スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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近畿である程度勝利を重ねた結果、更に安全を確保しろという指示が出るのは当然であるかも知れません。

守りが堅い京都方面はひとまず後回しに。

まずは神戸と諸外国を細くて安全でもない海路とは言え、どうにか接続している九州、更には其処への道たり得る四国を狙うのは当然ではあります。

勿論四国にもわんさかシャドウがいます。

厄介極まりない中型も、です。






1、もはや人の土地ではなく

呉美玲奈中尉は、淡路島を経由して、揚陸艇で四国へ上陸していた。昔存在していた強襲揚陸艦……名前とは裏腹に艦隊指揮に特化していた巨大艦ではなく、ただ兵力を輸送するための大型艦にすぎないが。

 

それによって、それほど多くもない兵員と、更には畑中中佐とともに上陸したのだ。

 

此処からは、完全に未知の領域だ。

 

世界中がシャドウに滅茶苦茶にされる過程で、田舎に逃げ込もうとした人間も当然いた。当時人口減少が激しかった四国でもそれは同じだった。

 

しかしながら、それらを待っていたのは小型シャドウの大軍だった。

 

やはり田舎であってもシャドウは出たし。

 

同じような事を考えて逃げ込もうとした人間は、かたっぱしから殺された。そしてクリーナーに溶かされて、骨も残らなかったのだ。

 

今では、四国では三千だかの人間が、一つの集落で身を寄せ合って暮らしていて、孤立状態にある。

 

今回はそれの救出と補給路の確保が第一の目的。

 

第二の目的は、小型シャドウの数の確認。場合によっては、駆逐を狙う。

 

勿論現在上陸している部隊は先遣隊である。

 

この部隊だけで出来るとは思っていない。

 

現時点では、光学探査では中型は確認されていないが、瀬戸内海の西側にはイエローサーペントが来る事があるらしい。

 

それも加味して、偵察はしなければならなかった。

 

スカウトが展開して、周囲を調べる。

 

淡路島にはシャドウはいなかった。そのため、淡路島で戦力を消耗する事は避けられたのだが。

 

四国本土は極めてまずいだろう。

 

スカウトがひりついているのが分かる。

 

玲奈もそれは同じだ。

 

今回、先遣隊の指揮官を任せられているのだが。

 

36式歩兵戦闘車から顔を出して、ずっと側には螺旋穿孔砲を置いている。

 

重機関銃ですらシャドウ相手には足止めも出来ないのだ。かといって、いきなり大兵力を展開しても、撤退の時間すら無くシャドウに食い荒らされる可能性だって低くはないのである。

 

しばらく情報を集める。

 

やはりというかなんというか。

 

シャドウはいる。

 

小型種が、彼方此方で確認されている。しかも、どれも此方に気付いているようだった。

 

「上陸して数㎞進んだだけで小型種100体以上が確認されています。 一度兵を淡路島まで後退させてください」

 

「あまりに消極的ではないのかね」

 

「このままだと内陸に引きずり込まれた挙げ句、強襲を受けて全滅する事になります。 畑中中佐がいても結果は同じでしょう」

 

「……分かった。 一度戦略を練り直す」

 

連隊長をしている島原という男は良くいる生き延びただけの人物で、決断力も判断力も足りていない。

 

ただ玲奈の言う事は聞いてくれるので、それだけが救いか。

 

一度兵を引く。

 

超世王に乗っている畑中中佐が、通信を入れてきた。

 

「この判断は正しいと思う」

 

「有難うございます。 ただ、淡路島でも安心できるか分からないのがシャドウの恐ろしさではありますが……」

 

「その通りだね。 まずは引くべきだ」

 

一度スカウトを収容して、揚陸艦まで戻る。

 

戻る途中も、多数の小型種が此方をじっと見ているのが分かったと言う。

 

連中は追ってこなかった。

 

だからといって、何か得になった訳でも有利になった訳でもない。とにかく淡路島の安全を確保したら、工兵を派遣してもらい、港にする必要がある。工場なども作って、神戸の機能を拡大するという話もあるとか。

 

四国への大型の橋は、瀬戸大橋などがあったが、これらは全てシャドウに破壊されてしまっている。

 

昔は淡路島から四国に自動車で行けたそうだが、それも今は無理だ。

 

ともかく一度淡路島に戻り、情報を報告。

 

初日は交戦はなかった。

 

畑中中佐が会議に出る。

 

玲奈はまだそれほどの地位ではないので、会議で決まったことを翌日以降も実行するだけだ。

 

プレハブの拠点は意外と心地が良く、風呂に入って疲れを落とす。

 

