スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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具体的なネメシスの狙いが分かった以上、それに備えなければなりません。

今までと違って、ある程度の相手の目的が分かっているアドバンテージ。

これを生かす必要があります。

そして前回のネメシスの破壊力から見ても。

全ての戦力を投入するのは、今しかないのです。






2、連携戦の準備

呉美大佐が退役して、一気に忙しくなった。

 

広瀬大将は、現場に出る。

 

既に戦場になるだろう場所は幾つかに当たりがつけられている。絞り込んだ主戦場で、如何にして敵を消耗させるか。

 

それがGDF第一軍団の仕事。

 

恐らく、広瀬大将にとっての最後の戦闘指揮だ。

 

これで生きて帰れるとは思っていない。この間のネメシス種ですら世界を滅ぼしかけたのだ。

 

今度はそれ以上の強度を持っている可能性が高い。

 

畑中博士と作戦については相談した。兵士達も今回は総動員する。敵は恐らく、今度のが臨界点とやらの可能性が高い。

 

それがどういうルートを通ってくるとしても。

 

対応して、必ず仕留める。

 

目的地点に辿りつかれた場合、そのまま世界の破滅まで持って行かれる可能性は六割を超えると言われている。

 

実際問題、前回のネメシスの時も、シャドウは目的を把握できなかったようだった。現地でネメシスが座り込んだ後。

 

呉美大佐と飛騨大尉の奮戦が無ければ。

 

そのまま超巨大台風で、北半球は生態系ごと塵にされていたのである。

 

訓練を続ける。

 

幸い物資と弾薬はある。

 

アトミックピルバグ戦で使い果たしたが、それからどうにかちまちまと蓄積したのである。

 

第一軍団が一回、総力戦をやるだけの弾薬はあるので。

 

それだけは救いだと言えるだろう。

 

訓練を続けていると、連絡が入る。

 

麟博士からだ。

 

今、畑中博士は非常に忙しい。最終戦で用いる文字通りの決戦兵器の調整のためである。創意工夫で本来だったらどうやっても勝てないシャドウに一矢報い、ネメシスとも戦える土俵を作って来た人だ。

 

今、畑中博士ですら、全力で研究に集中している。

 

それくらい、事態はまずいと言えた。

 

「如何しましたか」

 

「現在想定される侵攻路を更に絞り込みました。 これのどれかになると思います」

 

「分かりました」

 

ちなみに麟博士の声は電子音声だ。

 

というのも、例の如く口から出る言葉と意思がまるで違うからである。通話などでは顕著で、話している時にはほぼ完全に電子音声が代替している。

 

こればかりは脳の構造の問題なのだから仕方が無い。今は、それをちゃんと翻訳できるだけで凄いと言えるだろう。

 

「いずれのルートでも、京都工場を恐らくネメシスは通過するか、しない場合でも戦闘が開始されれば巻き込まれます。 戦闘開始の情報が入り次第、即座に避難してください」

 

「何処に逃げても同じだと思いますが」

 

「最終的にネメシスと交戦して、奴の想定通りに事態が進行すればそうです。 しかし、通路にわざわざ残って犬死にするのには何の意味もありません。 避難は北条に指示して徹底させます。 貴方も必ず逃げてください」

 

今回は、恐らくネメシスは散々煮え湯を飲ませてくれた超世王セイバージャッジメントの拠点である京都工場もついでに踏みにじるのではないか。

 

これは事前に情報が入っている。

 

そして、ネメシスが人間の悪意の凝縮体に近い存在だと分かった今では、それに説得力がありすぎるのだ。

 

ともかく、この戦いは例え広瀬大将が命に代えても勝つ。

 

負けたら人類は終わりだというのもあるが。

 

広瀬大将も、飛騨大尉から得ている情報には目を通しているのだ。

 

シャドウ戦役前の時代。当時の有様は広瀬大将も知っている。今でもGDFの会議でバカな代表共の醜態は見ているが、それが世界中で当たり前だった時代があったのだ。荒廃しきった人心を示すような巫山戯た言葉の数々。聞き苦しいことこの上ない代物だった。

 

あんな言葉を吐き散らかす連中なんて、許しておいて良い筈が無い。

 

ましてや、シャドウですら世界のために活動していたことが分かった今だ。

 

嬉々として全てを踏みにじり。

 

