スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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斬魔剣。超世王セイバージャッジメントに装備された武器です。まあどこかの親分さんが使うようなでっかい剣を想像していただければ分かりやすいかと思います。高出力プラズマを用いて相手を斬るのですが、真っ二つとはいきません。

シャドウという存在の性質上、特に中型以上の奴は時間を掛けて超高熱を与えないとダメージにすらならないからです。小型だったら鎧柚一触に真っ二つに行けるポテンシャルがあるのですが。

更に言うと二足歩行の人型ロボットなんて気が利いたものでこれを振るうのではありません。

残念ながら、それが出来るテクノロジーが人間にないのです。






3、怪物対スーパーロボット

作戦開始。

 

その声が響くと同時に、射撃音が響いた。恐らく小型種の誘引作戦が開始されたのだろう。

 

菜々美もモニタを確認する。

 

戦闘状態に入っているのは、第一師団の右翼にいる第二連隊だ。それに第一、第五連隊が連携して戦闘を開始。

 

赤い点が接近して来る。

 

時速160キロも出ているそれは、四つ足動物とはとても思えない速度だったが。次々とロストしていった。

 

「ブラックウルフ撃破! 続けて撃破!」

 

「幸先は良いぞ!」

 

「更にブラックウルフ出現! 増えます!」

 

「確実に一体ずつ仕留めろ! 40式、壁を作れ!」

 

指揮が淡々とされている。

 

現在京都にはブラックウルフが多数いることが分かっている。ブラックウルフと言われていても、実際の狼と違って群れは作らない。それどころか、エサを採っているところすら確認されていない。

 

これが食事をするなら毒餌などの手があるのだが。それも使えない。

 

とにかく戦況を見守るしかない。

 

激しい射撃音が続いている。

 

現在はドローンが使い物にならない。航空機でさえどうにもならないのだ。ドローンでは何も役に立てない。

 

ブラックウルフが、どんどん数を増している。事前の光学探知での数より明らかに多い。だが、此方も一個師団が出て来ている。少しずつさがりながら、ブラックウルフを削り取って行く。

 

「新しくブラックウルフ出現! 数、6!」

 

「既に100体を超えたぞ!」

 

「京都の隣接地区から来ているのかもしれん! さがりながらつるべ打ちを浴びせろ!」

 

「接近されたらひとたまりもないぞ! 焦らず仕留めろ!」

 

怒号が飛び交っている。

 

ブラックウルフに浴びせられる射撃だが、時々すっとすり抜けるようにしてブラックウルフが回避する。

 

名前の由来だ。

 

狙撃手が攻撃を外すことが多く。後で解析した結果、瞬間的に数倍の速度を出して、ライフルの弾を回避していることが分かった。

 

マッハ3のライフル弾を。

 

小型種ですらそれだ。

 

シャドウはとてもではないが、通常の兵器で対応できる相手ではない。姉の作り出した幾つかの兵器が実戦配備されても、なお厳しい。

 

ついに第四連隊が、ブラックウルフに接近を許す。

 

戦車にかぶりつくブラックウルフ。盾が見る間に赤く染まっていく。必死に兵士達が射撃を浴びせるが、後続がまだいる。乱戦になったら終わりだ。側面から、第五連隊が援護射撃を入れるが、振り払えない。

 

40式を放棄して、兵士が逃げ出す。

 

ブラックウルフが、40式を振り回して、ひっくり返していた。

 

兵士達が巻き込まれる。

 

助かるわけがない。

 

必死に射撃して、そのブラックウルフを倒すが。混乱する第四連隊に、更にブラックウルフが接近。

 

他の連隊が支援射撃をするが、とても追い払うのは無理だ。

 

乱戦が始まる。

 

兵士達が噛み裂かれる。接近されると、速度もパワーもどうにもならない。阿鼻叫喚の地獄絵図。

 

これが世界中でシャドウを相手にして、軍隊が味わって来たことだ。

 

「だ、ダメだ、撤退……!」

 

「キャノンレオン出現!」

 

菜々美はコンソールに飛びつく。

 

前線がブラックウルフに荒らされている状態だが、それは無視。予定されていた三地点の一つ。

 

ある山の頂上付近に、奴は姿を見せていた。

 

ブラックウルフより十倍以上も大きなその姿は、明らかに威圧的だ。

 

