スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
最強のネメシス、ネメシスエンドとの死闘。
GDF第一軍団は壊滅的なダメージを受けつつも、少しでもネメシスエンドへのダメージを蓄積する作戦を続行。
そんな中。
第一軍団を指揮する広瀬大将は、覚悟を決めます。
もう生きて帰らない覚悟を。
序、覚悟
GDFの司令部が、事実上のノワールからの降伏勧告を受け入れた。これで人間は当面シャドウの完全な管理下に置かれることになる。
世界が破滅するよりマシ。
それは分かっているが、広瀬大将だって仕方が無い事だと思う。
それに、だ。
実質的にはずっとシャドウに支配されていたも同じ。
相手が数を管理するために侵攻を止めた。
それがなければ、とっくに滅びていた。
今の人類の真実がそれだ。
ただ、それを受け入れただけ。それ以外でも、それ以上でもない。だから、別に割切る事は出来た。
これからシャドウは人間をどうするのか。
バンバン品種改良をしていくのか。
人間がペットや家畜にしていったように。
今まで人間が見かけが可愛いという理由で、犬や猫の生物としての特徴を散々自分に都合良く弄くり回してきたのとそれは同じだ。
だが、都市には足を踏み入れないとノワールは言っていたらしい。
物資まで提供すると。
それは、人間が地球に有害ではない存在になるまで見守ると言う事なのだろうか。
シャドウは人間のせいで破綻した未来の地球の平行世界からやってきた存在である可能性が極めて高い。
少なくともシャドウの創造主は人間が残した置き土産のせいで苦しみ続けて、それで命を落とした。
それでも、シャドウは人間の殲滅を試みなかった。
それだけでも人間よりまし。
そういう事実が客観的にもわかってしまうから。
広瀬大将は、やりきれないなと思うのだった。
作戦の指揮を続ける。
喚きながら、触手を振るうネメシスエンド。
熱線を隙あらば周囲にぶちまけもする。
だが、ノワールに既に決定は伝わっている筈。時々、動ける範囲で中型種が盾になってくれる。
そして、ネメシスエンドの攻撃による壊滅を、少しでも遅らせてくれる。
全員は助からない。
一秒ごとに被害が増えていく。
「第四師団、消耗20%越えました! これ以上は不可能です!」
「後退してください。 再編中の戦闘可能な部隊は!」
「何とか半個師団と言う所です! 弾薬については、もはや長時間の戦闘は……」
「分かりました。 最後の攻撃を始めます」
ネメシスは学習力が高い。
此方の手の内を見せれば見せるほど、超世王セイバージャッジメントが不利になる。
奴は知っている。
周囲を超高熱にする事で、どれだけ頑張っても超世王セイバージャッジメントが動けなくなる……正確にはパイロットが耐えられない事を。
だから周囲を焼き払いながら進んでいる。
迂闊に新兵器を使うわけにはいかない。
しかしだ。
わかりにくい兵器を解析できない範囲で叩き込むのは。
それはそれで、十分に意味があるはずだ。
激戦を生き延びた戦車達が集まってくる。殆どの兵士達は既に撤退を開始している。戦死者は第一軍団の半数を超えるかも知れない。
だが、それでもやる意味はある。
密集隊形を取る。
これはノワールとも撃ちあわせた上だ。
そのまま、一斉射を開始させる。広瀬大将も、その中心で指揮を取る。
HEAT弾が今までにない密度でネメシスエンドに集中投射される。最後の一発まで叩き込め。
そう叫ぶ戦車部隊の指揮官達。
この戦いが終われば、文字通り弾は全て打ち止めだ。今後生産する意味すらなくなっていくだろう。
シャドウは基本的に人間が個人で勝てる相手ではない。
だからこそに。
ここで最後の軍としての総力を、使い切ってしまうのもまた良いのかも知れない。
こっちをネメシスエンドが見る。
体中に多数の目が浮き上がっていて、それが明らかに見た。
