スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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そもそもとしてこの戦いでは、空中にいる飛翔種……あらゆる航空兵器を過去の存在とした厄介な飛行中型シャドウをどうにかしないといけません。それが出来ないとそもそも戦闘が成立しませんので。

軍にもそういう意味では仕事があります。

それも、海中で戦う超世王セイバージャッジメントとの連携が失敗したら即座に詰みという、厳しい仕事が。






1、それぞれの作戦

広瀬中将は部隊の再編を進めながら、それはそれとして光学探知特化の部隊を、神戸近郊に派遣していた。

 

今の時点で畿内の三割程度くらいしか安全圏はない。この間の紀州攻略戦で成功は収めたものの。

 

まだまだスカウトを出して状況を確認し。

 

人が移るのはそれからである。

 

小型種一体ですら、集落が一つ滅びるのだ。

 

ちいさな街が小型種一体の侵入を許しただけで、短時間で数百人の死者を出して放棄した実例すらある。

 

シャドウはかくも恐ろしい。

 

人間の生活圏を拡大するにしても、まずは安全を確認してから。更にはシャドウに対応できるようにインフラを整えてから。

 

しかも、だ。

 

現在こそ自然はどんどん回復して行っているが。

 

それもいつまで回復が続くかは分からない。

 

シャドウを倒し続ければ、それも止まるかも知れない。

 

地球の資源なども、シャドウがいる地点では回復の傾向が見られるという。土壌汚染や水質汚染が見る間に回復しているという話なのだ。

 

人間が再進出したら。

 

それも終わるかも知れなかった。

 

海兵隊の新しい司令官であるリーダス大佐が、連絡を入れてくる。

 

今度の司令官は四角い男達の頭目みたいだった前のファーマーと違って、ある程度協調性がある。

 

今だけかもしれないが。

 

螺旋穿孔砲の部隊への導入も積極的で。

 

前回の戦いで大きな被害を出した海兵隊の中でも、マッチョイズム原理主義者みたいな連中は殆ど戦死したこともある。

 

ある程度、再建は上手く行っているようである。

 

「此方海兵隊。 予定地点の偵察完了。 シャドウの姿なし」

 

「了解。 帰路も警戒しつつ帰還してください」

 

「イエッサ」

 

連絡も最小限だ。

 

新しい司令官はサイボーグではないかとか、ロボットではないかとか言われているらしいのだが。

 

それもなんとなく頷ける。

 

ただし相応に協調性を見せてくれているので、広瀬としてはこのまま上手くやっていきたいところだった。

 

「此方呉美玲奈准尉」

 

「呉美准尉、どうした」

 

「現在イエローサーペントを確認中。 上空に飛翔種、ブライトイーグルがいます」

 

「分かった。 距離を取り、近付かないようにしつつ情報をできるだけ集めよ」

 

この間の会戦でも26体もの小型を仕留めた玲奈准尉。非常に小柄だが、戦闘に関しては天才的なセンスがある。

 

狙撃の腕に関しては、歴戦の海兵隊員より上ではないかと言われていて。

 

小柄で身体能力が低いことを、パワードスーツで上手く補って、戦闘では冷静極まりない狙撃で敵を仕留め続けている。

 

それもあって、順調に出世を続けているのだが。

 

これには、前の戦いで多くの兵士が死んで。

 

彼方此方で人員が足りないという理由もある。

 

現在第四師団からは人員を彼方此方に流出させ、それでどうにか第一、第二師団はやっていけるようにはなったが。

 

第四師団は新兵を集めて訓練をしている状態で。

 

ここ最近の二回の戦いで大きな被害を出した事もある。新兵の集まりは悪い。クローンや人工子宮生まれの世代は珍しく無いが、それも別に他の人間と違うわけではない。広瀬中将もそうだから分かる。

 

軍隊に都合のいい兵士を畑から収穫なんてできないのだ。

 

また、シャドウに人類が壊滅させられてから一世代以上が経過しているといっても、いまだにシャドウの恐怖は健在。

 

それでわざわざ志願してくる兵士も限られてくる。

 

一応北米などから義勇軍も送られてきているが、殆ど食い詰めの難民である事も多く。兵士にされると聞かされていないと言い張ったり、脱走したり。軍紀を聞かないような者もいる。

 

そういった連中の再教育も急務であって。

 

色々と苦悩は絶えなかった。

 

「此方スカウト22。 小型シャドウ発見。 ブラックウルフです」

 

「距離を取れ。 場所を連絡せよ」

 

「現在偵察中のB2245地点になります」

 

