スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
シャドウ相手に戦車として使ってまるで役に立たなかった最新型戦車、アレキサンドロスⅢ。
性能としては文句なしで、整地走行時速100㎞、レールガンを装備しているなど、まさに次世代戦車として申し分ないものです。勿論装甲も現在GDFで使っている40式より上回っていて、戦車としてならとても強い戦車でした。
問題はそれがシャドウ相手には意味がない事です。
大きな組織ってのは、間違いを認めるのが難しく。一度動き出すと、とんでもない大失敗をするまで止まれないことがあるのです。
ただ、それによって生じたものを、今回は一部だけ……無駄にせずにすむことになります。
イエローサーペント八体を倒したところで、限界が来た。
ブライトイーグルが海上に出現。明確にイエローサーペントと連動しての動きを開始したのだ。
これが非常に隙が無い動きであり。
以降の撃破は無理だと広瀬大将が判断。
以降の作戦行動は控えるようにと達しが出た。
目標である十体には届かなかったが、それでも八体の撃破は大きい。イエローサーペントの機嫌を伺いながら細い海路を必死に行き来していた海上輸送部隊も、これで少しは日本近海に限定するなら動けるようになる。
今の時点では、それで充分過ぎるだろう。
菜々美は一旦京都工場に戻る。
工場に入ると、いつも使っている40式では無く、新しい機体が来ていた。というか、これは。
「アレキサンドロスⅢ?」
「よく分かったわねえ」
にやにやとしている姉。
このあいだスコットランドから派遣されてきた部隊が壊滅したが。それで泡を食って逃げていった「軍事顧問」達が放棄していったのだ。後方に一両だけ、予備機体が残されていて。それも放置して逃げていったのだ。
それを広瀬大将が回収させた。
旧軍需産業の面子はあの時、更にこの間のスコットランドでの敗戦で丸つぶれになり。ついでに敗戦で家族を失った兵士に偉そうなことをほざいていたCEOだったかが撃ち殺される事件が起きたらしく。とうとう泡を食ったようだ。
それらもあって、これの活用を自由にして良いと言う約束を取り付けたらしい。
整地機動の時速100㎞を初めとして、40式より優れている点が幾つかある可能性が高い。
あくまで戦車として、だが。
それを姉がこれから分解して、解析するそうだ。
設計図などは、流石に軍需産業側が渡してくれなかったそうだが。
姉が勝手に分析するらしい。
ちなみにブラックボックス部分は流石に持って帰られたそうだが。そんなものは姉にとってはどうでもいいようである。
解体して解析しているようだが、姉は腕組みして珍しく考え込んでいる。
この戦車は、対人兵器のままである。
それは菜々美にも見て分かった。
人間の戦車を相手にすること。後はドローン兵器などの対抗策。それに対戦車ミサイルなどに対する対策兵器。
つまり、シャドウが現れる前に戦車に必要とされた装備を更に刷新し、詰め込んでいるようである。
ふーん。
本当に「戦後」を見据えているんだな。
そう思う。
あの手の軍需産業は、この段階でシャドウを追い払った後の事を考えていると聞いたことがある。
そういうのが超世王をたびたび馬鹿にしているのは周知。
あんなものは我々の戦車でまたたくまに撃破出来るとかいって笑っている連中がいるのは菜々美も知っている。
それはそうだろう。
そもそも超世王は対戦車兵器ではない。
対シャドウ兵器だ。
対戦車、対人兵器を想定して作られたこのアレキサンドロスⅢでは、シャドウには勝てない。
たった25年前、当時世界最強の座を不動としていたM1エイブラムスを多数有していた米軍が、瞬く間に壊滅させられた戦訓を忘れてしまっている。
一世代もあれば人間は過ちを忘れ、あっと言う間に堕落する。
それは菜々美も聞いたことがあったが。
