スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
ナジャルータ博士は、研究室でデータを分析していた。
シャドウの動きを全域でスカウトが観測していたが、その中には戦闘に巻き込まれた部隊もいる。
今回の被害は588人。
決して少ない被害では無かった。
グレイローカストの群れの直撃を受けていたら、こんな程度の被害どころか、多分GDFの神戸周辺の主力がそのまま全滅していただろう。
だから大勝利だ。
そう上層部は喜んでいるようだが。
アホすぎて、言葉も出ないと言うのが事実だった。
これは事実上の敗北だ。
戦略的にはシャドウは完璧に勝った。
損害もシャドウの物量からすれば許容範囲の筈だ。
そもそもシャドウがこの地球に現れた時に比べて、その数は十分の一にまで減っているのである。
これが消えたのかすらも分かっていない。
確認されていた大型も、八体から一体に減っている。
これらが死んだのではなかったとしたら。
これから、確認されているシャドウの十倍もわらわらと世界中で出現する可能性が高いし。
今回の戦闘で倒した敵なんて、それこそなんの痛痒にもならないだろう。
それに勘違いしている者も多いが。
シャドウが繁殖したり増殖したりしないか。これは誰も確認など出来てはいないのである。
もしも戦闘の裏で、繁殖でもされていたら。
この程度の「勝利」で浮かれている人間なんか、ただの滑稽な猿にしか、シャドウには見えないだろう。
これは悲観でも敗北主義でもなんでもない。
単なる推測だ。
そしてこの推測には、否定材料が存在しないのである。
畑中博士から連絡がある。
「どうかしらー? うちの菜々美ちゃんが今回もデータを持ち帰ってくれたけれど」
「素晴らしいデータだと思います。 ただ……」
「決定打にはならない?」
「それはまだ分かりません。 敵の戦略的機動は、学習しているというよりも、ただ此方にあわせているように思うんです」
ナジャルータの結論なのだが。
例えば真社会性に近い性質をシャドウが持っていたとして。
知能を持つシャドウが。人間の行動を学習しているとする。
それについてはよく分かる。あり得る話である。
だが、この短時間での戦略的機動の洗練。
新兵器に対する見に徹する行動。
これらは、冷静な生物としてのものというよりも。
最初からこう人間は動くと知っていてやっているようにしか思えないのである。
「シャドウは人間を良く知っています。 それについては、此方の結論です。 こういった通信も、全て解析されているかも知れません」
「ふむ……」
「もしもシャドウが人間を良く知っている……それも近代兵器を含めた戦術も戦略も……だとすると。 平行世界などから来たのか、未来から来たのか。 いずれにしても、シャドウがいた世界には、この世界と同じ地球人がいた、と判断して良いでしょう。 そしてシャドウの目的は分かりません。 人間を滅ぼすにしては手ぬるい。 地球の環境を元に戻すにしては水を増やすような真似をしている。 対話の試みは全て今まで失敗している。 だとしたら……」
シャドウが人間を知っているのはほぼ確定だ。
人間を殺し尽くさないのなら、それには理由があるはず。
だとしても、人間からの対話を受けつけないのは何故だ。
「この間の菜々美ちゃんへの妙なメールがヒントにならないかしら」
「あれも分析中ではあるのですが……」
あのメールも妙だ。
存在しないメールサーバから飛んできている上に、経由しているプロキシサーバも全て実在しないことが分かっている。
途中で使われているプロトコルも、明らかに「この時代にあわせている」のが透けて見える。
少なくともハッカーなどがやったことじゃない。
かといって、シャドウの仕業やコンタクトと考えるのは時期尚早だ。
「まだ結論を出すのには時間が掛かります。 広瀬大将にも依頼しますが、時間を作る必要があります」
「了解。 どちらにしても此方も超世王セイバージャッジメントの改良と調整が必須だし、時間は必要だわ」
「超世王セイバージャッジメントが目の前で全壊しているのに追撃をして来ないのもおかしな話です。 グレイローカストという鬼札を切ってきたのに、それを防御にしか活用してこない。 一体何を目論んでいるのか……」
勿論それを解析しなければならないのはナジャルータだ。
他の誰にも頼む事は出来ないのである。
通話を切ると、広瀬大将に連絡を入れておく。
時間が必要。
まだしばらく解析には掛かると。
メールを捌きながら、データを分析する。超世王セイバージャッジメントの猛攻に対して、的確に中型二種……ウォールボアとストライプタイガーは応じている。ランスタートルも、明確に必殺のタイミングでチャージを仕掛けて来ている。
それらを捌いたのは畑中准将の手際が為した事だが。
それにしても、あの程度の数で仕掛けて来たのは何故だ。
そもそも中型が四から五体でしかければ、いかに超世王セイバージャッジメントといえどひとたまりもない。
あれだけの戦略的機動がこなせるなら。
シャドウがそう動かないのは不可解すぎるし。
手加減しているには、動きが妙なのだ。
とにかく、あらゆる方面の専門家と連携する。
残念ながら学者の絶対数が少ない。
だから専門家には、学者ですらない人間まで混じっている。
それでもやらなければならないのがナジャルータ博士の苦境をそのまま示していると言える。
溜息を一つつくと。
ナジャルータ博士は当面厳しいスケジュールになるなと、内心でぼやいていた。
(続)
情報が集まってもシャドウの謎は深まるばかり。
必死の抵抗が得た情報は、決して勝利にはつながらない。
それでも僅かでも状況をよくするのが関係者の仕事です。
長期的な成果を求めての行動。
それを理解出来ない者は、どうしても世界にはいるのです。
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