スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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とにかく可能な限りシャドウの情報を集めなければなりません。

新型武装……特に強化された新型斬魔剣。斬魔剣Ⅱをひっさげ、超世王セイバージャッジメントはまた戦場に立ちます。

勝てる見込みどころか、勝っても何も得られるものなし。

それが分かったとしても。

少しでもシャドウの情報を集めて、今後のためにしなければならないのです。





3、新斬魔剣唸る

どうにか調整がついて。部隊が動き出す。結論としては、姫路近辺が戦闘の部隊になることが決まった。

 

ただしこれについては、上層部にも知らせていない。

 

この間不可解な連絡があった事もある。

 

シャドウはひょっとするとだが。

 

物理的な手段、電子的な手段。他にも人間が知らない手段で、人間の使っている電子ネットワークにアクセスしている可能性がある。

 

直前まで広瀬大将の考えている作戦の青図を読まれないことは大事であり。

 

そのためには、限られた人間相手に、口頭でのみ作戦を伝えるのは、必須だと言えた。

 

ましてやこの間の謎の連絡が菜々美に対してあったばかりである。

 

それを考えれば。なおさらと言えた。

 

超世王は今回当然出るが、敵の至近まではデチューンモデルにカモフラージュして進む事にする。

 

デチューンモデルも数機でるが。

 

殆どはブライトイーグル対策、ランスタートル対策である。

 

これらは流石に現状の超世王では、此奴らに対して対応が厳しいから、というのが理由としてある。

 

戦うには専用の装備が必要なのだ。

 

また、どうにか完成が間に合った対グレイローカスト用の機体。なんとかMLRSを搭載した大型車両も10機がついてきている。

 

勿論一朝一夕で出来るようなものではなく。

 

通常の兵士達がつかえるように訓練のデータを取り。

 

その上で、設計から起こしてロールアウトまで二ヶ月が掛かっている。

 

前回の会戦から随分時間が掛かっているが。

 

その間シャドウは殆ど動きを見せていない。

 

ナジャルータ博士は状況が落ち着いてから工場を出て。シャドウを分析する作業に戻ったが。

 

広瀬大将が、信頼出来る兵士達をつけて護衛をさせた。

 

未だにナジャルータ博士を敵視する人間がいて、5000万しか人間がいない今の状態では、それが間近にいる可能性は跳ね上がるのである。

 

だったら、そういった自衛策を採るしか無い。

 

それが現実的な対応策であると言えた。

 

ともかく、である。

 

まずは作戦行動にそって動く。

 

今回は呉美大尉もデチューンモデルに乗って作戦に参加する。ランスタートル対策のデチューンモデルではなく、斬魔剣二刀流の前線で戦うタイプだ。九州南部での作戦時に比べて、更に洗練されている。

 

シャドウの方も動いているのが分かった。

 

「此方スカウト9! グレイローカストが移動を開始! 数は8000!」

 

「手に負える数ではありませんね」

 

「如何なさいますか」

 

「そのまま前進してください」

 

策はあるにはある。

 

その内容も聞かされてはいるが、それも綱渡りだ。

 

すぐにグレイローカストの群れが動き出したように、シャドウは既に此方相手に油断していない。

 

ただ、仕掛けない限りシャドウも動かない。

 

それも分かっている。

 

この間四国に横やりを入れるような形でブルーカイマンが上陸してくる事態が起きていたが。

 

あれにしても、此方の攻撃に対しての反撃としてのものだった可能性が高く。

 

実際問題、九州での戦闘を終えると。

 

ブルーカイマンの軍団は、さっさと引き揚げて行ったのだった。

 

さて、上手く行くか。

 

スカウトの話を聞く限りは、今の時点では上手く行っていると見て良さそうだが。ともかく、移動を続ける。

 

やがて、想定通りの状況が来ていた。

 

「グレイローカストの群れ、関ヶ原付近に停止! 布陣しています! 更に若狭にいたと思われる群れも、関ヶ原付近へ布陣!」

 

「……」

 

そう。

 

現在、超世王に偽装したデチューンモデルを一機、濃尾に向かわせている。

 

それを護衛させているのは第四師団……つまり予備部隊である。

 

シャドウが警戒しているのは超世王のみといっていい。

 

