スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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無能を極めるGDFの首脳部と違って、生物ですらない可能性が高いノワールは極めて冷静かつ理論的です。

それを見てうんざりしてしまうのは、それは仕方が無いのかも知れないですね。

しかも人類が消えたことで、地球は第六の大量絶滅を逃れようとしています。

しかもしかもです。

更に人間の愚かさは、加速度的に増していく事になります。









2、シャドウとノワール

おきだしても、あの会議の醜態はどうしても思い出してしまう。一晩ゆっくり眠ったが、菜々美は脂っこいものだけ食べて、胃もたれしているような気分になっていた。

 

無能。

 

それが現実だ。

 

万物の霊長を自称する生物の代表があれらだ。

 

勿論違うのもいたかも知れないが。人間という生物そのものが、己の体を食い尽くしながら数だけ増やす欠陥生物だったのかも知れない。

 

それでいながら自分をひたすら賛美し続ける。

 

反吐が出る話である。

 

菜々美も勿論それの一匹だ。

 

そう思うと、ベッドの上で、何もかもが馬鹿馬鹿しくなった。

 

いずれにしても、菜々美がやる事は訓練だ。

 

頭を使うのは姉やナジャルータ博士などがやってくれる。三池さんも、補助でいい仕事をしてくれるだろう。

 

それだけで充分である。

 

基地に出て、訓練をする。

 

呉美大尉が来ていたので、敬礼をする。

 

ランニングマシンで並んで走って、軽く汗を流す。周囲の兵士達は、遠巻きに見ていた。

 

恐らくだが、あの無様すぎる会議の有様は、既に伝わっているのだろう。

 

念願と言っても良かったはずのシャドウとのコミュニケーションの確立。

 

相手側がある程度どういう存在か分かった。

 

あらゆる専門家が、今の人類には出来ないと断言した、人間の構築したネットワークへのただ乗り。

 

それどころか、何の問題も無く、難解言語の一つである日本語も使いこなしていた。

 

それを考えると、相手の方が数段上手。

 

それも、イエローサーペントが大挙して現れた状況を考えると。

 

本当に、今まで眠らせていただけのシャドウが、起きて来たと見て良い。

 

現在スカウトが必死に状況を調べているらしいが。

 

朝起きてから確認しただけで、今までなんとか必死に確保した海の範囲外は、とても手が出せる状況ではないくらいの密度で、イエローサーペントがいるらしい。

 

恐らく一体をドリルで倒しても。

 

即座に複数体がソニックブームで反撃してきて、超世王は沈む。

 

他の国も似たような状態らしく、かろうじて通れていた細い海路も、今ではイエローサーペントの厳重な監視下にある。

 

調子に乗った人間に。

 

シャドウは現実を見せつけてきたということだ。

 

筋肉を順番に鍛えていくと。

 

隣で鍛えながら、呉美大尉は言う。

 

「畑中准将、それでこれからどうなるんでしょう」

 

「さあ」

 

「……」

 

「私にも分からないですよ。 姉が作る兵器を用いても戦力差をひっくり返す事は無理。 それははっきりしています。 姉が生涯賭けて超世王を改良したとしても、結果は同じでしょうね。 物資などもこれからは神戸に集約させる訳にはいかない。 各地の孤島を開放して回ったとしても、殆ど意味は無いでしょう」

 

呉美大尉がぼそりという。

 

孤立集落の人達はどうなるのだろうかと。

 

それは分かっている。

 

ただ、シャドウは言っていた。

 

これ以上地球の環境を我が物顔で蹂躙しないなら。何もしない。

 

だったら船などを改良して、それで助けに行くしかない。

 

勿論シャドウが許可してくれるような船を作るのに、どれだけ時間が掛かるか分からないし。

 

その過程で殺される人だって多く出るだろう。

 

そもそもシャドウが、どれくらい地球の水の総量を増やすつもりなのか、今の時点では未知数だ。

 

それを考えると、状況は楽観などとても出来はしないだろう。

 

「今、ナジャルータ博士や姉がどうシャドウと接するべきか必死に調べてくれています。 私が主体になってシャドウに呼びかけることになるでしょうね」

 

「畑中准将がそういうのであれば、私は信じます」

 

「信じられても困りますが……まあやってみます」

 

これは本音だ。

 

射撃に移る。

 

螺旋穿孔砲は既に兵士達の基本装備になっている。旧式のアサルトライフルなどは、既に倉庫で埃を被っている状態だ。

 

人間相手の治安維持には、火力がオーバーキル過ぎるからだ。

 

射撃訓練を続ける。

 

