スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
「勝利」が重なっているなら、自分のところにもその利潤が還元されて欲しいと思うのは、この状況では当然かも知れません。
そう考える人間が清廉潔白に程遠いのならなおさらでしょう。
まだまだシャドウ相手に優位なんてミリも確保など出来ていません。それでも、勝利という言葉は、悪い意味で人を酔わせるのです。
序、無為な政治闘争
畑中博士がGDFの会議に出ると、また最初から随分荒れている。猿みたいに、どこだったかの国の代表(といっても一都市しか生き残っていないが)がわめき散らしていた。その国のレアメタルが重要な役割を果たしているのだから、神戸近辺を領土として寄越せというような内容だが。
実際にはレアメタルは別にその国からだけではなく取得されている。
神戸の近辺でも採取されており、そのような事実は無い。
うんざりした様子で天津原が応じているが。
そいつは血管を切りそうな様子で喚いていた。
確か議論のテクニックとされているのだっけ。
ひたすら喚いて相手を威圧することで、「議論に勝つ」とかいう。
実際には相手が呆れているだけだと言う事。
そもそもそれが議論とも呼べず。何ら建設的な結論を出せないことをそもそも理解していない。
「いいからさっさと神戸近辺を割譲しろ! 元々我が国の歴史書では、貴様等の国などというものはずっと我が国の植民地だったとされている! そういう意味でも領有権はあるのだ!」
「その歴史書というのに科学的裏付けは?」
冷たい声が飛んだ。
いい加減うんざりしていたらしい、GDFの軍司令官からだった。
一応は広瀬中将……いや大将か。その上司になる。現在元帥をしている人物で、北米の軍のトップだった人間だ。
「そもそも君の国はシャドウが現れる前からそういった資料を勝手にねつ造していることで有名だったな。 君が根拠にしている歴史書というのは具体的にはどれか」
「貴様、我が国を愚弄するか」
「歴史書の具体的なタイトルは」
「黙れッ!」
被せ気味に喋ろうとするが、ため息をついた天津原が通信を切らせた。
これはぐっじょぶである。
「あの国の代表は、以降会議に参加させない事とします。 物資もあの国の近辺で得られるものは別に他でも代用出来ますので。 そもそも9000人程度しかいない都市の代表にすぎず、国家ということすらはばかられる規模。 それも元々犯罪組織のボスだった人間だったことも分かっています。 此処に参加しているのがおかしいくらいの人間ですので」
「分かった。 そうしてくれ」
「我が国としても異議は無い」
「毎回僅かな貢献を鼻に掛けて権利ばかり主張する。 あんなのがいるままでは、このままでは勝てるものも勝てなくなる。 仕方が無い事だろう」
幾つかの国の代表が言う。
更には、支援についても打ちきるべきかという話まで上がっていたが、それは流石にまずいだろう。
今の時代、これ以上人間を減らすわけにはいかないのだ。
そして、現実的な問題もある。
ナジャルータ博士が挙手。
発言を認められると、幾つかの地図を出した。それは、イエローサーペントの生息域についてだった。
「現在確認されているイエローサーペントの生息域がこれらになります。 これらのイエローサーペントの周辺では、海棲種小型シャドウの活動も確認されており、しかしこれらによる攻撃で、輸送船が被害をたびたび出すのも事実です」
「ええと、なんとか王によるイエローサーペントの撃破は出来るだろうか」
「畑中博士」
「厳しいでしょうね」
畑中としても即答する。
これには幾つも理由がある。
一応、順番に説明していく。
これまで数度中型と戦闘してきたが、中型はいずれもが小型、もしくは他の中型と連携している。
勝利はいずれも薄氷であり、勝つ事ができたのは偶然だったものも多い。
一匹目であれば、高確率で畑中中佐……妹は勝てる。
だが、二匹目以降が現れた場合、畑中博士ですらひやひやさせられる事が多いのである。
それを説明してから、咳払いをする。
「現在はそもそも神戸近辺にいる人類最後といってもいいまとまった機動戦力が再編の途中で、遠征の余裕はないかと。 超世王セイバージャッジメントは中型を斃せる最後の希望であり、これが失われた場合損失は計り知れません。 作戦は少しずつ、丁寧に進めていくしかないと考えます」