エゴを正当化していたようなカス共の理屈で、世界を滅ぼしてなんかたまるか。

 

広瀬大将は軍人だ。

 

勝利のために時には非人道的な判断だって下さなければならない。

 

だが、それも限度がある。

 

プライドとでもいうものだろうか。今回の戦いは、広瀬大将の最後になる可能性も高い。だからこそ。

 

最後くらいは。過去に大量のちいさな暴君が湧いていた時代に、唾を吐いてやるつもりだ。

 

第一から第四師団までの各師団に指示を出して、何度も演習をする。

 

今回は訓練部隊である第四師団にも出て貰う。

 

第五師団は避難誘導だ。

 

ネメシスが完全に予定通りに動いた場合は、人類は万が一にも助からない。神戸にいる人間なんてなおさらだ。

 

だが、ネメシスの作戦をある程度阻止した場合。

 

その時の被害は状況による。

 

ただ厄介な事に、ネメシスは知恵が回る。先に避難をさせても、恐らくその途中に対して仕掛けて来るだろう。

 

遠距離からの熱線砲を使うか、他の手段を使ってくるかは分からないが。いずれにしても、避難民なんてネメシスにとっては楽しい鏖殺の的以外でも何でも無い筈で。必ず殺しに掛かってくる。

 

だから、奴との交戦が始まり。

 

ネメシスに避難民なんかかまう暇が無くなってから、避難をしなければならない。

 

更に面倒な事に、実際問題いつネメシスが出るかはまったく分からないのである。

 

今までもそうだったが、ネメシスは出現するタイミングや期間がバラバラで、統計の取りようがない。

 

麟博士もこのデータでは法則性が嘆いていたくらいであり。

 

実際問題、中央アジアで斃されたネメシスについては、こちらでも詳細が掴めない事もある。

 

日本で斃したネメシスが全体のどのくらいなのかも分からない今。

 

はっきりいって、その場その場で対応するしか無く。

 

ギリギリまで避難訓練をして、如何に被害を減らすか。それしか考える事ができないのだった。

 

「第三師団、遅れています。 第一師団は少し早すぎます。 敵の浸透を遅らせるべく、それぞれもう一度」

 

「イエッサ!」

 

「練度が足りませんね。 後どれくらい時間があることか……」

 

思わずぼやく。

 

名将として指揮官を信頼した兵士は、どれだけ状況が悪くても一歩も引かない。勝てると確信しているからだ。

 

そういう例は過去に幾つもある。

 

恥ずかしい事に広瀬大将も兵士達にそう認識されているようだ。だったら、せめて一人でも多く。

 

この戦いを生き残らせなければならない。

 

相手は凶悪なシャドウよりも更に厄介な相手だ。

 

戦闘記録には全て目を通しているが、結論から言えばとにかく斃しづらいことこの上ない。

 

戦闘で次々に奥の手を出し、想定を遙か超えるスペックで畑中中将を苦戦させてきた中型シャドウと違い。

 

ネメシスは分かっていてもなお、どうにもならない損害を強いてくる危険な相手なのだ。

 

この手の相手がもっとも厄介である。

 

人類がボタン戦争になれすぎたのが要因かも知れない。

 

それが封じられ、互いの出血が確定となった場合。

 

既に人類は、それに耐えられるほどの能力を失っているのかも知れなかった。

 

訓練を済ませて、部隊を戻らせる。

 

休暇もしっかり取らせる。

 

兵が多少いなくても動けるようにも訓練をしておく。

 

次の戦いでは。

 

どれだけ生き残れるか分からない。

 

だから指揮系統が混乱しても、それでも戦えるようにしておかなければならないのだから。

 

 

 

連日激しい訓練をしていることが、あたいの耳にも入ってくる。

 

受け身の訓練を混ぜつつ、シミュレーションをする。超世王セイバージャッジメントが、臨界点に達したネメシス種と戦うために作りあげられた武器。

 

斬魔剣Ⅲが一段落したが。

 

今度はそれが、極めて習得が難しく。

 

今、大苦戦しながら習得を頑張っていた。

 

それだけだと気が滅入る。

 

本当に上達しないからだ。

 

勿論シミュレーションには毎度畑中博士が手を入れてくれている。畑中博士は今、ずっとキーボードを叩いていて、本当に忙しいのが分かる。

 

