スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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空の王との対決。

ついに正義のビーム?が炸裂することになります。

そしてこのビームは、なんと反陽子ビームです!

そもそも反陽子なんてどうやってビームとして使うのかは。見てのお楽しみとなります。







3、烈光

作戦が開始される。

 

今回は第二師団を中心に、再編制が終わった第一師団が支援につく。これに第三師団が予備兵力として入る事になる。

 

現在第四師団は新兵の訓練中で、兵器などの再配備も進めている状況だ。神戸近くの軍事工場は連日ラインが焼き付きそうな勢いで回っているようだが、それでも対シャドウ用の装備を生産するのは厳しく、ヒヒイロカネなんとか装甲は特に量産が非常に厳しいらしい。

 

各地から物資も送られては来ているが。

 

シャドウとの戦闘で中型の撃破のノウハウがあるなら、さっさとこっちでシャドウを倒せとか高圧的に言ってくる国(といえるほどの規模があるものですらないのだが)もあるらしく。

 

GDFは色々と苦労が絶えないようだ。

 

天津原は誰から見ても無能な代表だが、それでもこういった連中の理不尽なクレームを引き受ける役を受けてはくれている。

 

その点だけは感謝しなければならないのだろう。

 

琵琶湖近辺に、第二師団が布陣完了。

 

側背を第一師団が守り。少し離れた地点に第三師団が展開する。今までの戦闘で、巧妙な側背攻撃をシャドウが行って来たこともある。

 

そうしないと危険極まりないのだ。

 

超世王も動き出す。

 

今回も不格好極まりなく、姉いわくスーパーロボットではあるのだが。なんだか奇怪な虫にしか見えない。

 

いずれにしても、人型ロボットに超世王が変わる日は来るのだろうか。

 

そうとはとても思えないが。

 

ともかく今は、これでやっていくしかないのだ。

 

現着。

 

ブライトイーグルは、明らかに警戒態勢に入っている。広瀬中将が、全体に指示を飛ばしていた。

 

攻撃開始。

 

まず狙うのは、イエローサーペントだ。

 

大型の榴弾を、イエローサーペントに放つ。これは完全なデコイである。一応今までの爆雷と違い、爆破による衝撃波で相手を破壊するものとは違っている。イエローサーペントも即応。

 

これと同時に、多数のドローンが飛び立つ。

 

いわゆるスウォーム攻撃。狙いはブライトイーグルである。ブライトイーグルは大規模な攻撃が開始されたが、近寄るドローンをそのまま叩き落としながら、冷静に空中に留まっている。

 

雑魚なんぞいつでも蹴散らせる。

 

そう空の暴王は言っているかのようだった。

 

サイズとしては戦闘機とそれほど変わらない相手なのだ。普通だったら、最悪特攻でもしかければ落とせる筈。

 

だがあれには質量攻撃が通じない。

 

シャドウと言われているのは、それも理由の一つ。

 

どこからともなく大量に現れ、人間の兵器がまるで通用せず、それで瞬く間に人を殺し尽くしていく。

 

榴弾が、水面近くで爆破される。

 

イエローサーペントによるソニックブームでの迎撃である。これも様子見、という動きだ。

 

射程距離まで、超世王は接近。

 

さて、此処からである。

 

スウォーム攻撃中のドローンが落とされているギリギリの範囲で滞空しているのは、長距離偵察用のドローン。これはキャノンレオンの接近を警戒するものだ。小型についても同様である。

 

小型接近。

 

その声が上がる。

 

どうやら懸念されていたブルーカイマンが、琵琶湖から上がり始めたようだ。

 

これは大きさは二メートル程度と、名前の元となったカイマン種のワニと殆ど大きさも変わらないが。

 

戦車を単騎でひっくり返せるなど他の小型と変わらぬパワーを持ち、殺傷力は体長10メートルのワニの数千倍だ。

 

動きも速く、水陸両用なのに時速120㎞は余裕で出る。ただし数が少なく、生息域が狭いことだけが救いだ。

 

