スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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最終決戦開始。

人間の悪意の最終結束点、臨界点であるネメシス。

それは最早通常のネメシスと違い、また最後のネメシスでもあります。

だから名前は一つしかあり得ない。

ネメシスエンドです。






3、臨界の魔物

前のネメシスが現れて、四ヶ月後。

 

かなりのロングスパンだが、いつかは来ると言う事が分かっていた。そして、ついに来た。

 

それまでも中央アジアで数体のネメシスがシャドウによって討伐されていた。

 

だがそれらも、観測手段が限られている現在の人間にすら観測出来るほどの戦いが起きていたことを意味する。

 

数千㎞先から、揺れが届くほどの戦いもあった。

 

それでもシャドウは、時間さえあればネメシスを斃せるようだった。

 

或いはだけれども。

 

ネメシスの出現場所をある程度制限できるように。少しずつ切り離して、弱体化させて斃していたのかも知れない。

 

可能性はある。

 

シャドウにしても、もしも地球が完全破綻したら、復旧は相当に大変だろう。

 

人間はあっと言う間に滅ぼし、クローン技術で再生する位は出来るとしても。地球そのものの環境が致命傷を受けると、シャドウの当初の目的からしてまずいし。復旧につかうリソースだって相応に限られてしまう。

 

それが分かっているからこそ。

 

ネメシスの戦略は、分かるのだ。

 

だが、ついに。

 

来るべき時が来て。

 

ネメシスが現れていた。

 

「偵察艇から入電! ネメシス出現! こ、これは……!」

 

「如何したか」

 

「映像を映し出します!」

 

「おおっ!」

 

恐怖と驚愕の声が上がる。

 

広瀬大将は、舌なめずりしていた。なる程、これは臨界点だ。

 

恐らくだが、このネメシスは、複数の小型種シャドウが融合した存在だと見て良い。

 

出現箇所は北海道知床。

 

恐らくだが、中型種の熱攻撃を敢えて受け、その熱を蓄えながら目的地……濃尾に向かってくる。

 

飛騨の時は、敢えてゆっくり進むことで、膨大な熱量を蓄え。それで自爆テロ同然の気象兵器攻撃をしようとした。

 

だが今回は、北海道から目的地濃尾に進み。

 

濃尾の地下にある大陸プレートの集約点を破壊する。

 

それがネメシスの目的だと考えて良いだろう。

 

濃尾の地下には、日本で交わる大陸プレートの集約点がある。他にもプレートの集約点は幾つかあるのだが、いずれも深海だ。

 

深海だと、熱をどんどん水に吸われることもある。

 

一瞬で全てを破壊するようなプレートの粉砕には効率が悪い。

 

何よりも超高熱で海に入るような暴挙に出た場合、シャドウも即座に大型全てを用いて排除に動くだろう。

 

ネメシスは悪意を持って、「考えて」いる。

 

それは全てが人間を滅ぼすためで。

 

人間を滅ぼすためには、地球なんぞどうでもいいと考えている。

 

シャドウ戦役前の人類が、自国の利益のためには他の国どころか、地球の資源全てを食い荒らしてもいいと本気で考えていたのと同じだ。

 

ネメシスが人間の最悪の意味での後継者だと、よく分かる。

 

「このネメシスを、ネメシスエンドと呼称。 各師団、想定に沿って行動開始!」

 

「行動開始!」

 

「シャドウの勢力圏に入って迎え撃つことになりますが」

 

「かまいません。 予定通りやってください。 シャドウもそれは理解している筈です」

 

ネメシスを迎撃する際に。

 

シャドウは領域に入ることを許可した。

 

そしてあのノワールは嘘をつかない。それについては、人間なんぞよりもよっぽど信用できる。

 

とにかく、シャドウと何処まで連携出来るかが勝負だ。

 

広瀬大将も神戸にある総司令部から出て、指揮車両に乗り込む。アレキサンドロスⅢを改装したものだが。

 

ただ、別に特別頑丈な訳でもなんでもない。

 

どうせネメシスの熱線砲を喰らったら、どれだけ頑強な指揮車両に乗っていても同じである。

 

「ネメシスエンド、時速280㎞……300㎞……320㎞……速度を上げています!」

 

