スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
近畿の安全すら確保できない人類の現実。
その裏で会議は踊り続けています。
呉美玲奈中尉は、山の上まで上がって、其処から軍用スコープを用いて偵察を続ける。シャドウは分厚く若狭に分布している。最近までかなりの数を削ったのに。海を渡って来た中型達と、それに随伴していた小型多数もあって、むしろ数は増えてしまっている程である。
どうしてシャドウは若狭に援軍を送ってきたのか。
それはちょっとよく分からないが。
ただ分かっている事はある。
あれをどうにかしなければならない、ということだ。
予想されていたことだが。
ニホンオオカミの存在が確認された。
誇り高い山の「神」だった存在だが、明治くらいに絶滅に追い込まれてしまった。人間との関係もそれほど悪くはなかったのだが。
江戸時代までにかなり数を減らしていた、という話もある。
明治時代の到来が、色々絶滅の引き金を引いてしまったのかも知れなかった。
いずれにしても、そのニホンオオカミが、ジープに乗っている玲奈達をじっと見ている。好意的な視線ではありえない。
まあそれもそうだろう。
もしも人間に滅ぼされたことをニホンオオカミが知っているのなら。
人間を敵視するのは当たり前の事だ。
どうやってニホンオオカミが復活したのかはよく分かっていないらしい。今の時点では、手出しはしないように。
そう厳命がされている。
虎やライオンは今や人間とみるや襲ってくるのだが。
ニホンオオカミはじっと此方を見ているだけ。
それだったら、此方としても、手を出す理由は無い。
勿論相手は狼なので。
下手に手なんか差し出したら、がぶりといかれる可能性もあるし。更には狂犬病とか移されかねない。
そういう意味でも、手を出すのは厳禁ではあるが。
「ランスタートルは移動せず。 あの位置にいると厄介ですね。 ウォールボアも、逆落としの態勢を取っています。 時間差各個撃破は難しいでしょう」
「他の中型シャドウの姿は」
「現時点では見当たりませんが、問題はグリーンモアです。 あれは巡航速度ですら時速900㎞に達します。 もしも山中に潜んでいる場合、一瞬で超世王に襲いかかる可能性があります」
「分かった。 偵察を続けてくれ」
広瀬大将が、なんどか玲奈のいる部隊を激賞したこともある。
スカウトの最前線に抜擢され、今もシャドウの射程範囲ギリギリに入って、偵察を続けている状態だ。
小型種の間合いは、ある程度分かっている。
何度か近付きすぎて襲いかかられたこともあるし、その度に味方狙撃大隊の間合いまで引きずり込んで、どうにか生き延びてきたのだ。
間合いについては、今では肌で分かるようになってきていた。
それもあって、どうにかやっていけていると言える。
しばし偵察を続けた後、位置を変える。
データはスコープで取得できるようになっていて。更にはブライトイーグルもいないので、司令部に直に送り込まれてもいる。
黙々と調査をして、シャドウの配置を確認する。
ランスタートル二体の間合いに同時に入らない地点もあるが、其処から攻め上がるのは極めて難しい。
峻険な山道だったり、小型の数が多すぎる。
更にはウォールボアの事もある。
今対策用の装備を畑中博士が作っているらしいが、それにしても簡単に斃せるかどうか。
畑中大佐の戦闘記録を見たが、あの畑中博士の作る兵器を毎回使いこなす手腕を持ってしてもだ。
それでも大けがをしながら、薄氷を踏む勝利を毎回重ねているのである。
それを思うと、とてもではないが勝てるなんて安易に口に出来なかった。
偵察を続けて、それで戻る。
隊舎でレポートを書いていると、翌日以降の任務について入る。訓練が殆どできないな。
そう思っていると、斬魔剣を装備した……それもロボットアームでふるえるタイプの40式が生産が決定されたらしいと聞こえてくる。
足が生えているアレだ。
ストライプタイガーとは今後も戦う事になる。キャノンレオン相手だと、このタイプはちょっと相性が悪い。
スプリングアナコンダと違い、面制圧を前提とした火力投射をしてくるので、例の盾では防げないからだ。
今後もキャノンレオンはあの斬魔剣を投擲して倒す戦術を採るしか無い。
少なくとも、今の時点では、である。
あれも支援PCが補正してくれているから、どうにか玲奈でも当てる事ができたが。素の名人芸だと当てられる気がしない。