まだ病院で検査を受けているらしい広瀬大将の話を聞くと心も痛む。ともかく、此処からは何が現れて、いつ襲われるか分からない。

 

それを考えると、とにかく体調をベストに保たなければならなかった。

 

一眠りしてから、起きだす。

 

翌日は、揚陸艇そのものではなく、より小型のホバーが出された。これはホバーとはいえ、戦車を充分に運べるものである。これが三隻、分乗して乗る。一隻はまるまる超世王を乗せていて。

 

玲奈が使う歩兵戦闘車も、ほぼ一隻の力全てを使って運んでいた。

 

また上陸し、少人数での探索を開始する。

 

スカウトの展開は早く、流石に第二師団で鍛えられているだけのことはある。ブライトイーグルとの戦いで、キャノンレオンに薙ぎ払われて大きな被害を出した第二師団だが、まだまだ闘志は折れていない。

 

スカウトが情報を入れてくる。

 

昨日とほぼ小型の配置は換わっていないようだ。少しずつ奥地へ侵攻していく。非常に危険な任務だ。

 

絶対に深入りしないように、何度も念押しをしなければならない。

 

常に螺旋穿孔砲をおきながら、スコープで周囲を確認。小型による奇襲は、今の時点ではない。

 

また、狙撃大隊がいつでも上陸できるように手配はしてくれてはいるが。

 

今までの戦訓から、適性距離からの戦闘だと、一大隊で接敵までに捌ける小型の数は50が限度とされている。

 

大隊の面子全員が畑中中佐レベルの実力を持っていた場合は数字が倍にも三倍にもなるだろうが。

 

それが限界である。

 

ともかく、今は憶病すぎるくらいでいい。少しずつ、少しずつ調査を進めていく。やがて、概ね小型の配置、戦力は分かってきた。

 

「最低でも三個連隊は必要ですね」

 

「同感。 問題は中型がいる可能性が高い事」

 

「キャノンレオンなどの倒した実績がある相手だといいのですけれど」

 

「……」

 

キャノンレオンでも、強敵には変わりない。今までに四体を倒した実績が出来たが、それでも雑魚と言うには程遠い。

 

ましてや、他の陸上種の中型だとすると。

 

最悪新兵器が必要になってくるだろう。

 

「こ、此方スカウト11!」

 

「スカウト11、此方聞こえています。 どうぞ」

 

「中型種発見! 恐らくはストライプタイガーです!」

 

「!」

 

ストライプタイガー。

 

キャノンレオンと並ぶ軍殺しで知られる中型種だ。日本でも生息は確認されているのだが、主に関東で確認されている。

 

キャノンレオンは高速移動しながらの制圧射撃を得意としているが、ストライプタイガーは更に速度が早く、その爪と牙を武器にしている。移動速度は実に時速500キロと四つ足型のシャドウとしては、信じられない次元である。ただ、キャノンレオンも本気を出した場合どれくらい速度が出るかは分かっていないが。

 

ストライプタイガーは、名前の通り縞模様を体に持っていて、キャノンレオンに比べて体もずんぐりしている。

 

問題はその爪と牙の威力で、文字通り戦車を一刀両断していくのだ。それも通り過ぎ様に。

 

此奴は指揮車両などを優先して狙って来る傾向があり、接近を止められない上に、一度接近されると文字通り部隊を一瞬でバラバラに引き裂かれる。それほど恐ろしい相手なので。キャノンレオンと同等に怖れられているのだ。

 

「了解。 ストライプタイガーを確認出来ただけで充分。 一度撤退します」

 

「分かりました」

 

「あわてず刺激しないように後退してください。 此方には畑中中佐がいます。 ですので、あわてずに」

 

「はい」

 

兵士達が安心した様子で返してくる。いずれにしても、これで充分な成果と言える。そもそもストライプタイガーはまだ撃破実績がない。

 

四国で孤立している人々には悪いが。

 

倒すには作戦と。

 

場合によっては、新兵器が必要なのは、目に見えていた。

 

すぐに各スカウトを収容して、ホバーで淡路島に戻る。畑中中佐達はすぐに会議に出た。待機命令が出たので、休ませて貰う。

 

それにしてもストライプタイガーか。

 

時速100㎞以上で走ってくるシャドウとの戦いには慣れたが、ストライプタイガーは少し速度のレベルが違う。

 

更に此奴を超える速度で動き回る陸上中型種もいる。

 

グリーンモアと言われる種なのだが。

 

これはなんと時速900㎞で走り回る。

 

この種は攪乱を主体としている種であるのだが、殺傷力も申し分ないし、防御力もしかり。

 