普段と違って鬼気迫った雰囲気で、三池さんに茶を淹れるようにいう声が時々聞こえてくるが。

 

飄々としてマイペースないつもと違って。

 

殺気立ってさえいるのが分かった。

 

怖いとは思わない。

 

ぶっちゃけ北条という人の方がもっと怖いし。

 

何よりネメシス種の方が何倍も怖い。

 

だから、平常でいるだけだ。とにかくあたいに出来るのは、訓練をこなす事。ネメシス種は、次で打ち止めの可能性が高い。

 

例え最強の奴が出てくるとしても、次で打ち止めであるのだったら、どうにか出来る筈だ。

 

だから、それを信じて訓練を行う。

 

淡々と訓練に励める。

 

お茶と菓子が出た。

 

休むのも仕事だ。そう北条という人に言われるので、そうさせて貰う。黙々と休憩を入れる。

 

整備工のおじさん達も、怒号を張り上げていた。

 

やはり相当にぴりついている。

 

麟博士はぼんやりしているように見えて、この鉄火場になった京都工場で、平然と仕事を続けている。

 

あたいよりちょっと年上なだけだけれど。

 

あたいが思うよりもずっと修羅場を潜っている人なのかも知れない。

 

或いは、考えている事と口から出る言葉が違うと言うハンデが、それ相応に人生で負の影響を及ぼしており。

 

それで鍛えられたのかも知れないし。

 

逆に、他人なんてどうでもいいと考えている可能性もある。

 

これは麟博士の生い立ちを想像すると容易に思い当たる。

 

今の時代ですら。

 

麟博士みたいな体質だと、色々他人との摩擦は起きるのだろうから。

 

訓練に戻る。

 

また密着状態からの受け身を続ける。あらゆる方向から、密着状態からの衝撃を打ち込まれ。

 

それで負傷しないように受け身を取る。

 

何度も何度もやる。

 

練度をひたすらに上げる。

 

北条という人は、二度三度と出来なくても怒らない。

 

順番に何度でも説明してくれる。

 

怖いと言う点では確かに怖いのだが。こういう所は、恐ろしい程に気が長いのかも知れなかった。

 

或いはあたいみたいなボンクラの扱いに慣れているのかも知れない。

 

「かなり応用が出来るようになって来ましたね」

 

「ありがとうございます」

 

まあ、褒めてくれるが、リップサービスだろう。

 

この人の技量を見ていると、少なくともネメシス戦で超世王セイバージャッジメントのコックピットにいても、絶対に怪我しないだろうと思うし。

 

なんなら車に跳ねられても、無傷である可能性すらある。

 

虎くらい素手で斃せるというのは、恐らく嘘では無いとみていて思った。

 

体格が数倍の岸和田さんが自分より強いと断言し、怖れているのは伊達ではない。訓練をつけてもらいながらそれが良く理解出来る。

 

受け身が一段落して、休憩を入れる。

 

まだまだだなあ。

 

そうあたいは思っていたが。一緒に完璧なマナーで茶を嗜んでいた北条という人が、いつものように貼り付いた笑顔のままいう。

 

「次の戦いが臨界点になると聞いています。 焦りが見えるのはそれが理由ですか?」

 

「はい。 負けたら人類が滅ぶとなったらなおさらです」

 

「分かりました。 ちょっとその焦りを消した方が良いでしょう。 現時点では、どれだけ超世王セイバージャッジメントを激しく動かしても、飛騨大尉は致命傷を受けず、継戦能力は失わないと私は見ています。 ただし、その焦りがミスを産む可能性は高い。 ならば。 私が多少その焦りを取り除いておきましょう」

 

何をするつもりなのだろう。

 

そう思っていたら、話をしてくれる。

 

この人はやはり特務で、広瀬大将の直属麾下。厳密には軍人としての階級すら持っていないという。

 

非常に色々と面倒な立場であるが。

 

それにはあたいも、強化人間計画の被験者らしいという事は分かっている。

 

だから、それもまた仕方が無いのだろう。

 

存在自体が軍の暗部みたいな人だ。

 

それこそ暗殺されていてもおかしくないのだから。

 

「私の実年齢は、貴方よりずっと下です」

 

「はい……えっ!?」

 

「あまり大きな声を出さないように。 そもそも色々あるのは貴方も知っている筈ですよ、飛騨大尉」

 

「すみません」

 

