スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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味方の数は足りず無能部隊が足を引っ張る。

それに対して敵は一枚岩で文字通り一丸となって動いてくる上に人間の弱点も知り尽くしている。

孫子だったら即時撤退を判断したでしょうね。

それでも、これでどうにかしなければならないのです。






3、死闘鹿児島近郊

揚陸艇のピストン輸送で、第二師団が九州に渡る。九州も一面の緑となっているが。元々九州は山岳地帯が多い。

 

そもそもアジア屈指のカルデラである阿蘇山が存在している場所であり、この阿蘇山の大噴火で大きな被害が古代に出た事もある。

 

日本は火山列島であり。

 

阿蘇山はそれの一翼を担う危険な山。

 

それを示すような、極めて危険な地形が連なっているのだと言えるだろう。

 

第二師団と同時に、海兵隊の半分である一個連隊440名も上陸。

 

それと一緒に、医療チーム500名ほどが鹿児島に入った。

 

この医療チームは、医療用ロボットなどを配備している専門の部隊で、以前も四国の孤立集落救助で活躍した実績がある。

 

とにかく救助を進め、それで鹿児島の港を正常化する。

 

GDFの上層部も相変わらず無意味に騒いでいるようだが、今回の作戦の実施が決まってとりあえずは黙った。

 

少しずつ反撃作戦が実施されている。

 

超世王も強化されている。

 

日本に中型が以前より集まり、もしも同時に複数の中型を撃破出来た場合、人類は一気に反撃に出られる可能性が高い。

 

これらを説明して、ようやく黙らせたのだ。

 

それに四国を奪回した実績もある。

 

淡路島に地下街を作り、人間の生存圏を拡げる計画が始動したこともある。

 

東京を奪回できれば更に話は楽になるのだが。それをやるにはまずは西日本の奪回が前提だろう。

 

現状のシャドウの守りはそれほどに分厚いのだから。

 

超世王も上陸する。

 

デチューンモデルは前回の対ウォールベア戦と同じく三機が来ている。ビーム装備型が二機と、なんとかナックル装備型が一機。

 

これは阿蘇山にブライトイーグルがいるからである。

 

何度か複数の中型との交戦はシミュレーションでやった。今まで撃破経験があるあらゆる中型を組み合わせた。

 

その中で一番勝率が下がったのが、ブライトイーグルとの組み合わせだ。

 

まあ人間から制空権という概念を奪い去った空の王である。

 

当然ともいえるし、近代兵器の天敵ともいえるので。守りをガチガチに固めるのは当然だろう。

 

投擲用斬魔剣をデチューンモデルから外したのは、それを超世王が装備しているからである。

 

今回超世王は、ランスタートルが来た場合、ブライトイーグルが来た場合はデチューンモデルに対応を任せるが。

 

それ以外の中型は、全て引き受けるつもりでいた。

 

第二師団が展開を終える。

 

スカウトが戻り始める。

 

通信が入っているが、はっきりいって状況は良くないようだ。

 

「小型種が続々と集まっています! 山岳地帯と言う事もあり、狙撃大隊は引き撃ちにて困難を極めると思います!」

 

「厄介ですね……」

 

「小型は超世王に集めてください。 できる限り対応します。 シルバースネークは相性が悪いので、狙撃部隊で優先的に始末してください」

 

「分かりました。 どれくらい小型相手にやれるのか、データを取りましょう」

 

既に戦争のやり方は、数百年ぶん戻っている。

 

制空権は失い、制海権も怪しく。ミサイルも役に立たない。ボタン戦争の時代は既に終わり、陸上で圧倒的な制圧力を持っているのはシャドウだ。

 

狙撃大隊の割合を更に増やしている第二師団だが、現在前線で舌なめずりしている小型シャドウは万に達するようだ。

 

基本的にこの数の小型を相手にするのは論外である。

 

もしも戦闘を開始した場合、中型を倒す以前に、味方が全滅しかねない。一度接近を許してしまえばおしまいなのだ。

 