本当に畑中大佐は凄いな。
そう溜息をついてしまう。
黙々とレポートを書いて、それで提出。後は寝て、体力を回復させる。
第四師団で訓練を終えた兵士達が、続々と他の部隊に配属されている。北米では、どうにか新規で一個師団を編成し。
いわゆる広瀬ドクトリンにそって、螺旋穿孔砲を主体とした兵装で戦えるように訓練を始めたらしいが。
それで対抗できるのはあくまで小型までだ。
中型以降は、まだ戦術の習熟度が足りない。
中型が混じったシャドウの群れと戦う場合、師団が半壊する事を覚悟しなければならないだろう。
そういう意味で、北米の軍事再編は始まったばかりだ。
他の比較的人間が数だけはいる街でも、少しずつ広瀬ドクトリンにそった部隊編成が始まっているらしい。
ただ螺旋穿孔砲のブラックボックスを開けて即座に技術供与が停止されるような都市も存在していて。
まだ会議では怒号が飛び交っているらしいが。
広瀬大将も大変だな。
そう思うばかりだ。
起きたら即座に顔を洗って歯を磨いて。
それで軽く体を動かしてから、外に出る。
今日もスカウトだ。
どうやら若狭に強引に仕掛けるつもりらしい。多数の中型を相手にして、神戸近辺の部隊が半壊した対ブライトイーグル戦を忘れたのかと言いたくなる。確かに新兵の訓練があらかた終わって、一部は既に実戦も経験。「軍団」の規模も回復はしたが。しかしその分、色々な社会的インフラから人が引き抜かれたのである。
今クローンや人工子宮での新生児を大量生産はしているようだが。
それらの子が大人になるのは十数年も後だ。
今は社会的インフラを支える人材は、教育システムの改善によって昔よりも早く仕上がるようにはなってはいるが。
それが限界。
兵士になるには体がしっかり仕上がって大人になるのをまたなければならないし。
それを考えると、今から人を増やしても遅い。
四国を奪還したところで、他全てがシャドウに制圧されているも同然であり。シャドウが再侵攻を開始したらあっと言う間に全てが終わる事実を考えると。
楽観など出来ようも無かった。
ジープに乗ると、ちっちゃな車が来るのが見えた。
降りて来たのは、以前顔を合わせたこともあるナジャルータ博士だ。今回スカウトに同行するという話だった。
露骨に迷惑そうな顔をしている兵士達に、シャドウの専門家で。その知見のおかげで中型を倒すアイデアが出て、兵器が作られた。
そう説明すると、皆敬礼を返していた。
それはそうだろう。
兵士達も、畑中大佐が最強だから勝てているわけでもなく。毎回超世王がボロボロにされつつ勝っているのは知っている。
中型がそれだけ厳しい相手であり。
専門家がいて斃せるというのは周知の事実なのだ。
兵器開発している畑中博士の事は誰もが知っているが。
シャドウの研究者についても、同等以上に大事な事は、猿でも分かる。ともかく、幾つか注意事項は周知する。
「山の生態系は回復していて、下手に土に降りるとヤマビルに集られます。 靴などは気をつけてください」
「ありがとうございます。 しっかりした登山用の靴をはじめとした服は持って来ましたし、それに狂犬病のワクチンも打ってきてあります」
「素晴らしい。 では、ジープはあまり乗り心地がよくありませんので、それも注意してください」
軽く説明をした後、着替えをして貰って、それからスカウトに出る。
今日は一小隊分のスカウト全ての指揮を任されている。
昔の中尉は冷房が効いた部屋で偉そうに指揮だけしていたらしいが。今はそうも言っていられない。
黙々と目的地に出向くが、途中で止まれと指示を出した。
山を上がり始めてすぐのタイミングだ。他の部隊にも伝達を飛ばす。
「どうしました、呉美中尉」
「……まずいですね。 小型がかなりいます。 今まで見落としていたとは考えにくい。 今までの戦闘で起きたように、現れたのだと思います」
「分かりました。 即座に後退して、一旦距離を取ります」
「バック!」
声が掛かり、スカウトが後退を開始。
玲奈自身はスコープで確認。
やはりだ。かなりの数のシルバースネークがじっと此方を見ている。もしも迂闊に進んでいたら、毒吐きを受けてあっと言う間に全滅、骨も残らなかっただろう。
冷や汗が出る話だ。
兵士の一人が聞いてくる。
「それにしても呉美中尉、どうして分かったのですか」
「一応勘が働きます。 勘の正体は五感による察知なのでしょうが、予想以上に小型が近い事がすぐに分かりましたので」