早速狙撃大隊が動き始め、いわゆる水際殲滅を開始する。鋭く動き回るブルーカイマンだが、それでも水陸を切り替えた瞬間は動きが鈍る。練度が上がってきている狙撃大隊は、螺旋穿孔砲で、確実に相手を仕留めていく。戦車部隊も、それらから離れている個体を射撃して、牽制。

 

確実に仕留めるべく、広瀬中将が動いてくれていた。

 

ブライトイーグルが動く。

 

どうやら状況が良くないと判断したらしい。

 

咆哮。

 

それだけで、偵察用のドローンも含め、今まで以上の広範囲にいたドローンが一斉に沈黙し、墜落していった。

 

更に、動こうとする。

 

恐らく対地攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。それに、最前衛にはいるのだ。以前キャノンレオンを倒した斬魔剣を装備した40式が。

 

あれは超世王のデータをベースにして、改良を数回重ねた結果、ついに量産に成功した斬魔剣とそのキャリア車両の第一陣である。

 

40式に比べて生産コストは二倍とかなり重めだが(斬魔剣も40式と同じ程度のコストが掛かる)。

 

それでも脅威になると判断したのは間違いない。

 

よし、貰った。

 

菜々美はこの瞬間、操作を行う。同時に、ワイヤーと粒子加速器が全力で稼働。射出装置の狙いを定め。

 

ブライトイーグルの移動予測も済ませて。

 

そして射撃していた。

 

銛状になったワイヤーの先端が、ワイヤーを引っ張るようにして飛ぶ。移動開始したブライトイーグルは、まだまだ殺到してくるスウォーム攻撃中のドローンの群れに紛れているそれを、至近まで気付けない。

 

そして、案の場ブライトイーグルの至近では、機械は全て動作しない。

 

分かっている。

 

だから手元で操作するのだ。

 

ぐっとワイヤーの根元の射出装置を操作して。不意に銛状の先端部を引っ張る。それで大失速したワイヤーが、ブライトイーグルにぐるっと絡みついていた。二度、三度回転して絡みつく。

 

ブライトイーグルに初めて人間が作ったものが触れた瞬間だ。そしてあらゆる機能が停止している先端部分と更にワイヤーからの、計器データは消失。だが、それは関係がない。どうでもいいというべきか。

 

ビームをこれで放つ。

 

ワイヤーの中には真空が保たれている。この真空の中を水素を通す。水素を誘導するのはワイヤーに仕込まれているギミックで行う。そして、充分に水素を通したところで。

 

今度は反陽子を同じように流すのだ。

 

ある意味反陽子ビームとでもいうべきだが、実際には違う。

 

そのまま反陽子を投射しても空気中で対消滅を起こして、その場で炸裂してしまう。この反陽子は真空中を指向性を持って投射され、ワイヤーの中で先に流されていた水素と反応して対消滅を起こし高熱を発する。

 

そしてその高熱が、そのままワイヤーから、ブライトイーグルに伝導されるのである。

 

オペレーターの声が聞こえる。

 

「ワイヤー過熱! 五千、六千、八千℃! 更に過熱します!」

 

「ブライトイーグルのダメージは!」

 

「混乱しているようです!」

 

ブライトイーグルは恐らくだが、ワイヤーが絡みついた事すら認識できていない。ただ何かしらの熱攻撃を受けたと判断して、周囲にEMPを連発している。実際まだスウォーム攻撃は続行しており、それらでバタバタとドローンが撃墜された。また、陸上では小型種がそれぞれ琵琶湖周辺に展開している第二師団に殺到し始めているが、広瀬中将の冷静な指揮で、いずれもが狙撃大隊の螺旋穿孔砲で撃ち抜かれて、いずれも味方に到達出来ていない。

 

灼熱が、明らかに許容不可能な段階に到達。

 

ブライトイーグルが、凄まじい金切り声を上げる。

 

いや、他のシャドウと同じ体にダメージが入ったときにでる音だ。ブライトイーグルが暴れ、同時に菜々美はワイヤーの先端をパージする。

 