「其処にいやがったか、ゴミ共の親玉が! これ以上ないくらい残虐に焼き殺してやらァ!」
わめき散らすネメシスエンド。
見苦しい奴だな。
そう思いながら、指揮を続行。
不自然ではない範囲で、シャドウ達は囲んでネメシスエンドに熱量投射を続けている。だから、気付かれない。
放たせた弾丸のうち何発かが。
HEAT弾ではないことを。
それにそれらの弾は、シャドウが恐らく複層構造を流動させてくるというナジャルータ博士の予想に沿って作らせたものだ。
畑中博士が理論を提唱し。
それで最後の切り札として用意しておいた。
特殊弾頭、着弾。
今までのHEAT弾は、全て目くらましに等しい。
それはそうだ。
今まで叩き込んだ全てをあわせても、ネメシスエンドに浴びせられた熱量は、中型種シャドウ達が叩き込んだ熱量の一割に届くかも怪しいだろう。
だからこそ、意味があるのだ。
「死ねやオラァ!」
わめき散らしたネメシスエンドが、此方に今までにない火力の熱線砲を叩き込んでくる。それをシャドウが防げない。
否。
一体のランスタートルが、熱線砲の進路に割り込んでいた。
直撃。
ランスタートルが凄まじい熱線に吹き飛ばされつつも、僅かに射線を逸らす。一斉に散開する戦車達だが、それも数両は瞬時に蒸発、その数倍の戦車が粉々に消し飛ばされた。指揮車両も玩具の車みたいに吹っ飛ばされる。
そして今の熱線。
ランスタートルは避けずに、上空にまで飛ばされる。
超高熱の長時間投射が中型種シャドウにダメージを与える唯一の手段ではあるのだけれども。
それを、ネメシスエンドは満たした。
完全にひっくり返る指揮車両。
ぐっと呻きながら、広瀬大将は照明が消えて真っ暗な指揮車両の中で叫ぶ。
「状況を!」
「……」
ダメだ。
一緒に乗っていたオペレーターは多分命を落とした。今ので、打ち所が悪かったのだろう。
広瀬大将も、体中が痛い。
これはどこか大きめの血管を切ったかも知れない。
今のは、逸らされたとは言え。それでも最後の集中投射した戦力を、まとめて吹き飛ばす程のものだった。
そして、先の弾頭を叩き込んだ上。
ネメシスエンドが、同類殺しをした。
それに大きな意味がある。
不意に、光が差し込む。
指揮車両の装甲板の一部を引きはがしたのか。いや、いくらなんでもそんな。
小型シャドウか。
いや、違う。
入り込んで来たその人物は、ナイフを抜くと、素早くシートベルトを切り裂いた。そして、広瀬大将を引っ張り出す。
やはり手足の感覚がおかしい。
義手は外れてしまっているようだ。足の方が酷く寒い。
外に引っ張り出される。
一緒に、最後の作戦に参加してくれた部隊は、半壊していた。
その中で、広瀬大将に応急処置を始めるのは。
北条だった。
「指揮車両の装甲を素手で破ったんですか」
「まあそうですけれど、ハッチが壊れていたので、出来ただけですよ」
「それでも人間離れしすぎですよ」
「はは、それでも貴方を救えたのだから可とします」
痛み止めを叩き込まれる。足の感覚が……左足の感覚がないが、これは複雑骨折とかしているかも知れない。
無言で治療を受けながら、気付く。
上空で何かが炸裂した。あれは恐らく、さっき盾になったランスタートルだ。
つまり、ネメシスエンドは。
同類を殺した。
「て、てめえらああっ! は、はかりやがったなああああ! クソが、ダボが、ゴミがぁああっ!」
わめき散らすネメシスエンド。
どうなっているかは分からないが、相当な痛打になった筈だ。
これなら叩き込んだあの弾頭にも気付けていないだろう。
よし、これで充分だ。
ふっと、広瀬大将は笑った。
これで、例えもう生還出来なかったとしても、思い残すことは無い。
死なせませんよと、北条が言う。
意識は其処で途切れていた。
あたいは超世王セイバージャッジメントのコックピットで聞く。
GDF第一軍団、壊滅。生存者は撤退開始。広瀬大将、左足を複雑骨折他重症。出血多量。現地に辿りついた軍救急車での回収。
