スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
どうやらセイバージャッジメントによる中型の撃破を良く思わなくなったらしいシャドウ。
そもそもシャドウが本気であったら、25年前にとっくに人類は滅びています。
しかもセイバージャッジメントが倒した中型なんて微々たる数。小型に関しても、奪還した土地に関してもそれは同じです。
シャドウが何を目論んでいるかさえ分からない。
それが現在の人間の状態なのです。
だから対処療法しか手段が無いのです。
序、増援につぐ増援
濃尾平野は監視に努める事に注力。今後は中国、九州への安全圏確保を狙う。東日本には現在生存者はいない。それが分かっているから、後回しでいい。
森林資源、水資源にもすぐれ。
シャドウが元に戻したのであれば、金なども取れる日本だが。
鉱物資源には限界がある。
鉱物資源も取れなくはないのだが、それも量が多くは無いのだ。宝石などはあらゆる種類が取れるという話はあるが。
今の時代、嗜好品なんぞ持っていても意味がない。
シャドウが元に戻した環境を荒らすのも推奨されない。
シャドウは本気で攻めてきていないだけ。
まだ相手の出方を窺いながら、中型の撃破事例を積み上げていくしかない。それが今、出来る唯一の事。
人間は何の優位も確保できていないのだ。
今日も偵察班が良くない報告を持ち帰ってきている。
九州に大部隊あり。
シャドウはまた渡海して戦力を送ってきているらしい。
そもそもシャドウがどうやって生じるかさえも分かっていない。
別の世界から来たと言う説もあるが。
その場合、その別世界から無尽蔵に増援を呼び込める可能性がある。
それを示すように、九州特に北部では、相当数の中型がまとまっているのが確認されている。
北九州にある唯一の拠点である出島だが、其処の兵士達は怯えきってしまっている。
「キャノンレオン、ストライプタイガー、ランスタートル、ブライトイーグル、中型はそれぞれ複数確認されています。 それだけではなく、小型は以前の五倍は確認されています。 この状態では、九州、特に北部に進むのは文字通り自殺行為でしょうね」
「他の地点は手薄になっていないのかね」
「なっていません。 これまで進ませてやったのだから感謝しろとでもいわんばかりに、シャドウは陣容を厚くしています」
諜報部隊として、新しく稗田少将という人物が抜擢されている。
この人物は広瀬大将と同年代だが、より新生病が酷く、痩せこけているし、いつも咳をしている。
それでいながら事務屋としての能力は極めて優秀で、広瀬大将の影で目立たないが、確実に偵察任務の結果をまとめてきていた。
それもあって、今回独自の部隊が編成され。
一個連隊規模の戦力が、全てスカウトで構成されている。
なお当然だが、戦闘力はないに等しい。
ジープや軍用バイクが多数支給されていて機動力はあるが、基本は護衛の部隊とともに行動する事になる。
ジープにしても軍用バイクにしても。
シャドウに追われたら逃げ切れないからである。
稗田少将が説明をするが、中国地方は前と比べて大してシャドウの数が増えていないようであり。
西進すれば姫路辺りまでは奪還できる可能性があるそうだ。
ちなみに姫路城は既にクリーナーに溶かされて失われている。
「しかしそれらで安全圏を拡げたところで、どれほどの意味があるのか……」
「ともかく、今は戦闘経験を積みながら、敵の数を減らすしかありません。 ただ気になるのは、一箇所だけ露骨に守りが薄いことですね」
「罠だというのかね」
「可能性はあります。 シャドウは高度な戦略的機動を行いますので」
広瀬大将が説明すると、流石に高官達も感情的な反論を避ける。
前回の戦闘でも勝利はしているのだ。
悔しいが一定の能力を認めなければならないというところか。
それに、新しい例の秘書官が出て来てから、キーキー喚くだけの無能な高官は肩身が狭くなっている。
そういう意味で、広瀬大将はやりやすそうではあった。
「現状で、まずやれるべきことをやるべきでしょう。 国力を強化し、兵士達には交代で休暇を取らせ、技術力の増強を狙う。 今まで交戦した中型との戦闘データをより深く分析し、今後の備えにする。 ただでさえ畑中准将は動けない状況です。 後続の人材を発掘する作業も必要です」
「悠長な事を言ってくれるな……」
「我々は25年まったのだ」