螺旋穿孔砲もちまちまマイナーアップデートが行われているのだが。それでもまだまだ全然だと姉から聞いている。

 

オートキャノンやこの間のMLRSなどを作る過程で少しずつ改良しているらしいのだが。

 

あと5秒弾丸の自動装填と放熱を縮めるのに、年単位で時間が掛かるとも言われている状況である。

 

しかもどう頑張っても、携行用のものは弾丸再装填に35秒は理論上かならず掛かるという事で。

 

その35秒に達するまでに、確定で姉はお婆さんになるらしい。

 

まあ、それも仕方が無い。

 

そしてシャドウが此方への攻撃を控えてくれるというのなら。

 

それも、また許容できる。

 

考えて見れば、25年間、シャドウは此方に対して攻撃を停止していた。もしもそのまま攻撃を続けていれば、人間なんて簡単に滅ぼせたのに。

 

勿論檻に閉じ込められるのは嫌だという気持ちはわかるが。

 

逆に言うと。

 

気持ちで世界を蹂躙してきたから、こんな事になったのではないかと、菜々美は思うのである。

 

「流石ですね」

 

「?」

 

「話している限り、迷いがあるとしか思えません。 それなのに……」

 

まあ、百発百中だ。

 

姉の作る変態兵器と相性が抜群。

 

それだけが菜々美の取り柄である。

 

苦笑いすると、敬礼して別れる。訓練を終えて、軍のジープで基地に向かう。護衛の兵士が運転してくれるので、菜々美はその間に携帯端末でニュースを見ておく。

 

シャドウへの攻撃一旦停止をGDFが宣言。

 

理由はシャドウとのコミュニケーションが確立され、向こうからの攻撃がないと判明したため。

 

25年間確かにシャドウは縄張りに入るか、先制攻撃をしなければ人間をこれ以上殺傷しようとはしなかった。

 

それは事実としてあり、コミュニケーションを取ることが出来たことで、それが確定となった。

 

現時点では、次世代の地球に備えるための次世代の人間の研究を開始する。遺伝子的にどう改良すればいいのかを模索する事になる。

 

また、物流などに関しても、現状の海洋汚染を引き起こす船舶でなければ、シャドウは攻撃してこない可能性が高い。

 

これらについても改良を図る。

 

ゆくゆくは航空機をまた造り出せるかも知れない。

 

そうニュースにあるが。

 

同時にヒステリックなデモを引き起こしている大衆の図もあった。

 

デモをしているのは、中高年以上の人間が多いようだ。

 

完全に理性を失って、猿のように喚いている。

 

これは25年前、シャドウに人間が地球の支配者の座を蹴り出される前。活動家と言われるような連中もこんな感じだったらしいから。

 

人間に共通した事だったのだろう。

 

「やっと戦いが終わりそうなのに、なんなんだか……」

 

「畑中准将だったら、シャドウを全滅させてくれると期待していた兵士も多かったのですが」

 

「無理に決まってるでしょう。 中型一体を倒すのに、どれだけ被害を出していたと思っているんですか」

 

「それは……」

 

兵士も黙り込む。

 

神聖視されても困る。

 

菜々美は人間だ。

 

姉の作る変態兵器を操るのは上手いが、それ以上でも以下でもない。兵士としての力量も、並みより少し上くらいである。

 

それが救世の女神か何かと勘違いされても困るのだ。それにこんな野性的な見た目の女神がいてたまるか。

 

工場に着く。

 

流石に工場の周囲は兵士達が固めている。菜々美は敬礼しつつ、ニュースで見た光景を思い出す。

 

特にシャドウに対して強攻策を主張していた国が、あの運動が激しいようだ。25年前でいう「炎上」に近いのかも知れない。

 

工場に入ると、姉はいない。

 

三池さんが、疲れきった様子でソファでぐったりしていた。整備工のおっちゃん達も、今日は来ていないようだ。

 

この様子だとずっと打ち合わせをしていたのかもしれない。

 

「三池さん、大丈夫ですか」

 

「今、畑中博士がお風呂に入っています。 上がって来たら、そのまま寝かしつけてきますので。 その後お風呂に入って、私も寝ます」

 

「ちょっと大丈夫ですか」

 

「あんまり大丈夫じゃないです。 畑中博士の事だから、お風呂の中で寝始めかねませんので」

 

まあ、確かに今までも何回かあったな。

 

アラームが鳴ったので、三池さんが姉の介護にいく。文字通りの介護である。本当に学者として以外は零点なのだ姉は。

 

それから三池さんが、ぐったりした様子で戻ってくる。

 

