スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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野球場なんかでプロ野球選手の投球見れば分かりますが、時速100㎞を大幅に超えるというものは、ぶっちゃけ生半可な事では対応できません。

それが時速500㎞オーバーで走り回り、更に本気になれば速度が上がる可能性がある相手となればなおさらです。

虎の名を持つ凶悪な中型を相手に、成し遂げなければなりません。

文字通りの虎退治を。






3、紫電一閃

休憩を入れてから、司令部に出る。

 

超世王の斬魔剣装備バージョンは完成していた。四つ足のバランサーが40式の左右から出ている奇っ怪な姿だが。

 

今まで斬魔剣を射出するべく使っていたレッカー車を改造した長大な後部パーツは、外されている。

 

無くなったわけではない。

 

あくまで必要な状況になったらくみ上げる。

 

そういう形になっているのだ。

 

スーパーロボットは様々なパーツを合体して、様々な状況に対応するのだと、姉は嬉しそうに説明していたっけ。

 

まあ確かに、スーパーロボットアニメでは、合体シーンは作品の花の一つであり。合体シーンには膨大な愛と労力が組み込まれているのがよく分かった。

 

深呼吸。

 

それから、司令部での会議に参加する。

 

淡路島の拠点は既に完成。

 

また、仮設の橋が淡路島、四国にそれぞれ伸びており、撤退、展開はそれぞれ迅速に出来るそうだ。

 

それだけやってくれただけでも充分と言える。

 

流石にランスタートル二体が睨みを利かせている京都方面に出る勇気は司令部にもないのだろう。

 

或いは、天津原辺りが、広瀬大将からの突き上げを受けて、無理だと必死に周囲を説得した(或いは土下座した)のかも知れないが。

 

作戦が説明される。

 

今まで50回を超えるスカウトでの偵察が行われ、確認されているだけでも幾つか分かった事があるという。

 

ストライプタイガーが確定でいる。

 

小型種はストライプタイガーの直衛のように動いているが、ランスタートルの時ほど統率が取れていない。

 

ただし数は相応にいるため、絶対に油断はできないとも広瀬大将はいうのだった。

 

各国のお偉いさんも参加しているようだが。

 

彼等は何も言わない。

 

少し前に最強硬派のあのアホがイエローサーペントに部下もろともまとめて沈められて、シャドウの怖さを思い出したから、かも知れない。

 

まあそれで、少しは黙ってくれていればいいのだが。

 

「現在まともに動けるのは第二師団のみ。 まずはストライプタイガーと、周辺の小型種を始末します。 それで様子を見ながらスカウトを出し、出来るようであれば孤立集落を救出します」

 

「九州への打通は可能かね」

 

「やってみないとなんとも言えません」

 

「そんな不確実なことでは困る!」

 

喚くどっかの国の代表。

 

明らかに声に恐怖がにじんでいた。

 

だからといって、その「お気持ち」にこっちが寄り添ってやる必要はない。

 

というか、お気持ちのために兵士達の命を危険にさらしてたまるか。

 

広瀬大将は、幸い突っぱねてくれた。

 

「四国はただでさえ山間部が多く、光学探知でシャドウの数を計りきれません。 更に中型が潜んでいた場合は、はっきりいって対処は不可能でしょうね」

 

「今回は膨大な資源と予算を投じている! それでは困るんだがね!」

 

「何度も説明していますが、シャドウに対しての戦闘では何が起きるか分かりません。 今までの四度の勝利でもそうでした。 いい加減それを学習していただかないと」

 

「……!」

 

何か顔を真っ赤にしてわめき散らそうとしたそのどっかの国の代表だが。

 

北米の「大統領」が咳払いしていた。

 

もう最大国家の頭領ではないが。

 

それでも、発言権はある。

 

「海兵隊を貸しだそう。 ファーマー大佐がいなくなって、それで少しは言う事を聞きやすいだろう」

 

