スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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最後にして最強の邪悪と

超世王セイバージャッジメントの戦いが

今、終わります。






3、決着

中型種達が、ネメシスエンドを飛び立たせない。大型種が二体掛かりで組み付いているのもある。

 

ネメシスエンドは振り払えない。

 

どれだけの巨体であってもだ。

 

しかも此奴は、狙いが分かりきっている。

 

此奴の狙いを考えると、前のブラックウルフ・ネメシスのように、体をトカゲの尻尾切りして。

 

周囲を弾き飛ばすことも出来ないのだ。

 

スーパーロボットには顔がある事が普通だが。

 

その顔が歪んでいる。

 

溶けて流れ出している。

 

張りぼてには丁度良い末路だな。

 

あたいはそう思いながら、誘導弾で作られた冷気の中に突っ込み、機体を冷やす。そして即座にとって返す。

 

わめき散らしているネメシスエンドが、巨大なパイルバンカーを振り下ろしてくる。だが。

 

回避。

 

超世王は万全じゃない。

 

バカみたいな熱に晒され、奴の猛攻が何度も余波だけでも擦っているのだ。万全ではあり得ない。

 

だけれど今、あたいはどういうわけか。集中力が神がかっていて。今のも、どう飛んでくるのか完璧に把握できたし。

 

それを回避する事だって出来た。

 

でも、それは恐らく、今だけだ。

 

後でこの戦闘記録を見られて、天才だとかおだてられても困る。あたいはあくまでまだ兵士としてはひよっこ。

 

今、何か神か何かがついている。

 

そういうものなのだろう。この不可解なまでの動きは。

 

「気持ちわりぃなあテメエ! なんでかわせるんだよ! 巫山戯てるんじゃねえ! チートかてめえ!」

 

「生憎そんなもの、使った事もないし、貰った覚えもないね。 出来る人から教わって、毎日こつこつ鍛えた。 それだけだよ」

 

「巫山戯んな! 何が努力だ! 努力なんて才能が無ければ出来ないんだよォオ!」

 

「馬鹿馬鹿しい。 努力ってのは目的に対して行動する事全般の事をいう程度の言葉であって、神聖視するのも敵視するのもただのバカがやる事だね。 努力なんてミジンコだってやってる。 才能とは別の問題だ!」

 

再び、斬魔剣Ⅲで切り裂く。

 

もう投擲用斬魔剣はダメだ。

 

だが、斬魔剣Ⅲはまだ行ける。

 

奴のロボットっぽい足が派手に引き裂かれる。悲鳴を無様に上げるネメシスエンド。明確に効いてきている。

 

傷も塞がらない。

 

形態をこんなロボットもどきに変えたからだろう。体内に循環させていたのが、上手く行っていないのだ。

 

漏れ出た中身が、地面を爆発させ、巨大な穴を作る。その余波だけで、機体が大きく揺れる。

 

一発でも直撃を貰ったら終わりだ。

 

ぶおんと、無理矢理体を振るうネメシスエンド。

 

更に体表を上手く動かして、組み付いてきていた魔王を放り投げた。吹っ飛んだ魔王は、海まで飛んで行き、爆発する。

 

ただ、あれは海が爆発したのであって、魔王が爆発したのではないだろう。超高熱が飛び込んだ事により、水蒸気爆発が発生したのだ。

 

更にもう一体組み付いている大型を、引きはがそうとするネメシスエンド。

 

その時だった。

 

「自称万物の霊長のネメシスエンドに告ぐ」

 

「ああん?」

 

声はあたいにも聞こえる。これは恐らく、拡声器からの声だ。そのまま、言葉の暴力が続く。

 

それは、あたいも苦笑いする程のものだった。

 

「幼児のまま図体ばかりでかくなり、暴力を振るえば周りが言う事を聞いてくれたから、一切合切何も変わらず大人になったような人間のごとき醜悪な精神性を持つネメシスエンド。 お前はただの人間のごろつきと同じだ。 お前には何の正義も無ければ大義もない。 感情だけを全て表に出し、自分が怒れば殺して良いし、気持ちが悪いと思えば殺して良いと考える愚物。 お前は神だと自身を認識しているようだが、神どころか、目の前にいるちいさな人間すら感心させられず、集っている中型シャドウ達を殺す事すら出来ない。 駄々をこねている幼児と何も変わらないただの子供大人。 それがお前という存在だ。 お前は人間と同じだ。 その醜悪な精神は、お前が駆除しようとしている人間そのものだ。 シャドウ戦役前にたくさん蔓延っていた、愚かしい人間の後継者そのものがお前だといえる」

