スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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対超速走鳥&生きた壁戦開始です。

生きた壁のモンスターというと色々思い浮かびますが、本作でも結構厄介な相手です。

てか中型種は基本的にどいつもこいつも機甲師団一つをあっさり全滅させる力を持っています。

こいつもそれは代わりません。






3、突貫する壁と打ち砕く杭

訓練が終わった。とりあえず、どうにか使いこなせるようになった。

 

若狭への無茶な侵攻作戦が中止になったと聞いて、菜々美はほっと一息をついていた。あれが強行されていたら、第二師団どころか、広瀬大将麾下の部隊はあらかた全滅していただろう。

 

少し前に、正式に准将に昇進した。

 

相変わらず特務がつくので、よく分からない役職だが。将軍閣下の面倒な業務がないので、後は行動のグリーンライトが貰えれば言う事はない。

 

広瀬大将が理解のある人間で助かる。

 

琵琶湖東岸はいままで完全に未踏の土地であり、此処から更に東に行くと濃尾平野に出る。

 

交通の要所であり、此処を抑える事ができれば更に状況は良くなるというが。

 

東日本には既に人間は一人もおらず。

 

開発は再度一からやりなおしになるだろう。それがとにかく、非常に骨であるし。シャドウが環境を回復させたのは明白な今。

 

下手に手を入れていいのかどうかも不安になる。

 

ともかく、今はやるべき事をやるだけだ。

 

今回の作戦では、第二師団が前衛に、第一師団、第三師団が後方を守っている。第四師団は基本的に新兵の育成部隊兼予備兵力と言う事もある。今回の作戦では出て来ていない。それに、である。

 

以前ブライトイーグルとの戦闘で記録的な被害を出した事もある。

 

三個師団だろうが、四個師団だろうが。

 

複数種類の中型が相手になると、それだけで被害は加速度的に増える傾向がある。

 

超世王がかなり力をつけてきた今でも、それは事実としてまったく代わらない。

 

ますます異形になって来ている超世王に続いて。デチューンモデルが三機来ている。斬魔剣を投げるタイプの奴。

 

ビームを撃つ奴。

 

それと、斬魔剣を振るう事が出来る奴だ。

 

今回はとにかくスカウトが危険すぎて踏み入れない地域を狙う事もあって、なんの中型が出てくるか分からない。

 

このため、その中でも最悪のブライトイーグル対策として、ビームを撃てるタイプの超世王が出て来ている。

 

これも改良が行われているのだが。

 

改良した超世王をシミュレーターで仕上げたのは菜々美だ。

 

疲れ気味だが。とにかくやるしかない。

 

三機も随伴してきているのだし。特にビームはあの呉美大尉(こっちも昇進したようである)が乗ってくれている。

 

だとしたら、ブライトイーグルが出ても対応は出来るだろう。

 

同じ飛翔種でも、サンダーフィッシュが出た場合はちょっとどうすればいいのか。菜々美も分からないが。

 

それについては、撤退が正解かも知れない。

 

サンダーフィッシュはまだ姉が対策を考えている途中らしい。

 

幸いあっちはブライトイーグルほど無法な広域制圧力がない事もあって、超世王で気を引けば大半の部隊は逃げられるだろう。

 

部隊とともに前進する。

 

程なく、連絡が入り始める。

 

「小型多数! ブラックウルフを中心に、数千はいます!」

 

「第一、第三師団にも前進を指示。 密集隊形を敷きます」

 

「ウォールボア確認! 小型種の中で寝そべっているのを確認!」

 

「そのまま陣形を整えてください。 各狙撃大隊は、戦闘準備!」

 

広瀬大将の指示が飛ぶ。

 

主戦場は濃尾の入口になりそうだな。関ヶ原よりもちょっと入った所辺りだ。

 

この辺りまでは、スカウトが進出出来ていたのだが。これ以上はとてもではないが、危険すぎて踏み込めないと聞いていた。

 

いずれにしても、今回は規模が大きな戦いになる。

 

今回の装備は、なんとかパイルバンカーをウォールボアに試すのはそうとして、対小型用に斬魔剣も持ってきている。

 