「有難うございます。 出来るだけ活用します」

 

「うむ……」

 

会議が終わる。

 

さて、今回は第二師団だけか。ちなみに広瀬大将が軍団長に出世してから、第二師団の師団長には、金原という元連隊長が就任した。

 

陰険だと噂されている市川参謀長は、そのまま軍団参謀長になったらしい。

 

まあそれでいいのだろう。

 

あの人はなんというか、参謀には向いていても、指揮官には向いていないと菜々美も思う。

 

会議室から出て行く人達を見送りながら、広瀬大将が話しかけてくる。

 

「できる限り偵察はしましたが、イエローサーペントを倒す余裕が無い場合は、即座に撤収を行います。 九州にブライトイーグルがいることは分かっていますので、イエローサーペントと無理に戦うのはリスクが大きすぎる」

 

「了解です。 それにしても第二師団だけで大丈夫ですか」

 

「一応心強いことに海兵隊も来てくれます。 どうにかします」

 

心強いが明らかに皮肉混じりなのは仕方が無い。

 

あれだけ色々やらかした集団である。

 

それこそどんな風な逆恨みからの行動をしてくるか分からない。ただ新しい司令官は、螺旋穿孔砲をきちんと兵士達に訓練させていて。対シャドウの戦闘で役立てるようにしているようだが。

 

すぐに出る。

 

無骨な橋を渡って、第二師団が四国へ移動を開始。今回は、超世王は最前衛だ。超世王は巨大なロボットアームを本来40式の砲塔がある部分から生やしていて、それに対魔剣がくくりつけられている。

 

極めて不格好だが。

 

だが、使いこなす自信はあった。

 

訓練の結果、最悪の状態でもストライプタイガー相手に勝率99%をついに達成したのである。

 

勿論それで満足すべきでは無いのかも知れないが。

 

ベストの状態であれば勝てる。

 

そして今の状態はベストだ。

 

後は、ストライプタイガーの今まで観測されていない動きがなければ、勝てるだろうが。それもまずは、やってみないと何とも言えない。

 

深呼吸。

 

それから、最前衛のまま進む。

 

見ると、40式は少なく、ジープに乗った狙撃兵大隊の割合が多いようだ。

 

相手の動きを多少阻害するだけの戦車砲よりも、螺旋穿孔砲の方がいいというわけか。

 

歩兵戦闘車が展開するが、ちょっと普段と違う。

 

ヒヒイロカネなんとか装甲を前面に展開しているだけではない。陣地前衛に、幾つも設置している。

 

なるほど、接近されたら戦車でも歩兵戦闘車でもどうせ同じ。

 

特にシルバースネークの毒攻撃は、一撃だけ防げればいい。

 

だったら戦国時代に使われていたような置き盾でかまわないというわけか。なんだか時代が逆行しているようにも見えるが、逆だ。

 

相手が変われば戦術も変わる。

 

何度かの戦闘で、広瀬大将がドクトリンを切り替えたのだろう。

 

それは合理的な判断であると言える。

 

小型種がこっちを見ている。

 

仕掛けて来る気になったらしい。

 

まずは、試し切りがいるな。

 

そう思っていると、ばっとブラックウルフが集団で此方に向かって来始めた。それを皮切りに、小型種が来る。

 

「各狙撃大隊、対応。 敵の接近を防いでください」

 

「狙撃大隊、効力射開始!」

 

「制圧射撃! 撃て!」

 

螺旋穿孔砲の装備率が更に上がっているようだ。その習熟率も。次々にブラックウルフが撃ち倒され、消えていく。また、シルバースネークも毒液の射程に入る前に、次々仕留められていく。

 

射撃を終えると、即座に兵士が交代して前衛に出て、代わりに射撃。弾丸装填に一分かかる螺旋穿孔砲の明確な弱点を、伝承に残る三段撃ち(実際には無かったらしいが)のようにして補うわけだ。