「しかしだね。 シャドウによる被害がこのまま拡大すると、そう遠くないうちに人類は継戦能力を失うという試算もある」
そう苦言を呈したのは北米代表だ。
まあ、それもわかる。
昔の威光は見る影もないが。だからこそ、国土を取り戻したいのだろう。
主要都市殆どを失い、膨大な資源がある北米の殆どがシャドウに占拠されている今となっては。
シャドウに対する反攻作戦を少しでも進めたいはずだ。
それに人口減少とは「先進国」で唯一無縁だった北米でさえ、今ではクローンと人工子宮による子供の作成をしないと人口が維持できなくなっている。今では何処でもそうなのである。
このままでは破滅だ。
各国が焦るのも、仕方が無い話だった。
広瀬大将が提案する。
まだ傷が治りきっていない彼女が挙手すると、流石に皆黙る。
これは当然で、中型シャドウの掃討作戦で、もっとも大きな戦果を上げている人物だからだ。
さっきまで喚いていた輩の他にも、色々会議で無茶をいう国は存在しているのだけれども。
それでも広瀬大将は、今やそれらの国の者ですら苦々しげに一目置くようになっていた。
ただそれでも、陰口をたたく者はいるようだが。
「現在再建中の四個師団は、まだ数ヶ月は動かせません。 それだけブライトイーグルとの戦闘が苛烈だった、ということです。 また、今まで倒した中型四種以外にもまだまだ中型はおり、更にはアラスカには大型も控えています。 シャドウは光学探知で探すしかありませんが、これも今までいなかった地点に突然出現する例が幾度も報告されているため、あまり無理な作戦は出来ません」
「し、しかしだね」
「無理をすれば対シャドウ戦の経験を積んでいる軍部隊が全滅します。 それどころか、一部の人々が変態兵器と呼んでいる超世王セイバージャッジメントを完璧に操作して勝利に貢献してきた畑中中佐が、戦死する可能性すらあるでしょう」
淡々と広瀬大将がいうと、それでむっと皆黙り込む。
変態兵器呼びして嘲笑っていた連中も、実際問題今まであらゆる兵器がシャドウに通じなかったことは分かっているのだ。
陰口をたたき笑いものにしていても。
既存の兵器はシャドウの前ではがらくた同然なのである。
事実螺旋穿孔砲を装備した歩兵によって、ようやく小型種シャドウを斃せるようになってきた。
この兵器は今後陳腐化を進める予定があり、それが上手く行けば少なくとも小型種には対抗できるようになる。
ただそれも、まだまだ時間が掛かる。
北米の街ではそれぞれ螺旋穿孔砲が生産され始めているようだが。
こんな状態でもまだM44ガーディアンを歩兵火器の主力にするべきだと反対している者達はいて。普及の邪魔になっている。
それらすらもどうにかしないといけないのが難しい所だ。
「いいかね広瀬大将」
「はい」
挙手したのは、フィリピンにあった街の残党が、放棄されたメガフロートに集っている都市の代表。
ニューフィリピンの代表である。
この都市は六万の人員を有しており、近くにある幾つかの小島から有益な資源が取れる事。
更には昔日本で開発された人工的に石油を精製する設備を、メガフロートで大々的に採用して世界に輸出していることもあって、ある程度の発言力を持っている。
ただし海上のしかも人口都市ということもある。
イエローサーペントにいつ襲われてもおかしくないと言われていて、それが何度もデモの引き金になっているそうである。
「我が国……というには規模が小さすぎるが。 まあ、ともかくだ。 我が国への航路をまず安定させてくれないか。 石油については、各国に対しても供給が滞ると困るだろう。 まだ石油は有用な資源だからな」
「……海路を見る限り、日本国内の海路ですら、まだイエローサーペントに脅かされている状態です。 遠征は厳しいでしょうね。 更にブライトイーグルも目撃されています。 フィリピン近郊では、複数での同時行動が確認されている厄介な飛翔種、サンダーフィッシュもいます。 これには、また別の対策を考えなければならないでしょう」
「分かっている。 だが、限界が近い。 いわゆるボートピープルが我が国の周囲には多数浮かんでいるが、それらの民はシャドウもそうだが、通常の海棲生物にすら脅かされている状態なのだ」
まあ、それも分からないでもない。
シャドウが現れるようになってから、人間に友好的なフリをしていた幾つかの生物は、人間に対して明確に敵意を示すようになった。