ブライトイーグルが、大気中の振動から攻撃を察知していることは既に分かっていた。これはナジャルータ博士だけではなく、他の研究者もそれは分析出来ていた。故に今までの航空兵器はことごとくが無力だったのだ。ステルス戦闘機だろうが、凄まじい爆音を上げながら飛んでいたのであるから。

 

静音性をどれだけ保とうと、大質量を音無く浮かせるのは不可能。

 

更に質量攻撃も一切通じなかった。

 

ブライトイーグルはそれらの強みを知り尽くしていた。だからこそ、それが弱点になる。それが姉の言葉。

 

確かにそれは、菜々美も思った。

 

実際戦闘データを見る限り、ブライトイーグルは攻撃を避けることもしなかった。質量攻撃は痛くも痒くもない。ミサイルなどは全て近付けば機能停止。近接信管も作動しない。そうなれば、人間の対空兵器なんか何の意味もない。レーザー兵器にしても、ブライトイーグルにダメージを与える高出力、長時間展開出来るものは存在していなかった。

 

そこで、である。

 

灼熱で敢えて溶けるように、しかも簡単には離れないように設計したケーブルを用いて。こうして反陽子ビーム(ワイヤーの中を通っているので派手なビームではないが)を用い。更にその熱を相手に絡みつけて、そしてそのまま蒸し焼きにする。

 

確かに戦術としては理にかなっている。

 

ワイヤーを巻き取りながら、菜々美はすぐに指示を出す。

 

「メンテナンスとワイヤーの取り替えを急いでください」

 

「了解!」

 

「第14工兵、作業開始!」

 

見た。

 

ブライトイーグル周囲の空気が、連鎖爆発している。あれは超高熱で空気がプラズマ化して、爆発を連鎖させているのだ。

 

その熱の直撃を受けながら、ブライトイーグルはどうしてダメージを受けているか理解出来ていない。

 

あれはやはり目など見えていない。

 

ただ自分が熱攻撃を受けていることは理解し、更に高速で飛行しているが。既に絡みついた高熱のワイヤーと重りは、ブライトイーグルの動きを阻害していた。

 

ぶわりと、もの凄い蒸気がブライトイーグルの周りに出現する。

 

これは恐らく、レーザー対策だな。

 

ブライトイーグルは何度かレーザー攻撃されたことがある。それで、レーザー攻撃について知っていたと見て良い。

 

それで今回も、レーザー攻撃を受けたと判断したのだろう。残念だが違う。

 

ブライトイーグルはずっと浮いていて、生物ではないので、餌も採らない。エネルギーの補給も必要ない。

 

だからこそに、触覚もない。

 

故に、ワイヤーが巻き付いたときに気づきすらしなかったし。

 

今もどうやって焼かれて死んでいるのか、理解出来ていないのだ。

 

今までで、一番圧倒的な勝利、で終わってくれれば良いが。

 

凄まじい勢いで上空に飛ぶブライトイーグル。悲鳴が辺りを蹂躙する。硝子をひっかくよりも凄まじい音で、思わず眉をひそめる。

 

周囲にいるブライトイーグルに危険を知らせているのか。

 

「キャノンレオン出現! 位置B114戦区!」

 

「此方呉美少尉! 対応します!」

 

「いえ、それが……!」

 

二体同時に、同じ場所に出たと通信がある。

 

まずいな。

 

そう判断するより先に、広瀬中将が指示を飛ばす。斬魔剣を即座にもう一両出す。呉美少尉ほどでは無いが、それなりの実績がある人物が操縦している。それに、戦車だろうが螺旋穿孔砲だろうが、キャノンレオン相手には無力だ。

 

味方が後退し始める。

 

敢えてゆっくり進んでくるキャノンレオンは、明確に超世王に向かって進んできている。更に、良くない事が起きる。

 

急降下してきたブライトイーグルが、半ば溶けながら、今までで最大出力のEMPをぶっ放してきたのだ。それは戦場全域の電子機器を沈黙させるのに充分だった。

 

超世王は無事だが、その瞬間戦術リンクが切れ、指揮車両が置物化する。まずいなと思いながら、即座に戦況を確認。

 

今まで広瀬中将の名人芸で戦況を支えていた第二師団だが。耐えられるか。

 