「中型種が一斉に攻撃していますが、倒し切れていません!」

 

「第一から第四師団、指定通り展開! 各師団、HEAT弾用意!」

 

「誘導弾も準備完了! いつでも放てます!」

 

映像が出る。

 

津軽海峡をどう越えるか。それが課題のように思えていたが。

 

今度現れたネメシスは、ブラックウルフ、ホワイトピーコック、グレイローカスト、シルバースネーク、クリーナー、全てを混ぜ合わせたような姿をしている。それは今、巨大な翼……翼長二百mにもなるだろう。それを拡げて、悠々と津軽海峡を越え、無人と化した青森へと降り立っていた。

 

そのまま凄まじい砲火がネメシスを出迎える。

 

核数十発分、いやその数十倍は熱量を既に浴びているだろう。シャドウはそれくらいの能力を持つ。

 

それでも、まだまだ余裕という風情だ。

 

むしろ、作戦行動に必要な熱を蓄えられているからなのだろう。

 

「此方第一師団!」

 

「広瀬です」

 

「はっ! 第一師団、静岡に到達! シャドウはすんなり通してくれました。 これより縦深陣を展開!」

 

「分かりました」

 

シャドウが通してくれているのならいい。

 

問題は他の師団と。

 

ネメシスがどういうルートで来るかだ。

 

「第二師団は」

 

「甲府に向かって進軍中!」

 

「第三師団、北陸を移動! 間もなく越後に入ります!」

 

よし。

 

広瀬大将は、第四師団と一緒に、長野で待ち受ける。

 

そして、ネメシスの移動経路を見ながら、それぞれが行動を開始。

 

ネメシスエンドに対して縦深陣地を構築し、奴の目的地への到達を防ぐ。

 

さて、これからだ。

 

「超世王セイバージャッジメントは」

 

「整備完了。 いつでも出られます」

 

「デチューンモデル全てとともに、濃尾で待機。 縦深陣地で時間を稼ぐ間に、全戦力で決戦地点に集結してください」

 

「イエッサ!」

 

飛騨大尉も大丈夫だそうだ。

 

呉美准将の事もあった。心配はしていたが、それでもどうにか出来ると信じたい。

 

この戦いで広瀬大将は生きて帰るつもりはない。

 

やるべき事は全てやった。

 

勿論、この後嘘みたいに人類が纏まって、シャドウと上手くやっていける訳がないとも思っている。

 

それでも、これが最後の仕事だ。

 

それくらいの覚悟でいなければ、とても食い止められる相手ではなかった。

 

 

 

東北を驀進するネメシスエンド。

 

姿はもはや何が何だか分からない。様々な姿が融合していて、しかも一秒ごとに形を変えている。

 

まだ動くな。

 

決戦は、濃尾の少し前で行う。

 

飛騨か岡崎か、あるいは越前か。

 

いずれにしても、どのルートで来るにしても、現在存在する全てのデチューンモデルと一緒に戦うことになる。

 

間違いなく、あのネメシスが臨界点だ。

 

ネメシスエンドと言われているのも納得出来る。

 

ギリギリまで、目を閉じて精神を集中する。

 

北条さんは既に前線に出た。訓練部隊である第四師団まで前線に出るような戦いである。戦える人間は全員出ると言う事だ。

 

九州経由から来た場合は、この工場は放棄する予定だった。

 

だが、北海道からネメシスエンドは来た。

 

だからこの工場で、最後まで支援する。

 

そういう話らしい。

 

ナジャルータ博士が、前線と情報をやりとりしている。

 

ぱたぱたと走り回っている麟博士も、普段と違って青ざめていた。これが相当にまずい状況だと、理解しているのだろう。

 

「よし、三号機整備終わり、次!」

 

「六号機、装甲を全部取り替える!」

 

「提供された物資は使い切れ! どうせ次は無い!」

 

「大盤振る舞いだな。 ガハハ!」

 

整備のおじさんたちもテンションが高いようで何よりである。

 

まあ、それはそれとして。

 

敵の動き次第だが。

 

「連絡がありました。 ネメシスエンドは、恐らく北陸から来ます。 越前での決戦を想定して、準備が終わり次第出撃してください!」

 