 

「だ、だま、だま……」

 

「お前が人間を滅ぼそうというならば、迷惑だから宇宙にでも飛んで行ってそれで自分だけ死ね。 そうすればお前の中にいる人間は少なくとも滅びる。 暴力で言う事を聞かせられないのだ。 自分にせめて暴力を振るって、言う事を聞かせたらどうか」

 

「黙れえええええええ!」

 

絶叫したネメシスエンドが、毒液をぶっ放す。

 

どうせ今の声、自動操縦の歩兵戦闘車か何かからだろうが、それすらも分からないくらいキレたと言う事だ。

 

そして、時が来る。

 

「この偉大なる存在である俺が人間と同じだと! 巫山戯るな! だったら見せてやる! もう此処でかまわん! シャドウなどよりも俺が如何に偉大で、優れているかの証明をな!」

 

「やってみろでくの坊!」

 

「やってやる! 濃尾でやるのが一番だったが、別に此処でもかまわねえからな! 全部まとめて消し飛ばしてやる! 地球にいるきたねえ動物やら虫やらもろとも何もかもだ! 俺様に傷をつけたこと、俺様を罵倒したこと、後悔しろ! ブチ殺してやる!」

 

完全に三下だ。

 

だが、それでもそもそも人間を学習すればああなるというのは、今のあたいは色々納得出来る。

 

そして、エラーだらけの中、コアシステムに。

 

最後の兵器を起動させる。

 

それは、今までとは別次元の耐熱性を誇る注射器に近い代物だ、

 

名はファイナルパイルバンカー。

 

まあ、パイルバンカーと言いつつ注射器なのだが、それは別にもういい。これから、コレを使って、あの勘違い野郎を滅ぼす。

 

ネメシスエンドが形態を変化し始める。

 

畑中博士、麟博士、そしてナジャルータ博士も予想した通りの形態。

 

全身をパイルバンカーへと切り替えて行く。

 

分かっている。

 

ロボットアニメでは、それぞれが象徴的な武器を装備しているのが普通だった。パイルバンカーも人気があった兵器だった。

 

全速力で其処に突っ込む。

 

「ノワール! この一撃を入れる! 支援を!」

 

「分かった。 やりたまえ」

 

中型種が道を作る。

 

それだけではない。接近戦型の中型種が、一斉に集って、奴に組み付く。

 

巨大なパイルバンカーになったネメシスエンドが、地面に六本の足を突き刺す。そして、ぐっと杭が持ち上がり始める。

 

其処に、胴体部に。

 

あたいはウォールボア達が作ったジャンプ台を用いて、そのまま躍りかかる。それを横殴りに突然生えた触手が、立て続けに襲ってくるが。

 

同じ攻撃が通じないのはネメシスだけじゃない。シャドウも同じだ。

 

ストライプタイガーが、身を盾にして触手を防ぐ。

 

突貫。

 

一つだけ抜けてきた触手を、斬魔剣Ⅲで迎撃。

 

凄まじい負荷。強烈な振動。

 

相討ち。

 

斬魔剣Ⅲが、吹っ飛び砕けるが、触手もはじけ飛んだ。

 

ゲラゲラと笑うネメシスエンド。これで終わりだ。そう言っているが。逆だ。これでお前は終わりだ。

 

ファイナルパイルバンカーを突き刺す。

 

叩き込むのは熱じゃない。

 

今、奴は体を今までに無い程の速度で循環させ、とんでもない高熱を一点に収束しつつある。

 

それを地殻に叩き込まれたら、核兵器を使うのとは比較にもならない破壊が引き起こされるだろう。

 

それくらいの熱をネメシスエンドは蓄えている。

 

だが。

 

ファイナルパイルバンカーでねじ込むのは熱じゃない。

 

熱くらいだったら、どうにでもなる。

 

今までのシャイニングパイルバンカーでそれを学習しているだろうネメシスエンドは平然としていたが。

 

その余裕が消し飛ぶ。

 