そうか、それもまた闇が深い。

 

クローンを即席で大人にして、即座に兵士として使う。

 

それはこんな状態だ。誰でも考えるだろう。

 

この人がその計画を受けて試験的に急速成長させられたとしたら。どんな邪悪な実験を受けたのか、想像もできない。

 

人間を裏切ってもおかしくは無いだろう。

 

それについては、よく分かる。

 

だからこそに、広瀬大将はこの人を直属にして信頼し。

 

信頼してくれている事を理解したこの人もまた、今あたいみたいな未熟者を鍛えてくれているのかもしれない。

 

「死んだら世界が終わりと言いますが、どのみち死ねば貴方にとっての世界は終わりです。 昔は個人の生死が世界の終わりに直結するような作品の事をセカイ系とか言っていたらしいですが。 厳密には個の主観からすれば、それ自体は間違っていないと言えるでしょうね」

 

「……」

 

「良いんですよ怖がっても。 それなのに、貴方は自分の意思で戦う事を選んだ。 それだけで何よりも立派です。 私は流されるまま、広瀬大将に拾われるまでは地獄を過ごして来ました。 広瀬大将が拾ってくれなければ、多分第五師団の誰かしらに処分されていたでしょうね。 虎より強い程度では、近代兵器を装備した特務には……まあ一個小隊相手ならともかく、軍相手には勝てませんので」

 

この人が其処まで言う程か。

 

でも、確かに人間の軍隊は、基本的に人間を効率よく殺すための組織である。普段は災害救助などのレスキューをしていても、本質的にはそれだ。

 

人間は地上であまりにも圧倒的な存在だったから、その武器は基本的に同族に向けられた。

 

相食み合って身内を殺す技術ばかりを磨いた。

 

それが人間というしようもない生物だと言う事だ。

 

それに関しては、あたいは何の異論もない。

 

「逃げたいですか? 本音では」

 

「いえ」

 

「では、怖いだけですね」

 

「はい」

 

あまり多くの人を、この人の前では喋れない。

 

それだけ圧倒的な実力差がある。

 

確か地上で現時点で一番強い肉食動物は、武装した人間を除くと虎だと聞いている。単体だと数倍の体重差すらひっくり返して熊よりも強いそうだ。

 

それよりも素手で強いこの人は、それこそ恐竜でも連れてこないと勝負にならないだろう。いま生きている動物だと、アフリカ象とかか。それくらいの実力を持つ人なのだ。

 

「私は今ではあまり怖いとは感じません。 何か守るべきものが出来たとき、人は強くなるとか言いますが。 実際にはその守るべきものの事を考えて弱くもなります。 飛騨大尉は、今の時点では自分だけしか、究極的にその守るべきものがないのではありませんか?」

 

「いや、京都工場の人達も大事です」

 

「優しい事ですね。 いずれにしても、その人達は対ネメシスのスペシャリスト。 貴方が守る守らないでは無い筈です」

 

「……はい」

 

それはそうだ。

 

畑中博士を守るとか想像もできない。

 

ともかく、と言葉を北条という人は句切っていた。

 

「今は気楽に考えてください。 自分の命を自分で好きに使える立場にあります。 立ち回りを工夫すれば、恐らく生き残る事も可能になる。 その選択肢があるだけ、今の飛騨大尉はとても幸運です。 それだけ考えておけば、だいぶ楽になると思います」

 

「分かりました。 ありがとうございます」

 

そうか。確かにそれもそうだ。

 

北条という人は、それこそあたいよりも年下で、この見かけである。だとすれば、人生はがんじがらめ。

 

広瀬大将がいなくなれば、きっと命すら危うい立場にある。

 

とてもこの人を作りあげた研究なんて、公開する訳にもいかないのだろうし。

 

それが、こんな大事な立場で、こんな大事な戦略的拠点に派遣するくらい信頼してくれている。

 

それだけで広瀬大将をどれだけ信頼しているか分からない。

 

この人の思考が、少し分かった気がする。

 

だから、一気に気が楽になっていた。

 

それから、訓練が格段に楽になった。

 

力が良い意味で抜けたのだろう。

 

無言で淡々と訓練をしていく。明らかに集中力が増した。今は、自分だけ考えていればいい。

 

呉美大佐は、自分の意思でああしたんだ。

 

確かにあたいはまだ未熟だ。

 