風呂も着替えも済ませて、これから眠ってくるらしい。

 

ナジャルータ博士は体力がない事もあって、今は眠っているらしいが。

 

ボタンを渡された。

 

「シャドウが連絡のメールを寄越したら押してください。 何があっても其方に行きますので」

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「私もこの危機的な状態をどうにかしたいと考えている一人です。 今は無理をするべき時です。 今まで戦場では、多くの兵士達が無理をしてきた。 それと同じ事です。 畑中准将、あなたがシャドウとの戦場で、無理をしてきたように」

 

「……分かりました。 休んでください」

 

「はい」

 

ふらふらと寝室に消える三池さん。

 

菜々美は申し訳なくなった。

 

ともかく、シミュレーションはやっておくか。

 

この間の会戦で、中型二体を同時に倒す事が出来た。それははっきりいって大戦果だと思う。

 

しかもあのランスタートルのチャージを見切って、味方と連携して奴をも撃ち倒す事ができた。

 

だが、それが限界だ。

 

超世王は一度戦った相手には、かなり楽に戦える。それもまた事実ではあるのだけれども。

 

かといって、鎧柚一触とはいかない。

 

シャドウはそもそも、その性質上、倒すのに時間が掛かる相手だ。

 

人間はその気になれば数千万度の熱を作り出せるらしいが、それが一瞬ではダメなのだ。特に中型以上は核にすら耐える可能性が極めて高い。

 

それを考えると、とてもではないがシャドウをばったばったとなぎ倒していくなんて、ロボットアニメみたいな活躍は出来ない。

 

それでも、少しでも性能を上げる。

 

それしか菜々美に出来る事はないのである。

 

「また厳しいメニューを組んできたな……」

 

姉の組んだメニューを見てぼやく。

 

三体同時が相手になるのが、今後は基本となる。

 

だが、二体同時までならどうにかなるが、三体は厳しい。そもそも超世王は防御兵器こそあるが、装甲はシャドウには無力に等しいのだ。この間はランスタートルをいなして二体相手だったから勝てた。

 

それだけ。

 

今訓練しているのは、ストライプタイガー相手の戦いだが、三体相手だと勝率は4%を切る。

 

二体までなら何とか出来る。

 

だが、経験が足りなさすぎる。

 

それにノワールも言っていた。

 

いざという時はリミッターを外すだけだと。これ以上中型の性能が上がったら、洒落にならない。

 

考えて見れば、彼奴らが毎回対策をしてきているのもおかしかったのだ。

 

あれは対策なんて別にしていなくて。

 

それぞれリミッターを限定的に解除していただけだったのだろう。

 

訓練を続けて、アラームが鳴る。

 

外に出てくると、数時間が経過していた。しんとしていて、普段とはだいぶ工場の雰囲気が違う。

 

今日はデチューンモデルの訓練もしていないようだ。

 

デチューンモデルのデータを取るための訓練は、広瀬大将が兵士を回してきて指示をするらしいのだが。

 

今は恐らく忙しすぎて、その余裕も無いのだろう。

 

しばしぬれタオルを被って静かにする。

 

姉達を起こすのはやってはいけないことだ。

 

一応携帯端末を見るが、誰から連絡も来ていなかった。

 

史上発のシャドウとのコミュニケーションが成立したというのに。

 

どうにもいい未来が見えないのは何故なのだろうか。

 

ただ、溜息が出た。

 

 

 

夕方まで訓練をする。夕方近くに先に三池さんが起きて来た。最初に栄養ドリンクを口にしていたので。ちょっと心配になった。

 

何も無いようなら、また夜に寝るという。

 

姉はずっと寝ているそうである。

 

まあ、そのままだったら明日の朝まで寝ているだろうと三池さんが言って。まあそうだろうなと菜々美も納得した。

 

宿舎に戻る。

 

帰路のジープでも状況を見たが、SNSも荒れている様子だ。

 

菜々美も攻撃の対象になっているようで。

 

今まではスパイが、自作自演をしていたのだとか好き勝手なことをほざいている輩もいた。

 

ただそういうのがしているコメントの日本語が非常に怪しいので。

 

ちょっと苦笑いしてしまうが。

 

この状況でネット工作か。

 

これでは、人間を排除したシャドウの考えも少し分かってしまうのが悲しいところである。

 

「畑中准将」

 

「どうしました」

 

「戦うつもりであれば、我々は幾らでも命を投げ出します。 シャドウを倒すのは、私の夢ですので」

 

「……」

 

夢、か。

 

シャドウを倒しても、人間がまた世界を蹂躙して、全てを好き勝手にする時代はこないだろう。

 