いや、違う。相手の狙いは第一師団だ。

 

いきなり小型種が移動を開始。後方で支援している第一師団に、一斉に襲いかかり始める。

 

第二師団は電子機器の復旧に全力で取り組んでいるが、それも数分はかかる。雪崩のように小型種が襲いかかる第一師団。勿論それぞれ前線の部隊が、狙撃大隊を中心に迎え撃っているが、それも限界がある。

 

何カ所かの前線が小型種に接触されたようだ。

 

これはまた大きな被害が出る。

 

それだけじゃない。

 

広瀬中将の指揮車両に、ブライトイーグルが突撃していく。上空から、獲物を狙う猛禽のように。

 

溶けかけたその体は、それでもなお音速を超えている。

 

広瀬中将が、指揮車両を捨てて逃げる。

 

だが、遅いといわんばかりに。

 

体を半ば崩壊させつつ、ブライトイーグルが指揮車両に自爆特攻を成功させていた。

 

巨大な爆発が起きた。

 

大混乱が更に加速する中、キャノンレオンが走り出す。これは本格的にまずい。第二師団に対して、二体のキャノンレオンが同時攻撃を仕掛けたら、恐らく五分もかからず全滅する。

 

通信を試みるが無駄だ。

 

まだEMPで機能不全になっている。

 

斬魔剣もこれでは動かないだろう。

 

今、斬魔剣を装備している40式は走りながら全力で復旧をしているだろうが。それでも間に合うかどうか。

 

コックピットを出ようとした瞬間。

 

光学探知センサが、更なる状況の悪化を告げてくる。

 

予想通り二体目出現だ。

 

ブライトイーグルが来る。前に大阪湾にいた個体らしい。それがマッハコーンを作りながら、こっちに迫っているという。

 

「整備班、急いでください」

 

「了解!」

 

さっきの攻撃時のデータを見る。

 

ブライトイーグルは、あの時間だけで同類になんとかビームの実態を伝えられたとは考えにくい。

 

だとすると、同じ戦術は使えるはずだが。しかしそれで音速でこっちに飛んできているブライトイーグルを斃せるかどうか。

 

更に、ブライトイーグルにワイヤーが巻き付いてから、奴を斃すまでに掛かった時間は二分三十秒。

 

それでは遅すぎる。

 

恐らくだが、そんなに掛かっていたらもう一発EMPを叩き込まれる。そうなったら、終わりだろう。

 

「此方呉美少尉」

 

「!」

 

「キャノンレオンを捕捉。 電子機器類復旧。 斬魔剣、投射します」

 

通信が聞こえているのは菜々美だけの筈だ。

 

だとすると、キャノンレオンが二体いて、一体に直撃させられたとしても、もう一体から攻撃を受けることを前提に攻撃すると言う事か。

 

呉美玲奈少尉は優秀な兵士だった。

 

こんな所で失う訳にはいかない。だが、今のこの状況、どうにも出来ない。ぐっと歯を噛む。

 

通信が入った。

 

「此方広瀬中将」

 

「!」

 

「畑中中佐は、ブライトイーグルの二体目の迎撃に専念してください。 第二指揮車両に移動し、指揮を再開します。 電子機器が復旧した戦力から、逐一連絡を。 作戦指示をします」

 

よし、広瀬中将は無事か。

 

いや、あの声。

 

恐らく深手を受けている筈だ。だが、それを今は心配している余裕は無い。

 

菜々美は二体目のブライトイーグルに集中。

 

来ている。

 

大阪湾を越えて、こっちに向かっている。

 

飛来する角度、よし。

 

完璧にタイミングを合わせる。そして今度は、反陽子ビームの出力を、さっきよりも上げる。

 

実は最初の設定は、安全策だった。

 

姉がいうには、これであれば確実に斃せるというものだったのだ。確かに斃せたが、被害も尋常では無かった。

 

出力を上げると、それだけブライトイーグルを焼き切る速度も上がる。だが。その代わりとして、ワイヤーが熱で崩壊してしまう可能性も上がるということだ。つまり、一か八かである。