「把握した」

 

映像が送られてくる。

 

紀伊半島の南部は更に峻険な山々と複雑な海岸線がある地帯だが、その周辺にシャドウはまだいるようだ。

 

そしてこれらはランスタートルが倒れた後、攻撃に加わらなかった所から見て、恐らくは別の中型の護衛をしていると見て良い。

 

紀伊半島といってもそれなりに大きい。

 

更に東に、伊勢の辺りに行くと、まだまだ多くの中型がいるのかも知れない。

 

そう思うと、今から慄然とさせられる。

 

スカウトには無理はさせない。

 

スカウトは基本的に熟練兵の仕事だから無理はしないとは思うが。それでも逐一指示は出しておく。

 

しばしして、休憩を取る。

 

広瀬は内臓に疾患を持っていて。これは残念ながら現在の医療では治らない。対処療法しかない。

 

人工子宮で生まれたり、稚拙ながらクローンで生まれた人々が希に持っている病気で、「新生病」等と言われている。

 

内臓に疾患があって生まれてくる病気で、どうも遺伝性のものではないらしい。遺伝子系の疾患は現在は治療が出来るのだが、それもあくまで理論上の話。そこまで病院は動いてくれていない。

 

二度の戦闘で勝って安全圏が拡がったのなら、そっちに移りたい。

 

そう言ってくる孤立した集落の人々が。連日連絡を入れてくるという報告も受けている状況だ。

 

色々と心労は絶えない。

 

ともかく薬を飲みつつ、適当に休む。

 

まだ若いからどうにかなっているが、年を取ったら悲惨な事になるだろう事は目に見えている。

 

それでもまあ、どうにかしなければならないか。

 

休憩を終えると、黙々と指示を出す。

 

呉美准尉から送られてきた映像は、イエローサーペントを舐めるように観察していて。上空にいるブライトイーグルについても同時に観察してくれている。

 

狙撃について相当な技量がある事からも、観察がそもそもとして得意なのかも知れないのだが。

 

それはそれとして、助かる。

 

各所に資料を送っておく。

 

畑中博士は兵器を作るので忙しい。

 

シャドウの研究を専門とする学者に、資料を送っておけば、見解が出てくる可能性もある。

 

いずれにしても、広瀬中将は勝つためにやるべき事を全てやっておかなければならない。

 

次は大規模会戦にならない可能性もあるが。

 

ブライトイーグルは危険な飛翔種だ。

 

奴を陽動で引きつけるだけでも、どれほどの損害が出る事か。今から覚悟は決めておかなければならなかった。

 

司令部に戻る。

 

スカウトは展開を交代で続けて貰う。

 

連絡が移動中にも入ってくるが、やはり人工物は悉く消し去られているようだ。あらゆるインフラを作り直しである。

 

だが大気汚染も土壌汚染も、水質汚染も回復して来ている今。

 

それについては、文句をいう資格は無いのかも知れない。

 

師団長を交えて会議を行う。

 

しばし情報交換をしていると、急報が入っていた。

 

「此方第一師団、スカウト119! 急報です!」

 

「どうした。 完結に報告せよ」

 

増田中将が言う。

 

すぐに映像が会議室に映し出されていた。

 

うめき声が上がる。

 

スカウト119の現在位置は琵琶湖近く。今まで琵琶湖は危険すぎて近づけなかった。キャノンレオンのせいで、だが。

 

それもなくなって、スカウトは進出が出来るようになっていたのだが。

 

映像には。琵琶湖を悠々と泳ぐイエローサーペントの姿があった。

 

琵琶湖もまた、水質汚染から回復しているという連絡があった。また、後から持ち込まれた外来魚なども姿を消したそうである。

 

一部のマニアを自称するならず者達が放流して、自分達の快楽のためだけに環境を滅茶苦茶にした。そんな外来魚が失せ果てたのは良い事ではあるのだが。

 

まさか、湖にもイエローサーペントが出るとは。

 

「スカウトの装備でシャドウと戦うのは不可能だ。 イエローサーペントがいるとわかっただけで充分だ。 引き上げてきて欲しい」

 

「はっ……」

 

実は琵琶湖は、水源として期待されていた。

 

各地のダムなども破壊され尽くした後である。

 

巨大な淡水湖である琵琶湖は、シャドウさえ追い払えば神戸の水源として、更に街を拡大させるための原動力になる事を期待されていたのだが。

 

それもこれで厳しくなった。

 

シャドウがどこからともなく現れる事は分かりきっていたことだが、それにしても。

 