「イエッサ!」

 

あたいは無言で出ると、超世王セイバージャッジメントに走り寄る。

 

装甲は今までに無い程強化されている。

 

それよりも、最大の強化は足回りだ。

 

溶岩の中でも耐えられるように、最高の耐熱装甲を施してある。搭載している最終兵器。ネメシスエンドに致命打を与えるためのとっておきも搭載してある。ただこれは、激しい戦いの時、重量から動きを阻害する。

 

どれだけ激しく動き回っても大丈夫なように畑中博士が徹底的にチューニングしてくれたが。

 

使い切りの上に、こいつをし損ねたら終わりだ。

 

「ネメシスエンド、赤熱しながら移動中! シャドウの猛攻が続いていますが、平然としています!」

 

「移動した後が焼け野原です! 既に奴の周囲が、数百℃に達しています! 木々が炎上しています!」

 

「まるで熱の化け物だ……」

 

「内在している熱はそんなものではないでしょうね」

 

ナジャルータ博士が言う。

 

今まで、ネメシスは出現地点も、やってくるだろう攻撃も、まったく分かっていなかった。

 

しかし今回は違う。

 

問題は、作戦阻止に動いている此方を、ネメシスエンドが敵視した場合だが。

 

今までは、超世王セイバージャッジメントしかネメシスは相手にしなかった。もしも展開しているGDFの部隊を敵視した場合は。

 

いや、それは考えるな。

 

指揮をしているのは軍神広瀬大将だ。

 

きっとどうにかなる。

 

程なくして、整備完了。

 

相手の速度からして、出撃するタイミングだ。

 

「やはりネメシスエンド、北陸路を移動しています! それにあわせ、第一から第四師団、全戦力展開!」

 

「長距離ロケット砲、射撃開始!」

 

「効力射! 制圧射撃!」

 

始まったようだ。

 

超世王セイバージャッジメントに乗り込む。

 

乗り込む際に、呉美准将に後を頼まれたことをもう一度だけ思い出す。

 

人間なんてどうでもいい。

 

あたいは頼まれた事を果たすために。何より自分で決めた事のために戦う。それだけだ。それだけで、心がぐっと楽になる。

 

コックピットで、全ての機材を確認。

 

よし、問題ない。出られる。

 

今回は十六機のデチューンモデルがともにでる。

 

ただしこれらが装備しているのは、全て斬魔クナイだ。

 

どうせ呉美准将のような動きは出来ない。

 

それだったら、一定の効果があることが分かっている斬魔クナイだけ浴びせて離れる。一種のミサイルキャリアみたいな形で機動する。

 

これについても、既に打ち合わせが終わっている。

 

さらに、だ。

 

「ノワール、聞こえているよね」

 

「ああ、聞こえているよ飛騨咲楽」

 

「小官達がネメシスエンドと呼ぶ個体。 あいつが臨界点ネメシスで間違いないね」

 

「ああ、間違いない。 死んだ私達の極限強化個体だ。 出現させるのを遅らせるため、君達が観測していない個体も含め、八体を処理した。 それでもまだあれだけの強さを持っている。 まったく君達は、どれだけの悪意を社会にため込んでいたのやら。 学習しながら何度も呆れたよ」

 

今は反論している余裕は無い。

 

いずれにしても、ノワールがこれだけ気さくに返事をしてくるというのは。

 

それだけ状況が切羽詰まっている事に他ならない。

 

「越前で奴を迎え撃つ。 総力戦になる。 奴の進路を、南に逸らさないようにして」

 

「ふむ、良いだろう。 前線で力が借りたいときは、遠慮無く声をかけたまえ」

 

「……分かってる」

 

此奴の助けを借りないといけないくらいまずい。

 

そんな事は分かりきっているのだ。

 

展開した遠距離攻撃部隊がありったけのロケット砲と迫撃砲を叩き込んでいる。

 

勿論榴弾砲など撃つだけ無駄なので、全てがHEAT弾仕様だ。

 

それも相手に対して高圧プラズマを叩き込むものになっている。

 

本来だと全ての兵器をそういう風に偏らせるのはあまり良い事ではないらしいのだけれども。

 

