スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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種子島と言えば今では宇宙開発の最先端ですね。

古くはここに火縄銃……分類的には先込め式マスケット銃が伝わったことが知られています。それ以前に中華経由でもっと古い銃が入ってきていた説もありますが、種子島に伝わった先込め式マスケットが爆発的に量産され、戦国のゲームチェンジャーになったのもまた事実なのです。

この色々と歴史ある島も今は完全に緑の沃野に戻っています。

そこにいるシャドウとの死闘が開始されます。






3、宇宙に近かった島

種子島は宇宙開発センターが存在した島だが、それ以前に鉄砲伝来の地としても知られている。

 

実際にはいわゆる火縄銃……先込め式マスケットの伝来前に、中華経由でもっと原始的な鉄砲が日本に入っていたという説もあるのだが。

 

ただ現実問題として、種子島で量産化に成功した先込め式マスケットが、以降は戦場を支配する人権武器になったのは事実である。

 

また、近代では宇宙開発のための拠点としても活躍し。

 

小惑星に世界で初めて着地し、サンプルを持ち帰るなど記録的な事績を残してもいるようだが。

 

それはそれとして失敗も少なくなく。

 

それにどうしてか宇宙開発に反対する勢力が騒いだりしたりと。

 

まあ色々と、あまり平穏とはいえなかった島であったようだ。

 

昔だったらヘリボーンとしゃれ込んで、大型輸送ヘリで一気に連隊規模の戦力と、それに超世王を送り込めたかも知れないが。

 

やはり九州にブライトイーグルがいる現状、それは無謀すぎる。

 

何隻かの揚陸艇に分乗して、そして種子島に。

 

分乗するのも、安全対策だ。

 

今の時代、艦隊というのは揚陸艇の群れを指す。

 

イージス艦を初めとして、空母も巡洋艦もミサイル艦も、シャドウが現れる前に活躍していた兵器類は、今では悉く役に立たなくなってしまったのだから。

 

種子島に到着。

 

最悪の事態……水際殲滅の兆候は無し。超世王が最初に出て、海岸線から進む。そして、後方から狙撃大隊が進む。

 

連隊規模……六個狙撃大隊が、歩兵戦闘車とジープに分乗し、戦闘地点に設置する置き盾もトラックで運んでいる。

 

もう戦場では見慣れた光景だ。

 

置き盾を突破されれば、シルバースネークの毒吐きが人間や歩兵戦闘車に直に飛んでくる。

 

戦車ごと溶かしてしまう恐ろしい毒だ。正確には毒かどうかすらわかっていない。

 

それを防ぐためには、置き盾を使い捨てにするしかない。

 

戦闘の度に膨大な物資を無駄にするという点では、今も昔も変わっていないと言える。シャドウをもう少し駆逐出来て、物資を採掘できたらと言うたらればでものを考えるのは愚行だ。

 

今はやれる物資で。

 

やれることをやるしかないのだから。

 

菜々美は前衛に出る。

 

スカウトが、情報を整理している。

 

「種子島全域に散っていた小型が集まり始めています! 此方の上陸に気付いた模様!」

 

「レッドフロッグを確認! G41地点!」

 

「……」

 

調べて見ると、小高い丘になっている。

 

なるほど、全方位からの攻撃を見通し、対応する事ができるというわけだ。本来だったら的になる場所だが。

 

シャドウにとって、人間の通常兵器なんていたくもかゆくもない。ABC兵器が通じない相手だし、質量兵器だって通らないのだ。

 

だったら、的になろうとどうでもいい。

 

見通せる場所が一番良いというわけだ。

 

「各部隊、展開完了!」

 

「後方支援部隊、撤退支援準備良し!」

 

「巡視艇展開終わる! 海上から敵援軍を監視!」

 

「攻撃開始してください」

 

広瀬大将の指示と同時に、狙撃大隊がシルバースネークを一斉に撃ち抜く。

 

前衛に出ている超世王に、一斉に小型が掛かってくる。

 

一旦無限軌道で全身開始。

 

超世王の左右に出ている足は、接近戦で「踏ん張る」際に用いる。今回もそれは同じである。

 

相変わらず時速百数十㎞で接近して来る小型種。

 