いずれにしても、ゼロ距離の戦車砲を浴びてもびくともしないことでは共通していて。

 

それぞれ撃破例はない。

 

しばらく休んでいると、連絡が来た。

 

広瀬大将からの連絡で、一斉メールだった。

 

「四国への上陸が極めて困難である事ははっきりしました。 現在上層部で対策を協議中です。 畑中博士による新兵器開発に加え、各師団の調整を行うのに二ヶ月から三ヶ月は最低でもかかります。 一度遠征部隊は解体し、淡路島に前線基地を作る事を優先します」

 

「随分と弱腰だな」

 

「前回の戦いで一割以上の被害が出ただろ。 補充兵員を確保するだけで一苦労らしい。 SNSとかで偉そうにご高説を宣っている方々に是非前線に来てその素晴らしい腕前を見せていただきたいものだがな」

 

兵士達が口々に言っている。

 

玲奈も無責任なことをほざく連中には思うところもあるので放っておく。いずれにしても、もしもストライプタイガーを相手にするなら、最低でも第二師団の完全再編が必要であるし。

 

最悪の場合に備えた退路の確保も必須だろう。

 

倒す方法も思いつかない。

 

そもそもあれは、人間の戦闘速度で動いていない。空中戦だと時速500㎞なんてのは亀も同然だが。

 

陸上戦では、最新鋭のMBTである40式ですら、100㎞でないのだ。

 

いまだに人間の兵器は、対人間を想定したものとなっている。

 

それを考えると、色々と何もかも厳しいのが現実だった。

 

工兵部隊が前線基地を翌日から構築し始める。

 

港と工場、それに迎撃用の設備、後は空港もだ。

 

一応神戸近郊の制空権は取り返したが、それも安心して航空機が飛べるようなものではない。

 

マッハ6以上を巡航速度としているブライトイーグルはまだまだ日本各地で確認されており。

 

これらがすっ飛んできたら、航空機なんて蠅のように叩き落とされておしまいなのである。

 

翌日からは、対岸の光学探知と、基地の建設を護衛する任務に移る。

 

畑中中佐は本土に戻ったらしい。

 

玲奈はまた喋る相手もいなくなったが。

 

孤独は嫌いではないので、別にかまわない。

 

工兵が急ピッチで基地を構築していく。その間も、あまり良くない話が聞こえてきていた。

 

「九州まで遠征する作戦案を立てるように矢の催促らしいぜ」

 

「ストライプタイガーが出たんだろ。 あんなの簡単には倒せねえよ。 畑中中佐は倒してくれるだろうけど、それでもどれだけの被害が出るやら、な」

 

「兵の補給も進んでいないらしい」

 

「まあ妥当だよな。 一個師団の半分くらいが戦死したんだから。 第四師団から、訓練が終わり次第どんどん新兵が各師団に回されているらしいが、それでも間に合っていないらしいな」

 

玲奈は無言で指定された仕事をする。

 

それだけが、出来る事だった。

 

当然今の状況に思う事は幾らでもある。

 

だが、今は。

 

それで我を出す時ではなかった。

 

 

 

菜々美が姉のいる京都工場を訪れると、姉はうきうきで「足」を作っていた。此方にまた運んでこられた超世王に対して、早速装備するようだ。

 

前は三対だったが、今度は二対になるようである。そして、斬魔剣に対しても、工夫が加えられている。

 

足はよりごつくなっている。

 

そして、脊椎動物の足よりも、哺乳類の足に近付いているように見えた。

 

「お疲れ様。 四国でストライプタイガーを見つけたようね」

 

「玲奈中尉がな。 あの子凄いぞ」

 

「未来の師団長かもね」

 

「……そうかも知れないな」

 

それだけで、姉は黙った。今、恐らくだが。斬魔剣を違う使い方をするための兵装を組んでいるのだろう。

 

前は斬魔剣は飛ばしていた。

 

だがそれは、キャノンレオンの速度だったから、出来る事だった。

 

普通に時速500㎞で地上を走り回る相手に使える戦術では無い。どうやって戦うのか。ちょっと菜々美も興味はあった。

 

三池さんがココアを淹れてくれた。

 

有り難くいただく。

 

しばらく休んでいると、三池さんが概要を説明してくれた。

 

本気か、と言いたくなったが。姉は本気らしい。これはまた、随分と面倒な新兵器を考えたものだ。

 

いや、斬魔剣を使うのだから、新兵器とは言えないか。

 

いずれにしても、今回も二段階のギミックを用いて、ストライプタイガーを倒す事になる。

 

