スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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自分の力不足で、信頼する先輩を再起不能にしてしまった……

それが真実かどうかはともかくとして、飛騨咲楽には大きな試練の到来です。

これをどうにかしなければ。

次の戦いには臨めません。

それも次は、先のネメシス以上の奴が来ることが確定なのです。






もう一度立ち上がって
序、力不足の結果


目が覚めた。

 

何が起きたか覚えている。

 

あたいが力不足だったから。呉美大佐が。生きているとはとても思えない。

 

戦闘では人が死ぬ。

 

ましてやシャドウが相手。ネメシスが相手だったら当然だ。

 

最近はあたいの前で死ぬ人は殆どいなかった。だが、ネメシスが暴れた近くの街では、大きな被害が出て、数万単位で人が死ぬことも多かった。

 

だから、当然なのだと分かっていても。

 

あたいの力不足で人を死なせた。

 

それは大きな失態だった。

 

動けない。

 

やはり体へのダメージが大きいのだろう。あの灼熱の中で戦闘したのだ。超世王セイバージャッジメントはむしろ頑張った。

 

足りなかったのは。

 

あたいの力量だ。

 

まだ訓練が足りていない。だから人を死なせた。そう思うと、やりきれない。涙まで出てくる。

 

八十人以上殺したろくでなしがあたいの親だという話は、ノワールがしていた。それ以来、あたいの親はあたいの敵になった。

 

今、あたいは。

 

そのカス野郎と同じになろうとしている。

 

溜息が出る。

 

しばらくして、意識が戻ったことに気付いたからか、看護師が来る。幾つかの話をされる。

 

呉美大佐は生きているそうだ。

 

そうか。でも無事の筈が無い。

 

話を聞くと、やはり無事とはとても言えないそうだ。

 

少なくとも兵士としての復帰は無理。

 

そういう話をされて、大きな溜息が出ていた。

 

兵士だったら、割切るのが当たり前。

 

それどころか、あの一瞬を作り。北半球が消し飛ぶのを防いでくれたのが呉美大佐である。

 

更にだ。

 

あの瞬間、誘導弾を複数放って、広瀬大将が溶岩を冷却してくれていた。

 

それがなければ、あたいも呉美大佐も絶対に助からなかった。

 

そういう話だ。

 

広瀬大将は、出来る事が極めて限られる状況で、的確にやれることをしてくれたのである。

 

感謝しかない。

 

それに対してあたいの情けなさは犯罪的だ。

 

ぎゅっと唇を噛む。

 

今は何も言いたくないし、喋りたくない。

 

不甲斐なさで自分の身が焼けそうなほどだ。ただ怒りで、自分の全てが許せなくなりつつある。

 

クソ親は、どんな理由で八十人も殺したのか。

 

シリアルキラーだったという話だし、どうせ緊急避難だの適当な理屈で自己正当化していたのだろう。

 

自己肯定感が高いのは悪い事ではないと聞くが。

 

自己正当化は最低である。

 

あたいはそうはならない。

 

だからこそ、思考の袋小路に入っていた。

 

食事を取りたくないと言うと、点滴をするだけと言われた。それは、どうにも収まりが悪い。

 

注射はどうでもいい。

 

ただ、食事が一人分無駄になる。点滴だってノーコストではない。だったら食べるしかない。

 

食欲皆無だが、腹に無理矢理メシを突っ込む。

 

味なんてまったく分からなかった。

 

胃に穴が開きそうで。

 

それを見た医師が、何か薬を処方していた。或いは胃薬かも知れないが。いずれにしても、あたいは治療さえ受けたくなかった。

 

焼け鉢の中、人が来る。

 

三池さんだった。

 

「三池さん」

 

「飛騨大尉、無事で良かった。 あのネメシスを斃せなかったら、北半球が滅亡していました。 南半球だってそう長い時間は保たなかったでしょう。 貴方と呉美大佐がやったんです」

 

「呉美大佐は、あたいの力不足で……」

 

小官という一人称がとっさに出なかった。

 

それくらい動揺していることに、今更ながらに気付く。

 

動けないので、横になったまま話を聞く。

 

呉美大佐は意識が戻らない。ずっと起きないかも知れないらしい。

 

既に退役の処置がされていて。准将に昇進だそうだ。

 