それでも、突出している相手を狙撃。

 

ともかく、鹿児島がシャドウに接近されている今、失う訳にはいかない。少なくともこの前線に出て来ているシャドウは削らないとまずい。

 

螺旋穿孔砲で前衛に出て来ていたシャドウを挑発的に撃ち抜くと、面倒くさそうに数百が動き出す。

 

螺旋穿孔砲がこれほどの数配備される前は、これですら機甲師団で対処できなかったのだ。

 

その上シャドウは、上り坂だろうと全く走る速度が落ちない。

 

狙撃大隊はクロスファイヤーポイントにシャドウを引きずり込もうにも、山岳地帯だから限界がある。

 

超世王が前に。

 

ブラックウルフとクリーナーが一斉に襲いかかってくるが。

 

近接戦型の小型だったら、十や二十は既に蹴散らせる筈だ。

 

斬魔剣を振るう。

 

機体を微調整しながら、飛びかかってくる小型を片っ端から始末する。後方のデチューンモデルにはまだそのまま待機してもらう。

 

出るのは早い。

 

数体を瞬時に切り裂き。

 

同時に飛びかかってくる数体を、支援プログラムの助けを得ながら、まとめて斬り伏せる。

 

ブラックウルフもクリーナーも、死角を取ろうと背後にいようと、既に超世王の敵ではない。

 

ただしそれは先に攻撃出来た場合だ。

 

もしも機体に食いつかれた場合、装甲を一瞬で喰い破られる可能性が高く。油断は即死につながる。

 

斬り伏せ、更に斬り飛ばす。

 

非常に数が多いが、狙撃大隊がある程度間引いてくれる。だから安心して、前衛で暴れ続ける。

 

前に出てきて冷やかしになる小型と、意図的に後ろに回り込んでくるのがいる。

 

それぞれの個体の命なんてどうとも思っていないと見て良さそうである。生物ではない可能性も高そうだし、それも当然か。

 

40を超えた。

 

更に50を超えた時、別の群れが動き出す。

 

第二師団が陣形を変える。

 

陣形なんてものが用を為す時代はとっくに終わったのだったな。シャドウが現れる前には。

 

だが、シャドウが現れてから、それはまた必要になった。

 

必要になったと人類が理解するまで四半世紀も掛かった。

 

それくらい凄まじいシャドウの猛攻が人間の軍隊を蹂躙し続けたと言うことでもある。

 

今でも、油断すればあっというまにまた蹂躙される。

 

各狙撃大隊が、超世王に戦力を集中させる。

 

片っ端から、小型を斬る。

 

少しずつ機体にダメージが入っているが、後退は出来ない。最前衛で一定数を引きつけない限り、シャドウに蹂躙される部隊がどうしてもでる。

 

集中しつつ、次々斬る。

 

だが小型は全く怖れない。シャドウが何かを怖れる事は見た事がないが、それは仲間がばたばたと斬り倒されている今も同じ。

 

やはり此奴らは。

 

生物として無茶がある。

 

そう思いながら、横殴りに同時に四体のブラックウルフを斬り伏せた。

 

燃料は問題ない。

 

というか超世王のパワーパックは特別性らしく、数時間くらいの継戦はなんでもないのである。

 

この辺りは40式のガワを使っていても中身は別物。

 

それに関しては、デチューンモデルも同じなのだろう。

 

百体は斬り伏せたか。

 

だが、まだまだ小型が波状攻撃をしてくる。途中からおかしな事に気付く。奮戦している狙撃部隊に、シルバースネークが殆ど向かっているのだ。流石に当てづらいシルバースネークは、どうしても倒し切れない。毒吐きを貰って、歩兵戦闘車やジープごと溶かされてしまう兵士も多い。

 

ブラックウルフとクリーナーは狙撃部隊を殆ど狙っていない。

 

妙だなこれは。

 

菜々美は広瀬大将と連絡をつなぐ。

 

「広瀬大将。 話したいことが」

 