これでは各地の湖にも、同じようにイエローサーペントや他の海棲中型シャドウが現れていてもおかしくない。

 

「天津原代表に連絡を。 厳しい話になった」

 

「各地の集落も厳しい状態であった中、琵琶湖を確保できればと言う期待はあったのだが……」

 

「それも狸の皮算用だったということだ。 衛星も生きていない今の状態では、どうしようもない」

 

「……」

 

誰もが黙り込む。

 

いずれにしても、中型を斃せたというのは大きい。日本以外で、まだ生き残っている集落の近くなどにも湖はある。

 

幸い輸送船はまだ動くものも多い。

 

シャドウに破壊されなければ、今まで作られたものが幾らでもある。

 

そして一つだけ良いことは。

 

シャドウが現れる前に主流だった考え。

 

安かろう悪かろうの時代は終わったと言う事だ。

 

現在はあらゆる物資を大事に使う時代が来ている。故に、何処の船も頑丈で、耐用年数を長くするように工夫されていると言う事だ。

 

ともかく、イエローサーペントを倒す所からだ。

 

それまでに、可能な限りの準備はしなければならない。それが急務なのは、此処にいる皆の共通の目標なのだった。

 

 

 

呉美玲奈准尉はイエローサーペントの観察。更には上空にいるブライトイーグルの観察も続けていた。

 

呉美玲奈という名前は日本人そのものだが。

 

実は自分が何者なのか、玲奈は良く知らない。

 

文字通りの意味である。

 

それなりに今は玲奈の同類がいるのだ。

 

シャドウが世界を破綻させてから、最後に残った都市神戸。其処に集まる人は多く。それらの遺伝子は無作為に集められた。

 

遺伝子的な多様性を確保するためにバンクが作られて。

 

稚拙なクローン技術でそれらから生殖細胞が生産され。そして子供もまた生産された。

 

玲奈は現在18になるが、これはシャドウによる攻撃が一段落して、ある程度「平和」が来てからそれなりに時間が経過してからである。

 

この時代のクローン世代は「第二世代」と言われているのだが。玲奈は第二世代の中でも早い方。

 

シャドウとの戦争中から戦後すぐくらいまでに生まれたいわゆる「第一世代」の有名人としては広瀬中将などがいるが。

 

この第一世代は正体不明の内臓疾患を抱える(新生病と言われている)ケースがあり。それ以外にも身体的なハンデを背負っている場合が多い。

 

だが第二世代以降のクローンは、特にそういうものはない。

 

その代わり、多くの第二世代がどこの国籍の人間が親だか分かっていない。そもそもとして今は催眠学習が出来る事もある。

 

更に言えば、教育のやり方を工夫すれば、人間の潜在能力をフルに引き出せることも分かっている。

 

それもあって、クローンだろうが自然分娩で生まれた子供だろうが能力に格差はないのだが。

 

それはそれとして、ルーツは知りたいとは思うのだった。

 

まあ機密扱いなので知る術はないのだが。

 

それでも、いずれ分かれば良いなあとくらい思っている。

 

それには真面目に仕事をするしかない。

 

幸い、今は真面目に仕事をすれば報われる時代になっている。玲奈も今の年齢で准尉である。

 

観察を続ける。

 

どう見ても、ブライトイーグルとイエローサーペントは相互連携をしているようには見えない。

 

録画をするだけではなく、色々な角度から相手を確認する。

 

イエローサーペントはゆっくりと大阪湾を巡航しているが。時々そのソニックブームを放って、遠くの海洋にいる船を容赦なく撃沈する。

 

それについても、観察してから相手に警告を出しても遅いことが多い。

 

だが、観察を続ければ。

 

いずれ専門家が、ソニックブームを出す兆候などを明らかにしてくれるかも知れない。今までは、その余裕さえなかったのだ。

 

数日間観察を続けていたが。

 

不意に妙な事に気付いた。

 

イエローサーペントは、一日数時間ほど潜ってじっとしているのだ。普段は水面近くを泳いでいるのに、である。

 

しかもその潜っている間は、ブライトイーグルも動く様子を見せない。

 

これは一体。

 

いずれにしても、何かしら理由があると見て良いだろう。情報をまとめてから、連絡を入れておく。

 

しばしして、連絡が帰って来る。

 

広瀬中将からだった。

 

「そのまま観察を続けてください。 それと……其方にこれからシャドウの研究学者が行きます。 護衛をよろしくお願いします」

 

「イエッサ」

 

学者ねえ。

 