つまるところ、敵を完全に陽動することに成功した。

 

勿論濃尾にいるグレイローカストの群れが全てではないが。現時点で警戒すべきなのは、グレイローカストが主体だ。

 

だが、姫路近辺での戦闘は、これはこれで問題がある。

 

阿蘇にいるものを含め。ブライトイーグルがすっ飛んでくる可能性が極めて高いのである。

 

また、敵を誤魔化す為もある。

 

全軍の陣列は伸びきっていて。シャドウが攻撃的な行動に出た場合、一気に全軍が瓦解する可能性が高い。

 

それを避ける為にも。

 

戦闘は一瞬。

 

目的を達成したら。土地の確保にこだわらず、さっさと引く。

 

それだけが重要だ。

 

更に問題がある。

 

今回、ナジャルータ博士の要望……つまり複雑な戦術機動を行い。その結果、シャドウの生態を分析しなければならない。

 

出来るだけ超世王には踏ん張って貰い。

 

小型のシャドウ、中型のシャドウとの戦闘経験を蓄積する。

 

それでシャドウの解析が少しでも出来れば。

 

和平はいきなりは無理だろうが。

 

相手を解析する事につながる。

 

相手を解析して、目的だけでも分析出来れば。その先にどうすれば良いかの戦略を練ることが出来るのだ。

 

今まではそれすら出来なかった。

 

それが現実だったのである。

 

作戦予定地点に到着。かなり陣列は伸びきっているが、敢えて相手の敷いている縦深陣地に入り込んでやった。

 

周囲には多数の小型が目を光らせていて、来るなら一斉に襲いかかってやると既に戦闘態勢に入っている。

 

広瀬大将が、敢えて中途半端な陣形のまま。

 

号令を下していた。

 

「攻撃開始」

 

「攻撃開始!」

 

「オープンファイヤ!」

 

戦闘が開始される。

 

一斉に狙撃大隊がシルバースネークを撃ち抜く。同時に後退開始。しばらくは無視していたシャドウ達だが。

 

いい加減五月蠅いと思ったのだろうか。

 

ある一点で。

 

どっと突撃を開始する。

 

シャドウの行動速度は時速百数十㎞。雑兵に等しいブラックウルフや、戦闘向けではないクリーナーですらそうだ。

 

最も優れた陸上兵器でも、これを振り切る事は出来ない。

 

さがりつつ狙撃を続けるが、当然振り切れる筈が無い。

 

一息に前衛が飲み込まれそうになった瞬間。偽装をパージする。

 

今までよりも更に長大になり。そしてギミックを増やした斬魔剣Ⅱが、姿を見せていた。

 

多数のブースターとギミックを持ち、更にはロボットアームと接合して振り回すだけだった今までの斬魔剣。投擲して遠くの敵を倒した後は、ワイヤーを巻き取って手元に戻さなければならなかった投擲型。

 

その双方の問題を解決し。

 

ロボットアームの中に射出機構を搭載したことで。

 

間合いを更に長くし。

 

なんなら投擲も出来るようになった、斬魔剣Ⅱである。

 

ポールウェポンというものはどれもそうだが。陸上型のものは、集団戦でこそ真価を発揮する。

 

良い例が槍衾だろう。

 

基本的にポールウェポンは、ハルバードのように余計な機能をつけているものでなければ、訓練が極めて容易であり。

 

兵士が短時間で使いこなせるようになるだけじゃない。

 

訓練次第では「やり玉に挙げる」と言われるような、対達人用の戦術を、簡単に覚えさせることが出来る。

 

一人が使うことを前提としているのではない。

 

複数人で使い。

 

戦場を数で制圧するのが本来のポールウェポンである。

 

騎兵が振り回すようなポールウェポンは、逆に高度な訓練を受けた戦士が、局所的な戦果を上げるためのものであり。

 

今菜々美が超世王に振り回させているのはそれである。

 

斬魔剣Ⅱは、多数のギミックを搭載している分、本体強度はどうしても劣ってくるのだが。

 

間合いの長さ、ブースターの数もあって、使いこなせば文字通り変幻自在の動きを見せる。

 

そしてその変幻自在は。

 

文字通り、周囲の集ってくるシャドウを、鎧柚一触に薙ぎ散らし続けるのだ。

 

