スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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ロボットものだと「天才」という理由だけでカスタム機とかワンオフ機を一瞬で操作する人が出て来ますね。

まあ天才だと本当に出来るかもしれませんが。

残念ながら本作では、そこまでの「天才」は存在していません。

対抗兵器を積み込んだ超世王セイバージャッジメントを操作するために、畑中菜々美さんはさんざん訓練を重ねて、本番に十全に動けるように準備をするのです。

それくらい既存の兵器とは違う代物だ、という理由もまたあるのですが。






2、水中での戦いに備えて

最近は戦車が一人乗りであるのと同時に、潜水艦の一人乗り化も進んでいる。そういう話を菜々美は聞いていた。

 

まあそれはそうだろう。

 

マンパワーが失われ。

 

AIによる自動制御兵器もシャドウには通じない。

 

AIによる支援を行いつつ、シャドウにどうにか相対していくしかない。それが現実である。

 

それを考えると、兵器類は一人で操作できるようにし。

 

更にはそれをAIで支援する。

 

両者の得意分野のいいとこ取りをしていく事で、どうにかシャドウに対抗する。それしか人間には手がないのだ。

 

姉がある程度形になったというので、紀伊半島にある工場に出向く。工場の側では、38式潜水艦が水揚げされていた。

 

もう必要ないと言う事なのだろう。

 

そして、工場の内部に入る。

 

周囲は第二師団のスカウトと精鋭が固めていた。

 

あの玲奈という兵士がいるのではないかと思ったが、ざっと見回した限りはいないようである。

 

カードキーを通して、工場に入る。

 

姉は完全に入っていて、凄まじい勢いでキーボードを叩いていた。早い場合は数日でキーボードをダメにしてしまうというが。

 

まあそれも納得である。

 

三池さんが来る。

 

先にドーナッツを差し入れてくれたが。これは先に糖分を頭に入れておけという意味だろう。

 

軽く頬張りつつ、話を聞く。

 

「試験的に他の兵士が入ったようですが、すぐに音を上げて出て来ました。 かなり厳しいので、気をつけてください」

 

「あー、いつもですよ」

 

「いつも以上です」

 

そうか。

 

三池さんがそこまでいうと言う事は、余程なんだろう。姉の作る変態兵器にいつも関わっているのだ。

 

普段よりも更に凄いというのは、何となく分かる。

 

それにしても、だ。

 

形になりはじめているそれは、潜水艦というにはあまりにも。

 

まあ、それはそれでいいのだろう。ともかく、一応の戦術的構想については聞かされている。

 

今度は何とかドリルを使うらしい。

 

ドリルといっても、ハンドドリルと掘削用のドリルは別物だ。掘削用のものはシールドマシンなどというが、一日数メートル掘れれば良い方であり。

 

昔のアニメや特撮に出て来たような、一瞬で地下深くまで掘り進めるような代物は存在しない。

 

地面はそんなに甘い代物ではないのだ。

 

とりあえず、卵形のシミュレーションマシンに入る。

 

これも何度も中身を書き換えては、バージョンを保存して残している。ファイル名も意味不明極まりなく。

 

姉にもしも何かあった場合。

 

後任者は引き継ぎは無理だろうと三池さんは言っていたな。

 

ともかく黙々と席に着き、シミュレーションマシンを機動。

 

うおんと唸るようにして、辺りが暗くなる。そして、大量の情報が座席の前面全ての方向に表示される。

 

まあ、それは分かっている。

 

黙々と作業をする。

 

まずは状態の把握からだ。

 

膨大なデータが表示されている。これはイエローサーペントとの位置関係か。

 

姉が改良しているこの38式をベースにした潜水艦……ではなく超世王の新しいバージョンは、如何にしてドリルをイエローサーペントに叩き込むかが課題になる。

 

そもそもイエローサーペントはどうやってソニックブームを出しているか、今まで膨大な検証が行われたにもかかわらず分かっておらず。

 

艦隊で挑んで壊滅した何回かの戦闘データの。それもごく短い時間だけしか残っていないもの。

 

それをベースに、説を組むしかない。

 

姉も大変なのである。

 

それについては、菜々美も分かってはいる。だから、揶揄をするつもりはない。

 

淡々と操作方法を覚える。

 

それにしてもわかりにくい操作方法だな。

 

悪態をつくが、そもそもこの大きさの潜水艦を単騎で操作するのは無理がありすぎるのである。

 

「蛸にでもなれってか……」

 

ぼやきたくなる。

 

だが、それでもやらなければならない。

 

複数生えている操縦桿を、出来るだけ忙しく動かす必要がある。それは分かっているのだが。

 

それでもまだまだだ。

 

無言で操作を順番に覚えていく。

 