このアレキサンドロスⅢは、まさにその象徴。
戦車としては優れている。
装甲などもかなり対戦車装甲としては悪くなく、姉が作ったヒヒイロカネなんとか装甲ほどではないが。
相当な口径の戦車砲を防ぎ。
更には独特の傾斜装甲を採用していることで、弾丸を逸らすこともかなり容易にやるようである。
戦車としては悪くないのだ。
どうして今までの兵器が通用せず。
その延長線上の兵器でも通用しないと分からないのか。
それが菜々美には、悲しくてならないが。
三池さんが説明してくれる。
「大きな会社や国家というのは、一度戦略を決めた場合、転換は難しいんです。 昔人間社会で最強だった兵器を作るという思想は今でも変わっていなくて、どうしても根本的に兵器を作る思想を変えると言う事ができないのだと思います」
「なんだか情けない話ですね」
「世界大戦の頃は、むしろ柔軟に戦略の転換をしたのが北米の軍需産業だったんですけれどね。 どんな優れたシステムも、使う人間次第と言う事でしょうね」
姉がアレキサンドロスⅢの内部を調べていたが。その間、菜々美はシミュレーションを使わせて貰う。
グリーンモアを捕らえて、出来るだけ短時間で殺す。
データが手に入った今は、それも出来るようになって来た。
あの速度、その気になれば軍殺しだってできた筈だ。本当に指揮に徹していたのだとよく分かる。
それに、小型による飽和攻撃が厄介だ。
パワーパックの改良だけではない。
コアシステムの支援が更に強化されないと、複数の中型を相手しつつ、小型の飽和攻撃を捌くのは無理だ。
実際グリーンモアの判断は正しかった。
あのまま戦闘が長引いていたなら、菜々美は負けていたし。
呉美大尉が支援してくれなかったら、それでもまた菜々美は負けていただろう。
戦略的に広瀬大将が前回の会戦では一枚上を行っただけ。
それだけだ。
それも、次に同じ手は通用しないだろう。それにこの状況でも、シャドウが全部まとめて攻めてきたら、人間が奪還した土地なんて一瞬で奪還し返されるし、なんなら人間も滅ぼされる。
未だにまな板に乗せられた鯉である事実は変わっていない。
それが現実なのである。
シミュレーションで戦闘訓練をこなした後、出る。
姉はずっとアレキサンドロスⅢに潜っているようだが、時々顔を出してメモを取っているようである。
なるほどねえ。
あれだけ調べていると言う事は、何かしら参考になる部分があるのかも知れない。
三池さんがクッキーを焼いてくれたので、皆でいただく。
姉がもしゃもしゃと食べている。
本当に女子力が皆無だなと、菜々美は呆れていた。
「畑中博士、もう少し上品に食べましょう」
「身内だからいいのよ。 それよりも、戦車としては優秀だけれど、これ内部に複数人を乗せる計画があったと見て良さそうよ」
「今の時代にですか?」
「そういうこと」
呆れ果てた話である。
言う間でも無く、人的資源が壊滅的な今は、戦車は一人乗りが主流である。歩兵戦闘車も操縦者は基本的に一人。
歩兵戦闘車の場合、展開する兵士達がいる部分は、クリーナーやシルバースネークとの戦闘を想定して最悪の場合には切り離せるようにブロック化している。
それくらい、人的資源を重視するようにしているのだ。
戦車を複数運用するのは、昔は当たり前だったが。
シャドウに対して決定打にならない今は、それはただの人的資源の無駄遣いである。
「というわけで内部構造は無駄だらけ。 最初から構築の戦略が破綻しているという事ねえ」
「やっぱり柔軟に戦略の転回はできないものですね」
「それよりも、何か超世王に応用できそうか?」
「出来そうよ。 無駄な部分は多いけれど、流石に向こうの技術者も結構頑張っているみたいね。 ただ、それでも限界がある。 シャドウ戦前から生き残っている技術者は少ないだろうし、どうしてもこういうのは名人芸になるものね」