 

凄まじい火線に、小型が次々なぎ倒される。

 

今の時点では、一体も前線にたどり着けていない。

 

更に歩兵戦闘車も、設置されているオートキャノンとしての螺旋穿孔砲で小型を撃ち抜き続けている。

 

これはオートキャノンとして姉が改良したもので、基本的には携行式の対物ライフルである螺旋穿孔砲と変わらないらしいのだが。自動で小型シャドウを狙い、それで撃ち抜いてくれる。

 

戦車に乗せるには火力不足だが、歩兵戦闘車に乗せる制圧火器としては申し分がない。

 

また歩兵が持つものより大きいのは、放熱機構を巨大化させている事で、これによってより効果的に放熱が出来る。

 

このため、歩兵用のものでは一分ほど弾丸の再装填に時間が掛かるのだが。こっちはなんと48秒で弾丸の再装填が出来る。

 

あんまり変わらないような気もするが。

 

まあ、ないよりはある方がずっと良いし。

 

今まで戦車にしても歩兵戦闘車にしても、140ミリ滑空砲であろうが150ミリ滑空砲だろうがシャドウには足止めにしかならなかった事実を考えると。

 

きちんと相手を斃せる兵器を搭載するのは良い事なのだろう。

 

敢えてブラックウルフを通させる。

 

一体向かってくる其奴を、訓練通りに斬魔剣で一閃。

 

この斬魔剣は、投擲していた前のバージョンと違い、装備している巨大で複雑でごっついロボットアームを用いて、文字通り振るうのである。

 

やっと剣らしい使い方が出来るようになった。

 

小型は螺旋穿孔砲で斃せる。これは倒すのに必要とする熱量が中型とは比較にならない程少ないから。当て続ける必要がある時間も。つまり斬魔剣を直撃させれば、小型であれば一閃できるのだ。相手があくまで小型であれば。

 

振り抜いた先で、ブラックウルフが消し飛ぶのを見て、兵士達が歓声を上げていた。

 

「すげえ!」

 

「あの剣、ミサイルみたいに使うだけじゃなくて、ちゃんと剣としても機能するんだな!」

 

「よっしゃ、気合が入ってきた! 撃て撃て撃てっ!」

 

兵士達の士気があがるが。

 

まだまだこれからだ。

 

続けて、二体。敢えて通させる。試し切りはどんどんやっておかなければならない。

 

今度は左右から、同時に襲いかかってくるが。それを少し下がることで、敢えて左右の接触のタイミングを変える。

 

それには足が役立つ。

 

そうして、右左と、立て続けにブラックウルフを斬り伏せる。

 

完璧。

 

二体とも、一瞬にして砕け散る。わっとまた喚声が上がっていた。

 

次、シルバースネークと行きたいが。あれはちょっと相性が悪いか。

 

ちなみに従来型の斬魔剣は、中衛に控えている。あれらは、キャノンレオンが現れたり、ブライトイーグルが出現した時対策だ。

 

ジャスティスビームについては現在まだ改良中。

 

ブライトイーグルはそれほど積極的に攻勢を掛けてこず、他の中型がいるばあいはその護衛を優先する。

 

この習性は分かっているので、近付かないように斬魔剣を投擲するための車両が必要にもなる。

 

既にキャノンレオンを倒した実績がある呉美中尉が乗っているようなので、安心感がある。

 

さて、そろそろか。

 

前線は進めない。

 

広瀬大将の指揮は徹底していて、絶対に勝ちに奢って前進するようなことは許さない。

 

前回の戦いで、左腕を失いつつも最後まで指揮を取り。勝利をもぎ取ったと言う事で、軍神扱いされている広瀬大将の指示には、誰もが従うようになっている。指揮はしやすくなったと、遠い目で広瀬大将が愚痴っていたが、気持ちはわかる。

 

まあ、それで兵士達が無駄死にしなくてもいいのは良い事だ。

 

小型種1000近くを倒した頃だろうか。

 

予想通り、のっそりと姿を見せる姿があった。

 

中型種。

 

ストライプタイガーである。

 

即座に広瀬大将が指示を出す。

 

「小型種の掃討に集中! 超世王セイバージャッジメントに小型種を可能な限り近づけないように!」

 

「イエッサ!」

 

「イエスガデス!」

 

ガデス?