これは普通だったら、まっすぐに進むことさえ困難だなと理解。姉もシミュレーションのデータは見ているので、それを即座に理解して改良はしてくれるだろうが。いずれにしても、色々な機能を追加することに関しては変わらないだろう。

 

イエローサーペントの出すソニックブームが強烈なのではなく、そもそもソニックブームそのものが破壊的な威力を持っている。

 

ソニックブームを自在に操る時点でイエローサーペントは生身の生物ではないし。

 

また、その攻撃を防ぐのは極めて困難。

 

それを理解した上で、この戦いには臨まなければならない。

 

だから、これの基になった潜水艦は。

 

移動時に音を消すことに、その機能を全て使っているし。

 

更にはその38式の魂を受け継いでいる超世王は。

 

更に更に、水中での音を消して動けるようにするということだ。それらの構築戦略は分かっている。

 

だが、それはそれとして。

 

この操作性の悪さはどうにかならないものなのか。

 

まずは移動をするだけで、一日目の訓練が終わりそうだ。海底などにぶつかるのは避けられそうだが。

 

それはそれとして、シミュレーターは極めて良く出来ていて、魚などが寄って来ているのが分かる。

 

それはまあ、そうだろう。

 

生態系が回復して来ているのだ。

 

魚くらいは興味を示して寄ってくる。

 

この超世王のスクリューは、相当な消音性能を持っていて、至近距離でも殆ど音が分からないという。

 

ソニックブームを操るイエローサーペントは、音に対するスペシャリストである可能性が高いが。

 

そもそも音というのは。

 

分子がどのように動いているか。

 

それがどう波及するか。

 

そういうものであるらしい。

 

それは良く理解出来ているので、菜々美は文字通り、あらゆる全てをくぐるようにして。超世王を動かす。

 

シミュレーションではあるが、姉の作るシミュレーションマシンは……扱いづらいが、それでも信頼はしている。

 

それでも問題は起きる。

 

だから実戦の前に、可能な限りそれを洗い出さなければならないのもまた、事実なのである。

 

アラームが鳴る。

 

一通り問題点はわかった気がする。

 

外で軽くスポーツドリンクを飲んで、またドーナッツを頬張る。

 

頭を無茶苦茶使った。とにかく頭の中がゆであがりそうだ。椅子にもたれて、しばらく無言でいると。

 

三池さんが、またドーナッツを持ってきた。

 

手作りで良くこれだけ色々造れるな。

 

整備工の人達にも、それぞれ振る舞っているらしい。まあ、皆微細な作業をしているのだ。

 

これくらいの差し入れはあってもいいだろう。

 

黙々とドーナッツで糖分を補給してから、シミュレーションマシンに潜る。

 

またちょっと調整されている。

 

姉は超世王を調整しながら、更に手を入れている訳だ。超人的な手腕である。天才であるのは間違いない。

 

淡々と操作する。

 

更に操作性が悪くなったが、これは試されているのだろうか。だが、それでもどうにかする。

 

現状、姉の造る兵器をうまく操れるのは菜々美しかいない。

 

だから、菜々美がどうにかして、ノウハウを蓄積するしかないのだ。

 

淡々と作業を続けていると、すぐにアラームが鳴った。嘆息して、シミュレーションマシンから出る。

 

もう、夜だった。

 

徹夜の類は効率を落とすだけだ。見ると、整備工の人達も、引き継ぎして交代に入っている。

 

こういうシフトでの業務は人の寿命を著しく縮める。

 

だからあまり推奨できる事ではないのだが。

 

今は危急時だ。

 

後で手篤い支援をするしかない。

 

そして支援をするためには、勝ってイエローサーペントをどうにかするしかないのも事実である。

 

色々と気分が重かった。

 

宿舎に戻る。

 

ジープで宿舎に戻りながら、この途中でシャドウを気にしなくていいのは助かると思った。

 

ただこの辺りにあった国道やらも完全に更地にされている。

 

だからジープ以外で踏破は厳しい。

 

無言で操縦を続けていると、支給されている端末が鳴る。ジープを止めて出ると、相手は広瀬中将だった。

 

「畑中中佐、シミュレーションを始めたと聞いていますが」

 

「はい、始めましたが。 今回は相当な……いや今回も厳しいですね」

 

「分かりました。 可能な限りの支援はしますので、何でも言ってください」

 

「ありがとうございます」

 

広瀬中将には足を向けて寝られないな。

 

まだ若いのに、兵士達に尊敬されているというのも納得だ。で、本題に広瀬中将が入った。

 

「現在飛翔種への牽制に向けて、ロケット砲部隊とミサイル部隊を展開しています。 これらはおとりとして使う予定です。 既に埃を被っていた軍用ドローンも出します」

 

「豪華な使い捨てですね」

 