こいつは獅子の名とは裏腹に、顔は鋭角で、狼にも蛇にも似ていない。勿論獅子とも随分違う。

 

レオンの名をつけられているのは、その大きさだ。

 

全長も凄まじいが、四つ足型のシャドウとしては、中型種最大。

 

そして、全身を砲台にして、口からプラズマ砲を放つ。

 

このプラズマ砲の破壊力が凄まじく、今まで耐えられた兵器は存在しない。軍事基地の防壁ですら一発で砕かれた映像が残されている。シェルターを此奴のプラズマが貫通して、中に逃げ込んでいた人間が一発で皆殺しにされた事例もある。

 

更にこのプラズマ砲は徹甲弾と榴弾、更には対空を切り替える事ができ、EMPまで兼用する。

 

ついでにトマホーク巡航ミサイルの直撃に耐えたという記録もある。

 

元々中型以上のシャドウは凄まじい耐久を誇るが、撃破例が出なかったのがそういった常識外れの堅さが故だ。

 

キャノンレオンが動き出す。

 

速度は現時点で時速150㎞。

 

こちらも動く。

 

なんとか王の操作は、ばっちりできる。オペレーターが支援を入れてくれる。

 

「第九、第十三連隊は前進してください。 畑中少佐を支援し、遊撃に動いているブラックウルフの排除を」

 

「イエッサ!」

 

「つるべ打ちだ!」

 

火線が飛び交う中、急ぐ。

 

菜々美は舌なめずりすると、移動を続けるキャノンレオンをターゲッティング。今の時点で、想定外の動きはしていない。

 

あれは司令部を狙っている。

 

ブラックウルフは第四連隊を滅茶苦茶に蹂躙しつつ、これもまた他へ戦線を拡げようとしているが。

 

今は支援できない。

 

誰かにとって大事な人があの連隊にいて。

 

ずっと訓練してきた兵士達がいるが。

 

それでもだ。

 

足を止める。

 

そして、バンカーを叩き込んで、車体を固定。更には、パージ。斬魔剣を拘束するのに使っていたワイヤーを全て解放する。

 

ばつんと音がしてワイヤーが外れた。

 

よし。いくぞ。

 

菜々美は相手のロックを確認しつつ、素早く幾つかの装置を操作する。ブラックウルフ接近。その警告が飛んでくるが、それは味方に任せる。味方を信じる。

 

斬魔剣には、エネルギーが既に注入されきっている。いつでも行ける。

 

狙うのは、キャノンレオンが足を止めた瞬間。

 

そして、その瞬間が。

 

菜々美には見えていた。

 

キャノンレオンの射程範囲は、対空であれば神戸上空を余裕でカバーしてくる。しかもどういう視界性能をしているのか、それで確殺してくる。

 

鳥に偽装したドローンを確殺して来るくらい精度も高く、他にも何種か対空が出来るシャドウがいる事もあって、飛翔種の存在もあり、今まで人類は制空権を手放したも同然だった。

 

だが、如何にキャノンレオンであっても、地上で水平射撃となると、どうしても可能な距離が限られる。

 

地球は球体であり、10キロも離れるとどうしてもそれが如実に出てくる。

 

それが、狙い目だ。

 

足を止めるキャノンレオン。

 

想定通りだ。

 

全てのパワーを回すのは、モーターである。砲塔の代わりについているのは、ある意味モーターなのだ。

 

それも規模が桁違いな。

 

それが、一気に。

 

斬魔剣を引っ張っていた。

 

斬魔剣は途中にある支点を軸に、モーターに引っ張られたことで、上空に放り上げられる。

 

巨大な剣が、打ち上げられたように見えるが。

 

それは、ルアーフィッシングで、ルアーを投擲するのと同じだ。普段は横に寝かせている斬魔剣だが、投擲の瞬間、牽引車が跳ね上げる事で、打ち上げを加速する。そして更には、モーターが引っ張る事で、その速度を更に跳ね上げる。

 

そして、制御する。

 

加速加速加速。

 

斬魔剣そのものにもブースターがついていて、唸りを上げながらキャノンレオンへと襲いかかる。

 

異様な圧力と音に気付いたキャノンレオンが、プラズマを発射しようとしたのを止めて、振り返ろうとした時。

 

斬魔剣は、その背中から、キャノンレオンに直撃していた。

 