斬魔剣は一撃でキャノンレオンを確殺する訳ではなく、直撃させてからも絶命させるまで時間が掛かっている。

 

これに関しては、他の中型全てがそうだ。

 

シャドウに唯一効く攻撃。

 

プラズマレベルの超高温を、長時間当てる。それがどうしてもシャドウ撃破のネックになっている。

 

それは分かってはいるのだが。

 

どうしても、それ以外の撃破方法が見つからない。

 

だから、それでやっていくしかないのだ。

 

当然だが、なんとかビームもストライプタイガー相手だと分が悪いだろう。あれはあくまで対空の武器だからだ。

 

「それにしても今度は今まで以上の名人芸が必要になるのでは」

 

「CIWS等のシステムを利用して、支援システムを組みます。 いずれにしても、既にプレゼンは終わり、予算は下りていますので、安心して訓練に励んでください」

 

「了解……」

 

まあ、いずれは戦わなければならなかった相手だ。

 

それに、である。

 

この足を見ると、少しずつスーパーロボットとやらに近付いて来ているように思えてきている。

 

まだまだ異形だが。

 

いずれ40式の車体を必要としなくなるかも知れない。

 

シミュレーションマシンが出来るまで数日かかると言われたので、宿舎に戻る。宿舎でメールを受け取る。

 

辞令だ。

 

大佐に昇進らしい。

 

大佐と言われても、昔の軍だと政治将校みたいなこととか、権力闘争もやっていたらしいのだが。

 

菜々美が受け取ったのは「特務大佐」という変な階級で。特殊部隊の人間として大佐と同等の給金を貰える、というだけの話らしい。

 

ちなみに姉は中将待遇らしいが、これに関しては姉がシャドウを唯一斃せる武器を開発しているので、妥当だと思う。

 

そもそも今の時代、給金が出ても使い路なんぞない。場所によっては物々交換をしているという話だ。

 

とりあえず横になって幾つかSNSの記事を見ていると、シャドウによる襲撃かという情報が入ってきていた。

 

場所は、神戸近辺を領土として寄越せとか言っていた国だ。

 

9000人程度しか人間がいない都市で、反社上がりの人間が支配しているという話は聞いていたが。

 

なんでも集団ヒステリーを起こした挙げ句、神戸を「力尽くで領有を取り返す」ために揚陸艇などの船に殆どの人間が乗り込んで此方に向かおうとし。

 

イエローサーペントに攻撃されて、その阿呆どもは船ごと粉みじん。

 

船に乗り込んでいた人間全員の死亡が確認され、都市に残された400人程だけが生き延びたのだとか。

 

酷い話だが、菜々美には何もできない。

 

そんな指導者をどうして担いでいたのかという声もあるだろうが、こういう時代は強そうに見える人間が人気を得るという話がある。

 

それもあって、どうしても犯罪組織のボスみたいなどうしようもないのが、権力を握る事もあるのだろうし。

 

或いは其奴も、にっちもさっちも行かなくなって、無理を承知で海に出たのかもしれなかった。

 

まあ、それについてはもはやどうにもできない。

 

菜々美はただ、今は休む事。

 

それから次の訓練に備える事。

 

それだけしか出来なかった。

 

 

 

翌日は朝早くから訓練に出る。体を動かして、螺旋穿孔砲を試射して、腕が鈍っていないことを確認する。

 

悪くない戦果だが、これを維持するのが大事なのだ。

 

弾だって無駄に出来ない。

 

淡々と訓練をしていると、連絡が入る。姉からだとちょっと早いか。メールを確認すると、広瀬大将から。

 

それも個人通信だった。

 

「少し風向きがきな臭くなってきています。 この間某国が文字通り壊滅した事は既に聞いていると思います。 これでGDFの各国が混乱を起こしているようです」

 

「ここのところシャドウによる侵攻による被害は小さかったですからね。 しかも「連戦連勝」していたところですし、シャドウの怖さを思い出せばそれは怖いでしょう」

 

「ええ。 予算が増額されます。 出来るだけ早く、ストライプタイガーとの戦闘で成果を出し、九州まで安全圏を確保するようにと各国が焦って天津原代表に圧力を掛けたようです」

 

「焦ったところで戦果なんて出ませんよ」

 

分かっていますと、連絡が即時で帰って来る。

 

広瀬大将は左手が義手になったそうだが、それを全く苦にしていないようである。

 

軍人として以外は平凡な人だと聞いているが、このメールを打つ速度。適応力は人並み外れているのかもしれない。

 