北米の軍需産業は、シャドウ戦前は極めて優秀だったらしい。コンペを行い、いかに大手でも駄目な兵器は採用しないような厳しい競争制度を作って、新兵器の開発も妥協なしでやっていたそうだ。
だがそれも、此処まで状況が悪化すると厳しくなる。
それにそんな北米でも失敗兵器は出していたし。たまにとんでもない欠陥品を採用してしまうこともあったそうだが。
まあ、いずれにしても過去の話であるとこれを見ると分かる。
「幾つかの長所はあるけれど、対シャドウ用と考えると40式と同レベルで失格。 レールキャノンを搭載しているし、それの火力は対戦車用としては満点だけれど、シャドウには効かない。 本当に挙げている報告書などを読んでいないのねえ」
「速力は今の時点では良い方では?」
「それも調べたけれど、山岳地などではかなり厳しいわね。 超世王が踏破性を求められている兵器であることを考えると、これではダメかな。 前の戦闘でひとたまりも無く10両のアレキサンドロスⅢが壊滅したのも、腐葉土と地形で上手く身動きが取れなかったから。 舗装道路の上で戦うのなら、40式よりあらゆる点で上だろうけれど、この国みたいな峻険な地形の土地で戦う場合は、結果が逆転するわね」
姉は指についたクッキーの欠片を舐めながらいう。
本当に女子力ゼロだ。
昔あったモデルやらのコンテストにでれば、トップも狙えるほどの美貌なのに。中身は本当に残念である。
「とりあえず私はこれからまたシミュレーションに入る。 調整を頼む」
「後でね。 もう少しこの子を調べてから、まとめて超世王に反映するから。 今まで複数のシミュレーションデータを作っておいたから、それを対応できるように訓練しておいて」
「了解」
「アラームはきちんと守ってください。 大丈夫だとは思いますが」
三池さんに言われて、頷いてシミュレーションマシンに入る。淡々と小型の飽和攻撃と、中型との戦闘をこなす。
姉も現時点で出来る改良を超世王に施してくれているが。
どんどんゲテモノ感が増すばかりだ。
このまま今まで交戦した陸上の敵全種と交戦できるように超世王を改良したら。人型ロボットなどとは似ても似つかない姿になりそうだが。
まあ、その時は。
ある程度我慢して、使いこなすしかない。
菜々美もどうせ乗るなら、人型で、羽とかついていて、パイロットと喋ったり出来るスーパーロボットに乗りたいなあとは思うけれど。
人型だと歩く度にとんでもない負荷がパイロットに掛かって、走ったりしたらシェイクされてそのままコックピットでおっちぬと思うし。
無限軌道や四足での限定的移動を採用している今の超世王は、色々とロボットとしては正しい姿なのだろうとは思う。
訓練に戻る。
そうすると、すっと雑念は消える。
小型の飽和攻撃に対する訓練だ。前より更に数が増えている。オートキャノンを姉は採用するつもりはないらしいので、斬魔剣の二刀を利用して。シルバースネークに対応しつつ、接近した小型を薙ぎ払う。
それを淡々と、あらゆる角度から攻めてくる小型に対して行う。
単騎で戦場をひっくり返す決戦兵器といえば聞こえはいいが。
40式とやりあったら多分負けるし。
本当にシャドウ相手にしか勝てない兵器だ。
だから軍需産業の者達も反発する。
それは分かっているから、なんだか悲しいのだった。
数日シミュレーションを続けて、データを取る。小型との飽和戦はとにかく頭を酷使する。
横になって休んでいると、姉がアレキサンドロスⅢを片付けさせている。広瀬大将に引き渡すらしい。
以降は第二師団で予備として使うそうだ。
多分オートキャノンを搭載して、他の戦闘車両と一緒に運用するのだろう。多少速力が上がっても、シルバースネークの毒吐きには耐えられないし。ブラックウルフやクリーナーに接近されたらおしまいなのに代わりは無いのだ。
姉は全て調べ尽くして、興味を失った。