ブラックウルフが主体だが、なんだか嫌な予感がする。とにかく、さっさと蹴散らしてしまう。

 

斬魔剣を振るって、飛びかかってきたブラックウルフを片っ端から斬り伏せる。

 

アレキサンドロスⅢのシステムを利用した事により、超世王のパワーパックは小型化、更に戦闘可能時間が三倍になった。パワーそのものも1.7倍近くまで上がっている。これはどうしてかというと、40式に使っていたパワーパックよりも、ただ単純に世代が上がったから、らしい。

 

本来は4倍近いパワーを出せるものだったらしいのだが、それにはサイズも重量も大きくなる。

 

シャドウとの戦闘では、あまり的が大きくなっても意味がない。

 

実際40式より一回り大きいアレキサンドロスⅢがまたたくまに小型シャドウに潰されたように。

 

残念ながら、兵器そのものは一世代や二世代進歩した程度では、シャドウには手も足もでない。

 

ましてや対人戦を主眼としている兵器なんて、四世代五世代と進歩しても、シャドウには通じるか怪しい。

 

いずれにしても姉の改良は完璧に近い。

 

反応速度が明確に上がっていて、それで瞬く間に小型を斬り伏せられる。

 

だが、違和感があったのは。次の瞬間だった。

 

移動。

 

直後、機体が激しく揺動。

 

踏ん張ったのは、コアシステムの支援で即座に足を用いた結果だ。そうでなければ、恐らく機体がひっくり返っていただろう。

 

「超世王、被弾!」

 

「いえ、至近距離に着弾! 今のは……」

 

「データを分析します! 恐らくはレッドフロッグからのものです!」

 

「バカな、八㎞は離れているんだぞ!」

 

連隊長が叫ぶ。

 

すぐに態勢を立て直し、群がってくる小型を斬り伏せる。想定の範囲内だ。グリーンモアは時速900㎞とされていた歩行速度だったが、あいつがいざ本気を出したらマッハ7に達した。

 

やはりレッドフロッグも、本気など全く出していなかっただけだ。

 

「此方ナジャルータ。 観測データを廻してください。 此方で予想していたものか解析します」

 

「イエッサ!」

 

「レッドフロッグは!」

 

「動き無し!」

 

あの超信地旋回はやっていないということだ。

 

無言で細かく機体を調整しながら、群がってくる小型を斬り伏せ続ける。シルバースネークは狙撃大隊が始末してくれている。

 

まだだ。

 

解析が終わるまでは耐えろ。

 

二発目。今度も機体がひっくり返りそうになる。無限軌道で移動しながら戦闘しているが、そうでなければ直撃していただろう。一応その時は、姉の新兵器が火を噴いていただろうが。

 

ちなみにコレは姉の発言である。防御兵器が火を噴くというのはよくわからない話である。

 

小型は徐々に数を減らしている。もともと五百程度しかいなかったという話だ。だったら、このまま行けば。

 

シルバースネークは狙撃大隊が始末してくれているし、手が空いた狙撃大隊は他の小型も撃ち抜いてくれている。

 

ならば、このまま押し切れるはずだが。

 

「移動速度を上げてください、畑中准将」

 

「了解」

 

五秒後。

 

再び着弾。距離がかなりある。今度は激しく揺らされるくらいで、それで耐え抜く。菜々美はシートのスプリングが調整されたのか、今までの二度の至近弾でもそれほどのダメージは受けていない。

 

姉も細かい所ではどんどん改良を入れてくれているのだ。

 

「やはり。 分かってきました。 どうやらレッドフロッグは、本来は範囲制圧を雑にするのが得意な中型種。 遠距離への攻撃も出来ますが、移動目標への攻撃は苦手なようですね。 或いは攻撃手段の速度が遅いのかも」

 

「それでも偏差射撃をしてくる可能性もありますが」

 

「いえ、今のは偏差射撃をしての結果です。 射撃前にレッドフロッグが体の向きを変えるのを確認しています。 そのまま速度を維持しつつ、小型を」

 

「巡視艇11! こ、こちら小型種確認! グレイローカストです! 推定数、300! しかも後続が続いている模様です!」

 

最悪だ。

 

継戦は出来る。

 