「なるほど……」
まあ科学的な説明をするとそうだ。
ただ実際のところ、それが本当かは分からない。
小型がいるのは確かだったのだが。
訓練された軍用犬などでも、シャドウを察知するよりも、攻撃されて殺されてしまう方が早い位なのだ。
軍用犬はシャドウの攻撃対象であり。
今では殆ど生き残っていない。
一旦麓まで降り、もう少し距離を取る。配置がかなり換わっている。それを報告すると、広瀬大将ではない。
余り聞いたことが無い名前の連隊長が出た。
現在は旅団という単位は廃止されていて。
連隊長が師団の直下にいる。
それもあってか分からないが。
時々、出世した連隊長には、やたら偉そうなのがいる。恐らく大隊長から出世したばかりなのだろうが。
耳元でがなり立ててくるので、流石に閉口した。
「スカウトの偵察が不十分だったからそうなったのだろうが! 上に掛け合わさせてもらう! 降格も覚悟しろ」
「呉美中尉、代わってください」
「はあ、分かりました」
お人形さんみたいな容姿のナジャルータ博士だが。
今回護衛を受けている事を告げると、相手の連隊長は一発で黙る。ナジャルータ博士が如何にGDFでVIP扱いされているかは、連隊長くらいの立場だと分かっているのだろう。
ナジャルータ博士は、シャドウの行動が極めて神出鬼没で、今までいなかった地点に突如出現するのは珍しくもないこと。
この偵察任務は丁寧に行われていて、ナジャルータ博士の目から見ても問題はなかったこと。
それらを告げ、これからこの高圧的な発言については、広瀬大将に直に報告するといい。相手の反論を待たずに通話を切っていた。
「スカウトを続けてください。 此方としても、少しでもあらゆるデータが欲しいのです。 時間が惜しいですから」
「分かりました」
意外と、高圧的なものいいをするんだな。
この人、ああいう言葉が通じないタイプには、とことん辛辣になれる人なのかも知れない。
見かけと性格が一致していないのは別にかまわない。
それにすっきりしたし。
ともかく、スカウトを続ける。
他の部隊も、シャドウが現れているのを確認。昨日まではいなかったような地点でも、相当数がいる。
「小型は此方を警戒しつつも、少なくとも攻撃態勢には入っていませんね」
「そうですね。 小型が攻撃態勢に入る場合、一斉に此方を見ます。 シャドウの目が生物の目と同じように機能しているかはちょっと分かりかねますが……」
「いえ、その認識で正しいと思います。 もう少しデータが欲しい。 危険がない距離から、スカウトを続けてください。 私の方で、スコープからデータを取ります」
玲奈は頷くと、多角的にシャドウの分布を確認する。
他部隊とのデータもあわせると、更に難攻不落になっている。現在確認されているだけでも二体のランスタートル。一体のキャノンレオン。それにウォールボア。見えていない範囲に、グリーンモアが控えている可能性がたかい。
これにスプライトタイガーがいたりしたら最悪だ。
超世王セイバージャッジメントと畑中大佐があと三機と三人くらいは必要になってくるだろう。
攻略は無理だな。
そう結論するしかない。
夕方近くまで、調査を続ける。
その間、ナジャルータ博士は此方の行動にケチをつけることもなく、凄まじい集中力でずっとスコープを覗いていた。
凄まじいIQを持つらしいが。
それを使って、見たものはあらかた記憶しているし。
なんならスコープで持ち帰ったデータを、その記憶を元に再構築していくのだろう。玲奈には分からない世界の住人だということだけは分かる。
今日は撤退だ。
帰路で、連絡が入る。
広瀬大将からの一斉メールだった。
例の連隊長が、降格処分だそうである。大隊長に格下げだそうだ。
なんでも政治的な働きかけを、それもGDFのお偉いさんにしていたらしく。それが発覚したらしい。
GDFのお偉いさんの方でも、広瀬大将の力を削ぐために、そういうくだらない工作をしていたらしい。
広瀬大将が軍事の専門家として、出来ない事をはっきり出来ないというのが気にくわない連中が。
なんでも言う事を聞く木偶をその代わりに据えたいと考えているらしいというのは聞いたことがある。
言う事を聞く人間が有能。
そういう誤認をしているアホは昔からいたらしく。
シャドウが現れる前の企業では、実際何もできないくせに態度だけはでかく、上の人間に媚を売ることだけは一人前の「体育会系」と呼ばれる連中を重宝していたとかいう話も聞いている。