明らかに、奴が白熱し始める。

 

「な、なんだ、何をした! 何をしやがった!」

 

「さあ、なんだろうね」

 

「ち、畜生、畜生っ! 熱が、上手く凝縮できねえっ!」

 

明かな狼狽。

 

あり得ない事態への恐怖。

 

それがネメシスエンドのがなり声に、露骨過ぎる程に浮かぶ。

 

これは、凝固剤だ。

 

GDF第一軍団と広瀬大将が、大量のHEAT弾を叩き込んだが、それはあくまでデコイだった。

 

本命は此方だ。

 

ネメシスといわずシャドウに物理的な攻撃は通用しない。質量弾でネメシスを殺す事は不可能だ。

 

そもそも物理法則がシャドウに適応されるかも怪しい。

 

航空力学を無視して飛んでいるブライトイーグルなどが良い例だ。

 

だが、抑え付けることそのものは出来る。

 

これは畑中中将が、二体同時に中型を斃した時に、実際に証明されている。出来はしないから誰もやらなかったが。

 

恐らく、超高圧のプレス機か何かでなら。小型種を殺す事は無理でも、抑え付けることは可能なのかも知れない。

 

実際に超世王セイバージャッジメントの機構でそれが出来たのだ。

 

ならば、出来る。

 

最初に第一軍団がHEAT弾に混ぜて打ち込んだのは接着剤。それも生半可な性能のものではなく、超高熱にも耐える折り紙付きの代物だ。

 

そして今叩き込んだのは、その接着剤を凝固させる凝固剤。

 

これも同じく、超高熱にも耐える代物である。

 

全身を高速で循環させている奴が、そんなものを体内に取り込めばどうなるか。

 

勿論、時間を掛ければ対応して来るだろう。

 

だが、今、此奴は。

 

全力で熱量を収束させ、地盤に叩き込もうとしている。

 

それほどの熱量は、如何にネメシスエンドといえど、簡単にコントロールできるものではない。

 

ましてやこいつはノワールによってリソースを七度にわたって削られ。

 

今も散々あたいや中型によって攻撃を続けられ。

 

更には激高して集中まで乱した。

 

必死にバックして離れる。

 

だが、最後のあがきだろう。

 

ネメシスエンドが、残っていた触手を振るう。それが直撃して、超世王セイバージャッジメントが、吹っ飛ばされる。

 

今までにない衝撃。

 

ショックアブソーバーは無力で、一瞬気絶して、激痛で即座に目を覚ます。

 

地面に超世王セイバージャッジメントが突き刺さるのが分かる。

 

しかしそれが溶岩化していたこともあり、それで衝撃を受けて潰される事はなかった。だが。

 

見る間にコックピットの熱量が急上昇していく。

 

「……彼奴が溶け砕けるのを見る事が出来ないのが残念かな」

 

ぼやく。

 

焼け付くような暑さ。

 

冷房でどうにかできる代物じゃない。

 

ましてや、今は機体がほぼ全損している筈だ。万全の状態でも耐えられないだろう。

 

ふと、機体が持ち上がる感触。

 

それと同時に、見える。

 

装甲の一部が剥落して、それで奴の姿が見えた。

 

アトミックピルバグおよそ二十体が、集中攻撃を続けている。今、あたいを溶岩から引っ張り出したのはひょっとして魔王か。そして、灼熱の空気は。誘導弾が上手く近くに着弾したのか、それとも。

 

ネメシスエンドが吠える。

 

「ち、畜生、あと五秒、いや三秒あれば……! ぎぎゃああああああああっ!」

 

そう、後数秒あれば、凝固剤なんて小細工、此奴の前には何の役にも立たなかっただろう。

 

だが、その数秒を、広瀬大将が稼いでくれたのだ。

 

凝固剤を叩き込む為のあらゆる情報を、超世王セイバージャッジメントを支援してくれた人達。

 

何よりも先達である畑中中将が蓄積してくれた。

 

だから、此奴は今死ぬ。

 

わめき散らしていたネメシスエンドが、融解した。

 

そのまま、光の柱になって消失していく。

 

光と言っても、それはまるで髑髏のようで、おぞましすぎる苦悶の顔をずっと作り出していた。

 

シャドウ戦役前。

 

人間はみんなあんな風に好き勝手にエゴを振りかざし。

 