移動していればレッドフロッグの攻撃には当たらない。だが後続のグレイローカストも当然来るだろうし、前衛の300だけで洒落にならない。

 

狙撃大隊が接触でもしたら、それこそ秒で溶けるだろう。

 

それほど数の暴力で押してくるシャドウは危険なのだ。

 

「グレイローカストの進路は」

 

「種子島にまっすぐ進んでいます!」

 

「……狙撃連隊は後退の準備。 勝負に出て貰うしかありません。 畑中准将、レッドフロッグは恐らくですが、観測する限り何かしらの質量弾を用いています。 それは質量弾でありながら質量弾ではなく、射撃後レッドフロッグに戻っていると見て良いでしょう」

 

「うーんと、ロボットアニメに出てくるビット兵器みたいなものということですか?」

 

少し悩んだ末に、ナジャルータ博士はだいたいその認識でいいという。

 

しかもだ。

 

そのビット兵器は超音速で飛び回る上に、数は恐らく無尽蔵。ただ、明確な弱点があるという。

 

「レッドフロッグの超信地旋回と広域攻撃の破壊跡を見る限り、それらビット兵器?はあまり精確な挙動が出来ない様子です。 超信地旋回をしたレッドフロッグが全身からそれらを射出。 恐らくまっすぐしか飛ばないのでしょう。 ただし、レッドフロッグの体に空いている穴からそれらが射出されているとすれば、レッドフロッグを中心とした半球体の全箇所をカバーできるほどの破壊を作り出すと見て良いでしょう。 畑中博士が作り出した防御兵器を使い、どうにか接近してください」

 

「……了解」

 

そして接近後は、当然継戦能力を残す事が必須になる。

 

恐らくグレイローカストは菜々美を潰すために飛んできている。今分かっているだけで300。

 

この数はシミュレーションでは撃破出来ているが、その後にはもっと来ていると見て良いだろう。

 

それを考えると、レッドフロッグを倒し。

 

先発の300を倒した後、最悪超世王を放棄して逃げる事を考えなければいけなくなるだろう。

 

無言で速力を上げる。

 

姉が作った新兵器を展開する。

 

今回のは、ちょっと今までと方向性が違っている。ナジャルータ博士が、一種の質量兵器だろうと言っていたのは、以前も聞いていた。

 

だけれどそれには実体が見当たらない。

 

質量弾の場合は、射出してそれで終わりでいい。そのまま周囲を薙ぎ払っておしまいである。

 

超信地旋回からの全弾発射で周囲を破壊し尽くすならそれで良いはずだが、レッドフロッグの「整地」はあまりにも雑。欠点がある。

 

更に言えば、破壊の痕のデータをナジャルータ博士は調べ尽くしていた。

 

姉はその結果、有効打になりうる装備を作り出してくれた。

 

レッドフロッグに、接近開始。

 

出力は上がっているが、速力は上がっていない。機体が戦車なのは変わっていないのである。足とか横に出ていて使えるし、上に色々積載しているけれども。それでも速度はそんなには出ない。

 

ただしかなり無茶な機動はできる。

 

ジグザグに、速度70㎞を保ったまま進む。レッドフロッグが何度か攻撃してくるが、全て外れる。狙撃大隊も距離を保ちながら前進。小型の内、シルバースネークは処理してくれる。

 

菜々美は進みながら、ブラックウルフとクリーナーを片付けて行く。もう小型は残り少ない。

 

増援が来ているのが問題だが、それもどうにかする。

 

レッドフロッグが当たらないと判断したのだろう。

 

超信地旋回を始める。

 

此処からだ。

 

超信地旋回を開始すると言う事は、あの範囲攻撃が来る。即座に丘の影に退避。一発目は撃たせる。

 

撃って来た。

 

文字通り、半径三キロほどが、消し飛ぶ……と言いたい所だが。既に下草が生えている地面はノーダメージ。木々などにも傷はついていない。

 

本当にどういうことだ。

 

人工物にだけダメージを与えているということか。

 

菜々美が超世王を滑り込ませた丘も無事だ。

 

即座に飛び出して、迫る。超信地旋回を停止したレッドフロッグが、しばらく動きを止める。

 

ビット兵器のようなものを使っているのであれば。

 

恐らく何かしら充填のようなことをしている筈。その間に、一気に接近させて貰う。

 

