スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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復興作業をしていくのは天才だけではありません。

というか実際問題として。

天才だけでは世界は回らないのです。





2、天才からの視点凡才からの視点

京都工場に赴任した科学者、古田興野は、凡才である。正確には、そうであると思い知らされていた。

 

人間がフルスペックを発揮できる今。

 

神戸で生まれた古田もそれは例に漏れない。

 

だからこそわかるのだ。

 

ほとんど頭の中だけで設計を組み立てて、それを作りながら平行でどんどん改良をしていく畑中博士のすさまじさが。

 

ネメシスエンドとの戦いが終わって五年。

 

シャドウとの戦いで凄まじい戦果を挙げた畑中中将は、そろそろ命が危ないと言われている。

 

ネメシスエンドを斃した英雄飛騨咲楽中佐は、そろそろ大佐になると言われている。

 

新土佐は完成が近づき、いくつかの食べ物は明確においしくなった。地下の畑などがほぼ完成して、そこでの品種改良や、失われた品種の再生が続いているからだ。

 

時代が変わりつつある。

 

シャドウとは戦うのではなく、共存の時代が来つつあるし。

 

それは古田も知っていた。

 

だから京都工場に配属と聞いて、内心はがっかりしたのだが。

 

前にここに短時間いたらしい博士に話を聞かされたのだ。ナジャルータ博士と一緒にさまざまな分析をした博士らしいのだが。

 

その博士は言っていた。

 

フルスペックを簡単に発揮できる今だが。

 

だからこそ、天才は本当に手がつけられないスペックを発揮する。

 

京都工場で働いている畑中博士は間違いなく天才だ。

 

推定IQは考えたくもない数字だろうと。

 

皆がフルスペックを発揮できる今、IQは基準数値が大幅に引き上げられていて、過去の基準とは異なっている。

 

同年代の平均が100という計算法を用いる場合。

 

畑中博士のIQはそれでも200は越えているだろうという話も聞く。

 

これは昔の基準のIQではないことを考えると、コンピューター学の基礎を作り上げたノイマンなどに比肩するかもしれない。

 

それくらいの天才だと言うことだ。

 

だから興味もあった。

 

それで配属されて、仕事をする。

 

伝説の超世王セイバージャッジメントは、今でも強化改修が続いている。

 

一目でわかったが、それをまだ続けているのは畑中博士の狂気じみた情熱によるものである。

 

それがどこから来るかはさっぱりわからないが。

 

それでもわかるのは、マルチタスクで作業をこなしながら。

 

普通だったら扱えない異常なマシンをどんどん性能向上させている。

 

そのとんでもないすさまじさだった。

 

SNSが普及した頃の話だが。

 

上には上がいくらでもいる。

 

そういう事例を、散々目にすることになったらしい。それで、自信を喪失してしまう人が多数でたのだとか。

 

今の時代は、それはほとんどない。

 

高齢の、催眠教育を拒んでいるような人間はともかくとして、だ。ほとんどの人間は、非常に高い知的水準にある。

 

知能が磨かれているだけではなく、一夜漬けなどと言う無意味な勉強法で、知識をドブに捨てていた時代と違い。

 

催眠教育で、しっかり知識を身につけているからだ。

 

それでなお、わかるこの差。

 

はっきりいってレベルが違う。

 

実は少し前にノワールとSNSで話した。

 

話してみてわかったのは、完全に見透かされていると言うことだ。

 

頭の出来が違いすぎる。

 

集合意識存在だと言うことは聞いていたが、それにしても話していて相手の言葉に全く矛盾やらを見つけられない。

 

感情論で囃し立てるような戦術も一切通じない。

 

何を言っても全く動じないのだから。

 

それを見たときと、同じような恐怖を、今古田は感じていた。

 

「古田博士ですね」

 

「は、はい」

 

声をかけられたので、思わず背筋が伸びた。声をかけてきたのは、二mはあろうかという巨漢である。

 

岸和田とネームプレートに記載されていた。

 

「職場を案内します。 ついてきてください」

 

「わかりました」

 

「畑中博士、凄まじいでしょう」

 

「え、ええ。 話に聞いていた以上でした」

 

誰でもフルスペックを発揮できる時代であってなお。

 