ただ人間をひたすらに賛美して、その悪行を全肯定していたのが、シャドウが来る前の時代だった。

 

もし、軍人として戦うのであれば。その現実とも戦わなければならない。

 

「戦う事は止めません。 ただ、戦うのであれば、シャドウではなく、この先の未来の為に戦ってください」

 

「……分かっています。 ただ、混乱する民衆に銃口を向けるのだけはどうにか避けたいのです」

 

「それは自分もですよ」

 

ぶっちゃけ今騒いでいる連中にはむかっ腹も立つが。

 

苛立つという理由で殺戮を重ねていたら、シャドウに駆逐された人間と同じになるし。なんら進歩もしていない事にもなる。

 

もうこのままでは、人間は滅ぶんだな。

 

そう菜々美は思って慄然とする。

 

もしも何かしらの陰謀が働いて、シャドウとの全面戦闘でもGDFが決定した場合。菜々美は従わざるを得ず。

 

圧倒的な数の暴力に押し潰され、そして死ぬだろう。

 

そして人間は最後まで正義を喚き、被害者面をして、シャドウに滅ぼされていくのだろう。

 

それだけは、どうにか避けたかった。

 

「とにかく、今は軽挙妄動は避けてください。 姉達が今、どうにかするべく色々と話し合いをしています」

 

「仮にです。 シャドウと和解するとして、それで我々はどうなるんですか。 シャドウの家畜にされるんでしょうか」

 

「25年間我々はそうされていなかったかと思いますが」

 

「……確かにそれはそうですね。 小官も人生で不便をした記憶はありません」

 

今は一人でも多く冷静になる事だ。

 

それだけが必須だ。

 

宿舎に着いた。ジープを運転していた兵士に敬礼すると、戸締まりをしっかりする。ぼんやりしていると、メールだ。

 

広瀬大将からだった。

 

「クーデターが起きました」

 

「!」

 

「GDFで、ではありません。 不幸中の幸いにですが」

 

広瀬大将が上げた国は、最強硬派の一角の国だった。

 

北米などで広瀬ドクトリンによる小型への戦果が確認されてから、それに反発して旧来の兵器でシャドウに対して無茶な攻撃を仕掛け、大きな被害を出していた国だ。スコットランドも今は最強硬派の一角だが、それよりも更に強硬的な国だ。

 

なんでも、精神論でシャドウに勝つべく指揮官が演説をしていたところ、兵士達の一人がその顔を狙撃。指揮官は即死。

 

そのまま勝てもしないシャドウとの戦いに連れ出される事なんて冗談じゃないと、兵士達がクーデターに移ったそうである。

 

元々10万程度しか人間がいない国だったのだが。2000人いた兵士達は、三度の無謀な攻撃で1000人まで数を減らしており。それらの兵士達は無能な上層部を非常に憎んでいたらしい。

 

警官隊などからも兵士を補充していたらしく。

 

堪忍袋の緒が切れた兵士達は、そのまま政府首脳を襲撃。

 

あのテレビ会議の向こうで猿みたいに喚いていた首相は射殺され、そのまま広場に晒されたそうだ。

 

その後は粛正祭になるかと思われたが。

 

元々一部の上層部や、軍需産業と結びついていた連中が強硬的な攻撃を強要していただけらしく。

 

今は閣僚の中にいた穏健派が担ぎ出されているそうだ。

 

ただ、まだ安定するには時間が掛かりそうだと言うことだが。

 

「必ずしもこれがいい方向に動くだけとは限りません。 とにかく此方では、兵士達を統御して、同じような事が起きないように努めます。 畑中准将は、戸締まりに気を付けて、いざという時は自分の身を守ってください」

 

「了解しました。 広瀬大将は大丈夫ですか」

 

「此方は問題ありません。 疲労を出来るだけとっておいてください」

 

通話を切る。

 

そうか、クーデターか。

 

あまりいい印象がないが。それでも対シャドウへの強攻策を捨てるのであれば。

 

いずれにしても、出来るだけ無駄な流血は避けるべきなのに。

 

本当に情けない話だ。

 

この状況でもまだ、流血無しに何かを為せないのであれば。

 

恐らく人間に、万物の霊長を名乗る資格などないのだろう。

 

とにかく休んでおく。

 

どうせこれは、しばらくクーデターが連鎖すると見て良いだろう。そうなると、下手をすると。

 

逃げ出さなければならなくなる。

 

その可能性も、危惧しなければならなかった。








クーデター発生。

この状況で。それも感情論起因で。

まあ、もう笑うしかない状況ですね。
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