ただ、菜々美の負担も大きい。

 

冷や汗を掻きながら、嫌にスローに見える無数に迫るシャドウを斬り伏せ続ける。今までにないペースで、小型の撃破カウントが上がっている。ただ、それも組織戦をやってこないブラックウルフやクリーナーが相手だからだ。

 

さがりつつ、支援で戦闘している呉美大尉を見る。

 

縦深陣に包まれ掛かった味方を守りながら、全速力で後退を続けている。そしてその過程で、集ってくる小型を蹴散らし続けている。

 

彼方も安心感があるな。

 

いずれ斬魔剣Ⅱをデチューンモデルにも装備したいものだが。

 

隙が見えたので、発射。

 

投擲型斬魔剣も搭載している。

 

これは逆に小型化をしているが、キャノンレオンなどの中型対策ではなく、ピンポイントで狙って来ているシルバースネークなどを仕留めるための装備だ。

 

此方に毒吐きの態勢に入っていたシルバースネークを撃ち抜く。

 

これも散々訓練した。

 

今回から、装備の重量を上げているのだが。

 

それはパワーパックが改良されたため、出来るようになったと判断されたためだ。相変わらず超世王は訳の分からん形状で、ホラー映画に出てくるクリーチャーのような不格好さだが。

 

斬魔剣二刀流に加え、様々な今まで効果が高かった装備を搭載し。

 

文字通り移動する武器庫になっている。

 

時速は80㎞を整地でたたき出すため、40式などのMBTと遜色ない。

 

整地100㎞を出せるアレキサンドロスⅢにはだいぶ劣るが、そもそもとして兵器としての運用方法が違うし。

 

対人兵器であるあっちとは、比べる意味がない。

 

むしろこれだけ色々積んで、40式と同じ速度で走り回れるのだから、その凄まじさに舌を巻く。

 

姉がアレキサンドロスⅢを改良したら、もっと速度が出るのではないのか。

 

そうとさえ思えてきていた。

 

「グレイローカスト、移動を開始! 濃尾に集まっていた者が、此方に向かっているようです!」

 

「数は」

 

「およそ15000! 濃尾にもまだ25000程が残っています!」

 

「時間勝負ですね」

 

ぼそりと広瀬大将がぼやく。

 

実際問題、現状あるなんとかMLRSを活用しても、15000のうち4000を落とせれば良い方。

 

もっと撃破数が落ちる可能性だって高い。

 

敵を一閃してさがる。

 

それが今回の目的だ。

 

前衛でおとりとして動いてくれていた第二師団の狙撃大隊は、概ね逃がせたか。よし。呉美大尉と連絡を取り。

 

今度は攻勢に出る。

 

陣形を立て直し、広瀬ドクトリンにそって交代しての狙撃を出来るようになった狙撃大隊が、伸びきっていた陣列をいつのまにか整え、追撃してきていた小型を一斉に撃ち据える。シルバースネークを優先に徹底的に叩くその戦闘は、徹底的に広瀬ドクトリンを叩き込まれている。

 

中型は。

 

この斬魔剣がどれだけ通じるか試しておきたい。

 

後ろを呉美大尉に任せて、前に出る。

 

試験的に装備したオートキャノンも、シルバースネークを優先して狙っている。このオートキャノン、かなり大きいので、何門も装備出来ない。このため、無理な突出は自殺行為なのである。

 

それでも、前に出る。

 

今はできるだけデータを取らなければならない。

 

斬魔剣Ⅱにはまだまだ多数の機能があるが、小型に見せるつもりはない。中型は。小型がこれだけ縦横無尽に斬り伏せられたら、そろそろ出てくる筈だが。

 

来た。

 

よりにもよってランスタートルか。これは相手に出来ない。即時で後退を開始。

 

ランスタートル対策のデチューンモデルに出て貰う。

 

ランスタートルは小高い丘に陣取って、此方を見ている。その隣に進み出てきたのは。ストライプタイガーである。

 

後退する超世王に対して、更にもう一体。横から、ウォールボアが突貫してくる。狙撃大隊が前進。

 

後退する超世王と呉美大尉のデチューンモデルを支援する。

 

まずは、ウォールボア。

 