その凄まじさはまるで揺るがない、文字通り天賦の才の持ち主。それが目の前にいることはわかった。

 

本当にとんでもないな。

 

そう舌を巻くしかない。

 

職場に案内される。

 

この工場は、ネメシスエンドとの戦いでかなりダメージを受けたらしいのだけれども。それでも今では復興が終わり、何ら問題なく稼働している。

 

それを横目で見ながら、デスクに案内された。

 

提供されているPCなどを確認して、すぐに組み立て。セットアップもしてしまう。

 

昔は起動まで数分かかるような低品質のPCが企業用に配布されていることが多かったらしいが。

 

今のこういった業務用PCは、古い時代にスパコンと言われていたものくらいの性能はある。

 

さっさと組み立てを終えて。

 

それで初期設定を済ませるまで、それほど時間もかからない。

 

それで作業を始める。

 

古田の仕事は、本来は京都工場に関連するものではない。

 

シャドウに許される範囲の飛行機械の開発。

 

その下準備だ。

 

 

 

ドローンや飛行機は、まだまだシャドウの攻撃対象だ。現時点のテクノロジーでは、空を飛ぶ機械は許容できない。

 

そうノワールはSNSで明言している。

 

実際問題、それに反発したやつが、たまにドローンを飛ばしたりするのだけれども。

 

一瞬でブライトイーグルに撃墜され。

 

それで絶望だけを味わうのが常だった。

 

ビームだのミサイルだのだったらまだわかるが。

 

ブライトイーグルの収束EMPというとんでもない攻撃には、文字通り為す術がないのである。

 

シャドウを刺激するな。

 

それが基本的な方針である。

 

まだまだ飛行機械は環境に与える影響が大きすぎる。

 

だから今はホバーのさらに新鋭機が開発され。

 

海運で人類は命運をつないでいる状況だ。

 

それをどうにかしようと、各国は努力を続けている。

 

当然神戸、新土佐を中心とする日本も同じ。そして昔と違って大国の利権どころではない今は。

 

技術は平行共有され。

 

それぞれで技術革新を連携しながら進めていた。

 

安かろう悪かろうの時代。

 

一国家がすべての富を独占しようなどと目論んでいた時代。

 

シャドウ戦役前の時代には、とても考えられないことではあるのだが。

 

今はそれが実現している。

 

古田は航空力学や、その歴史をすべて頭に入れている。

 

ライト兄弟が原動機付きの飛行機を作る前に、いくつもの飛行装置が世界では作られ。ほとんどがグライダー方式であったが、それでもそれなりの距離を飛んだ人間はいたという。

 

だがイカロスの神話のようにそれには非常に危険が伴い。

 

ライト兄弟の前には、失敗した技術者の屍の山が築かれていた。これは文字通りの意味である。

 

飛行機械が出現し。さらにそれが本格的に発達したのは二次大戦の頃だろう。

 

制空権の概念が出現し。

 

それによって様々な戦場のドクトリンが変化した。

 

航空機による破壊力を最初に見せつけたのは日本だったそうだ。

 

だが、それはすぐに学習され、むしろそれによって敗れることになったそうだが。

 

黙々と調整を続ける。

 

現状の飛行機械は、汚染を出さずに大量の荷物を運ぶのは不可能だ。

 

ジェットエンジンは有害物質の塊であり、燃料からして極めて危険なものを積んでいる。

 

さすがにロケット燃料ほどではないが。

 

それでもシャドウが怒って撃墜するのも、知識を得ている古田ならわかる。

 

古い時代のプロペラ機とかでも、本質的にはそれほど変わるものではないだろう。だから、どうにかしなければならないのだ。

 

一時期もてはやされたクリーンエネルギーというものは論外だ。

 

あれらはほとんどが、実際にはクリーンどころか、環境破壊をより促進するばかりの愚かしい代物ばかりだった。

 

それを考えると、今は根本的に違うものを少しずつ考えていかなければならない時期なのである。

 

たまに岸和田という士官が見に来る。

 

古田はまだ十二であり、今の時代だからこそ大人に交じって仕事をしている状態であって。

 

それにあまり体格に恵まれないこともある。

 

文字通り見上げるような背丈の岸和田には、ちょっとびくりとさせられる。

 