今は、そんな事は言っていられない。

 

「ロケット砲使い切りました!」

 

「即座に後退。 戦闘想定地点から離れてください」

 

「迫撃砲、弾薬消耗80%!」

 

「次はありません。 撃ちきってください」

 

広瀬大将の指示が聞こえる。

 

あたいは、京都工場を出る。出立。それに、十六機のデチューンモデルが続いた。

 

交戦開始まで、数時間。

 

おそらくあたいが五体満足でいられる最後の数時間。

 

それくらい覚悟を決めなければならない相手だ。

 

それでも、あたいはもう怖くは無かった。

 

 

 

迫ってくる巨体。

 

全身に数十の足が生えていて、それらをせわしなく動かして此方に来る。形状は毎秒変わっていて、そして観測される情報を元に、ナジャルータ博士が解析してくれた。

 

「全身を流動させています。 熱を帯びた表面を体内に、逆に体内にある熱を帯びていない部分を外に。 そうすることで、どんどん自主的に熱を取り込んでいます」

 

「恐らくは、地殻に超超高熱を一点突破で叩き込む為ですね」

 

「はい、恐らくは。 あれは移動のためだけの形態。 多足の生物は百足を例に出すまでもなく多数存在していますが、基本的に体を地面につけて移動します。 あれは少し体を浮かせている。 あの足すら、消耗品だと見て良いでしょう。 足を破壊しても、すぐに体内から次をだしてくるだけです」

 

「……」

 

とんでもない化け物だ。

 

今まで加えられた攻撃全てに対応している。その結果が、あのとてつもないおぞましい巨体だと言う訳だ。

 

現状でネメシスエンドの体長は400m近い。それも球状に近い体だから、見た目よりもずっと大きい。

 

まるで動く山だ。

 

大量の中型種が集って熱攻撃を浴びせているが、それらが小人にしか見えない。

 

ストライプタイガーやウォールボアが猛攻を浴びせてもいるが、それらもネメシスエンドの動きを止めるには至らず。

 

そればかりか。奴は恐らく、それすら計算に入れている。

 

ノワールと飛騨大尉の会話は遠隔で聞いた。

 

あれでもまだノワールが分割して削ってくれた状態だ。

 

人間の姿があれ。

 

シャドウ戦役の前に、人権を食い物にし、エゴのまま振る舞っていた邪悪の権化の結晶体があれだ。

 

今、あれを斃しても。

 

どうせ第二第三のネメシスが将来に現れる。

 

それについては、今は考えない。

 

ともかく、やるしかない。

 

「前列、配置完了!」

 

「一斉射撃開始! ノワール、聞いているなら集っている中型種をどけてください」

 

「いいだろう」

 

広瀬大将が呼びかけると同時に、さっと密着攻撃をしていた中型種が離れた。そのまま、展開している第一師団が、一斉射を開始する。

 

ありったけの弾を叩き込む。

 

戦車部隊のHEAT弾は、使い切ってしまうつもりだ。

 

着弾は、あの大きさの的だ。外れようがない。

 

後退しながら、全弾を撃ち尽くさせる。

 

戦車兵以外の兵士達は全てジープと歩兵戦闘車に分乗させている。歩兵なんて、いても邪魔になるだけだ。

 

そういった兵士達には、HEAT弾仕様のロケットランチャーを渡してある。

 

勿論火力は知れているが。

 

人類最後の戦力である、第一軍団の総火力、今叩き込んでくれる。

 

炸裂するHEAT弾の山に、ネメシスエンドはまるで動じない。まあ、それもそうだろう。

 

この程度の熱量、此処まで来る過程で散々叩き込まれているのだから。

 

効果無し。

 

悲痛な叫びがあるが、そのまま弾を使いきった部隊から、奴の移動直線上から離れさせる。足を狙うかという声があるが、させない。

 

「足を狙っても無駄です。 今はとにかく本体に熱を蓄積させてください」

 

「し、しかし大丈夫でしょうか」

 

「問題ありません」

 

熱攻撃は、結局のところネメシスも克服できないシャドウの弱点だ。これについては、最初からずっと変わっていない。

 