そんな事。

 

常在戦場だったあの人が、喜ぶとはとても思えない。

 

「自分に責任があると考えているのなら間違いです。 畑中中将でさえ、大きな犠牲を毎回出していました。 あの人ですらです」

 

「でも、それは敵の能力が想定を上回ったからで」

 

「ネメシスも同じです。 私が見ていたから知っていますけれど、畑中博士も麟博士も、最大限の強化を超世王セイバージャッジメントに施しました。 それでも相手はその上を行ってきた。 どうしようもなかったんです。 それに貴方の成長は、北条さんが認めています。 もう、立派な一人の兵士ですよ」

 

でも、だからといって。

 

何もかも守れる訳では無い。

 

そう、三池さんはいうのだった。

 

何だか悔しいのが流れていくようだった。とりあえず、泣けるだけ泣いた方がいいと言うので。

 

そうさせて貰う。

 

三池さんが席を外して、一人になれたので。

 

しばらくじっと涙を流して。

 

溜まりにたまったストレスをただ洗い流した。

 

それから、しばらくして落ち着いたので、食事を取る。まずは体を治すことからだ。とにかく、そうしないと。

 

一つずつ、出来る事をやる。

 

それしかない。

 

黙々と食事をして、それで。

 

まだ味はしない。

 

それから、医師の説明を受けた。

 

やはり体の彼方此方に低温火傷があって、熱中症もあまりよろしくないらしい。

 

非人道的なロボットだと医師が文句を言うが。

 

最大限耐熱してそれで。

 

他の誰も操作できないし。

 

操作は極めて緻密な作業がいるから、あたいにしか出来ない。

 

それを医師に静かに説明して。それで、悲しくなった。

 

ネメシスを斃すには、どうしても灼熱の中接近して、一撃を入れなければならない。そしてネメシスは、どうやら死の恐怖まで克服した。今までは死を怖れていた。だが、あのブラックウルフ・ネメシスは、明らかに死を怖れていなかった。そればかりか、あの断末魔。

 

あたいはよく覚えている。

 

醜悪というが。

 

あれらはいずれもが、シャドウ戦役の前に人間の間で当たり前のように飛び交っていたような内容だった。

 

人は合法的に人を殺したがっている。

 

抵抗できない相手を痛めつけるのを心底楽しむ傾向がある。

 

それが人間だ。

 

あの声は、人間を学習したシャドウだからこそ、漏れ出してきた邪悪な声そのもの。そしてそれは、人間の本質ですらある。

 

人間に善性があるとしても。

 

少なくとも、それはあのネメシスを押さえ込めるほどのものではない。

 

むしろ地球につくしているのはシャドウではないか。

 

あたいがやっているのは、本当に意味があることなのか。それすら不安になってきていた。

 

「今は考えるのを止めて、回復に集中しなさい」

 

「分かりました。 呉美大佐……准将は」

 

「今治療を進めています。 命は恐らく取り留めるでしょう。 ただし熱中症が酷く、恐らく意識が戻ったとしても、一生歩くことは出来ないでしょうね。 記憶などに障害があるかも知れません」

 

「……分かりました」

 

溶岩の中に飛び込んで。

 

それで蒸し焼き同然になったのだ。

 

それはそうなる。

 

あたいがそうなっていたのを、あの人が肩代わりしてくれた。

 

呉美准将の行動は、あたいから見れば凄いと思う。まさに軍人の鏡だし、世界を守ったのだ。

 

だが平均的な人間はどういうだろうか。

 

馬鹿にして笑うのではあるまいか。

 

そう思うと、そんなのと同じ生物である事がただ情けなかった。

 

しばらく休む。

 

胃薬が増やされる。

 

多分、心に整理はつけられる。

 

だけれども、すぐにそれが出来るかというと難しい。無言で治療を続ける。

 

低温火傷の治療は終わり、それで歩くことを許可された。

 

呉美准将を見舞いに行きたいと言ったが、面会謝絶だそうだ。そうかと思う。要するにまだICUだとかから出られないのだろう。

 

それなら、押しかけても迷惑を掛けるだけだ。

 

無言でリハビリを始める。

 

体は若いので、どんどこ治る。

 

その途中、メールが来た。

 

麟博士からだった。

 