「何か不自由はありませんか」

 

「大丈夫です。 問題ありません」

 

「それはよかった。 とにかく何かあったらすぐに言ってください」

 

「わかりました。 お願いいたします」

 

儀礼的に話をして、それで今日の仕事はおしまい。

 

各国の研究者が飛行機械について研究しているが、特に戦闘機のようなステルス塗料を使ったりするようなものは、シャドウに瞬間的に破壊されてしまう。

 

シャドウのおかげで地球の環境は人類出現前の基準にまで戻った。

 

汚染は深海などのものも含めて、きれいさっぱり消えてなくなっている。

 

本当だったら、シャドウはずっと人間には干渉する気がなく。地球が人類の手で破綻してから、世界を直すつもりだったのではないかという説まであるらしいが。

 

それが出来ても不思議ではまったくないので。

 

笑い事ではないのだった。

 

帰路は軍のジープで送ってもらう。

 

舗装道路の周囲では、たまに小型種シャドウが姿を見せる。

 

あれがこの距離からだったら絶対に勝てない相手であることはわかっているが。人間の街を中型種ですら監視している今は、それで怖いとはどうしても思えなかった。

 

まだネメシスエンドとの戦いがあったころは、催眠教育を受けていた年代だったらかもしれないが。

 

それにしても、不思議な話である。

 

ちなみに熊や狼と言った猛獣は一切見かけない。

 

シャドウが遠ざけているようである。

 

まあ、それは人間にとってもそういった動物にとってもいいことだ。

 

距離が近くなって、いいことなど一つもないのだから。

 

宿舎に戻る。

 

それで横になって、しばらくぼんやりする。

 

天才を見た。

 

直にその仕事ぶりを見た。

 

今更ながらに、すげえと思った。

 

叫びたくなったが、やめておく。古田は家事をしてくれているロボットに、それとなく聞いてみる。

 

「GQD11、畑中博士を見てきたよ。 すごい人だった。 あの人以上の天才って、今の世界にいるのか?」

 

「単純なIQという観点ではいませんね。 ただ畑中博士は専門分野以外はほとんど触らない人ですので、別の分野では畑中博士以上の業績を上げている人がいくらでもいます」

 

「ああ、うん。 それはなんとなくわかる」

 

「シャドウとの和平を成し遂げる原動力となった超世王セイバージャッジメントを作り上げた天才技術者としての畑中博士は、文字通り世界史に残る偉人となるでしょう。 このまま上手にシャドウとの共存を続け、人類が生き残り、歴史を紡ぐことが出来れば、ですが。 しかしながら、後の時代を支配した英雄達のような影響力はありません。 畑中博士は、技術力で人間とは比較にならないシャドウを創意工夫で斃し続けるという偉業を達成したという観点でのみ、畑中中将や飛騨中佐と同じ最高の実績を上げていますが、それ以上でも以下でもありません」

 

家庭用ロボットも、今はこれくらいはいえる。

 

そして、文字通りそれはぐうの音も出ないほどの正論で。

 

古田は反論できなかった。

 

夕食を食べる。

 

今日はおなかが温まるトマトベースのシチューだった。

 

昔のお店の味くらいは簡単に再現しているというから。

 

シャドウの籠の中にいると活動家のごくわずかな生き残りがSNSでヒステリックに騒いでいる反面。

 

こういう点では、とても豊かに生活できているなと、古田は思うのだった。

 

 

 

翌日も京都工場に出る。

 

実験場があって、そこでいろいろと機材を使って調べてみる。

 

京都工場の上空一㎞までは、シャドウは手を出さない。

 

京都工場の敷地や、上空一㎞を越えた場合は、有人飛行機であろうと、躊躇なく爆砕してくる。

 

まあ恐ろしい相手ではあるけれども。

 

そもそもそうすると相手は警告しているのである。

 

それに対する威嚇行動は馬鹿馬鹿しいだけだ。

 

ともかく、先人が残した資料を自分の目で確認して。失敗と判断された飛行機械の残骸も触って調べていく。

 

そうしていると、こちらに声をかけてくる人がいる。

 

補助役支援役として、この京都工場の影の支配者とまでいわれている三池さんだ。

 