猛攻を続ける部隊は、次々と後退する。ジープも距離を取り、離れていく。

 

だが、その時。

 

ネメシスエンドが、前面を開く。

 

それは、おぞましい程に巨大な口だった。

 

口は上下左右に展開する。その中にあった牙が無数に生えた空洞に、熱線が集中していく。

 

「邪魔だ、どけ」

 

明確に、そう聞こえた。

 

次の瞬間、迸った熱線が、現在攻撃中の第三師団第六、第八連隊を、文字通り蒸発させていた。

 

更にその左右にいた部隊にも、甚大な被害が出る。

 

「ひ、被害甚大!」

 

「攻撃を続行。 前面に回るのを避け、弾を使いきり次第離脱してください」

 

「うぜえんだよ。 さっさと散れ!」

 

続けてネメシスエンドが、足を瞬時に束ね、距離を取って集中砲火を浴びせていたキャノンレオンをまとめて吹き飛ばす。

 

文字通りの意味だ。

 

吹っ飛んだキャノンレオンが、相当な距離をとばされる。

 

今の足の一撃は、まるでパイルバンカーだった。あんなに足が伸びるのか。それに着弾の瞬間、凄まじい熱が炸裂し、大爆発まで起きていた。

 

映像を記録する。

 

そして、後方に送って解析して貰う。

 

「ぐだぐだ回りくどい事やりやがって! さっさとこんなゴミカス共、滅ぼしてしまえばいいだろうがよ! いっそのこと全部リセットして、自分の好きなように変えればいいのに、いちいち回り道しやがって! 代わりに全部俺がやってやろうって言ってるんだ! 邪魔せずどいていろウスノロ共がぁ!」

 

明らかに人間の言葉で喋っている。

 

そして、そのしゃべり方。理屈。

 

完全にシャドウ戦役前の人間の総体そのものだ。

 

もはやネメシスが人間の悪意の煮こごりだというのは疑う様子も無い。たまたまそれが、人間を滅ぼすという形で暴走している。

 

それが、今。

 

目の前にいる、ネメシスエンドだ。

 

負傷者を後退させ、機動戦術に切り替える。分かっている。この戦いでは、超世王セイバージャッジメントと此奴が戦う前に、どれだけ消耗させるかが勝負だ。だから、恐らく戦力の殆どを吐き出す事にもなる。

 

それでも。やらなければならない。

 

「此方第一師団第七連隊! 敵付近の温度が700℃に達しています! とても近づけません!」

 

「距離を保ちつつ、機動して攻撃を続行! 一発でも多くHEAT弾を叩き込んでください!」

 

「イエッサ!」

 

「くっそお、やってやる! シャドウどもよりも此奴の方がタチが悪いって事は良く分かった! 絶対に斃してやる! 殺ってやるぞ!」

 

威勢が良い兵士の声が、砲撃音で消し飛ぶ。

 

ネメシスエンドは悪い意味での悪意だけでは無く、感情まで人間からコピーしている。暴虐を振るえば周りがそれにあわせて引いてくれると認識している言動だ。

 

「オラ雑魚がさっさとどけやクソが! 気にくわねえ奴は好きなように殴っていい! それが強者の権利なんだよ! 強者の権利のまま何もかもぶっ壊して、一からこんなちんけな星作り直せば良いだけの事を、くだらねー回り道ばっかりしやがって! 人間なんか全部死ね! 俺のやり方を認めないお前等も全部死ね! 俺だけがいればいい! 俺だけがこの世界を自由勝手に造り替えるんだよォ!」

 

「完全にチンピラですね」

 

広瀬大将はぼやいた。

 

しかもタチが悪いことに、このチンピラが地球史上最悪の脅威だ。此奴はその気になれば地球を全球溶岩状態にだって平気でするだろう。全ての生物を滅ぼしつくして、自分が気に入った生物だけを侍らせる。

 

自分好みに姿形から性格まで品種「改良」したペットを侍らせ、気にくわない生き物を見かけ次第皆殺しにしていた人間のように。

 

また熱線が迸る。敵の進行速度が早い。だが、熱線は味方に直撃しなかった。

 

降り立った巨体が、その熱線を吸収し、跳ね返したからだ。巨大なネメシスエンドの口に熱線が叩き込まれていた。

 