北米の代表が言う。
苦しい中でようやく一個師団相当の兵力を準備したばかりである。相当に懐の事情が厳しいだろう。
昔は文句なしに世界最強であり。
北米だけで他の全世界に勝てるとまで言われていた時代もあったのだが。
今ではそれも、見る影もない程衰えてしまっている。
それでもGDFの基礎となった部隊や技術は、最大のノウハウを蓄積した北米の軍が捻出したのだ。
それに対しては、一定の敬意を軍関係者であるほど払っていると言える。
「では、しばらくは休養と言う事でいいのだね」
「隙があると判断したら小規模な作戦は行うべきです。 ですが、四国奪回作戦のような大規模作戦を実行するのは当面は避けた方が良いでしょう。 各地で部隊の編成や、人口の回復にも努めてください。 クローンの技術についても、専門家は進歩に血道を注いでください」
そう広瀬大将が言うと。
日本のシャドウが極めて強力な布陣をしている事に対して、流石にコレに仕掛けろと言えないのか。
各国の無能なお偉方も黙るしかないのだった。
会議が終わる。
会議の様子を病室でずっと見ていた畑中菜々美准将は、ため息をつく。この様子だと、次は中国か九州南部か。
鹿児島にいる一万五千人は、なんだかんだでまだまだ重要な他国との窓口だ。
北九州に大量の中型が現れた事で、どうしてか廃棄されてそのままにされている呉へのアクセスが怪しくなった。
彼処には幾らかの軍需物資があったこともあり、隙があるときに少しずつ回収していたのだが。
今後はそれも難しくなるだろう。
出島の部隊は撤退を何度も具申してきているようだが。
目の前を中型含むシャドウの大部隊が何度も通行していったら、それは怖れるのも仕方が無い。
肩が痛い、
三回手術をやって、やっと見た目だけは元に戻ったが。骨やら筋肉やらをクローンで培養して移植したのだ。
そんな事をやって、楽に済むはずが無い。
今でもいたいし、定着しても定期的にこれこれこういうリハビリをしろと言われている状況である。
はっきり言って、何一つ嬉しくない。
医療が発展しても万能はないのだ。
菜々美のクローンも育てられているらしいが。同じ能力を持つ可能性は極めて低いだろう。
そう、世の中甘くはないのである。
無言で差し入れされた菓子を食べる。食べやすいようにと栄養をまとめたブロック状の菓子を貰ったのだが。医師はあまりいい顔をしなかった。
まあ病院食については、特に塩分を抑えるとかそういう指定もないようで、それなりに味がするのが出てくるのでありがたい。
黙々と食事をして、それで体を治す。
退院まであと一月。
退院した後も、しばらくは動けないだろう。
姉から連絡が入る。
ウォールボア対策の装備を、更に改善したという。
なんとかパイルバンカーは確かに強力だったが、あのウォールボアの凶悪な変形能力は流石に姉も想定外だった。
あれは仕方が無い。
菜々美も、あんなのありかとぼやきたくなったし。
例の超密度石による防御がなかったら、瞬く間に超世王は真っ二つ……菜々美ごと……にされていただろう。
そういう意味でも、いま生きているだけで充分。
また、グリーンモア対策も進めているという。
今までノーマークだったグリーンモアだが、想像以上に厄介な中型だと言う事が、前回の戦闘ではっきりした。
次は仕留めたい。
あれは明らかに此方の事を狙っていた。
観察していた。
次逃がすと、何をしでかしてくるか分からない。
ただでさえ、シャドウがどうやら被害を見逃せなくなったと判断して来たらしい状況である。
姉は複数のシャドウを捌けるように超世王を改良すると息巻いていたが。実際問題、すぐにそれが実戦投入できるかは別問題だ。
そういう事もあって、菜々美が頑張らなければならない。
まずは退院まで、大まじめに治療を受けることだけだ。出来るのは。
数日治療を受けて、それで何度か痛い思いをして。
それで右腕がある程度動くようになってきたが、パワーそのものは以前より落ちる。これは医師にはっきり言われた。
最悪右腕を切りおとさなければならなかった。
そういう話である。
右腕があるだけマシ。
そう考えなければならないのだろうと言う事は、菜々美も分かる。実際広瀬大将だって、戦傷で片腕を失っているのだ。
今後右腕の弱体化対策として、一種のパワードスーツをつけるのだという。これは右側にだけつける筋力補助具で、姉が作ってくれるらしいので、まあ信用はしていいだろう。