速度を上げる。

 

80㎞まで出す。

 

それでも追いついてくるブラックウルフを、狙撃大隊が始末してくれる。シルバースネークは駆除完了したようだ。

 

何しろ舗装道も全てクリーナーに処理されているから、超世王が段差で文字通り跳ぶ。着地で強烈なダメージが流石に来る。さっきの至近弾よりも来たが。まだ大丈夫。今までの戦闘に比べたらマシ。

 

「分析完了! 超信地旋回の速度は毎秒2550回転! 撃ちだしているビット兵器の数は推定40000! 次は回避できません! とにかく接近するだけ接近してください!」

 

「了解!」

 

もうレッドフロッグは目の前だ。

 

奴はこちらを見る。

 

いや、目も口もないから見ているかは分からない。そもそもシャドウは生物かも怪しいし。感覚器官ににたものがあってもそれが機能しているかは分からないのだ。イエローサーペントのように音だけに反応している者もいた。

 

此奴は、何に反応している。

 

レッドフロッグが、また超信地旋回を開始する。

 

しかし、その体の穴が、横一列に並ぶ。穴の位置を調整出来るのか。いやはや、なんでもありだな。

 

そして、これは要するに、ガトリングガンのようにこっちを狙ってくると見て良い。それも、ガトリングガンなんぞ問題にもならない連射速度でだ。

 

これは、オートでは防ぎきれないな。

 

即座に姉が作った兵器を展開する。ロボットアームが繰り出したそれは、なんというか。あまり言い方は良くないが、シャボンを噴く道具に見えた。

 

玩具の銃でももうちょっと殺意がある。

 

接近。

 

レッドフロッグが、凄まじい連射を仕掛けて来る。敢えて接近を直線では斜めにして、直撃を防ぐ。

 

やはりそうだ。

 

ビット兵器らしきものは直進とレッドフロッグに戻る事しか出来ない。

 

それでも分析して正体が分からないほどのものだ。当たれば一発で超世王は粉々だが。

 

しかし、それはさせない。

 

即座に放たれたそれは、炸裂していた。

 

放たれた瞬間に。

 

立て続けに放たれる白い弾が、次々に炸裂していく。

 

これこそが、姉が作り出した防御兵器。

 

前のなんとかシールドとか封魔盾(封魔盾はどちらかというと攻撃用途の盾だったが)とは違う第三の防御兵器。ええとなんといったか。陰陽バリアだったか。

 

白玉団子みたいな弾丸を次々にはなっているが、これらは極めて柔らかく、しかし粘性が恐ろしく高い。ただそれだけのものだ。

 

本来だったら投げつけても其処までの殺傷力はないのだが。今回は相手側の速度がおかしすぎる。

 

そのため粘性が高いただの弾が、そのまま鉄壁と化す。

 

空気に関しては、どうもシャドウは無視したり、自在に操れている節がある。

 

だが、そうではないこういう粘性が高い非自然物だったどうか。

 

次々に炸裂する白い弾が、その度に強烈なビット兵器の直撃を防いでいる。ただ、これも弾数があまり多く無い。

 

超信地旋回を続けているレッドフロッグに、到達。

 

そのまま斬魔剣を突き刺していた。

 

凄まじい勢いで、レッドフロッグが切り裂かれていく。あまり深く入れると一瞬で折れる。だから、少しずつ、この回転にあわせて刃を入れていかないとまずい。切り裂かれ熱を帯びたレッドフロッグが、絶叫に近い悲鳴を上げる。

 

超信地旋回が止まるが。

 

だったら更に刃を押し込んでいくだけだ。円だから巨大な体だが、それでも似たようなサイズの中型は何度も倒して来た。

 

今更此奴程度を怖れるか。

 

四つ足で這いずるようにして、のしかかってくるレッドフロッグ。切り裂かれながらも、体で勝負に来たのか。

 

いや、違う。

 

即座にバック。

 

レッドフロッグの足が、機体の一部をフッ飛ばしつつ、地面に食い込む。

 

なんだ今の。

 

超世王の機体がひっくり返り掛かったが、それは左右の足が必死に防いだ。だが、足の一本は持って行かれた。

 

レッドフロッグから外れた斬魔剣。

 