だが、ウォールボアが来ると同時に、ストライプタイガーも動き出す。

 

狙撃大隊が支援を開始。呉美大尉と狙撃大隊に小型を任せる。中型二体同時を相手にするのは厳しいが、やるしかない。

 

呉美大尉のは、対小型に特化している。ストライプタイガーを相手にするのは厳しいだろう。

 

ランスタートルが指揮を取っているのか。

 

或いは後ろにグリーンモアが控えているのか、それは分からない。いずれにしても、凄まじい勢いで横合いから突っ込んできたウォールボアだが。

 

その瞬間、折りたたんでいたロボットアームが展開。ウォールボアが、いきなり横にステップ。

 

分かっている。

 

こいつも音速が出る上に、既に二体が超世王にやられている。

 

簡単に斃せる動きはしてこない。

 

同時に、ストライプタイガーが突貫してくる。

 

更に、ランスタートルが浮き上がるのが見えた。これは、例のランスチャージをして来ると見た。

 

デチューンモデルが。対ランスタートルの戦闘用に組まれているデチューンモデルが前に出てくる。

 

決死の突貫だ。

 

小型と戦闘出来るようになっていない。

 

敵味方の動きを見ながら、即座に戦術機動を決める。

 

よし。

 

いきなり最高速度でさがる。

 

ウォールボアとストライプタイガーは超世王の周囲を回転して、仕掛ける隙を狙ってきていたが。

 

ランスタートルの突貫を見据えて、いきなりその軌道上から外れたのだ。

 

そして、その軌道上に、対ランスタートルの。ええと、バーンブレイクナックルだったか。その改良型を積載しているデチューンモデルが躍り出る。

 

後は、そのデチューンモデルでランスタートルを斃せれば。

 

ランスタートルが突貫。かなり浅い角度で突っ込んでくるが、望むところだ。やれる筈だと信じる。

 

同時に菜々美は、仕掛ける。

 

この間姉が開発したなんとかバリアを放つ。

 

高速で動く相手を足止めするには、あの粘性が高い白玉は非常に有用であるのだが。今回はどうせ通じないので、違う目的で使う。あれが通じたのは、レッドフロッグが質量弾としてビット兵器……奴のからだの一部だったが。それを用いていたからで。ストライプタイガーもウォールボアも、質量兵器は通じないから。これも通じないとみていい。

 

だが、攻撃をされたと判断するはず。

 

そして、一体が。

 

ストライプタイガーが、凄まじい機動で全弾を避けた。

 

大した動きだ。

 

どうやってるのか、菜々美が知りたいくらいだが。

 

それで、予想していた隙が出来た。

 

ロボットアームが、奴を掴んで、その瞬間。斬魔剣Ⅱが、蟷螂の鎌が折りたたまれるように、ストライプタイガーをはさみ込む。

 

創作に出てくるいわゆるガリアンソードのような可変性を持たせる事が、姉の最終的な目標であったらしいのだが。

 

そこまでの可変性は、現在では現実的な観点から不可能である。

 

ただし、挟み込みのギミックは可能。

 

そして、今までの戦訓からして、複数方向からの高熱の押し当てはそれだけシャドウにダメージを早く与える。ストライプタイガーが、凄まじい悲鳴を上げるが。奴の間合いは把握し尽くしている。ロボットアームで抱え上げられ、そして今悪夢の蟷螂の鎌で切り裂かれようとしているストライプタイガーは、必死に暴れるが、もはや逃れる術などない。

 

ドガンと、もの凄い音がした。

 

ランスタートルが、なんとかナックルを装備したデチューンモデルに突貫。そのまま、㎞単位で押し込んで行っているのだ。

 

それでいい。

 

奴を倒すには、その突貫の破壊力を殺し尽くさないと不可能だ。だから、あのままでいいのである。

 

味方の狙撃大隊も、ランスタートルの突進の軌道を広瀬大将に展開しているから、逃れられていると判断して良い。

 

問題は、ウォールボアだが。

 

白玉全部避けたのはストライプタイガーと同じ。ただ此奴は、距離を取るように逃れていた。

 

そして、ストライプタイガーが捕獲されたのを見て、ジグザグに機動しながら突貫してくる。

 

勿論音速を超えている。

 

だが。

 