 

なんだろうと思ったが、コンソールに翻訳が出る。女神らしい。流石にげんなりする。広瀬大将もげんなりしているだろうが、今はともかく、勝つ事だ。

 

敢えて前衛に、それも陣地よりも更に前に出てくる超世王に、小型が群がってくる。それらを螺旋穿孔砲が次々撃ち抜くが、倒し切れない十数が一斉に襲いかかってくる。しかし、だ。

 

此方は時速500㎞オーバーで走り回る化け物相手に勝つ訓練を続けていたのだ。

 

もはや時速百数十キロなんてあくびが出る速度の小型シャドウなんて敵ではない。一番懸念しなければならないのはシルバースネークの毒吐きだが。それも狙撃大隊がそれぞれ優先して仕留めてくれている。

 

更にいえば。ロボットアームは調整に調整が重ねられ、そもそも対ストライプタイガーを想定しているものだ。

 

瞬く間に、小型数体を斬り伏せ、更に残りも叩き伏せる。

 

喚声が上がる。

 

だが、このまま上手く行ってくれるかどうか。

 

構えを取る。

 

時々突っかかって来る小型を斬り伏せながら、ストライプタイガーと対峙する。ストライプタイガーは身を伏せると、獲物に襲いかかる食肉目のような態勢になる。

 

そして、左右にジグザグでステップしながら、間合いを詰めて一気に躍りかかってきた。

 

タイガーとはいうが、姿は虎には似ていない。

 

キャノンレオンがライオンにはあまり似ていないのと同じ事だ。それが凄まじい勢いで間合いを詰めてくる。

 

螺旋穿孔砲は基本的にストライプタイガーを相手にしない。これは相手にしなくて良いと指示が飛んでいるからだ。

 

他の小型種も、シルバースネーク以外、超世王に近付くものは無視。ブラックウルフもクリーナーも全無視。それは全て超世王で斬り伏せる。

 

残像を作りそうな勢いで、ストライプタイガーが襲いかかってくる。小型と連携して、実に素晴らしい動きだ。敵ながらほれぼれする程である。

 

だが、関係無い。

 

態勢を崩し、ブラックウルフを斬り伏せた直後に、斜め後ろから襲いかかってくるストライプタイガー。

 

その爪は40式の装甲を紙屑みたいに切り裂く。

 

それどころか、地面にそれを切り裂いた上で、亀裂を作り出すほどの凄まじい代物だ。

 

だが、斬魔剣が動く。

 

貰った。

 

そう思った瞬間、なんとストライプタイガーが、空中で停止した。それどころか、空中でバックジャンプして、着地する。

 

なんだ今のは。

 

解析を急がせる。姉も戦況を見ていたようで、連絡を入れてくる。

 

「菜々美ちゃん。 今のに動揺しているかしら」

 

「当たり前だ。 何今の」

 

「解析したけれど、恐らくは体の一部を噴射して、ブースターとして使っていると見て良さそうね。 しかも質量攻撃が通用しないシャドウだし、再生力も高い。 即座に再生して、幾らでもブースターは使えるとみていいわ」

 

「……まずいな」

 

だとすると、空中からの攻撃に対して、必殺の間合いからの一撃を入れるのは無理に近い。

 

それだけじゃない。

 

ブースターを装備していると言う事は。更に加速してくる可能性が高くなった。

 

今までは、それを使う必要さえなかったということだ。

 

ゆっくり此方の周囲を伺って、移動するストライプタイガー。

 