それにしても、どんどん全身がぼろぼろになっていくな。
別に自分のルックスなんてどうでもいいので、ぼろぼろになることに対して嫌悪感はないのだが。
それでも、寿命が削られることに関しては思う事もある。
長生きしたいとは思わないが。
それでも、シャドウに追われて、命を削りながら生きていた人達は幾らでも見ているのである。
それがどれだけ悲惨な生活であるかも。
それを思うと、色々と考えさせられてしまうのだった。
呉美中尉、いや大尉からメールが来る。
何となく仲良くなったのだが、時々やりとりをしているのだ。超世王のデチューンモデルをかなり良く扱っている事からも、上層部は菜々美のスペアとして期待しているらしい。
菜々美からすれば、スペアなんかでなくて、もう一人超世王を扱えるパイロットがいれば良いのでは無いかと思うので。
呉美大尉が順調に技量を伸ばして出世してくれるのは大歓迎だが。
周囲が政治的な事に利用して、余計な事をしなければいいのにと、どうしても思ってしまう。
メールの内容は、訓練についてだ。
姉が調整したシミュレーションマシンに乗っているそうだが、やはり相当に難しいとぼやいている。
まあそうだろう。
菜々美も毎回苦労させられている。
非常に癖が強い、前例もない兵器を操作するためのシミュレーションだ。それは苦労するのも当たり前。
しかもシミュレーションマシンに乗せられていると言う事は。
姉がデータを取るために使っていると言う事だ。
コツについて聞かれているので、答えてはおくが。
こればっかりは慣れしかない。
数をこなすしかないと言う話をすると、苦労しているんですねと言われたので。お互い様と答えておく。
菜々美も海兵隊にいた頃は、いつ強姦されてもおかしくないような状況だったし、苦労は相応に積んでいる。
25年前からつい最近まで、シャドウとの交戦が殆ど無かった時期の兵隊は、それなりに楽をしていたともいうが。
それでも誰もが苦労をしていなかった訳では無いし。
その間さぼっていたような兵士は、最近の会戦でばたばた倒れているとも聞く。
中型シャドウの凄まじい攻撃から逃れるのは完全に運だが。
やはり、鍛練をある程度しておかないと。
そういった運すらいかせない場合もある。
幾つか技術的な話をされたので、答えてはおく。
なるほどと納得してくれたので、良かったとは思ったが。それだけである。菜々美としても、二機以上の超世王で戦えれば楽だと考えているが。
それも姉の負担が大きくなるし。
戦闘経験がまだない中型相手だと、瞬く間にどっちも瞬殺という可能性だってあるのだ。単純に数が増えた事は喜べない。
色々とシビアな世界で生きてきた。
だから、こういう風に、どうしても構えてしまうのである。
しばらく寝る。
寝るのも回復に役立つし、立派な仕事でもある。
思ったほど病院では寝ている暇はないのだが。体が貪欲に睡眠を求めて来ているのは、回復したいからだろう。
だから出来るだけ、合間を縫って眠っておく。
おきだしてからは、診察だのリハビリだのである程度忙しいが。
それも軍務で前線にいるほどではないだろう。
まだまだやれる。
そう自分に言い聞かせながら、リハビリをする。どうせまた、上層部は無理を言ってくるのだろうから。
ナジャルータ博士は、スカウトと同行して、偵察任務に出ていた。
中国地方に偵察に出て、シャドウが補強されていない地域の視察に出ているのだ。小型種相手に近付きすぎないように。
それは稗田少将の口から徹底されてはいるし。
スカウトはそもそもベテランがやるものだ。
だから、ある程度は信頼出来る。
スコープで覗く先には、まるで死体のように寝そべっているシルバースネーク。あれは普段は、あんな風に寝そべる。とぐろを巻いたり、何処かに隠れたりしない。
野生の動物はシャドウに愛情を示すことはあるが、襲う事は一切ない。
このメカニズムはよく分かっておらず、蛇を好んで食べる猪の仲間が、シルバースネークには見向きもしない事が確認されている。
猪もそうだが豚の仲間は蛇毒に強い耐性を持っており、ガラガラヘビやハブなどでもカモにしている程で。
基本的にシルバースネークみたいなサイズの蛇は手頃な獲物としか認識しないはずなのだが。
或いは野生の動物には、シャドウがなにか別のものに見えている可能性もある。
それについては、分析をして、いずれ論文にしておきたかった。
「小型種ばかりですね。 密度が高いわけでもありません」