生物も知能があり、それまでは人間に迂闊に手を出すと身が危険であることを知っていたのである。
ある程度知能がある動物は、条件が揃わない限り人間を襲わなかった。熊のように一度人間の味を覚えると見境なく襲撃するタイプもいたが、ほとんどはそうではなかった、のだが。
今ではライオンや虎などは個体数を回復。
これらは人間を見ると、容赦なく攻撃をしてくるようになっている。人間が落ち目になったのを知っているのだ。
象なども同じ。
象の場合は、象牙目的で散々殺されてきた恨みが骨髄まで染みているというのもあるのだろう。
象の生息圏に入ると、今では殆ど生きて帰れないとさえ言われている。
それでいながら武装している人間を見るとさっさと姿を隠すらしいので、今の人間は地球そのものから嫌われていると見て良いだろう。
「いずれにしても、無謀な遠征ではないとしても、少しずつ中型の排除をしてほしい。 我が国以外にも、不安で民が爆発しそうな国は幾つでもあるんだ。 それには中型の排除という実績が必要なのだ」
「分かりました。 可能な限り、少しずつ中型を排除する作戦を行います。 ただし、大規模な遠征は不可能です。 それは何度でも明言しておきます」
それで一旦会議は終わった。
畑中博士も、今回は別に新しい兵器を思いついた訳でも無いので、プレゼンは必要ない。今温めている兵器は幾つかあるのだが、今は部隊の再建のタイミングである。攻勢に出るのは早い。
会議が終わった後、広瀬大将とともに声を掛けられる。
天津原だった。
額の汗をハンカチで拭いながら、天津原は言う。
「一つ頼みたい事があるのだが、いいかね」
「はあ……」
「九州の鹿児島にある港までの海域をどうにか安全にしたいんだ」
鹿児島か。
現在、大阪湾の安全は確保された。もしも次に行くなら瀬戸内海か、紀伊半島を回って名古屋だろうという結論は出ている。
そうして横浜を目指し、九州を目指す。
ただそれには、中型数体を倒さなければならない。
現時点でイエローサーペントとの戦闘では、奇襲を主体にハイパースラッシュドリルで戦うしかないが。
他の兵器ほど、これはまだまだ誰でも使いこなせるようになっていない。
何よりもこの兵器は、リスクが大きいのだ。
先の戦闘では、斬魔剣を装備した40式が戦果を上げた。妹以外の人間でも使えるほど、陳腐化が進んだ結果である。
だがバーンブレイクナックルを現在陳腐化している段階であり、それで連日結構リソースを食っている。
対シェルターキラー、ランスタートル特攻となるこの兵器は、各地の地下街を守るための切り札であり。
他の兵器よりも優先度が高い。
故に、まだ残念ながら、リソースがたりないのである。
「イエローサーペントを相手にする場合、ブライトイーグルとの戦闘も想定しなければならず、結局のところ気を引くための部隊の展開が必須になります。 そういう意味でも、少しずつ安全圏を確保しつつ、兵器の陳腐化を進めなければなりませんが」
「分かってはいるよ。 だが、現在鹿児島にいる1万五千の人々と港が、各国への窓口になっているのも事実なんだ」
まあ、それも事実か。
現在瀬戸内海に入り込んでいる中型は滅多におらず、イエローサーペントがたまに確認されている程度である。
それも大きな縄張りを持っている個体らしく、回遊の速度もあまり早くないこともあって、それで輸送船が行き来できているが。
確かに、此処をどうにかしたいというのは分かる。
だが、それには四国の制圧が必須。
四国には現在三千人ほどがいるちいさな街が一つだけある。
ただ、危険なのであまり連絡が取れておらず、どれほど四国にシャドウがいるのかも分からないのが実情だ。
咳払いして、広瀬大将が言う。
「分かりました。 四国に渡ることだけは問題はありません。 スカウトを展開して、作戦がもしも可能なようであれば、最低限の戦力だけでイエローサーペントの排除作戦を立案します」
「ありがたい。 無理であるなら、データを出して、それで皆を納得させれば良いことだからね」
「……」
天津原の弱腰にも困ったものだが。
だが、さっきの反社崩れの王様気取りとの通信を切ったのだけは評価できる。
畑中博士がその場を離れようとすると、広瀬大将から声を掛けられた。
「今までの兵器の陳腐化、新兵器の開発、どちらも大変かと思いますが、お願いします。 被害を可能な限り減らす努力は、私の方でします」
