエンジン音が、上条の耳に焼き付く。
「鉄雄ォッ!!」
金田のバイクは瓦礫を踏みつけると、ロイター板を踏んだように跳ね上がり、鉄雄へと迫る。
鉄雄は咄嗟に身を避けるが、金田のバイクのタイヤが、鉄雄の生身の左腕をぐしゃりと踏みつける。
鉄雄は地面に横たわり、苦悶の声を上げる。
「おい
重力の戒めが解けた美琴の肩を抱き、上条が呼びかける。
美琴は肌のあちこちに傷を作り、血を滲ませている。上条が揺さぶると、焦点の合わない目を開け、喘ぐような息を洩らした。
「うぐ……てめえらもう全員死ね……」
鉄雄が這いつくばりながら、上条と美琴の方を睨みつける。
上条は、いよいよ怒りが頭に上り詰めるのを感じた。
「自分たちの欲のためだけに、人を巻き込んで、傷つけやがって……!」
美琴をそっと横たえると、上条は脱兎の如く駆けだす。鉄雄を目指して走る。
「そんなことが許されると思ってんだったら―――!」
上条は、思い切り右腕を振り被る。
鉄雄は、表情を歪め、顔を庇うようにマントに包まれ膨張した右腕を持ち上げる。
「そのとち狂った幻想を、ぶち壊す!!」
鉄雄の腕を覆っていたマントがずり落ちた。人体模型に限界を超えて綿を詰め込んだような、肉塊が露になる。
上条の右腕が、鉄雄の右腕に炸裂する。
瞬間、鉄雄は弾かれるように吹き飛んだ。
上条は息をつきながら、今しがた相手を殴りつけた右の拳を見つめる。
血まみれだ。しかし、それは自分の血ではない。
「アイツ……」
ぞわりと背筋に冷たいものが走るのを感じ、上条は恐る恐る顔を上げた。
どこからか漂ってきた腐臭が、ぬめりと上条の鼻を舐め上げた。
バイクを急旋回させ、安定した足場で停まった金田は、鉄雄の方を見定めた。
鉄雄は、上条に殴り飛ばされたところだった。人が殴り飛ばしたにしては、やたら鉄雄は勢いをつけてボールのように跳ね飛んだように見える。
割り入ってきた奴の手を結果的に借りる形になったのは気に食わないが、いずれにしても鉄雄を狙う絶好のチャンスだった。仲間を、今も生死の境を彷徨っている山形を辱めたのだ、最早容赦はしない。
金田は肩越しにレーザー銃を構え、照準をズームし、鉄雄をしっかり収めた。
引き金の指に力がこもる。
鉄雄は胎児のように丸まり、身悶えしていた。痙攣しながら横に転がり、金田の方を向く形になった。
上条に殴られた鉄雄の右腕は、花開いていた。
金田の脳裏には、そのような表現が浮かんだ。肩口から百合の花のようにぱっくりといくつも枝分れした肉は、スーパーの棚に陳列する挽肉のようなピンク色をしていて、びたびたと打ち上げられた魚のように蠕動し、辺りに血や細かな肉片をまき散らしていた。その質量は明らかに、元の鉄雄の腕を凌駕して、鉄雄自身の体よりもなお巨大だった。開口部の窪んだ中央には、瓦礫の中から取り込んだのか、元々機械化していた時の名残なのか、無造作に何らかのコードや配管の残骸が取り込まれ、さながら柱頭のようだった。
照準の向こうにピントが合った鉄雄の顔は、血管が明らかに浮き出ていて、驚愕と恐怖で歪み、自分の右腕があった場所へ見開かれた目が釘付けになっていた。
瞬きを忘れているのは、金田も同じだった。照準を合わせていた手からは力が抜け、銃をおろしていたが、それでも金田は今見た光景が信じられず、目も口も開けたまま、動けずにいた。
「かねだ……」
鉄雄が苦し気に声を洩らした時、鉄雄の背後、瓦礫が小山を築いた頂に、何者かが立っていた。
「41号ォ!!」
全身に煤を被って黒く汚れた、敷島大佐だ。拳銃を短く切り詰めたような何かを握りしめ、まっすぐに鉄雄へ向けている。
「終わりだ!」
