スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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冒頭の島には実在のモデルがあります。

ただ、現状では多少は状況が緩和されているらしいという噂はありますね。

実際はどうだかは……コメントを避けます。





シャドウは何を目論む
序、無人島


その九州近郊の島は曰く付きの場所だった。オカルト的な意味ではなく、反社の人員供給であまりにも有名だったのだ。

 

反社のヒットマンや鉄砲玉と言われるような人間を多数輩出し、非常に治安が悪く、地下興業まで行われているような場所だった。

 

そこが今。

 

超世王に乗った菜々美が、ふてくされて警戒に当たっている中。

 

小型を駆逐した結果、どうにか取り戻す事は出来たのだが。スカウトが発見したのは、文字通りの更地だけだった。

 

人間がいた痕跡、なし。

 

全てが綺麗さっぱりなくなっている。

 

昔は暴力と悪徳の島だったのだが。それも全てシャドウの前には無力だった。金で人を買収できたかもしれない。

 

それが政治家や警官であっても。

 

だが、シャドウには金なんぞなんの意味も無かった。

 

世界の長者番付の上位にいた人間達が、ランスタートルにシェルターごと粉砕されて誰も生き残れなかったように。

 

スカウトが戻ってくる。

 

「やはり痕跡などありません」

 

「ダメか。 この島は連絡が途絶えたのがかなり後だったから、生き残りがいたかも知れなかったのだが」

 

「……」

 

菜々美は知っている。この島の悪徳を。

 

全て抹殺されて良かったとまではいわない。

 

だがいずれにしても、無実でもなければ助かるべき人は他にいたとしかいえない。だから、何も言わない。

 

命を選べる立場に菜々美はない。

 

命を選べる存在がいたとして、そいつが神と呼ばれるものだったとしても。この世界の理不尽ぶりを見る限り、まっとうな奴ではないだろう。

 

どの道、わざわざこの島を危険を冒して解放した事に価値は感じない。

 

価値があるとしたら。

 

部隊の練度を上げ。

 

超世王の性能を強化し。

 

人員を養える土地を再確保した、くらいだろうか。

 

揚陸艇で戻る。

 

ともかく今回の作戦までに一月以上掛かった。超世王を直したりバージョンアップしたり。

 

菜々美自身もまた入院して、色々調べられたし。

 

医師にくどくど怒られたし。

 

訓練して、病み上がりでこういう島を幾つか開放したが。いまだにイエローサーペントの勢力は強く、安全に航行できる海域は限られている。その上ブライトイーグルとの連携も強くなっており、簡単に攻略できる状態でもない。

 

そもそも九州北部を初めとして、まだまだ日本本土だって殆どシャドウの勢力下にあるのだ。

 

こんな小島を開放しても。

 

それに、シャドウが戻って来た場合。

 

此処を守るのは不可能だろう。

 

ただ、収穫はある。

 

此処での戦闘で、また多数の小型を倒した。問題であった遠距離攻撃型のシルバースネークだけが課題だが、それについても姉は考えているらしい。

 

いずれ、対小型特化型の超世王がデチューンモデルの完成型としてロールアウト出来るかもしれない、らしい。

 

まあ菜々美はお手並み拝見としかいえない。

 

まだ交戦経験がない小型は何種類かいるのだが。

 

それらについても、いずれ交戦の機会はあるだろう。

 

半日掛けて、宿舎に戻る。

 

疲れが溜まっているので、断って休ませて貰う。しばらく大きな作戦は無い筈だ。この間の被害0勝利。

 

それで気をよくした上層部が、無茶を言っているようだが。

 

現時点では中型が確認されていない孤島を攻略できる範囲で攻略する事で、「成果の進展」を広瀬大将はアピール。

 

アホ共をどうにか抑える事に成功はしている。

 

だが、この間の戦いでは、グレイローカストがもう少し来ていたら死んでいた。

 

それも分かっているから。

 

今ナジャルータ博士が、必死にシャドウの分析をしてくれている。

 

横になってぼんやりしていると、連絡が来る。

 

相手は、これは誰だ。

 

名前は覚えがない。

 

菜々美は個人アドレスはほとんど誰にも教えていないのだが。ただ、スパムではないようだ。

 

昔は凄まじい勢いで飛び交っていたらしいスパムメールも、その供給源のサーバが根こそぎシャドウに潰されてしまった。

 

それもあって、今は静かなものである。

 

犯罪組織そのものが、極めて縮小した。それも原因なのだろう。

 