これらの装備をつけているため、超世王は40式を二両横に並べたような異形になっている上に。

 

例の姉が持ち出した切り札になる装甲を試験的に装備している事もある。

 

この装甲は、一点突破型の攻撃だったら、どんなものでも一回は防げる。そういう説明は受けた。

 

一度攻撃を受けた場合、その攻撃の内容が重すぎると、例の石ではなくて周囲が爆発して砕けてしまうのだ。

 

つまり装甲がなくなるのと同じ。

 

だから切り札として、ピンポイント攻撃相手に数回、下手すると一回だけ使えると考えて欲しい。

 

そう言われていた。

 

設置面積が大きいため、100トンにも達する石を積んでいながら、どうにか動ける。この新型超世王ボディには、今までとは違う動力がパワーパックとして積まれている事もあって、どうにかこれを動かせる。

 

ただ速力は若干落ちる。

 

小回りも少し悪くなる。

 

その内、超世王のボディとして、40式を四両連結するものを姉は考えているらしいが。

 

ますます人型ロボットとは形状が離れていく。

 

まあそれでも、中型を斃せるならそれでいい。

 

さて、此処からだ。

 

陣形を整えたところで、広瀬大将が攻撃指示。指定された部隊が、小型に対して螺旋穿孔砲で攻撃を開始する。

 

徹底的に兵士達に広瀬ドクトリンが叩き込まれ、更には螺旋穿孔砲の装備率が更に上がっている事もある。

 

小型シャドウ百体以上が瞬時に吹き飛び、それで鬱陶しそうに小型が動き出す。

 

一度に全部が動き出していたら手に負えなかっただろう。しかしながら、全てが動き出した訳では無い。

 

それにたいし、此方は全軍が一斉に後退を開始。

 

追ってきた小型を、引き撃ちで始末し始める。

 

これについても、名人芸で相互接触などを避けるようにはしているが。これはブライトイーグルが現れた場合対策である。

 

あれが出現した結果、常に戦場の電子機器が壊滅するような事態が何度となく発生しており。

 

今では、相互リンクシステムなどに頼らない名人芸が意味を為すようになってきている。

 

追いすがって来る小型を、突き放すようにして射撃で薙ぎ払う。

 

まだまだウォールボアは動かないが。

 

其処で、急報が入っていた。

 

「中型出現! おそらくグリーンモアです!」

 

「来たか」

 

思わず菜々美はぼやいていた。

 

グリーンモアとキャノンレオンは、今回出現の確率が最も高いと見なされていた中型である。

 

そして今の時点では出現していないが、ブライトイーグルも出現する可能性が高い。今回、超世王は対応できる装備を持って来ている。

 

グリーンモアはスプライトタイガー以上の速度を持つ。見かけは名前の通りモア……走鳥の一種だが、それに似ている。二本足で高速走行を行い、走行速度は巡航ですら時速900㎞に達する。

 

スプライトタイガーが巡航速度500㎞程度であったが、その気になれば音速を出した事を確認出来ている以上。

 

下手をすると此奴はライフル弾より早く動く事を想定しなければならないかもしれない。

 

こいつは基本的に長く伸びた首を用いて、頭上から突き刺してくる戦術を用いてくる。首というか嘴というか。それらは一体化していて、上から突き出される一撃は文字通り必殺。

 

40戦車がそのまま串刺しにされるレベルである。

 

他の中型種と同じく十数mのサイズがある上に、此奴は背丈が高いこともあって、ビルなどに隠れた人間を容赦なく突き殺して来た。

 

それも食べる訳ではなく、ただ嘴で無慈悲に刺し貫くというおぞましさで。それもあって避難民殺しの悪名で知られている。

 

ただ戦闘に関しては未知数な点が多い。

 

ビルを覗いてきたグリーンモアにロケットランチャーを叩き込んだ兵士が、その場で全く無傷だったグリーンモアに突き殺された映像が有名だが。

 

此奴はスプライトタイガーやキャノンレオンのような軍殺しとしての動きはあまりせず、戦闘でも積極的に軍隊を相手に戦いに来た記録がない。

 

ただ今回は、グリーンモアは超世王にまっすぐ突っ込んできている。

 