「イエローサーペントの行動予測について、此方では予想を立てるように指示が来ています。 ストライプタイガーと連戦で倒せと無理を言ってくるかも知れません」

 

「イエローサーペントの護衛にブライトイーグルがいなければ比較的楽にやれるとは思いますが、そうはいかないですよね」

 

「……ブライトイーグルは九州に一個体が確認されていますが、阿蘇山の上で動きを見せていません。 むしろ四国でストライプタイガーと戦う際に、何らかのアクションを起こすかも知れません」

 

なるほどね。

 

活動域が拡がって、光学探査出来る範囲が拡がってきている。今までは、イエローサーペントに怯えながら海路を必死に進んでいたのだが。イエローサーペントを二体も立て続けに倒した事で、多分GDFの加盟国は気が大きくなっているのだろう。

 

ばかげた話だ。

 

イエローサーペントだけでも、最低でも2400。それが地球の海にいると推定されているのに。

 

それを一体や二体倒した程度で気が大きくなるから、バカな行動に出る者だっているし。それで被害が出たら動揺するのでは、上に立っている人間の器が知れる。

 

「此方でも出来るだけ準備期間を準備し、作戦を用意しますが、先だっての会戦で熟練兵が多く殺された事もあり、同じように作戦行動は取れないかと思います。 畑中菜々美中佐……いや大佐は、今後に備えて準備をお願いいたします」

 

「了解」

 

連絡を切ると、射撃の練習に戻る。

 

連射も出来ないから、螺旋穿孔砲はとにかく難しい銃だ。アサルトライフルのように弾をばらまければ小型シャドウを圧倒できるかも知れないが、残念ながらそんな事をすれば確定で砲身が爆発する。

 

姉も改良を二度入れて、これでも弾丸の再装填速度が12秒ほど向上したのだが。それでもなお一分近く掛かるのが現実なのだ。

 

射撃訓練を終えた後、ランニングマシンで体力の維持に務める。

 

残念ながら菜々美はムービーヒーローではないので、其処まで無茶な体力を有している訳では無い。

 

淡々と訓練をこなした後は、休憩を入れる。

 

若い兵士達が、必死になって走り込んでいるのが見える。前に何度か会った呉美中尉と同年代に見える子供も多い。

 

呉美中尉はかなり若く見える姿だったが、あれは違う。

 

多分軍での募集年齢を引き下げたのだろう。それくらい、前の会戦でのダメージが大きかったのだ。

 

給金も上げたはずだ。

 

それももう、殆ど意味がない話ではあるのだが。

 

淡々と訓練を終えて、休憩を入れ。

 

そしてまた訓練を入れる。

 

銃器の扱い。分解と組み立て、メンテナンスなどの練習をする。螺旋穿孔砲はブラックボックス部分は極めて複雑だが、それ以外の場所は大きいだけで対物ライフルとあまり変わらない。

 

黙々と調整をして、メンテナンスをする。

 

こうして体を動かしていると、馬鹿馬鹿しいGDFの無能な上層部の狂騒を忘れられていい。

 

集中を切ると思いだしてしまう。だから余計に意識して訓練を続けて行くのだ。

 

淡々と訓練を続けて、アラームが鳴った。そうか、もうこんな時間か。

 

若い兵士達は相当にしごかれているようで、かなり参っているようだが、頑張れと心の中で声を掛けるくらいしか出来ない。

 

下手に菜々美が接するとまた神格化されたりして面倒なのである。

 

これ以上神格化されても迷惑だ。

 

それが本音だった。

 

隊舎に戻り、後は休む。有り難い事に三池さんがカップケーキを差し入れてくれていたので、冷蔵庫に入っていたそれをいただく事にする。

 

姉もろとも世話になりっぱなしだ。

 

性別が同じでなければ結婚相手は三池さん一択なのだが。だが、そうなると姉と争うことになりそうだなと思って苦笑い。

 

少しだけ気分もやわらいだので、後は休む事にする。

 

中型を今まで合計九体も倒したが、それで戦況はまるで良くならない。

 

少しでも戦況をよくする事自体が不可能なのかも知れない。

 

だが、それでも。

 

何か出来る可能性がある限りあがく。それしか、菜々美にはやれることが無かった。







現場で戦う人間に降りかかる無理難題の数々。

こんな状態で揉めてるなんてアホかとぼやきたくなるかも知れませんが、現実でもこれくらい悲惨な状況でバカみたいな理由で揉める集団は幾らでもいます。管理職が体育会系だと最悪で、下手するとチンパンジーを席に座らせておいた方が役に立つケースすらあります。

色々な職場を経験すれば嫌でも見る事になります。

体験談ですウフフ。








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