特段優れた技術力などはなく、畑中博士より年上らしいのだが。

 

それでも年下の畑中博士をよく支え。

 

研究以外ずぼらの極みである畑中博士がいつでもフルスペックを発揮できるようにしている、影の功労者。

 

それは知っているので、慌てて敬礼していた。

 

いくつかの話をした後、倉庫を教えてくれる。

 

倉庫にも、過去の遺産がいくつも残っている。

 

工夫したんだなと、一目でわかる。

 

とにかくシャドウは原動機付きの飛行機が飛ぶことを許さないのはよくわかった。それがドローンでも同じだ。

 

いろいろ工夫して、汚染物質を出さないようにした実験機がいくつもある。

 

大きいのから小さいのまで様々だ。

 

だが、ここでは試験機は基本的に二機作るようにするという約束事が存在している。

 

もしもシャドウの逆鱗に触れた場合、墜落どころかその実験機は消滅してしまうからである。

 

故にここにあるものは、すべてだめだったということだ。

 

「古田博士は航空力学の専門らしいですね。 何かわかりそうですか」

 

「いえ、簡単にはいかないと思います。 これらを見ると、とにかくあの手この手で必死に空を汚染物質を減らして飛ぶ工夫をしていますが、それでもシャドウは許さなかった。 あるいは、飛行動力を何かしら工夫しないといけないのかもしれません」

 

「私はいずれにしても専門外なので、基本的に口は出しません。 ただし、有人飛行だけは許可しません。 意味はわかると思いますが」

 

「はい。 自分もまだ死にたくはありませんから」

 

三池さんが、後で茶を入れてくれるらしい。

 

ありがたい話だ。

 

とにかく、倉庫の飛行機械をすべて見ていく。

 

それらを見てわかったことは。

 

今の時点での技術では、どれだけ小手先のことをやっても無駄だと言うことだ。

 

実際、超世王セイバージャッジメントだって、内部に真空のあるワイヤーで、擬似的な反陽子による反物質ビームを用いて、ブライトイーグルを撃墜したのである。

 

ブライトイーグルとは違って、戦闘機の役割を果たすシルバーフィッシュとはついに交戦はしなかったようだが。

 

いずれにしても空中戦でシャドウと戦うのは100%無理。

 

それはまだひよっこの学者である古田にもわかる。

 

それに、ここでいろいろなものをみて理解できたが。

 

技術的なシンギュラリティを経ないと、おそらくシャドウは納得しないだろう。

 

世界各地に基地局を作ることをシャドウが許可してくれたおかげで、世界各国の学者と連携は出来る。

 

ただ航空力学の学者はあまり数が多くなく。

 

今でも古田はその貴重な一人でもあるので、周りをあまり頼れないのは少しばかり心細い。

 

それでもどうにかするしかない。

 

中央アジアや中東といった無人地帯は、今もシャドウが入ることを許してはくれない。というか、資源採掘自体を許してくれない。資源は供与してくれるが、このままだとシャドウと共存がなった未来に、人類は弱体化しきってしまうだろう。

 

もちろん、全く思考回路が違う、人間より明確に格上の存在と出会い。

 

それと連携をなしたということは、とても大きい。

 

それについては、人類史の何よりも大きな実績となる。

 

わかっている。

 

人間の歴史が、延々と殺し合いと奪い合いの歴史だったのは、自己正当化と他者否定の理屈。

 

全肯定と全否定の理屈で。

 

一部の人間が、多数の愚者を支配する仕組みが一般的だったからだ。

 

「わかってはいるけれど……」

 

技術的なシンギュラリティなんて、簡単に起こせたら苦労はない。

 

それを比較的簡単に達成している畑中博士の凄まじさが、そばで見て、仕事をしてみてよくわかった。

 

だが、それでもだ。

 

凡人の意地は通す。

 

デスクに戻ると、三池さんがお茶を出してくれた。茶菓子までついている。恐縮していただく。

 

数年前までは、どんなに頑張ってもおいしいお茶は出なかった。

 

茶の栽培などのノウハウが全滅していたからだ。

 

それが今では、かなりおいしいお茶が出てくる。

 

ロボットが淹れたのかなと一瞬思ったが。

 

ここでは三池さんがこの手のことをすべて取り仕切っているらしい。

 