剣の刀身にあるプラズマが、キャノンレオンを焼き焦がす。とんでもない悲鳴が、辺りに響き渡った。

 

いや、それはプラズマが中型シャドウを焼き切る音なのか。

 

激しい火花が散る中、菜々美はコンソールを確認。

 

「キャノンレオンに着弾! 食い込んでいます!」

 

「ダメージは!」

 

「キャノンレオン、まだ動いています!」

 

「まずいな……」

 

キャノンレオンに直撃した斬魔剣は、確実に体に半ばまで食い込んだ。だが、それでもまだ動くか。

 

だが。

 

操作をし、ブースターを全開。

 

有線の兵器だ。こういうことは出来る。ブースターは微細に動作して、包丁が野菜を切るように前後。それで、一気にキャノンレオンの全身を切り裂いていく。

 

ブラックウルフがなんとか王に接近。かなり至近だ。菜々美はこのままでは動けない。これでも微細な操作を全力でやっている最中だ。

 

ガンと、何とか王にブラックウルフが突貫してくる。これは食いつかれたな。そのままひっくり返そうとしてきているのが分かった。

 

画面が揺れる。座席も。

 

それでも、斬る作業を続行。

 

神業とか言われるかも知れない。

 

だが、その割りには菜々美は全力で冷や汗を流している状況だ。体を壁や操縦桿にぶつけそうになる。

 

この勢いでぶつけたら、痣ではすまない。

 

それに、このままだと、なんとか王は装甲を喰い破られるか、ひっくり返される。そうなったら、恐らくキャノンレオンだって斃せないだろう。

 

それでも焦らない。

 

菜々美は冷や汗は流すが、それでもキャノンレオンを斃せればいいと考えている。そう割り切れる事だけが。

 

菜々美の強み。

 

そして、直後。

 

ブラックウルフが、吹き飛んでいた。

 

「此方第十七狙撃大隊! 新兵器に集っていたブラックウルフを排除完了!」

 

「支援感謝!」

 

そのまま激しくレバーを操作する。

 

斬魔剣についているブースターが激しく前後に巨大な刃を動かし、キャノンレオンを切り裂いていく。

 

そして、ある一閃で。

 

刃が激しく地面を熱し、爆発させていた。

 

キャノンレオンが消えていく。

 

わっと喚声が上がった。

 

「ちゅ、中型を倒した!」

 

「やったぞ!」

 

「ついにやったんだ!」

 

「あんなどうしようもなかった奴を! すげえ!」

 

勝利の歓声が上がる。

 

菜々美はそのまま操作を続行して、斬魔剣を回収する。有線である事もあり、ブースターの操作は難しくない。

 

掃除機のコンセントを吸い込むようにして、本体に吸い上げる。

 

ロボットアームのワイヤー巻き取り装置が、かなり怖い音を立てているが、ブラックウルフに噛みつかれて揺れていたのだ。

 

引き上げは問題無さそうだ。

 

機体のダメージを確認。

 

案の場かなりやられている。斬魔剣を動かす機構は無事だが、なんとか王の動力が相当なダメージを受けていて。移動するのはレッカーが必要になるだろう。いや、なんとか出来るか。

 

しかし無限軌道が一部剥がれてしまっている。

 

できればつけ直したいところだが。

 

ブラックウルフへの攻撃も続行されているが、まだかなりの混戦のようだ。最初に猛攻を受けた第四連隊は全滅判定を受けて後退。他の連隊が、接近するブラックウルフを必死に倒しているが、まだまだ来る。

 

どうも妙だ。

 

斬魔剣が戻って来て、後ろの機構と合体。

 

そのまま充電、燃料の補給に入る。

 

オペレーターが指示を出しているのを聞きながら、応急処置をしようとした、その瞬間だった。

 

激しく揺れて、思わず舌を噛みそうになった。

 

アラームが鳴る。

 

ダメージがかなり深刻だと言う事だ。

 

姉が作ったこの車体。並みの40式よりも装甲が増設されているはずだが。急いで計器を確認。

 

車体が傾いている。

 

そして、装甲の右半分が完全に終わっていた。

 

ブラックウルフに噛まれたのが左だったのだが、これはまずい。すぐに周囲の映像を確認。

 

そして、見た。

 

キャノンレオン。

 

さっき倒した奴ではない。

 

二匹目だ。

 