ネメシスエンドの基になったような言動をし。

 

そしてシャドウに殺されて、ああなっていったのだろうか。

 

そう思った。

 

ぶつりと何かがねじ切れる音がして、ネメシスエンドが消える。まるでテレビのスイッチが途切れるように。

 

今まで灼熱を発し続けていたネメシスエンドが、突如として消え。

 

蓄えた熱も全て消えた。

 

ネメシスエンドが今までいたそこには。

 

HEAT弾の残骸だとか、そういう打ち込まれたものの僅かな残骸だけが残されていた。

 

痛い。

 

吹っ飛ばされた時、全力で受け身を取った。

 

密着状態からの受け身は上手く行った。

 

上手く行かなければ、全身複雑骨折で即死していただろう。北条さんだったら、多分平気で耐えたのだろうけれど。

 

あたいは凡人だ。

 

あんな超人と比べて貰っては困る。

 

魔王があたいを降ろす。

 

辺りは溶岩化していたが、それも急速に冷えていく。どうやら、焼け死ぬことは無さそうだった。

 

シャドウは、地球を守ろうとしただけ。

 

未来の世界。人間が資源を使い果たし、焼き滅ぼした世界で。惨めに生きるしか無かった主君の無念を晴らすため。

 

第六の大量絶滅を引き起こした人間を、減らして環境を元に戻す必要があった。

 

それはあたい達人間からして見れば、理不尽で許しがたい侵略だったかも知れないけれど。

 

地球の歴史からして見れば、シャドウの到来はその生態系の保全と、何より生物が暮らせる星としての寿命を延ばす行為だったに他ならない。

 

戦闘開始前に、GDFはシャドウに実質上の無条件降伏を受け入れた。

 

多分これから先、軋轢が山ほど発生するだろうけれども。

 

それでも、どうにか、間近の破滅だけは食い止める事ができた。それだけでも、あたいがやれることはやり遂げたのだ。

 

それにしても全身痛いな。

 

何カ所か骨折していると思う。

 

程なく、シャドウ達が引き揚げて行く。魔王はじっとその場に立っていた。

 

北極を根城に、ずっと存在していた大型シャドウ。

 

結局魔王も、あくまで人間から見ての魔王に過ぎなかった。

 

それを思うと、複雑極まりない。

 

音が聞こえてくる。

 

恐らくは、救急車と歩兵戦闘車だ。

 

声がする。

 

魔王が喋っているのか、どうなのかは分からない。ノワールは集合意識存在のようだから、誰が喋っても同じなのだろう。

 

超世王セイバージャッジメントは全損してしまった。

 

スピーカーなどは生きていないから、多分側にいる魔王が喋っているはずだ。

 

「人間風に言えば見事だったな。 負傷者などを回収したら、街に戻ると良いだろう。 途中で攻撃はしない。 これより環境の修復を行わなければならない」

 

「色々助けてくれて助かったよ」

 

「お前達を調査するために、全てを調べたのは失敗だった。 ネメシスのような存在を作り出してしまうとはな。 いずれにしても、お前達がまっとうなこの星と一緒にやっていける文明を作り出した時、我々はこの世界を去ることになるだろう。 それまでは我々は常にお前達を見ている。 それを忘れるな」

 

「……」

 

魔王が飛び去る。

 

牽引用の歩兵戦闘車と救急車が到着。

 

歩兵戦闘車から顔を出したのは、北条さんだった。

 

てきぱきとあたいを引っ張り出してくれる。この人、広瀬大将と一緒にいたはずだけれど、無傷か。

 

まあ、岸和田さんが怖がるのもよく分かる。

 

はっきりいって別生物の次元である。

 

「ネメシスエンドは消滅したようですね」

 

「はい。 どうにかやりました」

 

「これで我々は、シャドウに無条件降伏したことと同義になります。 シャドウは歴史上の人間のどの征服国家よりも寛容でしょうが、同時に厳格です。 まあ、人間が悪さをすることはこれで出来なくなったでしょうね」

 

「小官にはそれが悪い事かどうかは分かりません。 ただ、シャドウが助けてくれなければ、どっちみちこの世界の人間は全滅していたと思います」

 

これはシャドウがあらわれる前から逆算しても同じ結論だろうとあたいは思っているけれど。

 