「貴方の事を知りたい」

 

「誰だお前。 誰かに間違えてメールを送っていないか」

 

「貴方は畑中菜々美。 超世王セイバージャッジメントを駆り、多数の中型を倒した英雄だ」

 

「まあそれはそうだが」

 

誰だ本当に。

 

名前を見ると、「ノワール」とある。確かどっかの言葉で黒を意味する言葉であったか。暇なので、やりとりをしてやる。

 

ただ、アドレスなどは後で調べて貰うが。

 

「で。 それがどうした」

 

「貴方は何故戦っている」

 

「仕事だから」

 

「そうか。 この戦いに勝ち目が無いことは分かっている筈だ。 それでもどうして仕事をできる」

 

まあ、それもそうだ。

 

シャドウが本気で全方位から襲ってきたら、神戸なんかあっと言う間に陥落する。それは超世王が数百体の小型と、二~三体までなら中型……交戦経験がある相手を相手に出来る今でもまったく同じだ。

 

アニメのスーパーロボットではあるまいし。

 

空にビームを放ったら、雑魚敵が左から右に全部爆発して消えるなんていうことはないのである。

 

超世王はとにかく生臭いロボ……いやロボかすら怪しい。一応高度なロボットアームを装備はしているが、ロボかと言われると、菜々美も口をつぐんで横を向くしかない。ロボットアニメが好きな人がこれはロボではないと言い出したら、菜々美はコメントを避ける。そういうのは確か相当五月蠅い人がいて、色々面倒だと聞く。正確には、そうだった、が正しいか。今では娯楽をそのように楽しむ精神的な余裕すら人々にはないのだ。姉みたいなのが例外なだけである。

 

シャドウとの戦力差は、各地で広瀬ドクトリンによって編成された部隊が出て来て、小型相手に戦いはじめた今でも同じだ。

 

中型相手の戦いは絶対に避けろ。

 

それは各地に徹底されている。

 

「この先貴方はどうしたい」

 

「出来れば楽に余生を過ごしたいよ」

 

「意外と好戦的ではないのだな」

 

「私の世代はシャドウに家族を殺されていない場合が殆どだからな」

 

実際問題、原始的なクローン技術や、人工子宮で子供が生まれてくる今の時代。親の敵も何も無い場合も多いのだ。

 

ただ、あまり核心的な事をいうとまずい。

 

少し前から、既に通報して、メールのやりとりをしている相手を探って貰っている。適当にやりとりをしているのは。

 

相手を突き止めるためでもある。

 

「分かった。 君は思ったほど闘志があるわけでも、殺意に満ちている訳でもないらしいな。 私が調べたロボットアニメの主人公は、熱い闘志に満ちていたり殺意で心が一杯だったり、燃える魂とやらを持っているものだったが」

 

「これでも軍人なのでね」

 

「そうか。 では失礼する」

 

メールのやりとりが止まった。

 

即座に保安部から連絡が来る。

 

どうも今のやりとりだが、既に廃棄されたサーバから来ていたらしい。ゴミ捨て場で見つかったそうだ。

 

しかしながら、どうしてこれが動いていたのか分からないらしい。

 

相乗りして其処からメールを出してきたとかではないかと思ったのだが。画像を見せられる。

 

なるほど、雨ざらしで電源も入っていないサーバか。

 

MACアドレスは完全に一致しているらしく、動くはずがないそうだ。近々リサイクルに回される予定だったらしい。

 

今の時代、昔みたいにゴミを見境なく捨てていられる状態ではなく。

 

どんな物資も、再利用が基本なのだ。

 

「ノワールとか名乗っていたけれど、随分なれなれしかったなあ」

 

「とりあえず畑中准将、新しい携帯端末を送ります。 念の為、メールアドレスなども変更してください」

 

「了解」

 

実際問題、メールアドレスを相互登録している相手は殆どいない。

 

ちょちょいと移行作業は出来る。

 

それで充分である。

 

伸びをして、また休む。

 

もう連絡は来なかった。

 

 

 

翌日。京都工場に出向く。昔は高速鉄道とか飛行機とかがあったらしいが、今はそうもいかない。

 

幸い四国と近畿は工兵部隊が橋を造ってくれたが。

 

まだ豊予海峡に橋は無い。

 

これもあって、九州まで出向くと、戻るのが大変なのだ。

 

姉は相変わらずずっとキーボードを叩いていた。

 