「これ以上近付かないようにしてください。 シルバースネークの殺傷力はご存じの筈です」
「了解しました。 一旦距離を取ります」
物わかりが良くて助かる。
その間も、小型シャドウを何度か見かけるが、いずれも戦闘態勢を取っているようには見えない。
あれらは何をしている。
無言でナジャルータは、観察を続ける。
やがて不意に違和感に気付いていた。
「速度を保ったまま、出来るだけ急いで味方狙撃大隊の元に急いでください。 他のスカウトにも連絡を」
「どうしたんですか」
「急いで。 後で説明します」
これはまずい。
今気付いたが、小型の配置が明らかに妙だ。いわゆる縦深陣地を敷いている。このままだと、迂闊な偵察をしていた場合。どうしても小型の射程から逃れられなくなる。小型種は一斉に此方を見た。
そして、じっと見つめていたが。
ふいと視線を逸らして、それぞれ別方向に移動して行く。
これはまずいな。
多分統率を採っている中型がいる。あれはどう見ても、相当に強力な中型が指揮を取っているとみていい。
だとするとランスタートルが真っ先に思い浮かぶが、京都方面だけで三体が確認されている状態だ。中国地方にも出て来ているとなると。
ランスタートルだけではすまないだろう。更に二~三体は中型が控えていると見て良い。しかもこの様子だと、小型の奧に隠れていて、敢えて姿を見せていない。人間側の対策に、シャドウも対策し始めたのだ。
「危なかった。 下手をすると全滅していたでしょう」
「縦深陣地を構築して、人間を誘いこんだのですかこれは」
「今まで反撃されて、それを黙って見ていたわけでは無い、ということでしょうね。 今後の戦いは更に厳しくなると思います」
ナジャルータが指摘すると、兵士達は青ざめたようだった。
スカウトは集結すると、戻り始める。その間に稗田少将が報告を聞き、対策をまとめているという。
それについては任せるしかない。
ナジャルータはシャドウの行動の変更を見て、今後の事を考えなければならない。畑中准将が退院してきたのは良いことだが。
それはそれとして、また別種のシャドウを、どうにかして倒して、超世王の戦力を挙げなければならない。
小型は既に、どれも倒せるとナジャルータは判断している。
シルバースネークなどの遠距離攻撃を持っている相手も、投射型の斬魔剣があれば対応できる。
小型種はもう鎧柚一触に仕留める事ができているし。
そういう意味でも安心感がある。
今はとにかく、それらの戦果を少しずつ利用して、勝利につなげていくしかないのである。
それと、これだけの戦術機動が出来るのであれば、やはりコミュニケーションをとれる可能性が高い。
どうにか小型の一体だけでも捕獲できれば。
だが、捕獲したとしても、閉じ込めておくことすら困難だ。
シャドウはブラックウルフなどの大量にいる小型種ですら、MBTをひっくり返すのである。
生半可な檻なんかなんの役にも立たないのだから。
コミュニケーションについては、今まで幾度か試みてはいる。
それらについては、ナジャルータ博士も試している。
主に光をつかってのコミュニケーションを試みてきた。音なども使って来ている。
だが、それらで成果が上がったことは無い。
少なくともシャドウ達は、人間とコミュニケーションなんぞとるつもりはない。そう判断して良さそうだ。
だから、コミュニケーションをとるつもりになるくらいは、ダメージを与えないといけないだろう。
それも分かっているが。
現状では、それも無理だというのが実情だ。
ナジャルータはそのまま寮に戻る。
そして今回目撃した、シャドウの戦術機動を論文にしてさっさと仕上げてしまう。
ネットに掲載して、自由に見る事が出来るようにしておく。
昔は多数の人間がいて、中には希に「野生の有識者」がいたりもしたのだが。
それも今の人間の母集団では、一切期待出来ない。
それだけ、人間は数を減らしていて。
力も減らしているということなのである。
シャドウのサンプルを小型一体でも捕まえられればいいのですが、そもそも麻酔薬とか効きませんし、小型でも戦車をひっくり返すパワー持ちです。しかも殺したら消滅してしまう。
このあまりにも生物離れした特徴が、そもそも生物ですら怪しいという結論につながりますし。
どう対抗して良いかもまだよく分からない……継続的に高熱を与える以外に対処法がないという現実につながってしまっているのです。