シャドウの生態はよく分かっていない。いずれにしても、兵士達がパニックを起こすのが分かった。

 

「二匹目の中型だ!」

 

「ど、どうするんだ!」

 

「第六連隊、壊滅! 支援こう!」

 

「今のは榴弾プラズマか! 引け、引けっ!」

 

大混乱を起こす第一師団。それはそうだろう。ブラックウルフが多くてまだ戦闘が続いている上に。

 

ターゲットを倒したと思ったら、もう一体が現れたのだから。

 

キャノンレオンは、なんとか王から見て三時方向。右側にいる。そして悠々と歩きながら、なんとか王を擦るようにして榴弾プラズマを放った。その余波で、なんとか王は擱座したというわけだ。

 

「畑中少佐! 無事か!」

 

「無事ですが、なんとか王は擱座! 自力で動くのは厳しいと思われます」

 

「脱出しろ! この作戦は失敗だ!」

 

「……少しお待ちを」

 

脱出したところで、周囲はブラックウルフだらけ。それによりにもよって中型シャドウでもかなり手強いキャノンレオンが近付いて来ている。

 

あいつにプラズマを撃たせたら、今みたいに連隊単位の戦力が蒸発することになる。それを見過ごすわけにはいかない。

 

ぎりと、奥歯を噛んだ。

 

そして、データを確認。

 

なんとか王は動かせないが、斬魔剣は撃てる。ただ、最初の一体を倒した事を、キャノンレオンは見ていた筈だ。

 

シャドウは学習能力も高い事が知られている。

 

あっさり逃がしてくれるとはとても思えない。

 

一か八か、やるしかない。

 

「もう一体を倒します」

 

「正気かね!」

 

「正気です。 というか、この距離で、逃がしてくれるとは思えません。 それしか生き残る道はありません」

 

師団長が無茶だと叫ぶが、無茶でもやるしかない。

 

好機は一回だ。擱座しているが、前面装甲は何とか耐えられると判断した。そのまま無理矢理車両を動かす。擱座しているからどうしても動かせる範囲には限界があるが、それでもどうにか多少はキャノンレオンの方を向く。

 

キャノンレオンは二発目のプラズマを撃とうとしていたが、此方に気付く。そして、斬魔剣の発射台を立てた瞬間、プラズマを其方に叩き込んできていた。

 

それでいい。

 

前面装甲、それに車体前面のカメラがやられる。凄まじい揺れで、ひっくり返りそうになる。

 

がつんと頭を座席にぶつけて悶絶しそうになるが、しかし耐える。雑音の中、ブラックウルフと死闘を繰り広げている第一師団の兵士達の絶叫や悲鳴が聞こえる。数十体どころか、当初の予想の十倍は出て来ている。それはこうなるのもやむなしか。そもそも人間はシャドウ出現以降、シャドウに勝てた試しが無い。

 

相手の底力を理解できていないのは、仕方がないのかも知れない。

 

操作、そして操縦桿を引く。

 

ぐらついていたなんとか王が激しく地面に叩き付けられる。その動きを見て、致命傷を与えたと判断しただろうキャノンレオンだが。

 

その時。

 

その背中に、斬魔剣が、突き刺さっていた。

 

そう。発射台を立て、それが爆発した瞬間。斬魔剣はそれとは別に撃ちだしていたのである。

 

斬魔剣は別に単体で飛ばす事ができる。

 

発射台の仕組みは、ルアー釣りでルアーを飛ばす要領で高速で的に対して斬魔剣を飛ばすもの。

 

ワイヤーはロストしたが。

 

多少精度は下がるものの、別に遠隔での操作だってできるのだ。そもそもワイヤーは遠心力で破壊力を上げる機構。

 

なくても使えるのである。

 

この辺り、姉の抜かりなさが分かる。そして才覚も。生き残るには、それを全力で使うしかない。

 

前面装甲はかろうじて耐えたが、火花が散っている。この機体は限界だ。ブラックウルフ一体にでも接近されたら終わりである。勿論もう一発プラズマを喰らったら爆散どころか蒸発だろう。

 

さっきのも、斬魔剣を狙った一撃だったから助かったのであって、そうでなかったら消し飛んでいたのだ。

 

キャノンレオンに突き刺さった斬魔剣を激しく上下させる。

 