後方では、通信が飛び交っている。

 

「海岸より敵! ブルーカイマンです! 相当数!」

 

「橋への攻撃も行われているようです!」

 

「排除を急いでください」

 

「くそっ! このままだと対イエローサーペント用の機体が!」

 

再び仕掛けて来る。やはりブースターで加速して来た。ごっと凄まじい音がする。地上を走りながら、音速を超えたのだ。しかもソニックブームが出ていない。イエローサーペントもそうだが。

 

シャドウはソニックブームを自在に操れるのだろうか。

 

此方の周囲を、凄まじい速度で回転するストライプタイガー。そういう絵本があったなと思い出すが、それどころじゃない。

 

仕掛けて来た。

 

対応が遅れる。

 

斬魔剣が擦る。それで相手は警戒して、ばっと離れる。奴の爪で一刀両断されるのは防いだが、冷や汗が流れる。相手に大したダメージは無い。高温のプラズマを纏っている斬魔剣だが、それでも一瞬では中型シャドウにはダメージを与えられないのだ。

 

相手は鉄壁に近く、こっちは一撃でも貰ったら終わりだ。それだけ凶悪な火力を持つ相手なのである。

 

再び仕掛けて来る。速すぎる。最悪の予想を想定したシミュレーションマシンでの訓練よりも更に速い。

 

支援プログラムが追いついていない。職人芸でどうにかするしかない。それでもかなり厳しいか。

 

また交錯。

 

装甲の一部が丸ごと吹っ飛ばされた。相手にも一撃を入れた。よし。装甲にダメージはあるが、少しずつあってきた。

 

立て続けに三合目。

 

更に加速して来た。ぐおんと、衝撃波みたいな風が車体を揺らす。これでも数十トンはあるんだが。

 

それでも、あわせる。

 

三合目でまたあわせられたのを悟ると、ストライプタイガーが飛び離れる。此方は。ダメージは、ある。

 

足の方にダメージが出ている。それはそうだ。こんな高速の相手とぶつかり合っているのである。

 

斬魔剣は音速の相手とやり合うことも想定しているから、斬魔剣は大丈夫だ。大丈夫なのは斬魔剣ではなくて車体の方。

 

いや、機体か。

 

ともかくセイバージャッジメントがこれではもたない。それに彼奴が第二師団の方へ行ったら、短時間で蹂躙され尽くされるのがおちだ。

 

次で、決める。

 

態勢を低くしながら、此方を伺いつつゆっくり移動するストライプタイガー。これは何か狙っているな。

 

機体に死角はない。

 

だが、接近してきたのは歩兵戦闘車だ。近付くとまずい。だが、近付いて来たのには意味があるはず。

 

一瞬、気が逸れたのはどちらも同じ。

 

対応してきたのは、ストライプタイガーが先。螺旋穿孔砲は見ていて知っているのだろう。だが、自分にはダメージを与えられない。そうと判断したと見て良い。直線的に来る。超世王の内部に菜々美がいて動かしているのは理解しているのだ。それを叩き潰しに。いや、違う。

 

ストライプタイガーの両足から、鋭い半透明の刃が生えている。あれは恐らく、爪を横に展開したものだ。

 

戦車を真っ二つに紙くずの様に切り裂く爪である。元々生物ではないし、どんな風に形状を変えられても不思議ではない。

 

だが、その程度だったら。

 

菜々美は動く。

 

歩兵戦闘車が発砲。狙ったのはストライプタイガーではない。激戦に集中していて、見逃していたシルバースネーク。歩兵戦闘車がそのまま移動しつつ、離れていくのが、まるでスローモーションのように見える中。

 

体を捻って斬りに来るストライプタイガー。接触でもさせたら、一瞬で超世王はバラバラだろう。

 

だが、菜々美は敢えて前に出る。

 