機体左右の足を全部地面に突っ込むと、防壁を展開。

 

これに対しても、ばっとバックステップするウォールボア。そして、回り込むように、左から来る。

 

分かっている。

 

以前二体が、パイルバンカーに倒された。

 

それを学習しているとみていい。

 

だが、姉はそれを見越して超世王の武装を調整しているし。菜々美だって、それで訓練している。

 

いずれにしても、ほんの数秒の展開。

 

機体を固定した超世王を、これで仕留められると判断したのだろう。

 

ウォールボアは顔そのものでもある可変性の「壁」を長大な槍状に変えると、それを回転させ始める。おお。ロボットアニメに出てくるドリル兵器っぽい。

 

敵の方がよっぽどロボットアニメしているなと、菜々美は苦笑してしまったが。

 

それでも、今は敵の可変性を喜んでいる場合じゃない。

 

一瞬のやりとりをミスれば、死ぬのは菜々美だ。

 

更に、暴れ狂うストライプタイガーのせいで、機体がぐらんぐらん揺れている。ジグザグに走りながら、必殺の突撃をしてくるウォールボア。

 

だが。

 

悪いが貰った。

 

その壁に。いや壁を無視して、頭上から叩き込まれたのは。ストライプタイガーだ。シャドウ同士が相互関与するのは分かっている。文字通りストライプタイガーをハンマーにして、地面に叩き付ける。それで、ウォールボアがクレーターを作りながら、地面で動きを止める。

 

更に、其処に投擲型の斬魔剣と、パイルバンカーを同時に叩き込む。

 

抑え込んでいるストライプタイガーごと、である。

 

高出力のプラズマを叩き込まれて。折り重なっている二体の中型が、凄まじい悲鳴の二重奏を奏でる。

 

遠くでは、ランスタートルの突貫。更にランスの大爆発を耐え抜いたデチューンモデルが、奴を空高く、なんとかナックルで吹っ飛ばしていた。

 

中空でランスタートルが炸裂し、大爆発を引き起こす中。

 

周囲の小型が仕掛けて来るのを呉美大尉が必死に捌き。

 

狙撃大隊が撃ち倒し。

 

それでも対応出来ない奴をオートキャノンで撃ち抜き。

 

激しく暴れる中型二体にダメージを与え続ける。

 

超世王の機体が激しく揺れる。

 

更に、警告が来る。

 

「グレイローカスト接近! 接敵まで12分!」

 

「撤収準備!」

 

「対グレイローカストの兵器は!」

 

「現在展開中! 仕掛けます!」

 

対グレイローカストの何とかMLRSは、仕組みは極めて簡単である。

 

螺旋穿孔砲をそのまんま400発、同時に発射する。以上。

 

多重ロックオンシステムが極めて繊細であること。

 

そもそもオートキャノンですら歩兵戦闘車に一機乗せるのが精一杯である事。

 

放熱機構が凄まじい処理時間を有すること。

 

ついでに対空戦闘でしか、この400発を有効に当てられないこと。

 

これらもあって、一発撃つと数時間は動けなくなる。弾丸の再装填にしても、400発分の螺旋穿孔砲の弾丸をそのまま交換するのである。薬莢などが超高熱を有している事もある。

 

更に相互リンクシステムで同じ相手を狙わないようにする必要もある。

 

それらもあって、とにかく一発撃ったら終わりなのである。

 

要するに、ばかでかい足も遅い使い捨ての兵器に近い代物なのだ。破壊されなければ、また使えるだろうが。

 

「グレイローカストの群れ、MLRSにて捕捉!」

 

「斉射!」

 

ばきんと音がして、ロボットアームの一部が砕ける。斬魔剣Ⅱもダメージが大きい。そもそも形状を変えたり、長くしたりすれば。稼働時間も減るし、武器の強度だって落ちる。それは当たり前だ。

 

それでも姉は、可能な限り仕上げてくれた。

 

だが二体を立て続けに相手にするのではなく、二体同時は流石に厳しいか。

 

小型。

 

シルバースネーク。

 

オートキャノンが間に合わない。呉美大尉が気付いて、即座に投擲型の斬魔剣を放ってくれたが。

 

小型が投擲された斬魔剣に寄って集って破壊してしまう。

 

まずいな。

 