声を掛けて来たのは三池さんである。

 

「畑中准将、おかしなメールが来たのだとか」

 

「話が早いですね。 ノワールとか名乗る相手でした。 廃棄されたサーバからメールが飛んできていたようです」

 

「色々へんな話ですよそれ」

 

それはそう。

 

てか全部変な話だ。

 

咳払いすると、三池さんが説明してくれる。

 

ネットの基礎的な知識は菜々美にもある。だけれども、三池さんはそっちの方で色々知識があるらしい。

 

なんでもそれによると、現在は世界規模のネットワークというものは存在していないらしい。

 

古くは海底ケーブルなどを用いてネットワークを世界中でつないでいたらしいのだが、それらはシャドウの活動で全て失われた。

 

今では25年の間に開発された遠距離通信システムを用いて、地球の電離層を利用して遠くから電波をやりとりするため。GDFの会議ではボイスオンリーの代表がどうしても出るのだそうだ。

 

なるほどねえ。

 

そういう事情もあり、街中だったら携帯をどこでも使えたような時代とは違い。

 

今のネットというものは、25年前にシャドウに世界が席巻される前の一万分の一程度の規模しか無く。

 

SNSなどでも誹謗中傷をすれば一瞬で特定されるという。

 

それくらい、規模が縮小しているのだ。

 

おかげでネットを通じての工作は今ではそれほど主流ではないそうだ。すぐにばれてしまうからである。

 

「こんな時代に、ネットを通じて悪戯をして、しかも尻尾を掴ませないというのは色々妙ですね。 各国にもそんなことをしている余裕がある国は存在していない筈です」

 

「まあ、そこまで大げさに考えなくても良いのでは」

 

「これが人間の仕業だったら良いんですけれど」

 

黙り込む。

 

幽霊だのなんだのは考えていない。

 

シャドウが何かしらの接触を図ってきた、ということを考えたのだ。それについては三池さんも同じらしい。

 

「仮に人間以外の相手からの連絡だった場合、そいつは人間のアニメ文化、それもロボットアニメの文化を知っているレベルです。 世界中でシャドウが何もかも破壊し尽くした今、保全されているアニメは作られたものの一割もないと言われています。 それなのに知っているとすると……」

 

「確かに、今新しいアニメを作る余裕なんてないですよねどこの国にも」

 

「ええ。 ちょっと色々不自然ですし、好機かも。 もしも次にそのノワールとかいう存在から連絡が来たら、もう少しやりとりを引き延ばした方が良いかも知れないですね。 というか、私に連絡をください。 私の方から対応します」

 

それは心強い話だ。

 

ともかく、シミュレーションマシンに入る。

 

また調整が入っている。

 

幾つかの孤島を「解放」してきた訳だが。その過程で得られた戦闘データを早速反映しているらしい。

 

いずれにしてもまた動かしやすくなった。

 

前回の種子島の戦闘で、殆ど機体が全損レベルのダメージを受けたが。即座に作り直す予算も確保は出来ている。

 

超世王は金食い虫ではあるが。

 

昔存在した空母とかの超大型兵器ほどではないのだ。

 

しばし訓練を続ける。

 

対小型、それも大軍相手の訓練を続ける。姉が装備したのは、改良型の試作式オートキャノンである。

 

これで菜々美の負担を少しでも減らすつもりらしい。

 

むしろ接近戦の相手よりも、遠距離から狙ってくるシルバースネークをこれで倒してくれると、かなり楽になる。

 

ただ改良しても螺旋穿孔砲だ。

 

次の射撃まで40秒掛かる。

 

これでも最大限放熱などで頑張っているらしいのだが。機体に掛ける負担などを考えると、これ以上小型化は難しいし。

 

何よりもこれ以上対小型にリソースを削ぎたくないというのが姉の本音らしい。

 

ただ、正直グレイローカストみたいな数で平押しして来る相手には、文字通り何もできないのが現状で。

 

それに対してどうにか対策を練らなければならないのも事実だが。

 

改良したデータを試して、それでアラームが鳴るまで訓練する。

 

悪くない。

 

てかますます良くなっている。

 

レッドフロッグも、次にやり合ったら前よりは楽に勝てるはず。最悪、小型数百と中型1に守られた島なら、シルバースネークの数次第では超世王単騎で制圧する事が可能になるかも知れない。

 

だがそれが限界だ。

 

限界を超えるために、姉は今、必死にチューニングをしてくれている。

 