大佐の握る照準器から赤く細い光線が放たれ、鉄雄の丸まった背中を射る。
やめろ。金田は無意識に、そう声に出していた。
それから数秒して、鉄雄のうずくまる場所へ、白色光が上空からまっすぐに降りてきた。
それは次第に輝きを増し、やがて目も眩むほどになる。金田は我に返ると、目を背け、その場を猛然と走り出した。
そして、高熱と爆風が辺りに轟いた。
―――北部ゲート 付近
「どういうことじゃん?原発に一切被害が出ていないってのは……」
「私も不思議なんですけど」
黄泉川愛穂の疑問に対し、鉄装綴里は当惑したように言った。
「爆発にも似た石棺の崩壊による瓦礫の飛散距離からして、発電所区域内にも被害が出ていてもおかしくはないんですが、なぜかそこだけ避けたかのように、無傷らしく……まるでだれかが見えない屋根を張ったみたいに」
「そんな都合のいい話があるとは信じがたいけど―――」
「あの!」
初春が割り入るように声をかけると、黄泉川は視線を初春へと向けた。
「ああ、カオリさんが木山春生から受け取ったデータチップか……レベルアッパーの解除プログラム、ね……」
「ええ。木山先生の言うことが本当ならば、これをどうにか、防災放送でもなんでも使って街中に流せば、木山の企みを阻止し、昏睡状態の人たちを救い出せるかもしれません!」
初春が熱っぽく言うが、黄泉川の表情は冴えなかった。
「しかし……信用し難いじゃん」
「なぜです!?」
「木山の言うことがだよ、初春。却って患者たちの状況を悪化させる音声プログラムだとも限らないだろう。こんな所じゃ分析もできない。木山の研究オフィスに査察をかけたチームにまずは引き渡さなければ、安全が保障できないじゃん」
「それは……っ」
初春は焦りの表情を浮かべる。
その横でやり取りを見守っていたカオリは、ふと意識が逸れる。
石棺の崩壊現場が遠くに見える。そこへ、一本の光の筋が、上からまっすぐに降り注いでいた。その白い光は、青空から一直線に降り、そして崩壊現場に煙を巻き起こしている。
「あれはいったい?」
鉄装が更に戸惑った声を上げる。
地響きがこちらにも伝わってくる。その内に、光の筋は地表から上空へと、徐々に細くなり、かき消えていった。着地点からは相変わらず黒煙が立ち上っている。
そこでカオリは、不意に、自分の名を、呼ばれた感覚を覚える。
その声の主は、慣れ親しんだものだった。
「……鉄雄君?」
「どうしました、先輩―――」
初春が声をかけた時、カオリは自分の目を疑い、手の甲で擦ってみた。
しかし、やはり、異常な物が見えた。
「……なんだ、あれは」
黄泉川が声を洩らした。
カオリをはじめ、その場の全員の目には、瓦礫の山に、ピンク色をした人型が、ゆっくりと立ち上がるのがぼんやりと見えていた。
カオリの心臓が、どくんと鳴った。
―――第七学区、水穂機構病院
「一体どうしたというんだね!?レベルアッパーの患者たちが急に暴れ出したというのは……」
「わ、分かりません」
ドクターの切迫した問いに対し、看護師は困惑して答えながら、必死にベッドの上でもがく患者を鎮静しようと押さえつけていた。
「さっきまで眠っているようだったのに、急に暴れ出して―――早くバンドを!!急いで!」
ベッドの上の患者は、ガウンが乱れるほどに身をよじる。長い黒髪を振り乱し、目を充血させ、見開いている。そして、口をあらん限りに開き、大声で叫んでいる。
「アあぁぁぁぁキいぃぃぃぃラあぁぁぁァァァっあっあっうあああああ」
「落ち着いて佐天さん!―――何があったの……」
慄いたような看護師の呼びかけは、暴れ続ける佐天涙子の耳に届いてはいないようだった。
批判は甘んじて受けます。