「空母打撃群を丸ごと使い捨てるに比べれば安上がりです。 ただ、現在の人類の余力から考えて、同規模の作戦は何度もできるかというとそれはノーですね。 必ず……一回で成功させてください」

 

「イエッサ」

 

返事をして、通信を切る。

 

さて、これでまたますます負けられなくなったな。

 

ジープのアクセルを踏む。

 

ある程度AIが帰路についてはサポートしてくれるが、それでも最悪の事態は常に想定しなければならない。

 

夜道になって来た。

 

飛んでいるのは、あれはホタルか。

 

そうか、この辺りにも飛んでいるんだな。生息地を誰かが無意味に踏み荒らさないといいのだけれど。

 

この環境の回復は、シャドウがやったことだ。

 

それは分かりきっている。

 

スーパーロボットを題材にしたアニメなんかに出てくる敵役は、自分専用に世界を書き換えたりするが。

 

それをやっているのは本来人間だ。

 

動物も似たような行動を取るが。

 

人間も動物だからと言う理由で同じ事をするのなら、法だの社会だのは必要ない。

 

人間であるというのなら。自らを人間として律するべきだ。

 

それが出来なかったから、地球は滅茶苦茶になったし。

 

或いは、シャドウが湧いたのかも知れない。

 

無言で、宿舎に戻る。

 

それから疲れが出たので、後は無言で睡眠をひたすら貪った。

 

 

 

翌日からも、少しずつ少しずつ訓練が進んだ。

 

姉は確実に問題点を解決してくれて、シミュレーションマシンの内容を改善はしてくれるので。

 

苦労の意味はあるのだが。

 

誰かがしなければならない苦労を、菜々美が一身に背負っている。

 

それも分かっているので。あまり良い気分はしないのも事実だった。

 

それはそれとしてだ。

 

流石に今回の超世王はかなり疲れる。無言で椅子になついていると、冷やしタオルを三池さんが持って来てくれたので、有り難く使わせて貰う。

 

ぐったりしていると。

 

気分転換にとでも思ったのか、レモネードを作ってくれる。

 

ただ、これに関しては殆ど合成らしいが。

 

カカオのように品種改良に成功した作物もあるのだが。

 

何もかもがそうとはいかないのだ。

 

「斬魔剣についてなんですが」

 

「ああ、はい」

 

「現在、改良を進めているようです。 畑中博士が展開したデータを何人かの学者が必死に分析して、一般の兵士が使えるようにまでどうにか落とし込もうとしているようですね」

 

「最初から姉がそうすれば話は早いんですがね……」

 

苦笑い。

 

それが出来れば苦労は無い。

 

今、姉がもの凄い勢いで構築と調整をやっているのは横で見えている。とてもではないが、ローカライズまでやっている余裕は無いだろう。

 

ただ、姉が組むプログラムは高度すぎて、解読にもの凄い手間が掛かるらしい。それもまた事実で。

 

世界中の専門家が、展開されたものを見て意味不明だと頭を抱えているらしいのだが。

 

まあ、それはそれで仕方がないだろう。

 

それくらいの人材が出てこないと。

 

とてもシャドウは斃せなかったということだ。

 

それにローカライズに成功した螺旋穿孔砲は小型シャドウを斃せるようになったし。ヒヒイロカネなんとか装甲も、今まではシャドウに為す術がなかった近代兵器の装甲の歴史を一新した。

 

これらのように刷新が進めば。

 

シャドウを斃せるようになる。

 

ただ、その後が心配だ。

 

此処二回の会戦で明らかになったが、シャドウは減って等いない。ただ姿を隠しただけの可能性が高い。

 

全部で八体確認されていた大型シャドウは現在一体だけが確認されているが。

 

これらが出現したら、文字通り手に負える相手ではないのだ。

 

「それでこんどの超世王、まだ時間掛かるんですよねコレ……」

 

「ええ、残念ながら。 畑中博士の話によると、まだしばし時間が掛かるとか」

 

「……まとめてシミュレーターでの調整とはいかないですよね」

 

「無理ですね」

 

分かっている。

 

愚痴だ。とりあえず起きだすと、すぐにシミュレーターに入る。これで調整を重ねて、実戦の前に、少しでも超世王の完成度を上げるしかない。

 

姉はいう。どれだけ過酷な戦いでも、立ち上がってくるのがスーパーロボットなのだと。

 

毎回作り直しているも同然の超世王が、立ち上がっているかというと極めて疑問ではあるのだが。

 

それはそれとして、とにかくやれることはやっていくしかないのもまた、事実なのである。

 

姉の作る兵器を他の兵士にシミュレーションを任せても、完成まで何年と掛かってしまうだろうし。

 

姉の頭脳がずっと劣化しないとも限らないのだから。

 