それも考えると、はっきり言ってあまり良い状態ではないのだが。

 

菜々美は前に出る。

 

対応できる装備があるのだから当然だ。

 

グリーンモアの様子を後ろでウォールボアが見ている。

 

これは攻撃手段を学習していると見て良いだろう。

 

「グリーンモア加速! 音速を超えました! 更に加速していきます!」

 

「地上がズタズタにならないのは何故だ!」

 

「分かりませんが、ソニックブームをコントロールしているのだと思われます!」

 

「解析を進めてください」

 

オペレーターの焦った声に、ナジャルータ博士の冷静な声が返す。同時に、焦り散らかしていた軍司令部の誰かの声も黙った。

 

押し寄せる小型に各部隊は集中しており、グリーンモアは相手にしなくていいと菜々美は告げている。

 

兵士達も、中型殺しとして知られる超世王の事はもう知っていて、ひたすら対小型に集中してくれている。

 

それでいい。

 

味方からの支援。

 

超世王のビーム搭載型が、グリーンモアにビームを狙って放つ。例の粒子加速器と真空の内部を持つケーブルを投擲するものだが。グリーンモアは文字通り跳躍してそれを回避。超音速で走りながら、凄まじいジグザグでの機動を見せ、その上跳ぶか。

 

これはますますソニックブームをコントロール出来るのだと判断して良さそうだ。

 

イエローサーペントもソニックブームのコントロールが出来たし、スプライトタイガーも超音速で動いていたのだから、シャドウには当たり前に備わっている機能なのかも知れない。いずれにしても、厄介な事この上ない。

 

来た。

 

着地と同時に、更に加速して来る。

 

菜々美はレバーを引いて、車体を旋回させる。

 

狙撃班が近場に迫っているブラックウルフを全て始末してくれているので、それは信用する。

 

複雑なロボットアームが閃き。

 

まずは一閃。

 

グリーンモアに横殴りに叩き付けられた斬魔剣だが、それを余裕で跳躍して回避する魔の鳥。

 

更に羽を広げると、ふわっと浮き上がり、遠くに着地。

 

そしてバックステップしつつ、此方に迫ってくる。首を伸ばして、突き刺しに来たが。その時、以前スプライトタイガー対策で使ったサイドアームを振り下ろす。警戒したグリーンモアが首を引っ込め、サイドステップ。更に数度サイドステップ。此方の動きを見ながら、確実に殺す機会を狙っている。

 

それにしても凄まじい動きだ。

 

CIWSのシステムが確実に追ってくれてはいるが、菜々美の視力では追うどころではない。

 

仕掛けて来る。

 

即応して、斬魔剣を振るうが、なんと翼を拡げて盾にしてきた。

 

発止と受け止めて、それで弾き返して来る。熱攻撃も、長時間当てないと意味がない。グリーンモアの場合、翼は盾としても機能しているのか。ただ一瞬の防御で、斬魔剣が危険と判断したのか、飛びさがる。

 

着弾。

 

グリーンモアの至近に、投擲型の斬魔剣が突き刺さる。

 

グリーンモアは飛びさがると、いきなり高速で距離を取り始める。此方の手札だけ見に来たのか。

 

まあ、手札はまだあるのだが。

 

いずれにしても、グリーンモアが後退していく。

 

グリーンモアはどうやら前後が存在しないらしく、足も回転させる事ができるようである。

 

それもあって、そのまま凄まじい勢いで最初とは逆向きに走っていく。

 

オペレーターが叫ぶ。

 

「グリーンモア離脱!」

 

「全部隊、小型の駆逐に集中」

 

「あ、これは……! 若狭方面から敵増援! 小型ばかりですが、かなりの数です!」

 

「第一、第三師団、連携して火力投射を開始。 食い止めてください」

 

敵が戦術的行動を取るのは今に始まった事ではない。冷静に各部隊が動く。広瀬大将が、菜々美に連絡を入れてきた。

 

イヤホンで聞こえてきている。そのまま応じる。

 

「畑中准将、問題はありませんか」

 

「機体ダメージ、許容範囲内です。 ただ敵中型が一撃離脱して離れるのは初めての事ですが」

 