「戦闘の片手間に大丈夫ですか」

 

「ええ、問題ありません。 其方も被害が出ていますが、問題ありませんか」

 

「なんとか削り続けて見せます」

 

そうか。

 

被害を出している兵士は、いずれも訓練を重ねて変態兵器としかいえない螺旋穿孔砲を使いこなせるようになった者ばかりだ。

 

一人の兵士の被害を安いと思うような輩は、現在の軍に籍を置く資格は無い。

 

その上で、敢えて話す。

 

「非常にまずい状態ですね。 恐らく罠です」

 

「……超世王を消耗させるつもり、というわけですね」

 

「察しの通り」

 

流石だ。気付いているか。

 

このあからさまにおかしいシャドウの動き、そうとしか考えられない。

 

既にシャドウは千体いや千五百体は失っていると見て良いが、それもまるで痛痒に感じている様子が無い。

 

大陸からどんどん援軍が来ているのか。

 

それとも、必要な犠牲と判断していると言う事か。

 

「四国より連絡! 瀬戸内海を渡航して、ブルーカイマン出現! これより第三師団が対処に当たります!」

 

「今まで人間の手に落ちた土地に、シャドウが再侵攻の動きは無かったのに!」

 

「そんな理屈はシャドウには通じないでしょう。 最大級の警戒をしてください」

 

「ホワイトピーコックです!」

 

兵士達が悲鳴に近い声を上げる。

 

この九州の峻険な山岳地帯では、迫撃砲の役割を果たすホワイトピーコックは脅威である。

 

これにシルバースネークも勢いを増す。

 

被害が増えていくのが分かる。接近されるとおしまいなのだ。小型が相手でも、部隊単位で引き裂かれてしまう。

 

超世王の方にはホワイトピーコックは来ない。

 

本当に苛立たしい程に不愉快な連中だ。戦術をちゃんと知っている。効率よくどうすれば人間を殺せるか。

 

25年で学んでいたのは人間だけじゃない。

 

シャドウも、ということか。

 

機体のダメージが増えてくる。相手にしている数が数だ。しかも今回、ブライトイーグルとランスタートルを警戒しているため、後続にいる超世王のデチューンモデルは、小型に対応できない。

 

広瀬大将は恐らく必死の抵抗を続けている筈だが。

 

これは被害が出るぞ。

 

そう思いながら、飛びかかってきたブラックウルフを斬り倒す。これで、130を超えた。まだまだ。そう思うが、明確に機体にダメージが蓄積し始めている。

 

そして、姿を見せる中型。

 

恐怖の声が上がっていた。

 

「中型だ!」

 

「このクソ忙しい時に!」

 

「キャノンレオンです!」

 

即応。

 

投擲型の斬魔剣を放つ。以前は巨大な機構を利用して、ルアーを投げる要領で投擲していた斬魔剣だが。

 

現在はVLSの要領で打ち上げて、それをワイヤーで制御して着弾させる仕組みを採っている。

 

その間も、ロボットアームを振るって集ってくる小型を斬魔剣で切り裂き続ける。だが、少しずつ対応が難しくなってきている。

 

キャノンレオンに投擲型斬魔剣が直撃。

 

凄まじい悲鳴が此処まで聞こえてくる。だが、小型が投擲型斬魔剣に集ろうとする。だから、複雑な機動でそれを蹴散らしながら、キャノンレオンを切るしか無い。集中攻撃で、狙撃大隊がキャノンレオンを斬っている最中の投擲型斬魔剣に集る小型を対処してくれるが、当然前衛に出なければならず、そこをシルバースネークが狙いに行く。極めてまずい状況だ。

 

更に中型。

 

よりにもよってウォールボアか。

 

また今回控えさせている超世王のデチューンモデルで対応できない相手だ。其奴はそのまま態勢を低くすると、逆落としするようにして、超世王に仕掛けて来る。その速度は凄まじいが、山の木々をまったく傷つけないで降りてくる。凄まじい神業だ。一体どうやっているのか。