呉美大尉は奮戦してくれているが、それでも厳しい。

 

「グレイローカスト、およそ4000消滅! 残りの11000、一度動きを止め、MLRSを見ています!」

 

「操縦者は即座に退避。 放棄してかまいません」

 

「了解!」

 

広瀬大将は、グレイローカストが通る道筋にMLRSの砲列を並べさせていた。そして、それが効果を示した今、優先事項はデータの持ち帰り。兵士には死守する必要がない使い捨て兵器など、放置させておけばいい。

 

グレイローカストは警戒しているようで、進むのが止まった。

 

同時に、ストライプタイガーが断末魔を上げて消えていく。ウォールボアも暴れており、ロボットアームにダメージを与えながら荒れ狂っているが。

 

それは菜々美を負傷させるほどでもない。

 

ただ、もう一体現れたらまずい。

 

グレイローカストがまた動き出したら、どうなるかもちょっと予想がつかない。まだ、かなり危険な状態であることに変わりは無い。

 

ウォールボアも力尽きる。

 

それで、やっと一段落だ。

 

「撤退開始!」

 

既に戦略的課題は果たした。

 

超世王は、二体の中型を同時に相手にして撃破するという偉業を達成。だが、小型まで同時には相手に出来ていない。

 

更に言えば、二体の中型を相手にここまでダメージを抑えられたのは明確な進歩だ。

 

しかしながら、ダメージは抑えられたとはいえあり。

 

さらにはグレイローカストの群れがこのまま向かってきた場合、対処のしようがない。今回の戦闘データは貴重なはずだ。今までの戦闘データより、更に苛烈な駆け引きを間近でしているのだ。

 

ナジャルータ博士に、即座に結果を出せと言うほど菜々美も無情ではないが。

 

しかし、これなら。

 

だが、即時で体が動く。

 

中空から躍りかかってきた小型多数。

 

ホワイトピーコック。本当に山の陰から、迫撃砲のような曲射で飛んできた。それもこれは、恐らく自前で飛行時の曲線を計算して跳躍してきている。生きた迫撃砲弾で、着弾しても全然戦闘能力を保持しているというわけだ。とんでもない化け物である。シャドウは小型でもシャドウと言う事だ。

 

狙撃大隊が撃ちおとしてくれているが、後退している超世王と、呉美大尉のデチューンモデルにホワイトピーコックが連続して襲いかかる。

 

斬魔剣Ⅱを振り回して撃ち倒すが、まずい。

 

機能が強化されている分、そろそろエネルギーが尽きる。

 

ただでさえ小型多数に加え、中型を二体も倒しているのだ。

 

此処で言うエネルギーというのは動力だけの問題ではなく、斬魔剣Ⅱを支える全てである。

 

ロボットアームの耐久力も。

 

それにロボットアームのブースターの燃料も。

 

それらが尽きようとしている。

 

無言でさがりながら、次々に来る小型を捌く。呉美大尉のデチューンモデルも、動きが鈍ってきている。

 

山頂。

 

グリーンモアがじっと此方を見ている。

 

彼奴は戦闘に来ないのか。

 

だとすると、彼奴はランスタートルよりも更に上位の指揮系統にいる存在だと判断していいのか。

 

いずれにしても、何度も中型と戦って来た菜々美だから分かる。

 

あれは仕掛けて来るつもりがない。

 

だとすると、さがるべきだ。そのまま、小型の追撃をいなしながら、どんどんさがる。その途中で、最悪の報告が来る。

 

「グレイローカストの群れ、出現! 西からです!」

 

「中国地方に潜んでいた群れか! 規模は」

 

「四万を超えています!」

 

最悪だ。勝てる訳がない。

 

とにかく戦場を離脱するのを急ぐ。狙撃大隊も一斉に撤退を開始。追いすがって来る小型は、意気が全く衰えていない。

 

斬魔剣Ⅱが鈍ってきているのを、明確に察していると見て良い。

 

がつんと、激しい衝撃が来る。

 

超世王の装甲に食いついたブラックウルフ。即座に斬り倒すが、今度はクリーナーが飛びかかってくる。

 