「威力偵察だったのかも知れません。 今までかなりの数の中型が超世王に倒されています。 それもあって、ある程度力を見ておこうと考えたのであれば、不可解な事はないかと思います」

 

まあ、それは確かにそうだ。

 

ただ威力偵察なんて事を、シャドウも行うとは。本当に人間の手の内を知り尽くしているのだなと感心させられる。

 

無言でそのまま工兵隊が来て、超世王の整備を始めるのを任せる。

 

最前線であり、しかもいつ中型が攻勢に出て来てもおかしくない。だが工兵は勇敢で、確実に調整を続けてくれている。

 

「機体ダメージ、修復完了まであと少し!」

 

「ブラックウルフ多数! 超世王に接近!」

 

「二個狙撃大隊、前進してください。 クロスファイヤで仕留めてください」

 

「イエッサ!」

 

流石に熱狂的な兵士達によるイエスガデスは止めてくれと言われたのだろう。最近は聞かなくなった。

 

菜々美は無言で目を閉じて、工兵達を信じる。

 

程なく調整が終わり、工兵達が下がりはじめる。其処に飛びかかってきたブラックウルフを、斬魔剣で一刀両断。

 

小型ならこの通りだ。

 

そのまま前進を開始。

 

広瀬大将から、前進してくれと言われた。つまり、本命であるウォールボアを仕留める時だということだ。

 

戦況図を見ると、味方は良くやっている。

 

広瀬ドクトリンを全域で展開して、良くシャドウを防いでいる。それに、いつ中型が現れても対応できるように、出来るだけ部隊を突出もさせていない。超世王を中型が狙って来る事は周知。

 

それでも超世王から離れるような士気が低い兵士もいない。

 

ウォールボアの周囲の小型が、充分に減ってきた。

 

まだ増援が現れる可能性はあるが、それでも確かに好機だ。前進する。同時に、五月蠅そうにウォールボアが立ち上がる。

 

恐らく、斃せるという判断をしたのだろう。

 

奇遇だ。

 

それは此方もである。

 

頭が壁になっているウォールボアが、凄まじい勢いで空に向けて雄叫びを上げた。雄叫びなのだろうか。

 

そもそも口がある訳でもない。

 

中型は生物に似た姿をしている者が多いが、そもそも何か補食することもないので、攻撃用の器官として口を利用している事が多い。ブラックウルフなんかはその典型例と見て良いだろう。

 

あれは、何かしらの意味がある音であり。

 

攻撃の合図とは限らない。

 

そして、突貫を開始するウォールボア。

 

ウォールボアの前面装甲は凄まじい厚さがある。他のシャドウもそうだが、基本的に近代兵器なんぞシャドウの前には無力に等しいのだが。此奴のあの前面装甲、何かしら意味があるとしか思えない。

 

事前に指定されていたとおり、斬魔剣投擲型を投射。

 

相手の速度は時速500㎞ほどか。かなりの速度だが。直線で、だ。正直他の機動戦をするタイプの中型と比べるとそこまでの脅威ではない。だが、斬魔剣が綺麗に当たったのに、完全に弾かれる。

 

予想通りか。

 

画像を拡大。

 

「ダメージ無し! あの装甲板は、熱攻撃に極めて高い耐性を持つ模様!」

 

「予想通り、と」

 

オペレーターの言葉に呟く。

 

菜々美は即座に装備を準備する。

 

大がかりになって来ている超世王だが、操作についてはずっとシミュレーションマシンでやってきた。

 

姉も調整して、ロールアウトした時にはシミュレーションマシンと完璧に同じように動くよう仕上げてくれている。

 

とにかくこいつは直線的に突っ込んでくるのだが、それは今まで回避する必要がある攻撃にすら遭遇しなかったからだと判断して良い。

 

今の斬魔剣への対応でそれがよく分かった。

 

相手に向き直ると、地面にバンカーを叩き込む。

 

以前ランスタートル戦で使ったのと同じタイプのバンカーだが、これは地中で更にフックを展開するため、更に強度が上がっている。

 

そして、今回は以前使った何とかナックルとは、違う方向性の武器を用いる。

 