 

「此方第十四工兵! ワイヤーの接続交換、完了しました!」

 

「すぐに離れてください」

 

そのまま調整。

 

出力を上げる。角度、威力を確認。幾つかの計器に目を通しながら、舌なめずりする。

 

このワイヤーの性能を信じろ。

 

そもそもとして、このワイヤーは消音性を作ってはいるが、それでも音は出る。だが、音が出ても航空兵器ほどではないし。何よりブライトイーグルに気付かれても問題はない。問題は、ブライトイーグル自身が現在放っている衝撃波である。それを止めないと、極めてまずい。

 

広瀬中将に連絡。

 

すぐに対応してくれる。

 

即座に上空に撃ち出されたのは、まだプロトタイプの……イエローサーペントとの戦闘で使われた、ただ撃てるだけの斬魔剣だ。何かの役に立つかということで、持ち出されていた。

 

幾つかのモニタに、地獄絵図が映り込んでいる。キャノンレオンが砲撃して、どこかの連隊がまるごと消し飛んだようだ。しかも二体が暴れている。呉美少尉は無事か。もう一機の斬魔剣搭載40式は。

 

いや、今は気にしてはまずい。

 

上空で、ブライトイーグルが斬魔剣に反応。いきなり速度を0にする。あり得ない挙動だが。此奴らならやりかねない。

 

そして、ぐんとまた加速すると、琵琶湖に向かってくる。速度は時速700㎞というところか。

 

ブライトイーグルの速度は巡航速度でマッハ6くらいは出る筈で、それから比べると亀の歩みに等しい。

 

だが、それでも当てるのは難しい。

 

それだとしてもやるのだ。

 

ワイヤー撃ち出しの速度などを調整。角度も調整。毎秒ごとに調整する。二匹目のブライトイーグルは、少し高めに飛んでいる。これはひょっとすると対地攻撃……低空での音速飛行に切り替えてくる可能性がある。

 

いうまでもなくそんな事をされれば地上にいる部隊なんて壊滅だ。

 

激しい揺動。

 

恐らく散弾として飛ばされたキャノンレオンの攻撃が、近くに着弾したのだ。無線に悲鳴と救援要請が飛び交っている。

 

呉美少尉は無事か。

 

いや、今は集中しろ。全ての音を断って、ブライトイーグルを倒す。

 

調整完了。

 

相手の位置、よし。

 

向かってくるブライトイーグルに、ワイヤー射出。そして、一気に引く。それで、ブライトイーグルに、ワイヤーが巻き付く。

 

三度回転して、それで食い込んだワイヤー。ぴたりとブライトイーグルが止まる。よし、出力を上げた陽電子ビームを。

 

そう思った瞬間、ブライトイーグルがいきなり急上昇し始めた。

 

凄まじい勢いでワイヤーが巻き取られていく。

 

出力全開で、反陽子ビームを叩き込む。一気にワイヤーが過熱していく、筈だ。だが、オペレーターの声は聞こえない。基地局が潰されたか、それとも。

 

ガンと、凄まじい音がする。

 

そもそも今回、三対の足でこの機体を支えているのは、このワイヤー制御のためだ。ワイヤーを微細に投擲し、更には巻き付いたワイヤーを相手に固定するために、この三対の足で超世王を極めて緻密に制御しなければならなかった。その足が、浮き上がる。更に上昇するブライトイーグル。後数秒、持たせないといけない。

 

ワイヤー、もってくれ。

 

出力はこれ以上上げられない。短時間でワイヤーが融解したら、意味がないのだ。負荷は全て超世王に行くように、機体設計がしてある。ぐんと、浮き上がる感触。足で必死に踏ん張るが、それでも機体が明らかに引き上げられる。

 

現時点で超世王は相当な重量がある筈だが、それを余裕で持ち上げる馬力がブライトイーグルにはある訳だ。しかも、今奴の体は、超高熱で焼かれている最中である。凄まじい悲鳴が聞こえてきている。

 

ワイヤーのダメージが表示されている。ダメだあと少し耐えろ。必死に態勢を維持するが、ブライトイーグルの馬力の方が上。ついに機体が引きずられる。引きずられる先は、琵琶湖だ。