敢えてそれを言う事も無いか。

 

救急車で、手当てを受ける。

 

案の場何本か骨が折れている。

 

それはそうだ。あんな強烈な衝撃を受けたのだから。本来だったら丸焼けにもなっていただろう。

 

悔しいが、魔王が溶岩から引っ張り出してくれなければ。

 

そのままコックピットに流れ込んできた溶岩に、丸焦げにされた可能性も決して低くなかった。

 

すぐに病院に。

 

多数のシャドウがいるが、此方に手を出す様子は無い。小型種もいるが、環境回復を開始しているようだ。

 

「本当に攻撃してこないですね」

 

「昔だったら目の敵みたいに襲ってきたのに」

 

「いや、あれはハエを追い払う人間みたいな心理だったのかも」

 

そんな会話が聞こえる。

 

いずれにしても、これで一旦戦いは終わった。

 

第一軍団は再建から開始だ。師団長も第五師団の師団長と増田中将以外は戦死。話に聞く所によると、戦死は四割に近いと言う。

 

文字通りの全滅である。

 

これからの再建が大変だろう。

 

病院に着くまで、何度か痛いか聞かれたが、別に大丈夫だ。この程度は、もうどうとでもなる。

 

勿論痛いには痛いが、耐えられないほどじゃない。

 

それに、これからだ。

 

どうせ訳が分からない事を抜かして、シャドウとの約束を反故にする奴が必ず出るだろう。

 

そういう連中との戦いが。

 

これから始まるのかも知れなかった。

 

 

 

「ネメシスエンド消滅を確認!」

 

「異常気象、急速に収まっていきます!」

 

「勝利だ!」

 

周囲が湧いている。

 

ナジャルータ博士は、それを聞いても喜べなかった。

 

これは人間が引き起こした災禍。

 

そして、シャドウまで協力して何とか撃ち倒したものの、どうせすぐに次の問題が起きる。

 

それが分かりきっているから、喜べなかったのだ。

 

とりあえず、飛騨大尉が無事だと聞いて安心する。急激に回復する気象も、シャドウがやってくれているのだ。

 

人間だけだったら、絶対に勝てなかった。

 

それがただの真実だった。

 

避難先から、戻る。

 

京都工場は散々な有様で、半壊どころではなかった。とりあえず、再建からだ。そして、である。

 

話通りに、シャドウがかなり来ていた。

 

京都工場に手出しをする様子はないのは助かる。ただ、今後は小型種がずっと此方を監視するつもりらしい。

 

ただ、環境を文字通り復元してくれているのは助かる。

 

人間が「奪回」した地域は、環境が元に戻らなくなっていたのだ。それを回復してくれるのは非常に有り難い。

 

ただし、これだけ遠慮無く来ている事を考えると、京都工場を牽制する意味もあるのだろうなと思う。

 

軍基地の周囲も、シャドウが来ているらしい。

 

荒らした自然を回復どころか復元しているようだ。

 

ネメシスエンドが通った跡は、文字通りぺんぺん草も生えない有様だっただろうし。これからシャドウも忙しいのだろう。

 

都市には入らない。

 

そう宣言してくれたのは助かる。

 

問題はこれからだが。

 

京都工場で、整備のおじさん達が細かいところから直し始めていると、通信があった。どうやら市川代表が話すらしい。

 

精力を使い果たした顔をしている。

 

今までは糸目で余裕綽々の雰囲気だった。少なくともネメシス種の脅威が、シャドウとも連携しないとまずくなる前まではそうだった。

 

今ではすっかり気弱そうになっている。

 

これは、天津原代表の。

 

あの無能な老人の有様を思い出させる。

 

「GDF代表市川です。 ネメシスエンドの撃破を確認。 第一軍団は全滅状態、超世王セイバージャッジメントも半壊ですが。 広瀬大将は生還。 超世王セイバージャッジメントのパイロット、飛騨咲楽大尉も生還しています。 これより第一軍団の復興を開始するのと同時に、各国連携で幾つかのプロジェクトを進めて行きます」

 

それだけいうのが精一杯だったらしい。

 

詳細については後日説明すると言って、通信を切った。

 

これは、市川代表はもうダメだな。

 