突撃してくるウォールボアは、真っ正面から来る。

 

こっちが何かしらをしてくると、分かった上で仕掛けて来ていると見て良い。さっきのグリーンモアとは真逆だが。

 

あれは何かしらの狙いがあったのかも知れない。

 

カウントダウンが入る。邪魔なブラックウルフが突入してきたので、そのまま邪魔と斬魔剣で切り払う。

 

そして、装備を展開。

 

壁である。

 

以前ランスタートルに使ったのと同じもの。ただし前は四重だったのにたいして、今回は一枚だけ。

 

それを見て、更に速度を上げるウォールボア。

 

小細工を潰して打ち抜けると判断したのだろう。

 

だが、少し展開は違った。

 

壁にウォールボアが、突入しない。直前で壁が左右に分かれると、まんま挟みのように変形して、そのまま切り裂きに来る。

 

この変形は予想していなかった。

 

だが。

 

即座に今回の装備。

 

なんとかパイルバンカーを展開。それは四つの巨大なロボットアームによって、まずは真上からウォールボアを抑え込む。

 

抑え込むと同時に、挟みが閉じられる。それで、壁が一瞬で真っ二つにされたが。しかし、だ。

 

今回の切り札として用意していた超圧縮物質の盾。

 

それが、ギリギリと、刃を支えてくれている。

 

流石の中型シャドウの刃も、これを即時に真っ二つとはいかないようである。舌なめずりして、更にギミックを進める。ウォールボアが身じろぎして、ロボットアームを外そうとしているが。

 

これがもちさえすればいい。

 

上から持ち上げられたのは、注射器みたいなもの。

 

これがなんとかパイルバンカーだ。

 

実際のパイルバンカーは、工事現場で杭を地面に打ち込んでいるあれのことである。ロボットアニメでのパイルバンカーは、近距離から敵に叩き込む一種の浪漫砲である。

 

だが、このパイルバンカーは。

 

まんま注射器の形をしていて、機能としてもそれに近い。相手の背中から、高出力プラズマをそのまま流し込むのである。

 

つまり注射器は、まんまプラズマ精製機なのだ。

 

射出。

 

高出力のプラズマが、そのままウォールボアにぶっかけられる。ウォールボアは凄まじい鳴き声を上げると、挟みを瞬時にドリルみたいな形状に切り替えてきた。そして、それを伸ばして貫きに来る。

 

させるか。

 

即座に超圧縮物質を移動させて、それで防ぐ。一撃は防ぐが、即座にアラートが入る。ウォールボアの前面の盾、これは武器にもなり。むしろこれが主武器なのだろう。超圧縮物質を支えているギミックが、負荷に悲鳴を上げている。

 

激しくもがいているウォールボアが、暴れながらドリルを激しく前面装甲に叩き込もうとする。

 

その度に火花が散り。

 

恐ろしい音と共に、ギミックが破損する。

 

見る間にイエローゾーンを超えて、レッドゾーンに達しつつある。他の超世王には手出し無用を指示してある。

 

他の中型が現れた場合に対応してもらう必要があるからだ。

 

機体が激しく揺動する。

 

ウォールボアが四つ足を踏ん張って、ロボットアームを引きはがそうとしたからだ。勿論それでもどうにか出来るように設計はしているが、激しい揺れにシートに体が叩き付けられる。

 

相変わらずだなこれだけは。

 

100tを軽く超える機体が揺らされるのだ。ロボットアームは長く保たない。とにかく高出力プラズマが急いで効いてくれることを祈るしかない。凄まじい悲鳴も、耳に直にダメージを与えてくる。

 

不意にドリルがツルハシになると、機体の上に伸びて、ガツンと貫きに来た。面白い事が出来るんだな。感心している場合ではない。

 

菜々美の首筋の至近を掠めていた。

 

此処まで超圧縮物質は動かせないのだ。

 

あわててシートベルトを外し、身をそらす。一瞬遅れていたら、今度は頭を貫かれていた。

 

激しくまた機体が揺らされる。シートベルトを外したばかりだから、体が思い切り内部の構造体に叩き付けられる。

 

ぐっと呻く。即座にまたツルハシが来る。

 