これを数年がかりで開発した技術者達は憤慨するかも知れないが、残念ながらそれが現実である。
凄まじい勢いでキーボードを叩き始める姉。
恐らく設計を根本的に変えるのだろう。
ちょっと五月蠅くなってきたので、仮眠室を使う。しばらく頭を休ませる。恐らく、姉が対小型戦での負担を減らす措置はしてくれるはず。
問題はホワイトピーコックなど、超世王で交戦した事がない小型がまだいる事だ。
気になっている相手もいる。
飛翔型の小型種。
グレイローカスト。
灰色のイナゴと言われるこの飛翔種は、他と同じく二m程度だが、主にユーラシアの中央部で暴れていた種だ。
この種はとにかく数で平押しして来るタイプで。昔世界中で猛威を振るった蝗害を思わせる存在だった。
姿もバッタに似ているが、二mと兎に角巨大で、口は当然人間をかみ殺すのに用いられている。
そしておかしな話だが。
この種が通り過ぎた跡は、荒れ地が緑化され。砂漠も緑化されている。
その点では、何もかも作物を食い荒らしていくイナゴとは色々な意味で真逆だと言える。
まあ、イナゴとはいうが。実際には蝗害を起こすのはトノサマバッタの一種である。それは此処でいっても仕方が無い。
しかも環境が安定したからか。
今では実際の蝗害はまったく起きなくなっているらしい。
皮肉極まりない話である。
当然だが、これも近代兵器は通じない。これはブラックウルフなどと違って飛んでくる上に、時速も二百㎞近い。
その代わり殺傷力は個体個体で低く、あまり高く飛べない事もあって、渡海についてはあまり確認されていないそうだ。
つまりシルバースネークのような飛び道具はなく、ブルーカイマンのような水陸両用ではなく、ホワイトピーコックのような迫撃砲でもない。クリーナーのように人間の痕跡を消して回っているわけではない。
ブラックウルフと同じく、人間を殺す事に特化しているタイプの可能性が高いが。
ただシャドウがやっている緑化については、分かっていない事がかなり多い。そのため、このグレイローカストについては、今の時点では交戦の可能性も含め何ともいえないのが事実だった。
戦闘データを取りたいと上層部が言ってくるかも知れないが。これとの交戦はかなり厳しいと菜々美は判断している。
他の小型以上に数の暴力に特化しているし、此奴もシャドウだ。質量兵器は通用しないとみていい。
最低でもHEAT弾を直撃させる必要があるが、あれはそんなに簡単に撃てるものでもない。
螺旋穿孔砲での戦闘にしても、相手は恐らく群れ単位で動いてくる。
今のGDFの戦力をかき集めても、群れ一つに対抗すら出来るか怪しい。
とりあえず思考を止めて、一眠り。
起きだすと、ナジャルータ博士が来ていた。
「沖縄方面に上層部は進むようにと言ってきているようです。 この過程で、九州の近海にある幾つかの島をまずは開放する予定だとか」
「また馬鹿な事を。 イエローサーペントとブライトイーグルが警戒態勢に入っている状態なのに?」
「最初の目標として種子島を狙うつもりのようです」
「彼処は確か中型がいたわよねえ」
おきだしてきた菜々美に気付いて、ナジャルータ博士が敬礼してくる。
軽く一緒に話す。
やはり上層部が荒れているらしい。
この間のスコットランドから派遣されてきた部隊の文字通りの全滅もある。勝利が欲しいと言っているらしい。
それだけ焦っているようだ。
各地での反攻作戦も、小型相手に限定的な戦果を出しているだけ。
GDFの主力とも言える日本の四個師団(実際には三個師団で残りは予備だが)を可能な限り活用して、戦意高揚を計りたいらしい。
広瀬大将は、第二師団の再編制中を理由にまだ動けないと断ってくれているようだが。
それもいつまで続くか。
「種子島にいる小型はおよそ500。 ブルーカイマンも近付く可能性は低く、上陸さえ出来ればひょっとすれば超世王一機だけで対応できるかも知れません」
「あら乗り気?」