ナジャルータ博士は、限界に近かった天津原代表の様子を見ていた。天津原代表は、最終的に鬱病を発症して。今も病院でずっと何かに怯え続けていると言う。シャドウに怯えているというよりも、きっと人間に怯えているのだろう。

 

市川代表の場合は、人間のあまりにも無責任な姿にすっかり心をひび割れさせてしまったのだ。

 

会議には同席していたから見ていた。

 

各国代表の身勝手極まりない寝言の数々。

 

最重要局面で、決断から逃げた愚かしい連中の行動。

 

あんなものが政治家を名乗り、それで各国の代表面をしていた。

 

それは強烈なプレッシャーはあっただろうが、それでも権力を握ったのだ。中には暗闘の果てに権力の座についたものだって何人もいただろう。その結末があの為体だったのである。

 

あまりこういうことは言いたくないが。

 

一度人間は、自分より優れた生物が存在する事を思い知って、それに支配されるのがいいとナジャルータ博士は思う。

 

それを屈辱と感じるかはどうでもいい。

 

人間同士ですら仲良く出来ないのが人間という生物だ。

 

それだったら、他の圧倒的強者に支配されて。それで万物の霊長とか言う妄想から目を覚ます必要がある。

 

それが出来なければ。命まで張って戦った畑中中将や飛騨大尉。他にも第一軍団の死んでいった将兵が報われない。

 

結論を急ぐべきでは無いなどという言葉もあるが。

 

この状況である。

 

決断しなければならないのだ。

 

「シャ、シャドウが街のすぐ側まで来ている! どうにかして欲しい!」

 

「そういう約束だったはずだ。 基本的に街の中には手出ししない」

 

代表の一人が喚いたが、不意にノワールの声が割り込む。

 

ひっと声を上げて、その代表はへたり込んだようだった。

 

なんとかゆらぎの人間を安心させる声の筈なのに。恐ろしい程ノワールの声には威圧感があった。

 

「ネメシス種はこれで出なくなる。 だが、君達は放置しておいたら際限なく増長することが分かった。 だから私達は監視をこれから強める。 技術の開発はそのままどんどんしていくと良いだろう。 神戸でやっている教育方針は世界中で共有するといい。 ホバーでの移動については此方では制限しない。 また、通信用の基地局設置を許可する。 指定の位置に基地局を作ると良いだろう。 座標については今送信した」

 

ぱっと世界地図が映し出され、彼方此方に点が出現する。

 

それらの地点で基地局を作って良いと言うことだ。

 

まあ、これでも譲歩してくれている。

 

もしもこれが強権的な人間の国家だったら、それこそ何もかも奪い去って行っただろうから。

 

「資源については超世王セイバージャッジメントがネメシス種と戦った時と同じように、此方で必要な資源を分析して供与する。 その代わり、鉱山などは閉鎖して貰う。 汚染物質を際限なく垂れ流していて、処置が面倒なのでね」

 

「う、ぐぐ……」

 

「それらを技術的にクリア出来るようになったら、鉱山などは解放する。 それと君達が大々的に毛細管現象で汚染していた土壌……特にリチウムだな。 これに関しては禁じ手も禁じ手とする。 エコなどといってもっともエコと程遠い行動で君達は地球を好き勝手にしていた。 これは許されない。 もしもやった場合は、相応の制裁がある事を覚悟せよ」

 

配布される物資などが説明される。

 

また、横領をした場合の容赦の無い制裁についても、細かい説明が入った。

 

市川代表は完全に顔色が土気色だ。

 

それはそうだろう。

 

シャドウが本気になったら、人間なんて瞬く間に全滅するのだ。

 

ネメシスエンドとの総力戦で、ネメシスエンドがもしも地球を壊滅させたとしても、シャドウは屁でも無かっただろう。

 

やりたい放題をしたネメシスエンドが勝手に自爆テロをして人類を滅ぼした後。

 

時間を掛けて地球を再生し。

 

多分人間もクローンで再生して、一定数を管理したはずだ。

 

まるでエデンのようだなと思う。

 

ただしそのエデンでは、もはや人間は知恵の実を食べることは許されないのだろうが。

 

「病院などのインフラには手出しをしない。 マンパワーが足りない箇所については、現在利用しているロボットをもっと利用拡大せよ。 もしもAIが問題を起こすようなら、此方で技術供与をする」