そういうのを重宝していた会社は、だいたい没落する一方だったそうだが。
今でも、そういうアホな経営者などの同類がいるというわけだ。
「私からも釘は刺しておきます。 これで同様の昇進辞令が通りづらくなるでしょう」
「ありがとうございます。 今の時代は特に、上層部が無能だとそれだけでシャドウの攻撃に耐えられなくなります」
「……ちなみに若狭の守りをどうみました。 私はあれを突破するのは無理だと判断しました」
「同感です。 超世王セイバージャッジメントは確かに英雄的な戦果を上げている守護神に等しい存在ですが、この規模の中型の群れをどうにかするには、後三機、それも畑中大佐が操縦している機体が必要だと思います」
本音で話すべきだ。
そう思ったので、ずばり言っておく。
そうすると、ナジャルータ博士も頷いていた。
「呉美中尉、貴方は是非生き残って出世してください。 多くの兵士達を生還させるには、貴方のような人が指揮官をしている必要があります。 そして今後は、畑中大佐のように、デチューン版ではない超世王セイバージャッジメントを操作できる一人として活躍してください」
基地で敬礼をすると、ナジャルータ博士は戻っていった。
色々と疲れたが、それでも話が分かる人で助かる。
宿舎でシャワーを浴びて、ベッドで横になっていると辞令が来ていた。
大尉に昇進だそうである。
別に嬉しくはなかった。
それと、畑中大佐が操作している最新型の超世王セイバージャッジメントではなく。デチューン版の正式パイロットとして採用されたとある。
まあ前にキャノンレオンを倒した事もあるし、それについては別に驚く事はない。
ただ今後は、更に厳しい戦いに繰り出されるだろうな。そう考えると、あまりぞっとしない話であるのも確かだった。
若狭の攻略は無理。
ナジャルータ博士が会議で実際に見てきたシャドウの配置を見て、結論する。そうすると、不満の声が複数の国の関係者から上がっていた。
「神戸にごく近い地域すら奪回できない状態では、今後の支援などする意味がないのではないのか!」
「そもそもあの超世王とかいうロボットには、国家予算規模の金が投じられているのだぞ!」
国家予算規模もなにも。
たかが五千万しかいない現在の人間が、何を抜かしているのかと。ナジャルータは苦笑したくなる。
ナジャルータは普段お人形さんみたいな容姿と良く言われるが。
元々性別が存在しない状態である事もあって、色々歪んでいる事を自覚している。
古くには宦官なども、普通の人間が持っている欲求が色々と歪んでいて、それで苦労したり。
或いは色々と心身に異常をきたしていたらしいが。
恐らくはそれに近い状態なのではないかと思う。
ナジャルータは容姿の無意味さを良く知っている。
ナジャルータがどちらかというと腹黒い人間であるなどとは、誰もこの場の人間は認識していない。
見かけで全てを判断する人間は実に多いという話はナジャルータも知っているが。
つまりそれは、古くの感覚で相手を決めつける人間の時代から、何も変わっていないということ。
人間は、一万年の歴史でまるで進歩などしていないということを意味していると言える。
「今の社会規模で、国家予算などと言っても虚しいだけです。 シャドウが本気になったら、人間なんて一月で滅ぶことは前々から何度も指摘しています。 一月ももたないかも知れませんね。 今するべきは、シャドウを知る事。 あらゆるシャドウとの戦闘データを取ることです。 それには若狭は不向きです。 GDFのエースパイロットであり、超世王セイバージャッジメントを最大限力を引き出せる畑中大佐は一人しかおらず、代わりは存在し得ません。 これは畑中博士がたびたび言っていますが、現場を視察している私からも断言しておきます」
「科学屋はすっこんでいろ! このオタクが!」
「いい加減にしたまえ。 そのオタクがいなければ、中型の一体すら未だに斃せていなかったのだぞ。 精神論でどうにか出来る相手だったら、シャドウに人間が此処まで撃ち減らされなかっただろう」
北米の大統領はそう言ってくれるが。
他の国は今や北米が昔ほどの影響力もない事もあって、不満そうにして押し黙るだけである。
いずれにしても、こいつらみたいなのはどうにかしないと、人間はこのまま負けるだろうな。
そうナジャルータは思ったが。
流石にそれについては此処では言わない。