今の時代は、学者といっても年配とは限らない。

 

催眠学習もあって、それこそ古くにはギフテッドといわれていたような人間をほぼ確実に発掘できることもある。

 

だから、子供が来てもおかしくは無い。

 

しばらくこの近くでキャンプを張って監視をしていたこともある。

 

玲奈は既に更地になっている大阪の街を横目に。其処に居座り続けていた。

 

今、畑中中佐は上手くやれているだろうか。

 

今度は水中戦だ。

 

第七艦隊を単騎で潰すようなイエローサーペントを相手に、単独で戦わなければならない。

 

非常に厳しい戦いで、今度こそ的確に支援しなければ命を落としてしまうかも知れない。

 

そうならないように支援するのが玲奈達兵卒の仕事だ。

 

食事を取る。

 

しっかり栄養を取っておく。

 

休憩を入れてから、ずっと観察を続ける。

 

琵琶湖の方でもイエローサーペントが見つかったという話は聞いたが。紀伊半島の南部でも、回遊しているイエローサーペントが発見されたらしい。

 

人間が早々に制海権を失ったわけではある。

 

第七艦隊を潰した奴が、そこら中にいるのだから。

 

しかも海中の中型種はイエローサーペントだけではない。小型種だっている。それを考えると、あらゆる意味で厳しかった。

 

無言で休んでいると、車のブレーキ音。

 

学者か。

 

キャンプから出て出迎える。

 

相手は玲奈と殆ど背丈が変わらない、だが随分と大人びた顔をした女性だった。いや、本当に女か。

 

ちょっと分からない。

 

敬礼をすると、相手も敬礼を返してくる。

 

「ナジャルータ博士です。 よろしく」

 

「玲奈准尉です。 よろしくお願いします。 非常に危険な相手なので、くれぐれも刺激はしないでください」

 

「分かっています」

 

肌が少し浅黒いが、どこの国の民だろう。声を聞いても中性的で、性別はなんとも判断出来なかった。

 

遺伝子データを持ち出すことにすら神の意志に反するとか抜かして反対して、最後まで内ゲバして滅んでいった中東の民とは違うだろう。だとするとインド系か東南アジア系だろうか。

 

いずれにしても、年齢から見て多分本人も分かっていないだろうなと思う。

 

軽く説明して、今までのデータを見せる。

 

頷きながら、凄まじい速度で把握していくナジャルータ博士。動きだけ見ると女性っぽいのだが。

 

何というか雰囲気が中性的でちょっと何ともいえない。

 

そして、観察器具を渡すと、自分でも観察を始める。此処からは玲奈は護衛に集中だ。

 

しばらく無言での観察をしていると。

 

ナジャルータ博士が聞いてくる。

 

「その若さで准尉と言う事は、相当な死線をくぐってきているんですね」

 

「いえ、たまたま生き延びただけです」

 

「今確認しましたが、小型だけとはいえ相当なキルカウントを稼いでおられる。 あの畑中中佐がいなければ、エースオブエースだったでしょう」

 

「……私には中型を倒す事は出来なかったと思います」

 

それが全てだ。

 

たまに起きる小競り合いで、小型を倒すのが玲奈の限界である。それは自分でも分かっているから。こう言う言葉には、あまり同意できない。

 

自己評価を高く持つのは大事だ。

 

だが、それをやり過ぎると、いずれ傲慢になり果ててしまうのである。

 

「貴方の目から見て、イエローサーペントはどう思いますか」

 

「人間の持つ火力を叩き付けてもびくともしなかったという点では、他の中型と同じだと思います。 幸い海中で活動している小型種は数が少ないこともあり、今までの戦闘よりもあくまで比較してですが、畑中中佐は安全に戦えると信じたいところではありますね」

 

「自分から見てどうとは思わないんですか」

 

「思いません。 そもそも有効打を与える手段がありませんので」

 

これは役割の違いでもある。

 

そもそも玲奈は今回の戦いで、出しゃばるつもりもさらさらない。

 

准尉に昇進していることさえおかしいと思っているくらいなのである。それに、兵隊として動けるなら、そうする。

 

ただそれだけだ。

 

しばし考えてから、ナジャルータ博士は、スコープでイエローサーペントを覗き込みながら言う。

 

「不可解なんですよね、あの中型」

 

「どういうことでしょうか」

 