 

まずい。

 

琵琶湖に放り込まれでもしたら、ブルーカイマンだけではない。イエローサーペントにソニックブームを叩き込まれて即死だろう。

 

流石に冷や汗が出る。

 

後何秒。

 

そう思って、計器を確認。流し込んだ反陽子の量から考えて、後五秒耐えないと。だが、それが果てしなく長く感じる。

 

あと少し。

 

菜々美は覚悟を決めると、一気にふっと力を緩めさせた。

 

ぐんと上空に超世王が引っ張られる。

 

ブライトイーグルが、それで態勢を崩したのだろう。逆にそれで、地面に激しく叩き付けられていた。

 

肺が潰れるかと思った。

 

全身がシートに叩き付けられて、何も考えられなくなる。だが、震える手で、必死にレバーを引き、ワイヤーをパージした。

 

同時に、上空で、ブライトイーグルが無茶苦茶に飛び始めるのが分かった。それは、名前よりも遙かに輝いていた。

 

そして、炸裂する。

 

EMPをまき散らす余裕さえなかった。極めて厳しい状態だったが、それでも二体目を仕留めた。

 

呼吸を整えながら、戦況を見る。

 

見た。斬魔剣で串刺しにされたキャノンレオン。今、消えて行っている所だ。これは、斬魔剣で串刺しにされて、最後の攻撃としてあの散弾を撃ってきたのか。

 

もう一体は、既に倒されていたようだ。

 

呉美玲奈少尉がやってくれたようである。

 

味方も反撃に転じている。だが、被害は恐らく今までで最大になるだろうな。そう思いながら、菜々美は意識を手放していた。

 

 

 

ついに、空を支配していた飛翔種の撃破に成功。

 

それで、わっと戦場が湧くが。

 

救急車で、横たえられながら指揮を取っていた広瀬中将は、人工呼吸器をつけられていた。

 

左手が吹っ飛ばされた。

 

あの爆発によるものでだ。

 

それでも指揮を執り続けた。

 

今、第一師団を食い荒らしていた小型シャドウが、撤退を開始している。深追いをしないように命令を出すと、後は医者に黙っていろと言われて。それで人工呼吸器をつけられたのだ。

 

輸血も始まっている。

 

左手はこれから義手だろう。というか、あの爆発で生きていたこと自体が不思議なくらいだったのだ。

 

兵士の一人が、広瀬中将を突き飛ばした。

 

それで助かったのだと思う。

 

吹っ飛ばされて、それで空中に投げ出されて、地面に叩き付けられて。その後の事は数分記憶に無い。

 

意識がはっきりしたときには、既に看護士が来て、担架と叫んでいた。

 

それで指揮に戻ったのだが。

 

しばらくは絶対安静だと、医師が額に青筋を浮かべていた。まあそれが普通の反応だろうなと思う。

 

病院に運ばれる。

 

その途中で聞かされたが、今回の会戦での死者は3500人。

 

キャノンレオンの砲撃で、展開していた連隊が四つ壊滅。これに加えてEMPによる混乱での死者、小型による第一師団への被害。これらを総合してのものらしい。いずれにしても、飛翔種二体を倒すという空前の戦果には、それだけの被害が伴ったと言う事である。被害のうち、第二師団の被害は1400人。残りは第一師団と言う事だった。

 

これでまた、第四師団から兵を回して貰わないといけなくなる。

 

それにそもそもとして、今回の戦闘に参加した人員は、第二、第一、第三の一部。合計21000人ほど。

 

つまり被害一割を超えている。

 

戦略的には勝利かも知れないが、はっきりいってこれは負けだ。

 

激しい痛みで何度か気絶して。目が覚めたときには病院だった。綺麗に消し飛んだ左腕。それに左の肋骨もかなり折れている。しばらくは絶対安静だそうである。足の骨も折れているそうだ。

 

義手については、クローン技術を利用して、ほぼもとのものが造れるらしいのだが。

 

これに関しては、たくさん簡単に造れるようなものでもない。

 