「この間の戦闘で、小型の飽和攻撃には既にある程度の耐性が出てきていることがわかりました。 なんとか狙撃大隊を複数援護に上陸させることが出来れば、シルバースネークにも対応できるでしょう。 問題は中型ですね。 日本本土にはいない中型であるレッドフロッグがいます」
「……」
レッドフロッグ。
これもあまり戦闘記録がない中型だ。長距離攻撃を得意としているようなのだが、限定的なデータしか無い。名前通り巨大な赤いカエルににた姿をしている。
ただそれはあくまで全体的なシルエットでの話。
カエル……両生類でもっとも有名な生物だろう。魚類が陸上に適応し、やがて地上侵出する過程となった生物、それが両生類だ。やがて両生類から爬虫類が生じ、それから様々な種の生物が発生していくことになるのだが。
まあそれはいい。
確かシャドウ侵攻前の世界の少し前くらいに、ツボカビ病というのが大流行したらしく、カエルは世界的に壊滅の危機に陥ったらしい。
元々脆弱で何故生き延びられてきたか分からない、とか抜かす者もいたらしいが。
はっきりいって3億年以上前から地上に両生類はいて、それで今まで地上にいる。人間とかいう欠陥生物より生物モデルとしてはよっぽど優れている。
人間はダニングクルーガー効果というもので、中途半端に知っている状態の人間が、一番自分をものごとに詳しいと認識する傾向があるらしい。
それから考えると、まあそういう寝言はただの阿呆の戯れ言であり、一人の部屋で壁にでも呟く言葉であろう。
それは菜々美にも分かる。
で、レッドフロッグであるが。
少ないデータを、ナジャルータ博士が出してくる。
一応菜々美も軍に入った後は、講習を受けた。特に士官になった時には、催眠教育で現在「発見」されているシャドウ(あくまで存在が確定されているだけなので、以前現れたスプリングアナコンダのように、人間に「発見」されていないだけのものもまだまだいると思われるが)は頭に叩き込んだのだが。
確かにレッドフロッグはあまり情報量が無かった気がする。
本職の研究者の言葉だ。
まずは聞かせて貰うのが一番だろう。
「水中種では徘徊型の補食種もいる現有の両生類ですが、どちらかというと現在生息している蛙は待ち伏せ型の捕食者で、例外なく肉食です。 視力はあまり強くなく、動くものには同種であろうと見境なく襲いかかるタイプもいます。 ダルマガエルなどがそうですね。 ですがこれはあくまでそれで大丈夫、というだけの話であって、蛇類などが種として発達する過程で知能を劣化させたのと同じく、生存に必要なかったというだけです。 孤島で飛ぶ必要がない鳥が飛行能力を失うことがありますが、それと同じです。 飛行能力は極めて体に激甚なリスクを与える能力であるので、必要ない環境ではない方が生存に有利だったりするのです。 進化とか退化なんて言葉は人間の主観に過ぎない。 そういう好例ですね」
ふむふむ。
確かにその通りだ。
今は催眠教育でこの辺りはすらすら理解出来るレベルの知能を誰でも持っている。これが人間の教師が教えていた時代は、勉強なんて一夜漬けで全てすぐに忘れてしまう人間がかなり多かったと聞いている。
それは教育を無駄にしているのと同じである。
金をドブに捨てているようなものだったのだろう。
「カエルに形状は似ているレッドフロッグですが、全長12mと他の中型に比べると体の長さは短めな反面、ダルマガエル種と似て体が円形のため、長さに比較して体はずっと大きいと言えます。 また動きが鈍重かというとそういう事もなく、時速百数十㎞で移動出来る点で小型種に近い性能を持ち、更に特性としては戦車で言う超信地旋回に近い瞬間的なその場を維持しての回転で凄まじい速度を出し、回転速度は音速以上に達するようです」
こいつも音速か。
厄介極まりないな。
それで、ナジャルータ博士が数少ない戦闘データを見せてくれる。