「彼奴の探知範囲に掛かったら、安全航路なんて存在する筈がないんです。 それなのに現在かろうじて多大な犠牲の末に導き出された安全航路を使って、人間は物資を輸送できている。 その安全航路も時々攻撃される。 法則性が見つからないんです。 縄張りをそれぞれ持っているようですが、個体同士で争う様子もなく、連携する様子すらもない。 イエローサーペントの別個体が第七艦隊を単騎で滅ぼした時、他の個体が手伝いに現れる事さえありませんでしたし、更には第七艦隊が接近するのを許してさえいるんです」

 

「……」

 

ソニックブームを自在に操るイエローサーペントの性質上、確かにそれは不可解極まりない話ではある。

 

遠距離の船舶を攻撃しないというわけでもないのだ。

 

ならば第七艦隊なんか、近付く前から片っ端から落とされていてもおかしくはないのである。

 

何故それをしなかったのか。

 

それでいながら、飛翔種と連携して行動もする。

 

小型は随伴させない。

 

いずれにしても、確かに他の中型と比べて、不可解な事が多すぎるという事では同意できる。

 

ただ、それについて。

 

明確な見解を口に出来ないのもまた、事実だった。

 

無責任な意見を専門家に述べることは無意味だ。

 

釈迦に説法というのともちょっと違うか。

 

いずれにしても、分からないというスタンスを示すしかない。

 

しばし黙り込んだ後。

 

ナジャルータ博士は言う。

 

「私は現場の専門家の意見を聞いてみたいと考えています」

 

「専門家と考えてくれるのは有り難いですが、私はあくまで地上の小型種との戦闘を経験しているだけの一兵卒です。 ブラックウルフとシルバースネーク、それにクリーナーしか戦闘経験は実際ないとしかいえません。 キャノンレオンやランスタートルの戦闘は見ていますが、あれらの攻撃に巻き込まれていたら、確定で死んだと思います」

 

「しかし、今回も飛翔種の誘引のために動くと聞いています」

 

「他に誰もいないからです」

 

今回抜擢されたのは、しばらく仕事がなくて腐っていた移動式ミサイル大隊の面子や、それに玲奈のような精鋭と言われる一部の兵士だけである。

 

それを考えると複雑な気分だ。

 

小型相手に戦果を上げたとしても、戦況に対して決定的な影響力を発揮したわけではない。

 

あまりにも畑中中佐に比べると。勿論畑中博士に比べても。非力すぎるのだから。

 

「専門家というのなら、畑中博士や畑中中佐に確認しては如何でしょうか」

 

「既に確認して所見を聞いています。 お二人も中型については未知のことだらけで、仮説以外は何も言えないと言っておられました」

 

妥当な発言だと思う。

 

度が超えた変人だと聞いている畑中博士は、それはそれとして強烈なリアリストでもあるのだ。

 

あの人が作った兵器がとんでもない代物なのは見ているから知っているが。

 

それはそれとして、人類が初めて中型を明確に打倒出来た兵器でもあるのだ。

 

変態兵器なんて揶揄する人間もいるが。

 

いかなる正当派兵器ですら、中型シャドウには通じなかった四半世紀の事を考えると。そういう陰口が如何に無意味なのかよく分かる。

 

畑中中佐に至っては、もっと厳しいリアリストだ。

 

噂には聞いているが、海兵隊に所属していたときに、相当なトラブルがあって。殺され掛けた事も、強姦され掛けたことさえあったと聞く。

 

それでありながら、海兵隊に対して恨みをつのらせるようなこともなく。

 

前回の戦闘の前哨戦では、偵察途中で小型に襲われた海兵隊をさっと救助して、撤退支援もしている。

 

それくらい、我を殺せる人だ。

 

そういう人達だから、中型を倒すための切り札たり得ているのだと思う。

 

「分かりました。 無責任なことはいえないという責任感の強い方だというのは話していて理解出来ました。 今後は頼りにさせていただきます」

 

「いえ……」

 

「それと私に性別はありません。 強化人間計画は今も行われているんですが、その過程で出来てしまった性別のないイレギュラーです。 頭ばっかり良くはなったようですが、あまり自覚はありませんね」

 

そうか。

 

人間は勝つために色々無茶苦茶をやっているのは分かっていたが。

 

それでもこう言う被害者を目の当たりにすると。

 

色々と、言葉がでなくなるのもまた事実だった。








5000万にまで撃ち減らされた人類は、手段なんぞ選んでいられません。

この戦いに参加している人々は、相応に無茶な状況……非人道的な境遇で戦いに参加しているのです。

そもそもシャドウが世界中で攻撃を再開したら人類は終わる。

そういう状況で、どうにか反撃がやっと始まったのがこの世界の現状なのです。







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