だから、次までに克服しろ。

 

シャドウとの連携が取れることも分かった。今後は、ノワールの奴は要所で使い倒してやる。

 

あいつはあたいに興味を持った。

 

それを後悔するくらい、次の戦いでは使いたおしてやるつもりだ。

 

訓練が終わったので、宿舎に戻る。

 

ロボットに食事を作らせて、風呂に入る。

 

汗を流すのが気持ちいいと思ったのは初めてだ。髪はまだ伸ばしているが、これの手入れで苦労した事は無い。ロボットが全部やってくれる。昔はとにかくあらゆる意味で髪の手入れは大変だったらしいから。

 

これに関しては、とても良い時代である。

 

食事も終えて横になるが。

 

ここ最近では、一番気分が楽かも知れない。

 

ぼんやりして、ニュースを見る。

 

何処かの国の代表が拳銃自殺したことは聞いている。会議中に絶望して、拳銃を咥えて引き金を引いたらしい。

 

この状況では仕方が無いなと思う。

 

何しろ選べないのだから。

 

市川代表が、バカの群れを統率するはめになって、散々だという事は聞いた。

 

畑中博士が大笑いしていたそうだ。

 

三池さんが、他の人には話すなと釘を刺した上で、それを教えてくれたのだけれども。野心を満たして満足している筈の市川代表でもそうなのだ。

 

他の連中だって、シャドウの中でぽつんとある人間の街や国で。

 

それぞれ大した人数もいないのに其処から選出され。

 

それで好き勝手ばかりいう輩に、いつも足下を掘り崩されているのかも知れない。

 

だから焦るし、攻撃的にもなる。

 

人間は群れになってやっと他の動物と対等に渡り合える程度のスペックしかないとあたいは聞いている。

 

だが、そのスペックがこの有様では。

 

人間程度たかが知れているといえるし。

 

そんなものを守るくらいだったら。

 

京都工場で、最前線で命を張っている人達のために戦う方が、何万倍もマシだ。

 

それがあたいの命の使い方。

 

そう分かった今。

 

あたいは、とても気分が穏やかだった。

 

眠るのも随分とすっきりである。

 

退院してから色々とあって。呉美准将の事もあったから、本当に辛かった。最悪睡眠導入剤を処方することもロボットは選択肢に入れていたと聞かされる。

 

だが、それも今は必要ない。

 

すっきり眠ってすっきり起きる。

 

そして、訓練に出向く。

 

臨界点ネメシスが現れるまで、どれくらい時間があるか分からない。だけれど、現れた事を後悔させてやる。

 

そう思って、淡々と訓練を続ける。

 

北条という人の訓練も、今までよりも更にすっと入り込んでくるようになっていた。

 

いや、北条という人はやめるか。

 

今後は内心でも、北条さんと呼ぼう。

 

貼り付いたような笑顔と、人外の領域に達している戦闘力が怖かったのは確かに事実だ。それは今更繕っても仕方が無い。

 

でも、北条さんが相応のものを抱えていて。

 

人生を広瀬大将に救われて。

 

それをよりどころに生きている事を思えば。

 

あたいだって、得体が知れないからなどという理由で怖がってはいられない。

 

勿論その気になれば秒であたいの首くらい素手でへし折れるのは変わってはいないだろうけれども。

 

それはそれ、これはこれ。

 

そんな事を言ったら、前に訓練役として北条さんが連れて来ていたあの大巨人、岸和田さんだって同じだったのだろうから。

 

シミュレーションの方も、訓練の効率が露骨に上がっている。

 

呉美大佐、いや准将が、側でアドバイスしてくれているようだ。

 

時々、呉美准将の容体を聞くが。

 

どうにか緊急治療室を出たものの、当面は人工呼吸器は外せないし、地力で歩くのは一生無理。

 

その事に代わりは無いようだった。

 

だから、その分あたいが戦う。

 

同じように道を切り開いた畑中中将の分もある。

 

守るためじゃない。

 

背負ったものを引き継ぐためにだ。

 

シャドウとの戦いは、ネメシス種との戦いが終わった後も、続くかも知れない。

 

だけれども、それが終わったら。

 

きっと、この進歩した技術と。

 

シャドウの超がつくほどのスペックがもしも合わされば。

 

地球は救われて。

 

人類に、次の時代が来るのかも知れないのだから。

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