ロボットアームを破壊しようという発想がないのが救いだが。それは暴れる事で壊せると判断しているのかも知れない。

 

ウォールボアが四つ足を突っ張って、跳ねようとして。

 

それを抑え込んだ機体が、猛烈な衝撃で揺れた。腰を思い切り打ったので、ぐっと呻く。こればっかりはどうしようもない。

 

またツルハシが、天井を貫いて殺しに来る。

 

肩を抉られた。

 

凄まじい熱さで、思わず意識が飛びかける。また火傷か。だが、奴も体を大きく熱で抉られていて、動きが鈍っている。

 

あと少しだ。

 

必死にレバーを操作するが、右肩の先……右手が動きにくい。これは下手をすると義手かと思いながら、必死に操作。

 

更に一撃、ツルハシが突っ込まれた。

 

今度は頸動脈の至近を掠めた。だが、肩には突き刺さらなかった。恐らくだが、それが最後の頑張りだったのだ。

 

まるで触手のようにウォールボアの壁が形状を変え続けている。悲鳴は絶えず、ずっと続いていた。

 

やがて、一際鋭い声が響き渡ると同時に、ウォールボアがかき消える。

 

倒した。

 

荒く呼吸をしながら、上を見る。

 

奴にたくさん開けられた穴が、赤熱している。これは刺さったら、そら無事ではすまないな。

 

そう実感して、苦笑いしか浮かばなかった。

 

とにかく赤熱したものが溶けて落ちてでも来たら致命傷になりかねない。ハッチを開けられない事もある。

 

すぐに救援要請を出す。

 

同時に、コックピット内で身を寄せて、痛みに耐える。

 

すぐに工兵が来てくれたが、まだ中型が来る可能性もある。痛みは激烈だが、我慢はしなくてはいけない。

 

「敵小型、引いていきます!」

 

「手応えがありませんね。 警戒を継続。 戦闘が収束し次第、一旦退却します。 撃破例が無い中型を斃せただけで、可とします」

 

広瀬大将の声が掛かる。

 

実際問題、小型の凄まじい数から考えて、このまま押すのは不可能だろうと菜々美も思う。

 

しばしして、姉から連絡が来て、緊急用の脱出装置について説明される。流石に菜々美も全部マニュアルを頭に入れているわけではない。通常の40式の脱出装置については知っているが、これだけ色々と魔改造されていると、それも使えないのである。

 

脱出装置といっても、ボタン一つで外に放り出されるような便利なものはない。

 

複雑な操作を経て、側面を開けるのだ。

 

肩の痛みは鈍痛に近いレベルだが、それでもどうにかやる。必死に側面装甲を開けると、救急車が既に来ていた。

 

工兵は無駄になっていない。

 

かなりのダメージを受けた超世王の部品の回収に切り替えていた。それでいい。コアブロックは無事だから、それを確実に姉と相談しながら回収して欲しい。そう告げると、イエッサと意気高く返事もしてくれた。

 

救急車で手当てを受ける。

 

やはり状態はあまり良くないらしい。

 

超高熱で今までシャドウを倒して来たが、こっちが超高熱を受けるとこんな感じなんだなと、そう思う。

 

即座に手術と言われた。

 

腕は残るかと聞くと、五分五分と言われる。ダメージが骨に及んでいる。クローン技術で骨などの細胞を作り出し、それを埋め込む事になるだろうが。いずれにしても通常より脆くなり、更には定着までに時間も掛かると言う。筋肉なども同じような処置をするため、最低でも二ヶ月は病院にいなければならないそうである。

 

「また無茶をなさいましたな」

 

「それくらいしないと斃せないのが中型です」

 

「それは分かります。 私の両親も兄弟もシャドウに殺され、どこの国の軍も手も足も出ませんでしたから。 しかし、こんな怪我をするような装備ではなく、もっとマシなものは造れないのですか」

 

「相手は想像を超える能力を持っています。 いつも此方の想定の上を行きます。 だから、姉の事は悪くはいわないでください」

 

姉の事は菜々美もあまり良くは思っていないが。

 

それでも、そういう明確な批判をされると頭に来るのは不思議だ。

 