一瞬だったら斬られても問題ない。そう学習したストライプタイガーが、更に加速して来る。

 

それを、待っていたのだ。

 

今までの最大速度で、ブースターも噴かしながら、斬魔剣を振るう。

 

一刀両断とはならない。

 

だが、完全に直撃した。

 

超高熱のプラズマは、シャドウに明確なダメージを与える唯一のもの。それは足止めにもなる。

 

それを受けて、一瞬だけ動きが止まったストライプタイガーを巻き込むようにして、斬魔剣を動かす。

 

そう、斬るのではない。

 

こうやって巻き込んで、捻って地面に叩き付けるのが目的だ。そして、そのまま、地面に押しつけながら斬る。

 

凄まじい悲鳴を上げるストライプタイガー。明確に効いている。だが、足を動かして、刃を振るってくる。

 

それが、超世王の四本の支援用の足を、二本瞬く間に両断。更には、装甲の一部も抉りさり。

 

菜々美の顔の二ミリ先を掠めていた。

 

頭が真っ二つにされる所だった。

 

光が差し込むコックピットで、更に操作。足を失ったことで、地面に叩き付けられるが。それくらいのダメージは想定済。そのまま、地面に押しつけたストライプタイガーを斬魔剣を前後に動かして斬る。

 

悲鳴のような音は、シャドウにダメージが入っているときに必ず鳴る。後方で轟音。確かブルーカイマンが猛攻をかけてきていると言っていたか。橋が落とされたのかも知れない。だが、工兵がすぐに架ける。だからどうでもいい。

 

がくんと機体が崩れる。

 

また激しい衝撃で、体をシートに叩き付けられる。またストライプタイガーが足を振るって、残った足も切り裂かれたのである。完全に足を失った超世王はまんま無限軌道を失った戦車のように地面を叩き付けられる。いや、ようにというかそのままだ。それでもロボットアームは動く。

 

そして、ついにストライプタイガーの動きが止まり。

 

爆発していた。

 

思わず顔を覆う。ぐるんと天地が一回転した。至近距離での爆発。本来だったら耐えられただろうが、これは耐えられない。さっき切り裂かれたところは、補助用のシャッターが塞いだが。

 

機体そのものが吹っ飛ばされて、一回転。

 

そのまま天地逆に、つまりロボットアームを粉々に壊しながら、地面に直撃していた。ぐうと声が漏れる。

 

通信が入ってきた。

 

「畑中大佐! 無事ですか!?」

 

「無事じゃ無いけど生きています。 すぐに支援を……」

 

「了解です!」

 

ぐっと前線を押し上げてきたようだ。戦況は不安だが、今の時点でストライプタイガーだけが相手だったら、何とかなるはず。

 

ひっくり返った戦車なんか、普通だったら爆破処理するものだが。超世王の中には、コアシステムが組み込まれている。姉が作りあげた、今までのシャドウとの戦闘データの分析記録もそうだし、超世王の支援システムの中核でもある。

 

回収車が来たらしく、ひっくり返し直す。それでやっとハッチを内側から開けられる。擱座どころか一回転である。普通だったら内部に生存者はいない。姉が色々手を入れてくれたから生きている。それだけだ。

 

ハッチを開けて、外に出る。

 

周囲にジープ多数。まだ小型との戦闘をしているようだ。ブルーカイマンに今は集中攻撃して、退路の確保を急いでいるようだが。

 

このブルーカイマンの数、ちょっとまずいな。これでは海に超世王を入れられない。正確には対イエローサーペント用の潜水艦に、コアシステムを積み込んで出撃とはいけない。

 

すぐに車体を降りて、手当てを受ける。

 

ストライプタイガーがいた地点は、クレーターになっていて、何も残されていなかった。

 

これで生きていたのだから、良かったと思うべきだったのだろう。

 

彼方此方打ち身があるが、今はそれどころじゃない。

 

広瀬大将から連絡が来る。

 