それによって、斬魔剣で、キャノンレオンを胴から頭に掛けて切り裂いてやる。さっきは横に真っ二つにしてやったが、今度は縦に裂いてやる。だが、問題も多い。さっきの爆発で斬魔剣自体にもダメージが出ていること。ブースターの制御が、ブースターのダメージ、こっちのコンソール、両方の問題で精度が落ちてきていること。

 

暴れるキャノンレオン。跳び上がって、何とか斬魔剣を引きはがそうとする。

 

させるか。必死に食い下がって、制御する。

 

熱。

 

火花がもろに顔にかかった。機体そのものが生きていること自体が不思議だ。それに良く制御装置が生きてくれている。歯を食いしばって、耐えてくれよと言いながら必死に作業を続ける。

 

一気に刃を押し込むと、キャノンレオンは横倒しになって、凄まじい悲鳴を上げる。いや、これは。

 

分かってきたが、中型のシャドウを切り裂くと、どうやら独特の音がするらしい。そもそも小型シャドウにしても何かを食べるところすら目撃されたことがないのに(兵士を食い殺すように口を使う事があるが、それは捕食では無い事がはっきりしている)、中型だって。普通の生物と同じに考えるのは無理がありすぎる。

 

それでもキャノンレオンは暴れ狂う。

 

気を抜くと、すぐに斬魔剣が抜ける。そして抜けたら、即座にプラズマを放ってきてもおかしくない。暴れ狂うキャノンレオンに、更に刃を食い込ませる。だが、それも厳しくなってきている。

 

通信。オペレーターからだ。

 

「機体ダメージ甚大! 爆発の恐れあり! 畑中少佐、脱出を!」

 

「今脱出したらキャノンレオンに逃げられる!」

 

「分かりました、デッドラインを分析します! それまでに決めてください!」

 

「分かった!」

 

もうかなり動きが悪くなってきているが。それはキャノンレオンも同じだ。キャノンレオンは必死に体を彼方此方に叩き付けて、斬魔剣を外そうとしている。だが、させてなるものか。

 

頭をフル回転させて、操作を続ける。

 

後六分で脱出のデッドラインだと言われる。

 

六分。充分だ。

 

そのまま更に切り込みを入れてやる。だが、ブースターの一つがアラームを入れてくる。ガス欠だ。

 

元々ダメージを受けていたし、ガスが漏れていたのだろう。

 

くそ。だが、それでも。

 

最後に残ったブースターの力を総動員して、一気に奴の体を断ち割っていた。

 

暴れ狂っていたキャノンレオンが、その場で消えていく。斬魔剣はすっぽ抜けるようにして飛ぶと、ブラックウルフを数匹串刺しにして、そのまま地面に突き刺さったようだった。

 

緊急脱出装置。上にある。

 

勿論ボタン押したら飛んで脱出出来るような便利なものじゃない。ハンドルを回して開けて、それで這う這う逃げ出すためのものだ。

 

ハンドルがヤバイ。熱い。

 

これ、外の装甲燃えていないか。だが、そのままだと蒸し焼きになる。既に冷房機能は死んでる。

 

そうなると、もたついていると蒸し焼きだ。

 

手袋の上から大やけどしそうだが、それでもハンドルを無理矢理捻り開ける。空いたハンドルから飛び出すと、既になんとか王は原形を留めていなかった。側に付けたのは、40式戦車の一両。

 

はしごを出してくる。

 

「畑中少佐!」

 

「助かった! て、左!」

 

飛び出してきた兵士が、左から襲いかかったブラックウルフを、即応して撃ち抜いていた。

 

まだ若々しい見た目の女性兵士だ。良い腕をしている。男と間違われるくらい野性的な容姿の菜々美と真逆の、花でも咲くような容姿である。それが迷彩服を着込んでいるので、ちょっと違和感が凄い。

 

とにかくはしごを使って、40式の方に移る。それで改めて何とか王の方を見るが、うえっと声が出ていた。凄まじい有様で、原型も残っていない。装甲はドロドロである。痛々しいまでの有様だった。

 

いずれにしても、これは良く生きていたなと、自分を褒めたくなる。それは脱出しろといわれる訳だ。

 

ブラックウルフが追いすがって来るが、それを狙撃部隊が撃ち抜く。数は減りつつあり、やっと戦場は収束しつつある。それでもまだ散発的な戦いが続いている。第一師団は大きな被害を出し、それでも持ち堪えているが。これは最終的な被害は、一割に達してしまうかも知れない。