生存確率は五分五分。
それらの話を聞き終えて、あたいは布陣も終える。
十六機のデチューンモデルとともに、既に待ち構えている。周囲には、続々と中型種シャドウも集まって来ていた。
「い、生きた心地がしねえぞ……」
「此奴らがその気になったら、この場の全員一瞬で……」
「此方第三師団増田中将。 臨時で指揮を取る」
不意に入り込んでくる増田中将の声。
第三師団の指揮官であり、しばらく名前を聞かなかったが。それでも軍団長に昇進した広瀬大将の代わりと言う事は。
「現在行動可能な中将は私だけだ。 他は全員戦死するか負傷して現地を離れた。 縦深陣地を突破したネメシスエンドは、ダメージを受けながらも越中に向かっている。 超世王セイバージャッジメントを中心に、迎え撃つ準備を進めて欲しい」
「イエッサ!」
声が揃う。
そうか。第一から第四までの師団長のうち、無事なのは第三の増田中将のみか。
そういえば、第三師団は確か遠距離攻撃部隊が多かったはず。それもあって生き残れたたのかも知れない
戦闘の経緯は聞いていた。
とにかく、事前に話し合った「切り札」は打ち込んである。
これに関しては、効果を畑中博士が証明してくれている。それもあって、きっと効果があるはずだ。
それに、である。
ネメシスエンドは、シャドウの禁忌である同類殺しをやった。
これが恐らく、相当な弱体化につながる。
だがそれでも、魔王に組み付かれ、多数の中型に飽和攻撃を受けつつ。それでもまだ進んできている。
まさに地球そのものの敵。
そして恐らくだけれども。
シャドウ戦役の前。
地球をやりたい放題に破壊しつくしていた地球人類も。地球から見れば、このような存在に見えていたはずだ。
ぐっと歯を噛む。
向こうで、きのこ雲が上がった。
恐らくはとんでもない火力の熱線がぶっ放され、それが炸裂したのだ。ただ、一瞬の爆発では、中型種は殺せない。
「あんなの核兵器じゃねえかよ……」
「奴らには玩具なんだろ」
「……」
アトミックピルバグが来た。
それも六体。
前進していく。
転がらないで前進するのは知っていたが、見ていると不思議な移動方法だ。
アトミックピルバグはとにかく移動速度が他のシャドウに比べて遅いという明確な弱点がある。
ネメシスエンドが射程距離内にいる間に、可能な限り削るつもりなのだろう。
それで充分だ。
あたいは頬を叩く。
さあ、これからだ。
やがて、ネメシスエンドが来る。既に体は赤熱を始めている。流動体の複層構造という凄まじい形状をしている肉体で。熱をどんどん体内に取り込んでいるというが。
四百mという他のシャドウから比べても規格外の肉体に、一体どれだけの熱量を蓄えているのか。
まあ、無理では無いだろう。
有名なE=MC二乗の公式はあたいも知っている。
それを実現する反物質の対消滅を利用すると、数グラムの質量で、地球を消し飛ばす事が可能であるとも言う話だ。
あれだけの巨体なら。
それこそ地盤を砕くくらいのパワーは出せるかも知れない。
わめき声が聞こえてくる。
「邪魔だsdfjdさおhfpdfhどでぃpdwfwqっdfう゛hbdw!」
もう言葉になっていないな。
ちょっと苦笑い。
あの手の輩は、感情が高ぶるとあんな感じになるらしいとは知っている。外から見ていると、本当に無様だ。
怒りなどの感情を神聖視していたシャドウ戦役前の人間だが。
それがあの有様だと思うと。
はっきりいって、そんなものは間違っているとしかいえなかった。
一斉に接近戦を行っていた中型種が離れる。そして、アトミックピルバグが、一斉に火力投射を開始していた。
凄まじい密度の熱量が短時間で浴びせられる。
こっちまで暑くなってくる気がするほどの凄まじい代物だ。
あたいはこの程度で暑くはならないよなとぼやく。極限まで冷房の性能を強化してくれたのだ。
今の超世王セイバージャッジメントは。