ただ、それは元から奴の体内にあったものだ。

 

「よう魔王さまよお。 人間なんぞ守りに来たってか?」

 

「……」

 

「ハ、集合意識で統一されている人形様には個々の意思なんて関係無いってか! 馬鹿馬鹿しい話だなオイ! 宗教とか言う代物で思考を停止させて自ら家畜になる事を選んだ人間共と同じじゃねーか! 俺は誰よりも俺だ! 自意識を持っている! 自己意識で行動している! だからおまえらみてーな人形より一兆倍偉いんだよォ!」

 

魔王がネメシスエンドに組み付く。

 

必死に暴れるネメシスエンドだが、力の差はそれほど無いようだ。大きさというか体積は十倍以上違いそうだが。

 

だが、倒せるかというとそうでもないだろう。

 

「大型シャドウを避けて攻撃を続行! 今のうちに前衛部隊は距離を取りつつ、全弾撃ち尽くしてください!」

 

「うぜえっていってんだろうがぁ!」

 

キンと音がして。

 

全ての音が止まった。いや、違う。

 

一瞬おいて、広瀬大将は、気絶していたことを悟る。これは、恐らく人間の脳を直に揺らすような音波だ。

 

シャドウは元々空気抵抗をまったくものともせず、自在に操る。

 

そもそもとして小型種ですら地上走行速度で時速百数十㎞を苦も無くたたき出すが、あれは空気抵抗を全く問題にしていないからだ。

 

それをこう言う形で悪用も出来る。そういう事か。

 

今の一瞬で、かなりの部隊が戦闘不能になったようだ。一緒に指揮車両に乗っている士官があわてて操作をしているが、機器類もかなり駄目になっている。これは、色々とまずい。

 

魔王を引きずりながら、ネメシスエンドが進んでくる。

 

逃げられずにいる部隊は、生きながら焼かれているようだ。

 

ぐっと歯を噛む。

 

とにかく、無理にでも機器を復旧させるか、地力で逃がすしかない。

 

スピーカーをどうにか復旧。

 

それで呼びかける。

 

「前衛の部隊は地力で走って逃げてください! それぞれ別方向に!」

 

「くそっ!」

 

「第三列以降の部隊は電子機器復旧に尽力! 急いで!」

 

付属品のバイクがある。

 

それで兵士達が一目散に逃げ出す。

 

重量五十トン以上はあるMBTをミニカーのように蹴飛ばしながら、ネメシスエンドが進む。

 

魔王がかなり速度を落としてくれているが、それでも進んでいる。或いは、魔王のあしらいかたを、短時間で学習したのか。

 

魔王に対して流石に直に熱線を叩き込む事は出来ないようだが、全身から熱を更に放出するネメシスエンド。

 

周囲全てを焼き尽くすつもりだ。

 

なんとかエンジン類が復旧。

 

電子機器類も全てでは無いが復旧したが、その時には既にかなりの被害が出ていた。被害が出た部隊はさがらせ、再編させる。

 

あの音、EMPも兼ねていたのか。

 

「最初の想定よりも距離を取りながら、HEAT弾をありったけ叩き込んでください。 大型種シャドウには当てないように気を付けて!」

 

「イエッサ!」

 

「畜生、やってやる!」

 

「地獄に落ちろクソチンピラ!」

 

兵士達が必死に陣列を再編して、攻撃を再開。

 

そのまま火力投射を始める。

 

戦車が燃えている。奴に踏みにじられた戦車が。ジープが焼け溶けている。奴が踏みにじった跡にあるものが。

 

点々としている、逃げ遅れて炭になった兵士達。

 

記録的な被害が出る。

 

それでも、少しでもダメージを与えなければならない。そうしなければ、この化け物に超世王セイバージャッジメントであっても勝てない。

 

何より情報を送らなければならない。

 

そうしなければ、更に勝率が下がる。

 

もう一度あの音を放とうとしたネメシスエンドの口に、ブライトイーグルが突っ込む。ネメシスエンドが口を即座に体中に増やすが、それらにも先読みしていたように。それで音が封じられて。

 

まるで菓子を取りあげられた幼児のようにネメシスエンドが喚く。

 