呉美大尉の方が、もろに体当たりを喰らって、それで十m以上さがる。小型でも、MBTをベースにしている超世王やデチューンモデルを、それだけ振り回せるパワーがあるのがシャドウの恐ろしさなのだ。

 

今度は履帯が粉砕される。そのまま履帯を外しながらさがる。呉美大尉を先にさがらせて、一斉に集ってくる小型をしばき倒しながらさがる。斬魔剣Ⅱの動きが見る間に鈍って行っている。

 

想定以上の小型を倒したのだ。

 

それもこれだけギミックを盛り込んだ新型で。

 

幾ら姉の作った新兵器でも限界が来る。

 

グリーンモアの左右に、更に中型。キャノンレオン。そいつが、何の躊躇も無く、プラズマを放ってくる。

 

キャノンレオンを見た瞬間回避した。そうでなければ、直撃を受けていただろう。

 

それでも至近弾だ。

 

機体が浮き上がり、地面に叩き付けられる。ひっくり返ることだけは避けた。キャノンレオンは機動しながらの砲撃が真骨頂。耐久に課題があるが、それでもああいう事をさせたら、こっちから手出しは出来ない。仮に投擲型の斬魔剣を打ち込んでも、隣にいるグリーンモアが即応してくる。

 

今はさがるしかない。

 

今のでダメージが更に深刻になった。さがりながら狙撃大隊が支援してくれている。呉美大尉のデチューンモデルが小型に集られて、装甲を引きはがされ、斬魔剣を食い千切られている。

 

狙撃大隊が集っている小型を排除。

 

呉美大尉は冷静にさがっている。

 

普通だったらパニック起こして、その場で八つ裂きにされているだろう。なかなかタフな後輩だ。

 

舌なめずりする。

 

斬魔剣Ⅱを立て続けに振るい、襲いかかってくる小型を蹴散らすが。キャノンレオンの砲撃二発目。今度はしかも散弾。

 

S字に後退するが、それでも避けきれない。再び至近弾。車体が浮き上がり、思い切り全身がシートに叩き付けられた。

 

ここぞとばかりに集ってくる小型。オートキャノンが食い千切られる。更に、他の装備も次々食い荒らされる。

 

ぐっと呻きながら、それでも車体がひっくり返っておらず。

 

後退出来るだけマシと自分に言い聞かせながら、さがる。

 

ふと、小型が止まった。

 

斬魔剣Ⅱが、その瞬間に沈黙。キャノンレオンが嘲笑うように山の稜線の向こうに消える。

 

確かに中型三体を短時間で立て続けに倒した。小型は……今確認したが、この戦場だけでキルカウント1900を超えた。その内1350が菜々美、160が呉美大尉、残りが狙撃大隊の戦果だ。

 

陣列が伸びきっていた状態で、此処までやれたのだ。

 

戦術的には大勝利かも知れないが。

 

また、完膚無きまでに破壊され尽くした超世王は、安全圏に逃げ込むと同時に、斬魔剣Ⅱがロボットアームもろとも滑落した。

 

「グレイローカスト、停止。 西から向かっていた群れは、中国地方の山岳地帯に散った模様」

 

「東で停止していた群れは、そのまま濃尾に撤退! 此方を見向きもしていません」

 

「了解。 味方の被害は」

 

「陣列が伸びていたこともあります。 若狭などで戦闘があり、また最前線でも戦闘は短時間ではありましたが苛烈な事もありました。 600人に迫るかと」

 

広瀬大将が、兵士達に労いの言葉を掛ける。

 

そして、スカウトと回収車両が、ボロボロ部品を滑落させながら逃げ戻った超世王のパーツを。可能な限り回収する。

 

だがその殆どは、クリーナーが溶かしてしまった。

 

また超世王は全損。

 

菜々美もどうにか機体を這い出すが、もう救急車が来ていた。実際無傷ではないし、これは毎回のことだから、広瀬大将が手配してくれていたのだと思う。

 

苦笑い。

 

全身酷い目にあっているが。

 

それでも、これだけの激しい戦闘をした後だ。まだマシだろう。

 

ランスタートルをデチューンモデルで仕留められることが確認され。

 

さらには中型二体を同時に相手に出来た。

 

それで、満足するしかない。後は、ナジャルータ博士に、今回の犠牲を無駄にしないように、研究を進めて貰う他無かった。

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