 

味方陣地に戻る。

 

姉は元々キャノンレオンが一体、ブラックウルフ数十体を想定していた。だから、姉は責められない。

 

そもそも人間はシャドウに局地戦ですら勝ったことがない。個人レベルでの戦闘なら例はあるのだが、それですら少数なのだ。

 

だから、初めての勝利となると。

 

その被害が想像を超えて甚大なのは、仕方がないのかも知れない。

 

手当てを受ける。

 

火傷は思ったほど酷くはなかったが、それでも彼方此方体を打ち付けていた。周囲では救急車両が走り回っている。ブラックウルフによる波状攻撃は止みつつあり。数が減った故に、敵を近づけずになぎ倒すことが出来るようになりはじめていた。

 

「此方スカウト11! ブラックウルフ、増援確認出来ず!」

 

「そのまま各スカウト部隊は確認を続けろ!」

 

「はっ!」

 

「偵察機やドローンを使えるのなら、こんなことには……」

 

ぼやく師団長の声が聞こえる。

 

しかし、菜々美からしても敵の挙動は異常だ。そもそもとして、いきなりあり得ない数が湧いてきたように思うからだ。

 

周辺の地区から集まって来たにしても多すぎる。

 

特にキャノンレオンのような大物は、光学探知で発見できていないのはあまりにもおかしいのだ。

 

これは兎に角、姉の見解を待つしかないのか。

 

他の学者も頑張っているだろうし、それらの話を聞くしかないのかもしれない。

 

一時間ほど戦闘が続き、第一師団に仕掛けて来る敵はいなくなった。それでやっと撤退が始まる。

 

京都に部隊を進めるどころじゃない。

 

やはり無線を聞く限り、二個連隊が蹂躙され、他の連隊も被害を受けている。最終的な被害は千人を超えたようだった。

 

勝利は勝利だ。

 

中型二体を含む相当な規模のシャドウの群れを撃ち倒したのである。これは人類にとって画期的な勝利と言える。

 

だがそもそも敵は世界中に存在しており、京都にいる敵を倒したに過ぎない。それもまたいつ湧いてくるか。

 

シャドウの発生プロセスはよく分かっていない。

 

少なくとも生物と同じように交配して子供を作っている様子もなければ、細胞分裂みたいに増えている事もないらしい。

 

どこから現れているかさえよく分かっていないのだ。

 

本当にこれは勝利と言えるのだろうか。

 

先に重傷者を優先して、負傷者が運ばれて行く。

 

菜々美も最後の方に運ばれて行くが。

 

総司令部から通信が入っていた。

 

「畑中少佐、今回も大変見事だった。 それどころか中型に対する圧倒的戦果、君は人類の英雄だ」

 

「褒めてくださるのは有り難いですが、そう面と向かって言うと人間はダメになると思います」

 

「そうか、君は謙虚だな。 それで君は一階級昇進だ。 二階級でも良かったのだが」

 

「有難うございます」

 

まあ、お給金は増えるし、それでいいか。

 

ただ、周囲の阿鼻叫喚を思うと、喜んでばかりもいられなかった。

 

他の人類のコロニーでも軍部隊は保有しているようだが、神戸周辺にいる四個師団は、人類最後のまとまった機動戦力だ。そのうち一つが一割近い損害を受けたのである。補充は極めて難しい。

 

兵器については、各地で倉庫に埃を被っているものがある。それを引っ張り出せばまだどうにかなる。

 

ただ人員は無理だ。

 

クローン技術は既に実用化しているが、クローンは出来ても人間の急速栽培みたいなことは出来ない。

 

それはまた技術のレベルが一段階違うと姉は言っていた。

 

それである以上、兵士は育てるしかない。

 

完成型の兵士が生えてくるなんてことはありえないのだ。

 

昔のバカな企業経営者でもあるまいし、そんなことは流石に今の人類は考えていないと菜々美も思いたいが。

 

いずれにしても今回の損害は相当に痛かった筈。

 

しかも人材が足りない現状を考えると。

 

誰かが責任を取って辞任というわけにも行かないだろう。

 

病院に着く。

 

其処でニュースが流されていた。

 