麟博士は喋る事はどうもおかしいが、メールの内容は至って真面目だ。畑中博士の顔文字だとかだらけの読みにくいのとはだいぶ違う。

 

「超世王セイバージャッジメントの冷房機能について、幾つか画期的な機能を盛り込む予定です。 これで今まで以上に継戦が出来ます。 また溶岩化する中を突入する事も考慮して、それについての対策もします。 貴重な物資を大量に使いますが、大量にあるのでどうにかします」

 

そっか。

 

それを先にやって欲しかったというのは野暮だ。

 

あんな戦闘の展開なんて、誰も予想はできっこない。

 

まさかそもそも逃げずに、熱を最大限利用して何もかも滅ぼそうと目論んでくる輩がいるとは。

 

北条という人が病院まで出向いてきたので、リハビリを手伝って貰う。

 

かなり忙しい状態らしい。

 

話によると、あのネメシスとの戦闘の余波で彼方此方に竜巻が発生しており、それらの被害が小さくないそうだ。

 

現在第一軍団は総出で復旧作業をしていて。

 

それには各地の軍基地だけではなく、京都工場も含まれるとか。

 

京都工場も被災したが、どうにか立て直しが進んでいるらしい。

 

提供された稀少な物資についても無事だそうだ。

 

「もう少しブラックウルフ・ネメシスの撃破が遅れていたら、恐らく神戸で万単位の死者が出ていました。 膨大な雨が降り注いで、いわゆるスーパーセルが起きかけていましたので」

 

「呉美准将が守ってくれたんです」

 

「いや、貴方もですよ」

 

有無を言わせぬ口調だったので、黙るしかない。

 

リハビリについては、とにかく北条という人は本職よりも詳しくて、てきぱきとやるべき事をやり。

 

回復状態を見て、メニューを渡してくれた。

 

それをこなして行け、ということだ。

 

あたいとしても、それはやるべき事である。やるだけだ。

 

問題は、ネメシスが更に次は悪辣な手に出てくると言う事。どんなことをして来るか、見当もつかない。

 

それでも対応しなければならない。

 

数日、リハビリで過ごして。

 

それで、呉美准将が、意識を取り戻した。

 

 

 

呉美准将への面会が許可されたので、会いに行く。

 

人工呼吸器をつけているだけではない。

 

肌も焼けてしまっていて、それどころか髪も全て剃ったのだろう。なんだか帽子みたいなのを被せられていた。

 

喉が焼けてしまったらしく、喋る事は出来ないらしい。

 

ただ、麟博士が喋るのに使っているのと同じもの……高度翻訳AIで、意思を言葉にして伝えてくれる。

 

「状況は聞いています。 被害を最小限に抑えられて良かった。 飛騨大尉に、行動のグリーンライトを渡して良かったです」

 

「そんな、小官が力不足だったから」

 

「あの時、畑中中将でもどうにもできなかったと思います。 だから仕方が無い事でした。 シャドウすら協力しての撃破です。 それを成功させたのは、間違いなく飛騨大尉の勇気ですよ」

 

言葉が出ない。

 

まだ涙が出る。

 

呉美准将は、多分静かに笑ったのだと思う。

 

「私は軍人で、死ぬ事が仕事です。 だからこれでいい。 シャドウ相手に、こんなに形を残して戻って来られただけで幸運なんです。 最初の頃、超世王セイバージャッジメントを中核に、シャドウとの大規模戦闘をしていた頃は、毎度形も残らないくらい酷い死に方をした兵士がたくさんいました。 私はあまり長くは生きられないそうですが、それでも貴方と神戸と、北半球を守りきった。 だから、バトンを渡します。 後は、貴方がやってください」

 

「分かりました。 命に代えても」

 

「ええ。 お願いします」

 

敬礼する。

 

それだけで気力を使い果たしたようで、呉美准将は意識を失った。

 

渡された。意思を。

 

継いだのだ。

 

だから、これからは泣いてなどいられない。

 

ネメシスは数年以内に出現が落ち着く。

 

あたいはそれが、後数回だとみていた。

 

あのネメシスの能力、明らかに記録で見た大型種を超えていたと思う。はっきりいって単騎で地球を滅ぼせるレベルだった。

 

中型種でも其処まで出来ない。

 