「ブルーカイマンを現在排除しています。 それが終わり次第、すぐに海に行けますか」

 

「無理を言ってくれますね……」

 

「イエローサーペントが接近しています。 ブライトイーグルの直衛はなく、しかも一体だけです。 これを倒せば、少なくとも九州までの海路は安定します。 しばらくは四国の奥地への偵察は続行するとして、これでどうにかスポンサー達を納得させるしかありません」

 

「了解……っ」

 

広瀬大将も大変な立場だ。

 

菜々美は機体に格納されていた螺旋穿孔砲を取りだすと、ジープで前線に向かう。それで医師が白い目で見ている中、ブルーカイマンを排除する。動きは素早いが、正直シルバースネークよりも仕留めやすい。水陸両用という点では厄介だが、実の所海の中でこいつに襲われるケースは殆ど無く、沿岸部にしかいないと言われている。シルバースネークは遠距離攻撃もちの上、体が細長い上に動きがすばやいのでとにかく当てづらいのだ。

 

数体のブルーカイマンを仕留めながら、沿岸に。沿岸に展開しているブルーカイマンに対して、第二師団は奮戦している。被害もほぼゼロに抑え込んでいるようだ。だが、まだ予断は許さない。

 

もしも二体目のストライプタイガーが出た場合、第二師団は全滅確定だ。後方の橋も、まだ工兵が造れる状態じゃない。

 

超世王だって、ストライプタイガーを相手にして、もう戦える状態じゃない。冷や汗が流れる中。

 

敵の群れの中に、一瞬の空白が出来る。

 

火力を集中することで、ブルーカイマンの群れに疎密を作り出し、其処が空いたのである。

 

広瀬大将が、即座にそこへ対イエローサーペント用の潜水艦もとい超世王の海戦用機体を滑り込ませる。既に工兵が、コアシステムは移し済みだ。極めて危険な状態だが、イエローサーペントの射程に入ったら、完全に退路が終わる。そうなれば、第二師団は孤立。やがて補給すらままならなくなるだろう。

 

ブルーカイマンはやはり周囲の光学探知をする限り、ごく浅い水面近くにしかいないようである。

 

全身酷く痛いが、ともかく海底に超世王を潜り込ませる。それを邪魔しようとしたブルーカイマンが、悉く撃ち抜かれるのが分かった。

 

通信が途切れがちだ。

 

ブルーカイマンも群れになるとEMPに近い能力を発揮できるのかも知れない。つくづく厄介だ。海中からは、淡路島からの橋が、海中で破壊されている様子が見える。とても二m程度のシャドウが、群れとはいえやったとはとても思えなかった。

 

集中。

 

体中痛いが、此処からは音を出すことさえ許されない。

 

姉は相当な改良を加えてくれていて、超世王が水中で音も無く加速する。此方に向かってきているイエローサーペントは、やはり橋を狙っていると見て良い。奴が居座ったら、揚陸艇が来ても片っ端から落とされるだけ。

 

空路による補給なんて手段は、とっくの昔に無力化されている。各国では使い物にならない空軍を埃を被らせて眠らせてしまっていて。この国でも多少のヘリボーン作戦くらいは出来るが、師団規模の輸送なんてとてもではないが無理だ。

 

海底近くを這うようにして移動する。

 

イエローサーペントが高速で此方に迫っている。既に瀬戸内海に入り込んだようだ。急ぐ。

 

後方では、ブルーカイマンをほぼ排除したが、その代わり陸上の小型シャドウが猛攻に出ているようである。

 

だが。

 

このタイミングで中型が出て来ていないと言う事は、連携が取れていないか、四国に中型はもういないか。

 

後者は楽観が過ぎる。

 

恐らく前者だろうが、それでも大好機だ。

 

急ぐ。

 

加速して、更にイエローサーペントとの距離を詰める。

 

イエローサーペントは此方に気付いていないが、もしも気付いたら警戒している筈だ。警告。

 