 

躍りかかってくるウォールボア。

 

立て続けに左右から来た小型を斬り伏せつつ、しゃいなんとかパイルバンカーを展開。こいつはかなりデリケートなので、厳しいが。それでもどうにかするしかない。跳んで襲いかかってきたウォールボアは、その顔についている壁を凶悪な形状の棘にすると、超世王を引き裂きに掛かってくるが。

 

そのウォールボアを、前後左右から、ロボットアームがはさみこんで、キャッチする。

 

前回のロボットアームの更なる改良版だ。それも奴の「壁」の可変性を見込み。それに対応して動く。

 

地面にウォールボアを叩き付け。なんとかパイルバンカーで超高出力のプラズマを直に叩き付ける。それに集ろうとする小型を斬り伏せ続ける。まずい。頭から湯気が出そうである。支援プログラムの助けを得ていても、限界はある。ぎりと歯を噛みながら、まだキャノンレオンすら斃せていない事実に苛立つ。

 

エラー。

 

キャノンレオンを斬っていた斬魔剣のワイヤーがクリーナーに溶かされた。

 

だが遠隔でやれる。どうにかキャノンレオンを斃す。奴をハンドフリーにさせたら、五分もしないうちに第二師団は消し炭にされる。此処で殺しきらなければならないのだ。両手を全速力で動かしつつ、ずっと作業を続行。

 

まずい。あたまがクラクラしてきた。

 

相手を時間差各個撃破する戦術はいい。散々やってきた。

 

だが此処まで徹底した飽和攻撃をされる事は想定外だ。しかも恐らく、シャドウは斥候から得た情報で、ブライトイーグル対策、ランスタートル対策をしていることを判断している。

 

その証拠に、阿蘇にいるらしいブライトイーグルは高みの見物だという報告が聞こえてきている。

 

くそ。

 

下手な人間より作戦指揮が凄まじい。

 

一万年の戦闘経験値が人間の売りであるらしいが、シャドウからすればその程度模倣は簡単と言う訳か。

 

キャノンレオンが倒れる。死体が消える。

 

だが、一斉に投擲型斬魔剣にクリーナーが集って、見る間に破壊してしまう。破壊と同時に大爆発して、集っていた小型もまとめて巻き添えにしたが。それでもダメージは大きい。

 

もう意味を為さないワイヤーは自動で巻き取らせる。かなり長い上に、残しておくと色々厄介だからだ。

 

そのまま、ウォールボアにとどめを刺しに掛かるが。

 

ついに飽和攻撃が、菜々美の反応を抜く。

 

装甲に食いついたブラックウルフが、装甲を食い千切りに掛かる。例の石を即時移動させて対応し、斬り倒すが。

 

それを切っ掛けに、小型が次々に組み付いてくる。

 

その内のクリーナーが、派手に装甲を溶かしに掛かった。斬魔剣で切り伏せるが、アラートが出ている。

 

装甲が相当にやられている。まずい。ちょっとした衝撃で、穴を開けられかねない。これ以上貰うのは無理だ。

 

更に今ので、ロボットアームにダメージも出る。斬魔剣で小型を蹴散らし続けるが、それも限界か。

 

味方もかなり厳しい。

 

この状況でも、デチューンモデルの装備換装は出来ない。

 

ブライトイーグルとランスタートルは、それぞれ対処手段がない。装備換装した瞬間、奴らが出て来たら詰む。

 

遊兵を作らざるをえない。

 

用兵家としては、忍耐を削られるだろう。広瀬大将も、強烈なプレッシャーを受けている筈だ。

 

ウォールボアが、最後の力を振り絞って暴れる。それを必死に防いだ瞬間、ウォールボアを抑えていたロボットアームにクリーナーが飛びついた。ロボットアームが溶け砕け散る。

 

即座にクリーナーを切ったが、それで一気にウォールボアが暴れる。機体が激しく揺動し、舌打ちしながら支え直す。

 