第一師団の被害、一割を超える。これについてちゃんと報道しているのは偉い。一度マスコミは完全に解体されたと聞くが。それもあって健全化されたのだろう。

 

それでいて、中型二体と、数百の小型を倒したという報道もある。

 

病院が負傷者……それも重傷者で溢れている状況も報道されているから、それが苦い勝利だと言う事も伝わっている筈。

 

それでいいのだ。

 

とりあえず菜々美も手当てを受ける。

 

そして病院を出ると、珍しく神妙な顔の姉と、三池が来ていた。

 

姉は何も言わなかった。

 

ドがつくほどの変人の姉だが、今回の見通しが甘かったことは理解で来ているのだろう。

 

それにこれだけの被害が出たのだ。

 

これで総合的に見て大きな勝利で、この程度の損害は許容すべきだとかほざくようだったら、顔の形が変わるまで殴る所だが。

 

そういうことは姉もいわない。

 

姉の運転する車で戻りながら、言われる。

 

「ケーキバイキングとはいかないけれど、ホールケーキを用意しておいたわよ」

 

「そうか、それは助かる。 それくらいの贅沢は許されるよね」

 

「ええ。 勿論助手が焼いたから」

 

「はあ。 本当は畑中博士が焼くと言い張ったのを止めました」

 

それは助かる。

 

ともかくまずは家に戻る。

 

基本はずっと軍の宿舎にいるのだ。勝利した上、負傷もしたのだ。たまには家に戻るくらいはいいだろう。

 

途中で、なんとか王の話になる。

 

「斬魔剣が有効な事は証明されたのも事実。 とりあえず、今回の戦訓で得られた教訓を反映して、超世王セイバージャッジメントを修理改修しないとね」

 

「いや、あれもう修理なんて出来る状態じゃないよね?」

 

「何を言っているの。 スーパーロボットっていうのはね、人型でなくても、どれだけ破壊されても、雄々しく立ち上がってくるものなのよ!」

 

「いや、そもそも立ってないよあれ」

 

流石に呆れる。

 

そういえば、だ。

 

宇宙戦艦が何度も激しい戦いで傷つきながら、敵の星間国家を撃ち倒す傑作アニメが昔あったのだが。

 

日本ではその姿を称賛していたが。

 

海外のファンは、どうして新しいのを作らないのかと疑問を呈する人が多かったのだとか。

 

その考えの違いかも知れない。

 

これでいて姉は結構古風な日本人。

 

菜々美は割とリアリストよりなのかもしれなかった。

 

まあ、制御システムなどは割と最後まで生きていたようだし。全面改修をするにしても、ある程度は生かせるのかも知れない。

 

姉の技術力は変態的なので、あのなんとか王がいずれ歩いて斬魔剣とかを振るう日が来る可能性もある。

 

三池がケーキを出してきたので、ありがたくいただく。

 

ケーキも、流石にあの死ぬ思いをした後だ。普通こういうケーキは一つ二つピースを食べるとうんざりしてしまうものだが。

 

今日は幾らでも食べられそうだ。

 

黙々とケーキを食べていると、姉は先に上がると言って、家を出ていった。

 

これは上がるのでは無くて事後処理だな。

 

そう思ったが、何も言わずに見送る。

 

三池が残った。

 

「あれで畑中博士は、二体目のキャノンレオンが現れてから、相当に動揺なさっていたんです。 畑中少佐……いや中佐になられたんですね。 中佐が勝利したのを見て、こっそり涙を拭いておられましたよ」

 

「そうでしたか」

 

「だから、あまり塩対応はしてあげないでください。 私もそろそろ行きます。 どうやら本気で畑中博士は、あのスクラップからええと……セイバージャッジメントを復活させるようですので」

 

「大変ですね」

 

苦笑いすると、三池は行く。

 

一人家に残ると、ケーキは途端にまずくなった気がした。

 

人には皆で食べるのが好きな者と、一人で食べるのが好きな者がいる。

 

私は普段は後者なのだが。

 

今はどうしてか、不意に寂しくなった気がした。







死闘……決着!

大きな被害は出しましたが、初陣にて今まで明確な撃破例がなかった中型、それも二体を撃破。立派な……歴史的な戦果です。

そしてスーパーロボットはあの鉄の城がそうであるように、どれだけ傷ついても立ち上がってくるからスーパーロボットなのです。

立ち上がっていない?

それは言わない約束です。



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