まずいな。こいつ、接近戦で変な技を使ってくる。

 

そのまま斬魔剣を再び振るうが、レッドフロッグがついにそこでビットの正体を見せる。奴の体に空いている穴から出てきたのは、ちいさなレッドフロッグだ。数㎝もないだろうか。

 

それらが、一斉に超世王に群がってくる。

 

まずい。

 

速度がないのなら、シャドウとして対処するしかない。移動しながら、追ってくる多数の小型から距離を取る。

 

レッドフロッグには今ダメージを与えたが、それでも倒せる程じゃない。追ってくる小型は、射出されたときほどではないが、それでも追いついてきそうな程の速度だ。状態に気付いて、狙撃大隊が援護射撃をしてくれるが、四万とかいう数である。潰しきれる筈がない。

 

投擲型斬魔剣、射出。

 

そのままレッドフロッグに直撃。

 

食い込み始めるが、レッドフロッグは跳躍すると、なんと背中側から地面に体を叩き付ける。

 

その瞬間、小型レッドフロッグは動きを止めるが、投擲型斬魔剣を折り砕いていた。

 

やはりそうだ。

 

あいつ、なんか変な力を操っている。必死に距離を取りつつ。接近の隙をうかがう。幸いもうあの超信地旋回からの全方位攻撃は使えないはずだが。いや、それすら思い込みに過ぎないか。

 

グレイローカストも接近してきている。

 

「グレイローカスト、今のままだと後7分で種子島に上陸します!」

 

「各狙撃大隊、急いで揚陸艦に! 巻き込まれたら犬死にするだけです!」

 

「くっ、撤収する!」

 

斬魔剣を振るい。更にパイルバンカーから高出力プラズマを叩き込む。小型レッドフロッグをそれでなぎ倒せるが、ひとかたまりで来るのでは無く、散って迫ってきている。

 

それに、だ。

 

さっき破壊され滑落した装甲と補助足に、小型レッドフロッグが集る。それで、それらは一瞬で腐食し、崩れてしまった。文字通り何も残らない。

 

レッドフロッグが起き上がる。

 

傷は回復していない。

 

しかし、今の状態で無理に接近して、とどめを刺しきれるか。仮にとどめを刺したとして、それでグレイローカストの群れを迎撃できるか。

 

出力が問題ではなく、高熱を当て続けることが、シャドウを倒す条件だ。これは今まで、幾度も見てきた。

 

それがどうしてなのかは分からない。

 

頭を働かせる。

 

「そうだ……」

 

さっき、レッドフロッグが投擲型斬魔剣を折り砕いたとき。わらわら来ていた小型レッドフロッグが一瞬動きを止めた。

 

だとしたら。

 

そのまま全力で、斬魔剣を垂直に構えて、レッドフロッグに突貫。此方に向いて、足を上げたレッドフロッグ。

 

その時、小型が止まる。

 

やはりだ。

 

レッドフロッグの体の動きと小型レッドフロッグの動き、連動している。どっちも同時には操れない。あの小型、レッドフロッグそのものなんだ。

 

足を振り下ろしてくるレッドフロッグ。

 

また装甲を派手に抉られる。外から操縦席に光が入り込んで来ているほどだ。だが、直撃は避けた。

 

超音速の相手とやり合ってきたんだ。その程度の四股踏みにやられるか。

 

レッドフロッグの体にパイルバンカーから高出力プラズマを流し、更に斬魔剣を突き立てる。

 

悲鳴を上げてもがくレッドフロッグ。小型が一斉に来る。

 

此処で、勝負を付ける。

 

また体当たりをしようと体を揺らしてくるレッドフロッグだが、動きは見切った。即時でさがる。だが、体当たりが想像以上に伸びて。超世王に当たり、機体がひっくり返りそうになる。

 

それ以上に衝撃が凄まじい。

 

頭を打ちそうになった。

 

だが、それでも負けるものか。必死に踏みとどまって、往生際が悪い化け物カエルに攻撃を続ける。

 

斬魔剣が深く食い込み、パイルバンカーから直接流し込まれるプラズマが、奴の体にダメージを与えていく。

 

小型が群がってくる。超世王の履帯が一瞬で腐食。まずい。超世王そのものが、このままだと。

 