 

「良いですかノワール」

 

「何かなナジャルータ博士」

 

「貴方たちは結局何者ですか。 そろそろ、正体を明かしてくれてもいいのではありませんか。 大まかな正体はわかっている。 しかし貴方たちを悪魔だと考え、怖れている人もまた多いのです」

 

馬鹿馬鹿しいとノワールは笑った。

 

まあそうだろうなと思う。

 

人間は信仰が違う相手を殺戮して、悪魔は滅びたと大喜びするような生物である。悪魔なんて存在しない。

 

いるとしたら、それは人間の事だ。

 

「私達の正体については大まかに君が分析した通りだ。 細かい部分については、いずれ君や飛騨大尉には話そう。 ああ、そうそう。 飛騨大尉や畑中中将、ナジャルータ博士、畑中博士、広瀬大将。 他にもネメシス戦で健闘した者達を冷遇したら許さないからそのつもりでいるように。 君達の電子セキュリティなど紙切れも同然。 私達はいつもいつでも君達を見ている。 君達ほど危険で悪辣な生物は地球史上存在しないからだ。 以上だ」

 

通信がきれた。

 

誰も何も言わない。

 

ノワールが本当に好きなようにセキュリティを貫通してくること。

 

それこそどこからでもどこでもその気になれば見る事が出来ることが、今証明されてしまったからだ。

 

ひょっとすると、京都工場でたまにしていた密談も、全部聞かれていたのかも知れない。そう思うと、ナジャルータ博士も薄ら寒かった。

 

「これより神戸は復興作業に入る。 シャドウは約束を破らないし嘘はつかない。 それは今までの事例で確認されている。 各国各街は鉱山などは放棄。 放棄しなければ、働いている人間はシャドウに引き裂かれて一人も助からないだろう。 子供だろうが老人だろうが、シャドウは容赦しない。 それはシャドウ戦役の時に分かっている筈だ」

 

「……」

 

「それでは会議を解散する……」

 

市川代表が通信を切る。

 

限界だなあれは。

 

やはり、野心を満たして得た地位が、此処まで馬鹿馬鹿しいものだとは分からなかったのだろう。

 

市川代表ほど頭が切れる人間でも。

 

人間が何処までも愚劣で、どこまでもエゴの怪物である事は理解出来ていなかった。

 

天才が教師には必ずしも向いていないのと同じだ。

 

市川代表は野心が強かったが。それでも許容範囲内だ。

 

人間の中には、あらゆる全てを自分の私物だと考えている輩が幾らでも存在しているし。そういう輩こそが、自らこそ万物の霊長なりと考えてもいる。それらがシャドウ戦役前に世界を好き勝手にしていた。だから滅びたのだ。

 

テレビ会議を終えると、ナジャルータ博士は工場の修理の手伝いに戻る。

 

小柄だし体力もないから、出来る事は限られている。

 

シャドウが宣言通り、京都工場の復旧に必要な物資を運んできたようである。勿論此方を襲う様子はない。

 

必要な舗装道路も残してくれるようだ。

 

まずは基地局を作って、世界中をネットワークで結ぶところからだろうなと、ナジャルータ博士は思う。

 

そして、市川代表が限界だとすると、次は。

 

広瀬大将は新生病もあるし、政治家への転身はあまり乗り気ではないだろう。

 

飛騨大尉は若すぎる。

 

適任がいないな。

 

こんな時だからこそ、理性的な代表が必要なのだが。

 

いっそのこと、政治中枢もAIに任せてしまうべきか。

 

シャドウ戦役前のお粗末なAIは話にならない代物だったが、今は裁判を全部やれるくらいまで性能が向上している。

 

勿論嫌がる人間はいるだろうが。

 

それでも、今の進歩したAIでならば。

 

それも有りかも知れなかった。

 

「ナジャルータ博士、此方に」

 

呼ばれて出向く。

 

シャドウは超世王セイバージャッジメントを直すための物資も運んできたようだった。つまり別にいたところで敵にもならないと判断しているのだろう。

 

残念ながら事実だ。

 

だから、もうそれはそれでかまわない。

 

苦笑いすると、畑中博士と一緒に、修理の計画を立てる。今後のもしもの時のために、超世王セイバージャッジメントは必要なのだから。







死闘……決着!
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