ともかくあらゆる小型中型との戦闘データをとる。
今の世代の目標はそれだ。
最悪、人間の生存圏は拡げられなくてもいい。
シャドウが好戦的ではない今のうちに、シャドウのデータを可能な限り採る。
そして中型だったらどれにでも勝てるレベルにまで超世王セイバージャッジメントを強化する。
パイロットの寿命はどうしてもある。
これは最盛期の技量を保てる寿命、という意味だ。
畑中大佐は、毎回大けがをして貴重な中型撃破のデータを取ってくれている。その分、引退までの期間だって短くなるはずだ。
無理はさせられない。
それも分かっているが。
今のうちにシャドウに対して抵抗できる力を手に入れておかないと。
仮にシャドウとコミュニケーションを取る方法が見つかり。
和解が出来るようになったとしても。
そもそも交渉のテーブルに着くことが不可能だろう。そういう現実を、常に見なければならないのである。
「あー、すまないね。 幾つかの方面で部隊を派遣して、確認できた事がある」
天津原が言う。
無能な代表だが、この状況では助かる。
一応これでも代表だ。話は聞かなければならない。
「琵琶湖の東側に派遣していたスカウトが確認しているのだが、そちらでもウォールボアが確認されている」
「!」
「恐らくだが、日本海側から海を渡って来た個体だと思う。 朝鮮半島から渡海してきた中型達以外にもいたということだろう。 何しろ多くの海はいまや人間が入れる場所ではない。 監視も観測もできない範囲が多く、そこから中型が大陸からきていてもおかしくないし、今まで確認されなかっただけで、元々日本にいたのかも知れない」
これについては、ナジャルータは一足先に存在を聞かされていたのだが。
確かにまだまだ超世王につけるべき装備が多い事を考えると。一度に多数を相手にするのではなく。
まだ交戦経験がない中型を、少しずつ倒して実績と戦闘経験を積んでいく。
それが重要である事は確かだ。
「直線的な破壊を得意とするランスタートルともまた違う攻撃的な中型がウォールボアで、これとの戦闘で新しい兵器、なんだったかな畑中博士」
「シャイニングパイルバンカーです」
「そ、そうかね。 そのなんとかバンカーを試して、もしも倒す事が出来れば、更に中型種撃破のためのノウハウを蓄積できる。 出来ればグリーンモアとの戦闘経験も、どこかで個別に蓄積したい。 私としては、焦るのも分かるが、それが一番良いことだと思うがね」
確か新しく秘書官になった老人がいたが。
その入れ知恵だろう。
反論はなし。
確実に相手を削れるなら、それが一番だ。
説得力のある発言であるし、何より何処の国でも、今は広瀬ドクトリンにそった部隊の編成中。
ここでGDFの主力が全滅しては困るのである。
明らかに認識が甘い阿呆どももいるにはいるが。
今はそれらは、どうにか天津原などが抑えるしかないだろう。
「よし、では若狭侵攻作戦は一旦停止だ。 尾張方面への進行と、ウォールボア撃破作戦を策定してくれ。 濃尾平野を抑える事ができれば、またかなり楽になる。 あの辺りは交通の要所だ。 人間の手に戻れば、それだけ利潤も大きい。 ただ未だにスカウトを六に出せていないから、一度二度の攻撃でシャドウを全て倒せるかは怪しいだろうけれどね」
天津原が、頭の汗をハンカチで拭いながらいい、会議を締めた。
めいめい会議から離脱する中、明かな悪態が幾つも聞こえたが。
悪態をつきたいのはこっちの方だと、内心でナジャルータはぼやいていた。
いずれにしても、これで無謀な作戦は回避できた。ウォールボアとの戦闘経験があれば、もしも若狭への進行を強行決議されても、それでも勝率はあがる。
やることは全てやった。
ウォールボア以外の中型も出てくる可能性は高いが。
それでも、なんとか勝って貰うしかない。毎回、まだまだ綱渡りが続いているのだ。
畑中博士と、軽く話しておく。
そして、少しでも、それで勝率を上げる。
超世王がいずれ、アニメで出てくるような人型で喋るようなスーパーロボットになり、大型と一騎打ちして倒してくれる日が来るのか。それとも、あらかたの中型は倒せるようになり、シャドウの解析をしてそれで対話が出来る日が来るのか。
そう言った日が来ると信じて。ナジャルータは、出来る事をするだけだ。
ギリギリで間に合う戦略の方向転換。
ちなみにもしこのタイミングで若狭方面に無理に押し出していたら、全滅エンドでした。