だが、紙一重。

 

斬魔剣が通る手応えがあった。

 

ざっくりと斬魔剣が通った結果、レッドフロッグが消えていく。それと同時に小型も。深呼吸しながら、状態を確認。

 

装甲だけじゃない。腐食が機体全域に拡がっている。装甲はもうダメだ。パージできる部分はパージする。

 

ロボットアームはまだ動く。

 

機体の彼方此方に穴が開いている状態。装甲はほぼ全損。

 

だが、なんとかなる。

 

そのまま、揚陸艇に向かう。

 

「グレイローカスト、動きを止めません! まだ種子島に向かっています!」

 

「此方でどうにかします。 それより後続は」

 

「後続の巨大な群れは……停止! 様子を見ているようです!」

 

ま、そうだろうな。

 

恐らくだけれど、グリーンモアなどの指揮系統を扱っている個体がいて、それがグレイローカストを指揮していると見ていい。

 

レッドフロッグが倒された以上、これ以上の無駄な被害の拡大を避けるのが敵としては普通だ。

 

種子島の守りを薄くしていた理由はわからない。或いはただ、孤島だったから放置していただけかも知れない。

 

いずれにしても、超世王がダメージを受けていること。

 

これ以上泥仕合を避けるためにも、現在向かわせている戦力だけをぶつけてみて、倒せないようなら戦略を調整する事。

 

これが恐らくは、グレイローカストを操作しているシャドウの考え。

 

そう「考えている」かは分からないが、戦略的にもっとも合理的と判断したのがそれだったのだろう。

 

ただ、そう動いたことだけは分かるが。

 

最終的な戦略目標は分からない。人間と同じように考えているとはとても思えないからだ。

 

いずれにしても、グレイローカストの群れを迎撃する手段が、揚陸艦隊には存在していない。

 

ここで菜々美がどうにかするしかない。

 

来る。

 

三百体が殆ど一丸となって迫ってきている。投擲型の斬魔剣はさっきレッドフロッグに潰されてしまった。

 

深呼吸して、忙しくレバーを操作する。

 

組み付かれたら終わり。

 

一体でもくっつかれたら、即座に機体をひっくり返される。グレイローカストでもそれは同じの筈だ。

 

迫ってきたグレイローカスト。両側の足のうち、残っているものを地面に突き刺す。不退転というよりも、最大限ロボットアームと斬魔剣の性能を引き出すためには、それが絶対に必要だ。

 

グレイローカストの速度はやはり200㎞に達している。しかもこいつは、普段は地上にいて、跳躍と飛翔をこなす。

 

バッタとにた性能持ちだ。

 

それでいながら、口は人間どころか、戦車の装甲を容易に噛み裂く。

 

襲いかかってきたグレイローカストを、片っ端から斬る。

 

アラートが鳴りっぱなしだ。

 

既に機体の全体にダメージがあり。

 

そしてどうしても、体当たりなどを仕掛けて来るグレイローカストもいる。擦っただけで超世王の機体が揺動する。

 

固定のための残っている足が、吹っ飛ぶ。砕ける。

 

砕けたものにグレイローカストが集り、一瞬で無に帰してしまう。無に帰すのは本当にどうやっているのか。

 

いや、それについて文句を言うのは後だ。

 

30、40、50。数えながら、次々斬る。

 

揚陸艦隊は退避を開始している。これなら仮にグレイローカストの本隊が種子島に向かってきていても、どうにか九州まで退避できるだろう。

 

無線は全て切る。

 

これは集中を切らないためだ。

 

だが、アラームは無視出来ない。

 

戦闘によるダメージが、機体全体に蓄積しているし。

 

何より操縦席に光が差し込むくらい機体が損傷している状態だ。下手をすると、そのままグレイローカストが操縦席に何か打ち込んでくる可能性すらある。

 

それでもやる。

 

100を超えた。

 

既に周囲で渦を巻くようにして跳んでいるグレイローカストが。波状攻撃を続けてくる。

 

一斉に飛びかかっても厳しいと判断したとみていい。

 

そういうのを数体ずつまとめて斬ったからだ。

 

後ろの方が熱い。

 

これはパワーパックが損傷したな。それでひょっとすると、熱暴走が始まっているのかも知れない。

 