医師はそれ以上は何も言わなかった。

 

ただ、リハビリなどは厳しく指導するというのだった。

 

それは覚悟の上だ。

 

腕は残るように死力を尽くすと言ってくれたのだ。シャドウと戦って、その程度で済むのなら御の字なのである。

 

だから、何も文句は言えないことは、菜々美も分かっているのだった。

 

 

 

戦闘のデータを確認したナジャルータ博士は、畑中博士のところに出向く。

 

畑中博士は凄まじい勢いでキーボードを叩いており、挨拶しても何も言わない。猫背で凄まじい入力をしているのは。

 

今回ウォールボアが見せた可変能力対策について、考えていると見て良いだろう。

 

ナジャルータも、データが少ない相手とは言え。

 

まさか壁をあんな風に活用するとは、想定外だった。

 

超世王が受けたダメージは、洒落にならないものだった。貴重な高圧縮物質も無傷ではないし。

 

それを基点とした防御システムも破綻寸前。

 

下手をすると、全体が崩壊していたかも知れない。

 

ナジャルータも、見ていてそれは理解できた。

 

それにしてもシャドウの厄介極まりない事よ。本当に生物ではないのだろう。想像を超える事ばかりしてくる。

 

魔王が相手になると、更にとんでもない力を持っている可能性が高い。

 

そう思うと、本当にシャドウと渡り合えるのかと、不安にすらなってくるのが実情である。

 

軽く話す。

 

畑中博士は、これだけ激しく入力作業をしていても、マルチタスクでナジャルータと話してくれる。

 

その内容についても、的確だった。

 

「今回の戦闘で気になったのはグリーンモアの動きね。 あれは完全に威力偵察だった。 それも生きたまま戻られた。 ひょっとすると、かなり厄介な事になるかも知れないわよ」

 

「ええ。 シャドウは知能を持っており、情報伝達もそれぞれしています。 種別に争うこともないようですし、強烈な相互連絡能力を持っています。 今後、更に上の上を行く力を見せてくるかも知れません」

 

「……ウォールボアにしても、実はグリーンモアのために情報を集めるだけに倒れたのかも」

 

「可能性はあります。 生物ではないとしても、真社会性をもつ蟻のような生態を持っているのだとしたら」

 

今後は更に戦いが厳しくなる。

 

それは容易に分かってしまう。

 

実際問題、今回の戦闘では、戦線を押し上げられなかった。相当数の小型を斃せたが、少なくとも二ヶ月は畑中准将は動けない。

 

そうなると、今後はしばらく超世王セイバージャッジメントのブラッシュアップに徹するしかないだろう。

 

現在でも戦闘力はまったく足りていない状態だ。

 

中型複数を同時に相手にするのは非常に厳しいし。

 

戦場に現れた場合、対応が難しい中型もいる。それらに対しても、対応できるようにしていかなければならない。

 

ゲームなどでは特化型のキャラクターが強かったりするが。

 

シャドウとの戦いの場合、いつ何が現れるか分からないし、それぞれが極めて特化した戦闘スタイルを持っている。

 

そのため、特化型の兵種では厳しいのだ。

 

いずれは歩兵で中型を斃せる時代が来ると嬉しいのだが。

 

現状では厳しいと言わざるを得ないだろう。

 

「此方でも研究はします。 畑中博士は大将待遇になったと聞きます。 無能なお偉方を抑える事は前より容易な筈です。 お願いします」

 

「そうねえ。 プレゼンを頻繁にやる事で分からせようかしら」

 

「それは、効果的かと思います」

 

「うふふ」

 

それはナジャルータにもダメージが入るのだが。

 

まあ、仕方が無いか。

 

とにかく打ち合わせを終えると、畑中博士の工場を出る。お土産に三池さんの持たせてくれたシュークリームを持ち帰ったが。

 

これがとてもおいしかったので驚かされたのだった。








ここに来ての意外な伏兵。

ただの足が速いだけの相手と思われたグリーンモアが、想像以上のくせ者だった事が判明します。

そして予想通りの強敵だったウォールベア。

負担はただただ増える。

どれだけ超世王セイバージャッジメントが強化されても、追いつきません……




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