「壁」が激しく形状を変えていたが、それが超世王に迫ってくる。

 

あれに接近させたら終わりだ。味方の援護射撃も限定的な中、どうにか耐えるしかない。必死に耐えながら、プラズマを浴びせ続ける。

 

ウォールボアの名前の基になった猪も極めてタフな生物だが。こいつも相当だ。

 

超世王が振り回される中、それでも必死に斬魔剣で小型を蹴散らす。既に小型は二百は斬った。一機での戦果は記録的だが、それでも戦況に影響は与えていない。潤沢な戦力投射を敵は続けており、更にはまだウォールボアも斃せていない。

 

そして、奴が姿を見せる。

 

「中型更に出現! グリーンモアです!」

 

来たか。

 

恐らく近畿で交戦した相手とは別だろう。だが、それでも此処でどうにか斃さなければならない。

 

グリーンモアは大陸からの援軍で現れたとき、一度に四体姿を見せた。これは偶然だろうか。

 

キャノンレオンのように二体三体と連携して動く中型も存在しているが、グリーンモアはもっと多くで情報を収集、伝達するシャドウではあるまいか。

 

ウォールボアを抑えていたロボットアームが、負荷に折れ砕けた。

 

だが、その瞬間。

 

ウォールボアが断末魔の絶叫を挙げ、消えていく。

 

高出力プラズマをパイルバンカーから周囲にぶちまけて、小型を蹴散らすと。なんとかパイルバンカーを格納。

 

機体ダメージ、かなりまずい。

 

装甲もそうだが、今の激戦であちこちガタが来ている。

 

グリーンモア戦は最悪の想定で何度もシミュレーションをしたが。相手が此処までの飽和攻撃をしてくることは想定外だったし。

 

恐らく超世王のリソースを削るために、他の中型を捨て駒にするとまでは流石に考えていなかった。

 

生物ではない。

 

性質は真社会性に近い。

 

この二つを鑑みても、ちょっとばかり異常だ。

 

それに頭を使いすぎて、くらくらする。

 

据え置きのスポーツドリンクを口に含みながら、まだまだ集ってくる小型を蹴散らす。キャノンレオンもウォールボアも倒した。だからリソースを、小型だけに向けられる。だが、グリーンモアは、それを見越したように動いた。

 

来る。

 

マッハ3に見る間に達した緑の走鳥。もの凄い機動で、此方に迫ってくる。通常の三倍、なんて言葉があるらしいが。

 

それどころじゃない。

 

こいつ、菜々美が人間で。

 

今ので相当に消耗したことを見切って、それで仕掛けに来たな。しかも他のデチューンモデルが前線に出られない武装である事も見切った上でだ。

 

ぐっと歯を噛む。

 

更に小型が群がってくる。本当に命を捨てている。グリーンモアは此処で確実に菜々美を倒すつもりだ。

 

人間に勝つ事に執念を燃やしているようには見えない。

 

ただ邪魔者を駆除する。

 

そのためだけに動いている。

 

そんな印象すら受ける。

 

感情の類は殆ど感じられない。

 

完全に機械だ。

 

即座に、対応に入る。今までのダメージから総合的に計算。グリーンモアがマッハ5以上で動く事も想定。

 

勝率は二割を切るなこれは。

 

だが、それでもやるしかない。この辺りの小型を一掃しないと、今後の戦況に大きな影響が出る。

 

グリーンモアがかき消える。

 

文字通り、更に速度を跳ね上げて、後ろに回り込んだのだ。マッハ7に瞬間的に達している。

 

普段から時速900㎞で走るだけのことはある。

 

とんでもない速度だ。

 

それでいて、暴風も何も起きない。此奴らはソニックブームを完璧にコントロールしているとみていい。

 

グリーンモアが、明らかに今までで一番被弾している角度に入り込んでくる。

 

小型をけしかけて、やはり対応力を見ていたのだ。

 

中型二体を使い捨てにしたのは、菜々美の消耗をさせるため。人間は消耗するとミスをする。

 