また蒸し焼きか。

 

スプリングアナコンダとやりあった時の事を一瞬思ってげんなりした次の瞬間、今までで一番大きな衝撃が来た。

 

体当たりをいなしきれなかったのだ。

 

機体のフレームが拉げて、操縦席が傾く。

 

これは仮に生き残っても。

 

超世王のコアユニットを守りきれるかどうか。

 

ぐっと歯を噛む。

 

次の世代……呉美大尉に任せるには、まだまだ敵の強さが圧倒的だ。人類が敵の事を全然知らない。

 

まだ死ぬわけにはいかない。

 

頭もクラクラする。

 

恐らく敵は飽和攻撃に味を占めている。菜々美の頭の処理能力の限界をほぼ見切ったのだろう。

 

支援システムによる補助にも限界がある。

 

それらもシャドウは、既に見切っている。

 

敵はそれだけこっちを知っているのに。こっちは敵を全く知らない。この点だけでも、ただ生かされているだけというのが、嫌でも分かる。

 

また衝撃。

 

まだロボットアームは動く。

 

残り80を斬ったか。

 

とにかく、徹底的に暴れ狂ってやる。だが、足は全て砕かれた。履帯も外れている車輪をフル活動させて、それで相手を斬りに行く。さっき程までの斬魔剣の操作精度は保てないが。

 

それでも、その場で棒立ちから機動戦に切り替えて、少しでも相手を翻弄する。

 

またたくまに残り10まで斬り伏せる。

 

鼻血が出ているっぽい。

 

完全に処理能力の限界を超えている。

 

小型種との連戦がこうも厳しいとは。

 

やはり名人芸だと限界がある。それについては、菜々美も理解せざるを得ない。それに、彼方此方から光が差し込んでいて、この機体がいつ潰れてもおかしくない事も分かるのだ。

 

ついに斬魔剣の動きが鈍くなりはじめる。

 

見るとロボットアームにも限界が来ていた。

 

姉があれほど頑丈に強化してくれたのだけれどな。

 

やはり創意工夫ではどうしても限界があるか。

 

それに創意工夫と名人芸の組み合わせだ。

 

それを思うと。限界が来るのは必然であるのかも知れない。

 

最後の一体。

 

向き合う。

 

羽を広げて威嚇するそれが、ジグザグに跳んで襲いかかってくる。最後の一体になっても、戦意を失わない。

 

いや、違う。

 

今までのもそうだったが、超世王を明確に敵と認識してからは、此奴らは、特に小型は。情報収集を徹底している。

 

超世王の進歩速度も含めて。

 

全てを知るつもりだ。

 

そして菜々美は訓練で名人芸を維持しているが、恐らくはその名人芸も、更にはコアユニットや支援システムによる補助も。

 

いずれ此奴らに見切られる。

 

それまでに魔王を倒すか、シャドウとのコミュニケーションを確立できるのか。

 

激しい激突。

 

最後の一体を倒すと同時に、斬魔剣が光を失った。同時に、オーバーヒートの警告音がなる。

 

コアユニットを外して、機体から出る。

 

良くコレで動いていたなと、機体を見て流石に絶句してしまう。笑えてきた。だが、どうにか勝ったか。

 

少し肌寒い。

 

この辺りは既に亜熱帯に近い気候だし。

 

シャドウが来る前は、夏場は灼熱地獄に等しい有様だったらしいが。

 

今は秋だと言う事もある。

 

地球の平均気温、いや特に日本の平均気温は、文字通り人間が暮らせる限界近くまで上がっていたらしいが。

 

それも既に過去の話だった。

 

ホバーが来る。

 

決死隊のようだった。

 

すぐに回収作業を頼む。コアユニットを引き渡すと、後は担架で運ばれるのに身を任せる。

 

今回もギリギリの勝利だった。

 

そしてはっきり分かった。

 

相手は人間を殺しつくす気はない。もしもその気があるのだったら。超世王は、もっと大規模なグレイローカストに襲われて、塵と化していただろう。

 

シャドウは何を考えている。

 

それだけが、気がかりだった。








ビット兵器ってファンネルとかが有名ですが、あれって実際あったら厄介でしょうね。

現在使われているドローンが更に発達したらああなるのかも知れませんが。




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