たくさんの屍の上にいて。

 

血の池に浮かんでいる。

 

そう思って、広瀬は悲しくなった。

 

だが、事後処理をしなければならない。

 

市川は無事だ。まずは呼んで、事後処理をできる限り頼む。決済が必要な書類については持ってこさせる。

 

医師が絶対安静だと言ったが、医師に決済の印を押して貰う。内容を見るくらいはいいだろうと納得させた。

 

それからMRIやらCTやらを受けて、更に何度か手術を受けた。負傷者が少ないのが対シャドウ戦の特徴だが、それでもたくさん兵士が軍病院にいる。

 

もっと上手く指揮を出来ていれば。

 

そう思う。

 

だが、ブライトイーグルには未知の能力だって多い。今までどれだけの空軍が奴に葬られたのかさえ分からない。

 

その無敵伝説の歴史を終わらせたのだ。

 

一週間ほどして、体調が安定し始める。

 

医師はまだ仕事はしないようにと言ってくるが、一応確認しておかなければならないことがある。

 

「畑中中佐は無事ですか」

 

「どうにか。 例の凄い名前のスーパーロボット?はほぼ全損に近い有様だという話ですが、軽傷で済んだそうです」

 

「……分かりました。 良かった」

 

「貴方はただでさえ内臓に疾患を抱えています。 今は治療に専念して、他人の事は後で考えてください」

 

医師の言う事ももっともだが。

 

今回の作戦で実質上に総指揮を執った広瀬の責任は大きい。敗軍の将と言ってもいい。しばらく、ぼんやりとしていると。

 

市川が来た。

 

「広瀬中将。 辞令を持って来ました」

 

「見せていただけますか」

 

「勿論。 此方になります」

 

広瀬史路中将を、本日付で大将に任ずる。中型シャドウとの戦功著しく、人類の勝利に大きく貢献したため。

 

復帰し次第、現在存在する第一から第四師団をまとめた日本駐留第一軍団の司令官となるように。

 

それを見て、溜息が出た。

 

敗軍の将への出世か。

 

英雄を作る事で、敗戦から目をそらさせるのが目的と言う訳だ。実際問題、どうにか飛翔種シャドウを倒し、更にはキャノンレオンを倒せると証明したが。その代償はあまりにも大きかった。

 

畑中中佐を失わなかったことだけが僥倖だ。

 

それ以外、広瀬が出来た事など、何一つない。

 

幾つか打ち合わせをした後、医者にまた色々と文句を言われた。体を休めることに集中しろと。

 

時間がどうしても余るので、一応SNSを確認する。テレビがメディアとして死んで久しく、今では何かしらの情報を漁る場合SNSを見るしかない。

 

やはりニュースは大勝利一色で染まっていた。

 

広瀬に対する神格化の流れまであるようで、軍神とか言われている。はっきり言って迷惑極まりない。

 

何が軍神なものか。

 

一割以上の兵士を死なせてしまった愚か者だ。

 

誰もに人生と未来があったのに。それが、何を好き勝手な事を言っているのか。それだけしか言葉が出てこない。

 

無言で口をつぐむ。

 

そして、しばらくはベッドに背中を預けることにした。

 

一月ほどで義手が出来るらしい。体に馴染むまで更に一月ほどだそうだ。また、広瀬の遺伝子データを使って、子供を作りたいとGDFから連絡が来ている。勝手にしろとしかいえない。

 

いまだに優生論なんかに捕らわれていて馬鹿じゃ無いのか。

 

しかも広瀬は新生病で、解明できていない内臓疾患持ちだ。その遺伝子を受け継いだ人間なんて、リスクしかないと思うが。

 

もういい。

 

今は怒るべきじゃない。

 

今回の情報を糧に、更に効率よく敵を斃せるように。中型シャドウの無敵時代を終わらせるように。

 

あらゆる布石を打っていくしか無い。

 

畑中姉妹だって、いつまでいてくれるか分からないのだ。どっちが欠けてもシャドウには勝てなくなる。

 

だからこそに。少しでも広瀬が、二人の負担を減らさなければならなかった。

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