菜々美は仮眠室に行くと、冷蔵庫からプリンを出して食べる。三池さんが一つ食べて良いと言っていたのだが。

 

バケツプリンで作ったらしく、菜々美の分だけではなく、整備工の人達の分まで作ったようだった。

 

マジでママだな。

 

そう思いながら、プリンを食べていると、連絡が来る。

 

アドレスは変えたが、またノワールとやらじゃないだろうな。

 

そう思っていたら、違った。

 

ナジャルータ博士だった。

 

「調べていた島で新しい情報を得ました」

 

「これ、全体メールだ」

 

つまり姉や三池さんや広瀬大将のところにもメールが飛んでいると見て良いだろう。ざっと見ていく。

 

人間の痕跡が綺麗に消されていて。地形まで元に戻されていたそうだが。

 

一つだけ、不審なものが残っていたらしい。

 

どうやら古い古いご神体だ。

 

どこかの祠の中身だったもののようだが。祠はシャドウに壊されたが。中身だけは残されていたらしい。

 

変わった形の石で、それが記録に残っていたため。祠があった地点で発見できたそうだ。

 

「石で作ったものにかんして、シャドウは自然物と判断する可能性があります。 ただし、大型の彫刻などは破壊されているのを確認されているため、あくまで小型のものに限られますが」

 

「……」

 

それもまた妙な話だ。

 

確か京都で地蔵が壊されず残っていた事例があったのだったか。

 

しかし、いずれにしても小型の石などに対して、シャドウが破壊を躊躇っている様子もまたないようだ。

 

クリーナーが単に破壊するかしないか、の基準でしかないのだろう。

 

そうナジャルータ博士は結論していた。

 

「シャドウから奪還した土地を調べる事で、シャドウが何をよしとし、何を破壊するのかを分析出来ます。 シャドウが再生させているのは人間が出現する前の環境と見て良いでしょう。 人間が作り出したもの全てが基本的に破壊されていますが、石像などの内、野ざらしになっていて風化が進んでいるようなものなのは、そのまま残されていることが多いようです。 これについても分析が必要となります」

 

そうナジャルータ博士は締めくくっていた。

 

しかし、だ。

 

菜々美にもそれでは、なんでシャドウが人間に対する攻撃を、全滅寸前で止めたのかがよく分からない。

 

どこにどれくらいの人間がいるかは、シャドウは把握している筈だ。

 

何しろ地下シェルターですら、ランスタートルに片っ端から粉砕されたのである。今生き残っている人間の場所を、把握できていない筈が無い。

 

それに小型が斃せるようになり。

 

中型も撃破例が出始めている中、シャドウがまた人間を押さえつけにこない理由も菜々美にはよく分からない。

 

確かに大軍を大陸から日本に送り込んできてはいるようだが、それでおしまいだ。

 

シャドウからしてみれば、人間を皆殺しにするのなんて今の状態でも簡単である。菜々美が十人いても、超世王がもっと性能が上がって十機いても、結果はまったく変わる事はないだろう。

 

それは戦って来た菜々美自身が一番よく分かっている。

 

釈迦の掌の上の孫悟空。

 

それが今の菜々美の立場と同じようなものだ。

 

悩んでいても仕方が無い。

 

今はできることをするだけだ。

 

不安で仕方が無い人だっているだろう。幸い菜々美は、そういうのは殆ど感じたことはない。

 

海兵隊で虐めに近い待遇を受けていたときも、腹は立ったが悲観を覚えた事はない。

 

そういう点でも菜々美は常人離れしているのかも知れないが。

 

別に常人離れしているからといって、どうとも思わない。

 

変わっていると言われるかも知れないが。

 

別に変わっていてもどうでもいい。

 

普通である事にも、変わっている事にもなんら価値を感じない。

 

そういう意味では、菜々美はとても冷酷な人間であるのかも知れなかった。

 

シミュレーションマシンで、超世王の調整を続ける。

 

戦闘結果は毎回良くなる訳ではなく、進歩は少しずつだ。超世王に調整が毎回入るのだから、それにあわせなければならない。そうすると、一気に結果が悪化することだってある。

 

そういう場合は、一からやり直しの気持ちで臨む。

 

ただ、それだけの話である。








不可解な存在からの不可解なメール。

この時代はそんな余力が人類にはないので、スパムメールなんてものは存在していません。

そもそも人的リソースも社会規模も現在の百分の一以下なのです。

この不可解なメールは、後に嵐を起こしていくことになります。


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