それも此奴は知っている。

 

仕掛けて来た。

 

だが、今回は。

 

此方が一枚上手だ。

 

グリーンモアが、真横からの斬魔剣をもろに喰らって、蹈鞴を踏むようにして吹っ飛ぶ。飛来した斬魔剣は、マッハ20に達していた。質量攻撃ではシャドウにダメージを与えられない。

 

だが、斬魔剣は高出力のプラズマを常に相手に押しつける代物だ。

 

グリーンモアはそれを危険視する。そして。引っ込んでいく斬魔剣。

 

四機目の超世王デチューンモデル。乗っているのは呉美大尉。

 

姉とナジャルータ博士は、事前に広瀬大将と相談していたのだ。

 

相手は人間の戦術を知り尽くしていて、超世王の装備についても使い方を理解している可能性がある。

 

だから、敢えて三機は接近戦で使えないものを並べておき、同時にブライトイーグルとランスタートルへの備えとする。

 

そしてもし飽和攻撃の類を仕掛けて来た上で、消耗した菜々美を殺しに来るようだったら。

 

先に隠蔽して運び込み、隠しておくのだ。

 

更に発射速度を上げた投擲型斬魔剣を撃てるデチューンモデルを。

 

広瀬大将も了承。

 

軍の誰にも、この作戦はもらさなかった。

 

最悪、軍内の通信なども漏れている可能性がある。シャドウの事が何も分からない以上、それくらいはしておくべきなのだ。

 

動き出す斬魔剣装備型のデチューンモデル。デチューンモデルと言っても、二刀の斬魔剣を装備していて、接近戦型も投擲型も装備している。つまり接近戦が出来ると言うことだ。呉美大尉のデチューンモデルが、片っ端から小型を蹴散らし始める。支援プログラムありとはいえ良い腕だ。

 

そして、一瞬の躊躇、撤退か攻撃続行かの判断をしただろうグリーンモアに。

 

仕掛ける。

 

展開したのは、壁だ。

 

これはウォールボアの壁を参考にした、形状記憶合金によるもの。対スプリングアナコンダで使ったシールドも、この形状記憶合金型で、それによって膨らませているらしい。

 

グリーンモアが、一瞬で展開した壁に警戒して、跳躍しようとする。やはり見たものを持ち帰るつもりか。

 

だが、それを一瞬早く展開した斬魔剣が叩き落とす。悲鳴を上げて地面に叩き付けられたグリーンモアが態勢を立て直す前に、斬魔剣を上から叩き込む。前に翼で防いだことも見ていた。

 

相手を見ているのはシャドウだけじゃない。

 

態勢を崩したグリーンモアの背中に、斬魔剣が突き刺さり、抉っていく。グリーンモアが足を踏ん張って、それから逃れようとするが。壁が第二の変形。一機にグリーンモアを絡め取った。

 

勿論長くはもたない。

 

だがグリーンモアはパワーがあるシャドウではない。

 

シールドの応用だということで、姉曰くなんだったか。封魔盾?だったか。なんでそうなるのかはよく分からないが、とにかく封魔盾はもともと形状記憶合金操作において実績があり、姉からすれば工夫は簡単なのだろう。

 

そして姉とナジャルータ博士の予想通り。

 

グリーンモアはパワーが足りない。そのまま、斬魔剣が奴の体を抉り抜いていく。

 

だが、小型が飽和攻撃を続けてくる。

 

グリーンモアも他中型と比べると非力とはいえ、それでもやはりこの程度の高速では限界がある。

 

封魔盾に高熱も流しているようだが、それでも限界があるはずだ。

 

しかしグリーンモアも反撃に出てくる。

 

長い首を振るって、斬魔剣を受け止めて見せる。流石にやるな。激しく丁々発止のやりとりをする。

 

こっちもロボットアームにはあらゆる剣術をトレースしてあるのだが。

 

ただ苛烈な戦いで、どうしても傷んでいる。

 

今回は想定を超える攻撃を受けていることもある。

 