黙々とシミュレーションマシンに潜り。

 

淡々と作業を開始する。

 

ただ静かに作業をしていると、少しずつ滑らかに、音もなく海中で動けるようになっているのが分かる。

 

何とか王と最初は呼んでいた超世王だが。

 

菜々美にも、少しずつ愛着が湧いてきたかも知れない。

 

ずっと引き継いでいるのは、頭脳部分の中核となる部品だけだ。それは大いに分かっているつもりだ。

 

それでもどうにか、これでやっていくしかないのである。

 

イエローサーペントについても、情報が集まってきている。此方に気付かれないように接近する。

 

それが第一。

 

それが全て。

 

そして、なんとかドリルを叩き込む。

 

このドリルもまた、ただ抉り取るだけの代物ではなく、上手く効果を発揮するためには複雑な過程を経なければならない。

 

それをやらなければならないのは菜々美だ。舌なめずりしながら、冷や汗を掻きつつ接近。

 

最高の条件で接近を果たせたとして。

 

それで、イエローサーペントを殺せるか。

 

シャドウには、熱が弱点だ。ただ、一瞬の熱は防がれる。長時間、熱によるダメージを継続して当て続けなければならない。

 

それが必須になる。

 

これからやるのは、そういう無謀な作戦。潜水艦での格闘戦なんて、文字通り聞いたことがない。

 

しかもイエローサーペントについては、資料が殆どないのである。

 

ランスタートルのように、倒した後何らかの理由で大爆発をするかも知れない。その場合は、助かる事は無さそうである。

 

それでもやる価値はある。

 

淡々とシミュレーションであらゆる状況を確認していく。アラームが鳴る。外に出て、それで休む。

 

厳しいが、すぐにおきだして、また作業をする。

 

姉が仮眠室に行くのが見えた。姉も当然だが寝る。あれだけの過密スケジュールで殆どミスをしないのも凄まじい。

 

ミスをしていても、本人が気付いて直してしまうのかも知れないが。

 

それはもう、菜々美にわかる事ではない。

 

シミュレーションで、最悪の状況を想定する。

 

接近できなかった場合。

 

接近する前に相手に気付かれた場合。

 

それらの場合にどうするかも、姉は考えてくれている。だから、淡々とそれに沿って動く。

 

それで逃げられるかはまた話が別。

 

逃げられるとしても、次の機会があるかもまた、極めて怪しいと言えるだろう。

 

しばし作業を続けて。

 

それでどうにかなんとかなる。

 

無言で休んでいると、目の前で巨大な三角錐の殺意が高いドリルが、超世王に格納されているのが見えた。

 

あれを用いて格闘戦をするのか。恐ろしい話である。

 

だが、それもまた、今までやってきたのも同じ事だと割切る。今までだって、楽な戦いなんて一度だってなかったのだから。

 

淡々とシミュレーションをして、時間が来たら引き上げる。シミュレーションマシンから出ると、もう超世王はほぼ仕上がっているようだった。

 

後は、これで戦闘に出るだけだ。

 

実に前のランスタートルの戦いから、三ヶ月半が経過している。

 

三ヶ月で次の作戦に出ると言う話だったから、どうにか天津原代表が、時間を稼いでくれているのだろう。

 

菜々美は見ていないが、何度か視察に来たらしい。

 

まあ、あのただたまたま神戸市長だったというだけで代表になっているボンクラが、出来る事はなにもないだろうが。

 

時間を稼いでくれたことだけは感謝する。

 

それ以外は、邪魔をしないでくれていればそれでいい。

 

宿舎で休む。

 

メールが来た。姉からだった。

 

内容は良く分からない絵文字が山ほど乱舞している内容だったので、見ているだけで胸焼けがしそうだったが。

 

どうにか内容を理解しようと苦労して見た結果、超世王はきちんと仕上がったので、後は休んでから作戦を開始するという話であるらしい。

 

ならば、此処からか本番は。

 

無言で体を起こす。

 

伸びをして、それでストレッチをしておく。

 

文字通りの片道切符だ。

 

上空を護衛しているブライトイーグルを。どうにか引きつけなければいけない。それだけではなく。陽動のために自走砲部隊から状況に応じて攻撃を行わなければならないのである。

 

イエローサーペントが第七艦隊との戦闘時に被弾した事は、記録からも確認出来ている。

 

正確には被弾したのをソニックブームで相殺したのだが。シャドウの性質上、中型であるイエローサーペントは被弾しても無傷だっただろう。

 

ただ、被弾するということは、防御能力は完璧ではないということ。

 

そして航空兵器にとっての天敵である飛翔種シャドウを広瀬中将がある程度どうにかしてくれれば。

 

勝機は見えてくる。

 

そう信じたいところだった。

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