そしてシャドウにも出来ない事がある以上。

 

如何にその能力を悪用したとしても、限界があるはずだ。それが分かっているなら、どうにか出来る。

 

ただ、もしもだ。

 

出来る限界に達する事を、ネメシスが目論むとしたら。

 

病室に戻って、メールを入れる。

 

まだ包帯が取れていない場所もあるので、若干使いづらい。

 

体の一部がダメになるだけで、こんなに動きづらくなる。昔の……戦国時代の武士は指の欠損も珍しくなかったらしいが、それだとその後の生活に大きな支障をきたしただろうなと思う。

 

ともかくメールを出したのは、麟博士だ。

 

ナジャルータ博士はシャドウの専門家。

 

畑中博士は超世王セイバージャッジメントなどの対シャドウ兵器の専門家。

 

だが、麟博士は統計の専門家らしく、総合的にシャドウとその戦闘を分析する人である。相談するなら、麟博士しかいないと思った。

 

「ネメシスは明らかに学習しています。 もしも前回以上のダメージを人間に与える方法があるとしたら、それを実行しようと動くのだと思います。 例えば地震とか。 火山噴火とか。 何か思い当たりませんか」

 

「……そうですね。 人間が地熱発電の失敗で地震を引き起こしてしまった事故の例が今までに何度かあります。 現実には気象兵器はついぞ作られませんでしたが、ネメシスは前回の戦闘で、自身を気象兵器としました。 それを想定すると……恐らくはM10以上の地震でしょうか」

 

「M10!」

 

「普通だったら起きえません。 巨大隕石が落ちるレベルです。 しかし、あの異常な熱操作能力を最大限悪用した場合。 或いは日本の全プレートを一斉破断するような事を目論んだとしたら」

 

ぞっとした。

 

麟博士が、即座に科学者達を集めると言う。

 

幸いシャドウからネメシスが出現する事もあって、ネメシスがいきなり最もまずい場所に出現する可能性は低い。

 

ただし、シャドウですら大まかな出現位置を決めるのがやっとだ。

 

あれほど強大なシャドウですら。

 

人間の悪意には、それだけ手を焼いていると言うことである。

 

あたいは思う。

 

悪意を良いものとして褒め称える人間はたくさんいる。

 

詐欺師を格好良いものだと考えたり。

 

悪辣な犯罪組織を格好良く描いたり。

 

人間は邪悪に憧れるし、それを好む生物なのだ。

 

だがそれが地球をこうも滅茶苦茶にした。

 

それをどうにかするには、人間という種族を変えるしか無い。

 

今、あたい達の世代は、催眠教育で幼い頃からその手の邪悪とは切り離されて生きられるようになってきた。

 

だからシャドウ戦役前の時代の人間の悪辣さには反吐が出る。

 

シャドウ戦役前には、あの手の輩が山ほどいたことを思うと、それだけ世界がおぞましかった事が分かるのだ。

 

そして人間にさえその悪意が向いていたのだ。

 

それこそ世界にはどれだけの悪意が向いていたのかも分かる。

 

シャドウが現れなければ、人間はその悪意で世界を焼き滅ぼしていた。

 

それもシャドウが証明した。

 

あのシャドウの事だ。

 

恐らくは、一度だけの事で結論を出したのではないのだろう。それくらいは、あたいにも見当がつく。

 

それもあって、はっきり言って。

 

人間の悪意が考え出す破壊については、想像もできない。

 

麟博士が、先に何かしらの対策を練ってくれれば。最悪のネメシスを食い止められるかもしれない。

 

あたいはその時。

 

ただ身を盾に、戦うだけの事だ。

 

あたいは剣じゃない。

 

ネメシスという人間が作り出した最悪の悪意の塊に対して。

 

世界を守るための盾になる。

 

あたいは不甲斐ない盾だ。

 

だけれども、呉美大佐から引き継いだ。意思も心も。

 

だから、呉美大佐の分も。

 

ネメシスを斃す。

 

幸いネメシスは一度学習した失敗は繰り返さない。多分地球が滅ぶレベルの台風を作ろうというもくろみはもうしない。

 

ならば、対策は出来る。

 

そう、信じる。








今までネメシスに対してはどうしても受け身の姿勢でしか対応できませんでした。

それが今、逆転しようとしています。



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