もはや言葉にすらなっていないが。

 

間違いなくそれは幼児の癇癪と同じだ。

 

声はチンピラのものだが。

 

いや、シャドウ戦役前に。チンピラだった連中など、幼児の頃から精神性など一切成長していない輩だらけだったという研究結果もある。

 

あれはまさにそうなのだろう。

 

戦車隊の必死の攻撃が続くが、ひゅんと何かが迸った。

 

炸裂した爆風が、展開していた連隊を立て続けに蒸発させる。

 

体の一部を鞭状に変化して振るったのだ。一㎞以上距離を離していたのに。被害報告が出るが、広瀬大将は今の攻撃についても映像を送らせて、解析させる。

 

ダメージは。

 

キャノンレオンが追いついてきて、火力投射をしている。

 

だが、全体的に確実にネメシスエンドは進んでいる。

 

あの鞭みたいな触手を振るって、片っ端からブライトイーグルを放り捨てているが。それでも放り捨てる事しか出来ないようだ。

 

完全にシャドウの性質を捨てる訳にはいかないのか。

 

いや、待てよ。

 

「ノワール、聞こえていますか」

 

「今忙しいのだが」

 

「シャドウがシャドウを殺した場合はどうなりますか」

 

「……基本的に自壊する。 ダメージを与えた場合も本来は動きが鈍る」

 

やはりな。

 

ノワールに提案をする。

 

そうすると、ノワールはしばし考え込んでいた。

 

「良いだろう。 ただし、死んだ私達は自壊までは行かない。 既に私達のルールから逸脱しているからだ。 それに一度それをやったら、死んだ私達は耐性を得る。 それに私達にとっては、手指を切りおとすのと同義だ。 相応の対価は支払えるのだろうな」

 

「この戦いが、臨界点だと言う事で間違いないですね」

 

「間違いない。 これが死んだ私達の中で、君達の影響を得た最強の個体。 最後のネメシスだ」

 

「ならばなおさらです。 今、確認を取ります」

 

現場で決めて良い事では無い。

 

即座に市川代表に連絡を取る。

 

勿論向こうもいやだろうし、こっちだって嫌だけれども。

 

それでも飲ませなければならない。

 

既に越後を超えて、越中に入りつつある。ネメシスエンドが通った跡は焼け野原の地獄絵図だ。

 

これが世界全てに、この比では無い規模で再現されるのだ。此奴をこのまま通したら。

 

そして世界にダメージを与えるネメシスは此奴は最後。

 

だったら、それをやる意味がある。

 

鞭を食い止める魔王。

 

だが、激しく鞭を振り回すネメシスエンド。

 

あたってきた相手が悪いといわんばかりだ。魔王の巨体が彼方此方赤熱している。ダメージを明確に受けている。

 

「ネメシスエンド、速度上昇!」

 

「第十四狙撃大隊、ロケットランチャー使い切りました! 後退します!」

 

「此方第七戦車大隊! 弾薬を使い切る前に砲身が高熱でおかしくなった! 後退する!」

 

「化け物が! これだけのHEAT弾を叩き込んでいるのに!」

 

兵士達の悲痛な声。

 

中型種だって、これだけのHEAT弾……それも畑中博士が改良したものを叩き込んだら、ひとたまりもないだろう。

 

勿論中型種の場合は、それを受けてくれるほど優しくは無いのだが。

 

今のこのネメシスエンドは、魔王が食い止めてくれていることもある。理論上は人間でも熱攻撃が出来る。

 

それを散々浴びせ。

 

シャドウも熱攻撃を全力で浴びせているのにこれだ。

 

更にさがると運転手が言うので、好きにさせる。また鞭が振るわれ、今度は狙撃大隊が二つ蒸発した。

 

既に損害は二割を超えている。

 

補給する弾薬なんかない。だから、ありったけ叩き込んだら、撤退するしかない。最初に撤退できた部隊は幸せだったのかも知れない。

 

「第四師団、これより攻撃を開始します!」

 

ついに訓練部隊である第四師団まで前線に出す。

 

さっさと決断してくれよ。

 

そう思いながら、広瀬大将は、必死に指揮を続けた。

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