今までのデータ全てを生かした、文字通り最強の機体。勿論今までもそうだったが、それらの集大成だ。
だから、絶対に勝てる。
そう自分に言い聞かせる。
奴を濃尾に行かせたら終わりだ。恐らく一瞬で地盤を粉砕されて、日本どころか地球そのものの環境が砕かれる。
その後には奴すら残らない。
地球単位の自爆テロを実施しようとしているカスを、今止めなければならないのである。
アトミックピルバグの猛攻から、ぬっと何かが抜け出てくる。それは流動する白く輝くおぞましい代物。
とてもではないが、生物だとは思えない。
いや、生物ではないのだろう。
だが、人間という生物の精神性を示しているとも言える。
400mの巨体に、無数に生えている足。それらはいずれもが形状が違っていて、一本や二本砕いても致命傷にはなりようがない。
ただ体はそれほど高くは無い。
行ける。
「よし、攻撃を開始してくれ!」
「小官が盾になります! 支援を!」
「GOGOGO!」
「やってやる!」
総員、突撃を開始。
ネメシスエンドは、おぞましい白く輝く体を振るって、咆哮する。
それは人間のわめき声そのものだったが。
同時に、もはや獣の咆哮と何ら変わらなかった。
一気に加速。
ネメシスエンドが明らかに此方を視認した。体中にある目と口が、かちかちと音を立てている。
それはわめき声を同時に放っていた。
「不細工なクソロボット! てめえさえいなければ、てめえは邪魔なんだよぉおおおっ!」
「超世王セイバージャッジメントは、ロボットアニメに出てくるような、羽生えてて剣持ってる格好いい人型ロボットとは違うかも知れないね。 言われるまでも無く、これはロボットというより戦車だよ」
「ああん!?」
聞こえているらしい。
ノイズが混じっているが、それでもわめき散らしてくるのは、明らかにあたしに対してだ。
余計な事は喋ることが出来ない。
それは事実としてある。
だが、それは奴の意識がこっちに向いている事を意味している。それで、充分過ぎるくらいである。
「でもね、格好いいかどうかは見かけじゃない! あたいはそれを見てきた! どれだけ傷ついてもう歩けなくなっても! 畑中中将だって呉美准将だって、誰よりも格好良かった! それと同じだ! みてくれだけ格好良くて、インチキ能力を貸して貰って、それで我が儘な暴力を振るってるだけの奴なんかよりも! 大事なものを自分の力だけで守り抜いた存在の方が何万倍も格好いいよ! 超世王セイバージャッジメントだって同じだ! これがなければ、シャドウは今でも人間と向き合うことさえしなかっただろう!」
「うぜえ! 俺に偉そうに口答えするんじゃねえ! 空気読めってんだよ!」
「ああ、シャドウ戦役前に流行ってた言葉だね。 ご機嫌を取れって意味だったっけ? 絶対にいやだね。 お前みたいな奴が蔓延ってたから、シャドウ戦役前の時代は暮らしづらかったんだ! お前のどこが偉い! 言ってみたら!?」
「俺は誰よりも強い! 俺は誰よりも世界を変えられる! だから偉いんだよ!」
「じゃ、ラン藻の方がお前より偉いね。 地球の環境を誰よりも変えたし、今の世界の基礎を作ったんだから」
返事はわめき声だった。
あたいは魔王が食い止めている奴の足下に出ると、奴の足をかいくぐって、斬魔剣Ⅲで通り抜けざまに一撃を入れる。
ボディプレスで押し潰そうとしてくるが、そんなのは読んでいる。
さっと回避して、次の攻撃に移行。
これでいい。
デチューンモデルが、一斉攻撃投射を開始している。
周囲の温度は千℃を超えているが、まだまだ平気だ。
このまま、つかず離れずで奴を激高させ。
積んで来た、最後の兵器を叩き込む。
モニタを見る。
まだタイミングでは無いとある。ならば、それまで、どれだけでもこの身勝手野郎と踊ってやるだけだ。
広瀬大将の命がけの時間稼ぎとダメージ蓄積、そして打ち込んだ切り札。
それを受け継いだ飛騨咲楽。
最後の戦いが始まります。