だから、簡単にはいかない。

 

弾きあう。

 

まだエネルギーが充填されていないから、パイルバンカーはダメだ。此奴を殺しきるほどの高出力プラズマは放てない。

 

逆に素早く首を動かした(本当は首かも分からないが)グリーンモアが、こっちの装甲を狙ってくる。

 

超密度の例の石で防ぐが、二度三度と貫こうとしてくる。それだけ奴の首は長いし、なんなら嘴に見える部分は伸びている。貫徹力も高い。装甲の負荷が見る間に上がってきている。

 

バガンと大きな音がして。

 

装甲の一角が外れた。負荷が限界を超えたのだ。

 

ダメコンの一角として、例の石で受けた負荷は、全体に拡散されるようになっている。小型に集られ続けたのである。

 

このままだと超世王の機体が分解しかねない。

 

小型は更に勢いを増して迫っていて、呉美大尉のデチューンモデルも押され気味のようである。

 

後方の無線も入ってきているが、第三師団も想像以上の数のブルーカイマン相手で手一杯。

 

第一師団まで加わって迎撃に出ているが、手が足りていないようだ。

 

中国地方から渡って来たブルーカイマンもまた、まるで命を省みず……命がないのかも知れないが。ともかく突貫してきていて、捌くどころではないようである。

 

ぐっと歯を噛む。

 

なんとかグリーンモアの首を押さえ込みながら、奴の背中に斬魔剣を押し込む。パイルバンカーは。

 

ダメだ。後三十分は最充填にかかる。

 

今の時点で動けている時点でおかしいくらいなのだ。それくらい超世王のパワーパックは強力である。

 

それでもそれくらいのエネルギーは食うと言うことなのである。

 

まだだ、そう自分に言い聞かせる。

 

グリーンモアは首を振るおうとするが、やがて自分を抑えている封魔盾を破る方が早いと判断したのだろう。

 

グリーンモアが両足を踏ん張る。

 

地面に強烈な揺れが走っていた。

 

地割れが出来ている。

 

これは、なんだ。

 

モニタを一瞥。

 

拳法の中には、まったく動かないように見えて、衝撃を与える技が存在しているらしい。

 

実際に拳法の達人を自称する人間は、近代格闘技の前に無力だったという話もあるらしいのだが。

 

グリーンモアが使ったのは。

 

恐らく足の力を用いて、体の全周囲に強烈な衝撃を与えるその手の技。

 

自分を包んでいる封魔盾を粉砕するつもりだ。

 

だが、グリーンモアの想定されるパワーであれば、一発で封魔盾は消し飛んでいた可能性が高い。

 

それが出来なかったと言う事は。弱っていると言う事だ。

 

いける。そう自分に言い聞かせる。気力を振り絞って、必死に操作を続ける。

 

斬魔剣が奴の体に更に食い込んでいく。

 

凄まじい悲鳴が上がる。

 

それと同時に、小型がぴたりと攻勢を止める。そして、今まで波状攻撃を続けていた小型が下がりはじめる。

 

広瀬大将が通信を入れる。

 

「追撃はしないように! 被害を確認し、負傷者の救助を!」

 

これは、まさか。

 

グリーンモアは、情報を充分に得たので、損害を減らすために他のシャドウを下げ始めたのか。

 

本当に自身の体がどうなろうとどうでもいいんだな。

 

そう思うと、ぞっとする。

 

徹底している。

 

本当に真社会性の存在だ。

 

生物ですらないのも納得出来る程の判断。

 

これはもう。

 

自己保全すら考えていないという意味では、ロボット三原則さえ超えているかも知れない。

 

とんでもない奴だ。

 

とにかく、このまま殺す。

 

だが、最後の力を振り絞って、グリーンモアが嘴を突っ込んでくる。超密度石で防ぐが、その瞬間。

 

超世王の装甲が全壊していた。

 

限界が来たのだ。

 

それでも超世王は機体が瓦解しないようになってはいる。だが、顔も何も無い、鋭い嘴が菜々美を見ていた。

 