「兵器開発は了解しました。 戦術指揮は此方からもお願いしますよ」
「ええ」
敬礼してから、その場を離れる。
さて、ここからが問題だ。
ハイパースラッシュドリルの陳腐化を急ぐべきか。
いや、今構想している新兵器……正確には超世王セイバージャッジメントの性能を上げる新機構というべきだが。それを優先するべきか。
いずれにしても、やはり懸念していた遠征の話が出始めた。
シャドウがどう分布しているかも分からないし、何よりも光学探知出来ているシャドウ以外に、戦闘になると中型が姿を見せるケースも多い。
シャドウについてはまだ人間は何も分かっていない。
それが現実なのだ。
ナジャルータ博士も、たびたびそれは説明している。
あれが今まで地球にいたのとは別種の生物なのか、それとも現象なのかすらも分からないのだと。
そんなものと戦っているのだ。
それは被害だって大きくなる。
途中で三池と合流。
珍しくうんざりしている様子なのを見て、三池はケーキでも焼いてくれるそうだ。有り難い話である。いただくとする。
工場に向かう。
今は整備工はいない。黙々と前に作った兵器の陳腐化と、更には新兵器の開発を気分のままに行う。
いずれにしても、当面は偵察が主体だろう。
それで繰り出されるのは、この間キャノンレオンを倒して一つ出世した呉美中尉になるはず。
斬魔剣をかなり扱いやすく調整したとは言え、一発で当てて見せた手腕はかなりの天才である。
妹ほどではないにしても。
黙々と調整を続ける。
最終的には、スーパーロボットに名実共に相応しい武装と姿に超世王セイバージャッジメントを仕上げる構想がある。
だが、それはまだまだ。
クリアしなければならない課題が幾らでもある。それらをクリアして、やっとスーパーロボットは完成する。
完成した暁には、シベリアにいる大型と戦う事も可能になるだろう。
むしろ問題はその後だが。
それについては、畑中博士が考える事ではなかった。
とにかく、だ。
イエローサーペントをより安全に排除すること。そのために、再編を急いでいる各師団と連携する事。
それらも考えながら、研究をしなければならない。
三池に髪を洗うように言われたので、先に風呂に入る。しばらくのんびりしているとそのまま寝落ちしそうになる。
何とか意識を戻して、風呂から這い出ると。
伸びをしてから、研究に戻る。
とにかくイエローサーペントとの戦闘はリスクが大きい。相手が水中にいることもあって、非常に接近、攻撃、そして生還が難しいのだ。
人間が豊富にいたら、自爆特攻用の兵器としてハイパースラッシュドリルを陳腐化するように指示が出ていたかも知れない。
だが、今はクローンと人工子宮を用いて人間を増やしてなお、まだまだ全然足りないのが現状だ。
それを考えると、それはできない。
人間が滅亡の縁にいる事実は、何も変わっていないのだから。
連絡が来る。
菜々美からだった。
「これから四国に揚陸艇で偵察部隊が渡るらしい。 私は待機だそうだ。 訓練だけして鈍らないようにしておく」
「おっけい。 キャノンレオン対策がまず必要になると思うから、陳腐化させた斬魔剣を装備させた超世王セイバージャッジメントを用意しておくわー。 それをまず訓練しておいて」
「別にそれだったら別の兵士でもいいように思うけどな」
「そうもいかないのよねえ」
前回の戦闘だが。
キャノンレオン二体を倒すのに、相当な被害を出している。菜々美があの時対キャノンレオンをやっていたら、被害はもっと少なかっただろうと畑中博士は考えている。勿論菜々美はやってみなければわからないと言うだろうが。
いずれにしても陳腐化させた兵器でも、しっかり菜々美が使いこなす事で、更に性能を上げ、改善点を引き出せる筈だ。
それに、である。
幾つか、試してみたい機構も盛り込んでおく。
今回は、ブライトイーグル戦で用いた「足」を装備させる。
これは歩くためのものではなく、調整用の機構なのだが。最終的には歩くためにも使えるようにしたい。
前回のブライトイーグル戦だけではデータが足りない。
だから今回の遠征でも、データを稼いできて欲しいのである。
それらを淡々と説明しておくと、菜々美は分かったといって通信を切るのだった。
タルトを三池が焼いてくれたので、有り難くいただく。
さて、やるか。
キーボードを叩く。そして、今までの兵器の改良で、出来る部分は全てやり。更には次の兵器についても、構想を形にしなければならなかった。