それは畑中博士をはじめとした皆が、頭が上がらないわけだ。

 

古田はそれに希望も見る。

 

三池さんは、これといった業績を上げていない凡人である。

 

それでも、この人類の命運をかけたプロジェクトが動いていた工場で、お局になるようなこともなく。

 

しっかりやれている。

 

天才だけが世界を動かすのではない。

 

こういう人がいて、天才は実力を発揮できるのだ。

 

だったら。

 

古田は天才ではない。

 

わかっているから、資料の整理を始める。

 

自分でシンギュラリティを引き起こすことは、まずは排除して考える。

 

今やるべきことは、シンギュラリティを引き起こせる人間に、その道を作るべきことだろう。

 

前任者達は、いずれもシンギュラリティを引き起こそうと、躍起だった。

 

それは数々の実験機を見れば、明らかすぎるほどだった。

 

古田は、自分が出来る範囲からやっていくことにする。

 

それが現実的だし。

 

それでいいと思うからだ。

 

人間が空に再度進出するのは、どう考えても百年はかかるとみていいだろう。

 

今開発している次世代のホバー輸送船も、昔のタンカーなどとは比べものにならないほど積載量が小さいのだ。

 

そういう時代。

 

古田が歴史に名を残すのは、野心的ではあるが、非現実的でもある。

 

だから、今は。

 

畑中博士の方を一瞥する。

 

超世王セイバージャッジメントを直に見て理解できたが、あの人はいきなり人型ロボットを作るようなことをしなかった。

 

人間が持っている手札で、どうあがいても勝ち目なんかないシャドウに勝つことからはじめ。

 

変態兵器といっていい代物を使いこなせる畑中中将や飛騨中佐がいたとはいえ。それでもやってのけたのだ。

 

それは決してシンギュラリティではなかったかもしれないが。

 

それでも素晴らしい人類史に残る偉業だと思う。

 

いずれ人型の羽とか生えたかっこいいロボットが当たり前の時代が来るのかもしれないけれど。

 

少なくとも古田がそれを見ることは、厳しいだろうというのが本音である。

 

だが、それで焦ることはない。

 

GDFの首脳部でも、すっかり主戦派は弱ったようだし。

 

それでもたまにシャドウのくびきからの脱出をとつばを飛ばして叫ぶやつもいるようだけれども。

 

具体的にどうシャドウに勝つのかという話で。

 

勝てる方法を提示したやつなどいない。

 

シャドウに勝つことは、アトミックピルバグが出現した時点で完全に不可能になったというのが定説だ。

 

それは古田も知っている。

 

食事を終えると、仕事を始める。

 

目的が出来ると楽だな。そう思う。

 

淡々と作業をして、すべてをまとめていく。

 

古田がやるのは、道の整備だ。再び人類が空に旅立つ時への。

 

シャドウが認めるくらい、人類がこの地球の環境でうまくやっていける時が来るとしても、それはずっと先。

 

シャドウは人類が自立しても大丈夫だと判断したらこの地球を去るという話だった。

 

ただ、それは早くても何千年も先だろう。

 

データをまとめて、それで家に戻る。

 

少しずつ、緊張もほぐれていた。

 

それから、ずっと古田はこの作業を続けていくことになる。

 

何度か学会に発表はしたが、それはあくまで新しい技術ではなくて、既存の技術の問題点と、クリアするべき課題のまとめを、である。

 

それでいいのだ。

 

 

 

それから古田は、引退するまでそうやって飛行技術復活のための基礎を固め続け。

 

ずっとずっと後、引退したときに、こう言ったという。

 

天才に出会えたことで、自分は最後まで分をわきまえることが出来た。

 

この後人類が飛行技術を復活させ、シャドウと一緒に空を飛ぶことが出来るようになった時。

 

自分は空……あの世が空にあるかはわからないし、あの世があるかもわからないけれども。

 

それを笑顔で見守ることが出来る。

 

シンギュラリティを起こすことは出来なかったが。

 

きっと後続の誰かがそれを成し遂げられる。

 

それを信じられたのは、天才を見ることが出来たからだ。

 

幸運な人生だった。

 

そう、古田は語り。139歳で天寿を全うした。

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