激しい戦いで、体中シートやらに打ち付けて、頭も滅茶苦茶酷使して、ゆであがり掛けている菜々美を。

 

装甲越しに。

 

斬魔剣が、グリーンモアの体を貫く。

 

グリーンモアが消えていく。

 

同時に、ロボットアームが何カ所かで破損した。相討ちといって良かった。

 

呼吸を整えながら、周囲の状態を確認。

 

シャドウは死ぬと消えてしまう。だからあれほどの激戦があったにも関わらず、残骸は一つも残っていない。

 

むしろ超世王のパーツが彼方此方に散らばっていた。装甲も壊れたのが散らばっている程である。

 

溜息が出る。

 

ちょっともう何も考えられない。

 

「敵、撤退を完了! もとの前線まで後退!」

 

「敵前線に新たな中型確認! キャノンレオン2、ランスタートル1、ストライプタイガー1、そ、それにスプリングアナコンダ1! 計五体!」

 

「これまでですね。 此方も後退して、鹿児島にいる医療部隊を援護する態勢を。 工兵部隊を入れて、鹿児島の港の整備、四国との連絡を行うための道路などの敷設を護衛してください。 後方は」

 

「第三師団より連絡! ブルーカイマン、撤退開始!」

 

完全に相手の思うつぼか。

 

ぐったりしている菜々美は、ハッチを開けて顔を出す。それで涼しい空気を浴びて、やっと人心地がついた。

 

敵は超世王を倒しに来ていた。

 

だが、斃せなかった代わりに、第二師団に痛烈な打撃を与え。更に超世王の限界まで見ていったようである。

 

どれだけ強化しても、飛躍的に強くなるのは厳しいだろう。

 

それを考えると、敵の戦略的目標はある程度達成出来たことになる。

 

こちらも鹿児島に医療部隊と工兵部隊を入れ、更にはグリーンモア撃破に加え、キャノンレオンとウォールボアを連戦で討ち取ってはいるが。その戦果に対して被害が大きすぎる。

 

今連絡が入るが、第二師団だけで1800名近い死者が出ており、第三師団、第一師団もブルーカイマンの大軍相手に200人以上の死者。合計2000人を超える死者が出たようだ。

 

また、この間渡海してきて偉そうにしていたアラコルンとかいう中将だが。麾下の「最新鋭兵器」で固めた部隊は何の役にも立たず、最新鋭戦車も一瞬でシルバースネークに溶かされ、広瀬大将の指示にもろくに従わず突出した結果壊滅。援護する暇すらなかった。

 

生存者15名、アラコルン中将も戦死。「精鋭」と「最新鋭兵器」の現実が世界にさらされる事になった。これでまだキーキー喚いていた軍需産業の連中も、黙らざるを得ないだろう。勝手な作戦行動を彼等がしていた事は全て記録に遺されているようだ。小型種に集られて、手も足も出ずに全滅していく様子も。

 

いずれにしても、戦場全体でかろうじて参戦戦力の一割以下に被害を抑えたが。

 

それでも、これは勝ちとは言えないだろう。

 

三個師団およそ24000のうちの死者2000だが、第二師団8300のうち1800の被害が深刻である。

 

第二師団の再建が大変だ。しばらくは攻勢どころじゃない。

 

それに対して、シャドウはその気になれば大陸から更に増援を送り込めるはず。敵地後方に浸透戦術なんてやる余裕は此方にはない。

 

まずいな。

 

菜々美は、そうとだけ、涼しい風を浴びながら呟いていた。








ほとんど全滅判定レベル(損害二割オーバー)のダメージを受ける第二師団。しかもここが最精鋭だということを考えると、その被害は息を呑むレベルです。

そして超世王セイバージャッジメントはどうにか難敵グリーンモアを倒す事は出来ました。

しかしそれしか出来なかったのです。

戦いは痛み分け……それも守りきったと言う意味では、シャドウの戦略的勝利です。




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