こいつは数例、中華の都市に現れたケースがあったようだ。既にシャドウ出現前には、バブルが崩壊し。
政府が冒険的な軍事行動に出る、国家としては極めてまずい兆候……不況などの失政の不満を紛らわすために軍事的成功や他国への憎悪を煽る行動は歴史的に良い結果を招いた試しが無いのだが。とにかくその状況に出ようとしていた中華の各地の都市の一つに現れたレッドフロッグは、周囲にある存在全てを、一瞬にして薙ぎ払った。
軍が鎮圧するどころではなく、監視カメラのデータによると、半径三キロくらいの範囲が瞬時に消し飛んでいるようだ。
更に移動しつつ都市をあらかたがらくたに変えた。
もっともその都市は、不動産業の過剰投資による廃墟に近い状態だったようで。骨組みだけで放置されているアパートが、こいつになぎ倒されただけに近い状況だったようではあるが。
最貧民が当時も当然問題になっており。
そういった放棄されたアパートに住んでいた住民は、欠片も残さず消し飛んでしまったらしい。
同時に中華全土に現れた中型、小型に文字通り軍が薙ぎ払われて全滅していった事もあり、レッドフロッグには対処も殆どされず。
一応近場にいた駐屯軍が対応に向かったが、地対地ミサイルを撃ち込んだが当たり前のように効果無し。
撃ち込んだ七秒後に部隊ごと消し飛ばされてロスト。
他に数件戦闘データがあるようだが、概ね同じような状態のようである。
シャドウが現れた直後は、相手の特性も分からないし、近代兵器が通じないらしいと言う事も誰も理解出来ないほど混乱があったこともある。
怪獣映画などでは、あっと言う間に怪獣への対抗戦術を開発したりするものだが。
残念ながらこれは怪獣映画ではない。
怪獣と戦ってくれるヒーローもいないのである。
勿論菜々美はそんな英雄とは違う。
「射程距離は三キロ程度と言う事でしょうか。 だとすると、これはソニックブームなんですか?」
「いや、一概にもそうとはいえないようです。 破壊の跡地を後からかろうじて撮影できた例が幾つかあるのですが、それらを分析する限り、ソニックブームというにはちょっと無理があります」
ソニックブームによる破壊は文字通り圧倒的だ。
飛行機が超音速にこだわればこだわるほど、形状を変えなければならなかった程には。自身にもダメージを与えるし、周囲にもしかり。
超音速で生じる衝撃波であるソニックブームは、それほど恐ろしいものなのである。
だが、それらを無差別にまき散らしているにしては、破壊の規模が限定的だとナジャルータ博士がいう。
「レッドフロッグは形状はカエルに似ていますが、カエルに見られる巨大な口は存在していません。 その代わり複数の穴が体に開いていて、これから超高速で何かを伸ばしていると見て良さそうです。 それも三キロ先まで」
「つまり棘を体中から射出しているみたいなものだと」
「そうなりますね。 いずれにしても、恐ろしい相手です。 軍殺しとしても、充分な性能を持つ中型だと思われます」
なるほどね。
超世王でこいつを倒すとしたらどうするべきか。それは姉が考えてくれるのではあるのだろうが。
島としてはそれなりに大きいとは言え、種子島で小型500とこいつを同時に相手にするのは厳しいように思える。
師団規模の軍勢を上陸させるのも難しいだろう。だとすると、超世王で小型もこいつも引き受けなければならないということか。
これは、今回も厳しいな。菜々美はそう思った。
こうして超世王セイバージャッジメントに全体的なパワーアップが入ります。
そう!
いわゆるロボの強化&乗り換え回です!
毎回一から全部作り直しているようなものですが、基本的なガワは変わっていなかったので、今回はそれが根本的にバージョンアップした事になります。
……まあバージョンアップしたところで、ぜんぜん追いつかないくらいシャドウがやばいんですがね。
感想評価などよろしくお願いいたします。励みになります。