連絡が来る。

 

イエローサーペントが、周りに泡みたいなのを発し続けているようだ。海中でのソニックブーム展開は奴の十八番。だとすると、今まで倒された二体の情報を得て、接近を警戒する何かの手段を用いているのかも知れない。

 

だが、こっちも装備を進化させている。

 

姉は改良の末に、なんたらドリルを強化。恐らくは、接触は一瞬だけで大丈夫の筈だ。

 

よし、浮上。

 

相手の相対速度と考えて、丁度このまま浮上すれば、接触できる。

 

此方に爆速で迫ってきているイエローサーペントだが、やはり奴が使っている探知手段は音だ。

 

あの泡は、単純な接近の探知だと見て良い。

 

そのまま加速して、相手への距離を詰める。300、200、100。そして50を切った所で、イエローサーペントがこっちに気付く。

 

だが、その瞬間。

 

相手に組み付いていた。

 

展開した前面部には、前回の倍のドリルがついている。

 

そして、前回の課題。

 

そのまま相手に組み付いたまま、高出力プラズマを海中での格闘戦で流し込むのはリスクが大きすぎる。

 

そのため、このドリルはユニット化されているのだ。

 

相手に組み付き、ドリルを叩き込んだ後。ユニット化したドリルを切り離す。贅沢な使い方だが。

 

このユニット化したパーツは、動力炉を内蔵しており、プラズマを相手に流し込み続ける。少なくとも致命量。

 

そして超世王はユニットを切り離した後は、潜行するだけでいい。

 

対策をしていたようだが、こっちが上回った。

 

凄まじい勢いで体を回転させ、更にはソニックブームを放って暴れているイエローサーペントだが。

 

それもこっちが離れてしまえば、超世王にダメージは無い。

 

流石に長距離から魚雷のように発射して、それで相手に着弾させるのは厳しい。相手にはブライトイーグルの直衛がつく事も多いし。何よりも細かいトラブルに対応できないからだ。

 

だが、それでも。

 

海底に貼り付く。

 

海面近くで、体をドリルで抉られて、凄まじい悲鳴を上げているイエローサーペントが、千切れようとしている。

 

そして、ほどなく。

 

爆発していた。

 

凄まじい衝撃波に揺らされる。

 

ぐっと呻いた。

 

がたがたと機体が揺れる。前に振り回されたときほどでは無いが、こっちはストライプタイガーとの死闘の直後である。勘弁して欲しいとぼやきたくなるが。二体目のイエローサーペントや他の中型海棲シャドウでも来たら詰み確定だ。だから、黙って痛みに耐えるしかない。

 

爆発が収まる。

 

ようやく、それで一息つけた。

 

「ブルーカイマン排除完了! 各自前面の陸上小型種を排除しつつ撤退準備!」

 

「イエッサ!」

 

「イエスガデス!」

 

「……工兵部隊は架橋開始。 撤退の準備を急いでください」

 

どうやら、勝てそうだ。

 

海底を這うようにして移動しながら、味方への合流を急ぐ。四国の打通はならなかったが、それでもこれでまた一種、中型シャドウを倒す事に成功した。ただ、課題も多い。ストライプタイガーはとても倒しづらい相手だ。姉が改良を入れてくれるとは思うが、このままの超世王では次も勝てるとはとても思えなかった。

 

キャノンレオンも確認されているだけでもまだ二十体以上は日本にいる。これは実際には倍以上はいるとみていい。

 

ストライプタイガーも恐らくは同じくらいはいる筈だ。

 

これらを倒しながら、安全圏を拡げるというのは。

 

とても大変な事だと、菜々美は今から、憂鬱な気分になるのだった。








やっと斬魔剣が剣として振るわれ敵を倒すことが出来ました。

問題はロボットアームを用いての事で。

ロボットアームは車体の上から生えている事ですね()




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