スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
クーデターで膨大な戦力を消耗し、ただでさえ色々問題だらけだったGDFは大打撃を受けました。
其処に現れるシャドウの新種。
それは文字通り、兵器で言う次世代型の性能を有する、文字通りの絶望の権化だったのです。
序、絶望の権化
広瀬大将は、第二師団の本部から指揮を取っていた。新しく現れたシャドウが、何を目論んでいるか分からないからだ。
少なくとも他のシャドウがそれに近付かないというのはあまりにもおかしい。
それがもしも、人間を間引くために行動する、等であれば。
対処しなければならない。
とにかく危険すぎるので、デコイを使って監視するしかない。現時点では四㎞がデッドラインだが。それもシャドウの性質を考えると、本気を出していない可能性が極めて高いとみていい。
監視用のAI搭載の歩兵戦闘車。
似たようなものは21世紀に実用化されていた。戦闘用のロボット犬は、実戦でも投入されたらしい。
というのも、その戦争が行われている最中にシャドウが出現。
その戦場は、その周辺にあった国家もろとも消し飛んだ。戦争を仕掛けた国が最初に消滅し。
仕掛けられた国も等しく消された。
故に現在では、精確なデータがあまり残っていないのである。
そのため、北米などに残されていた似たような軍事技術を応用して、今は活用している訳だが。
いずれにしても旧軍需産業が完全に面目を潰され、今ではすっかり萎縮してしまっている事もある。
ある程度は、地力で開発をしなければならない。
畑中博士は間違いなく天才だが。
畑中博士は何人もいないし。それに、あらゆる技術を網羅している訳でもないのだ。
「AI操作式歩兵戦闘車接近。 距離、四㎞半」
「……」
全部で六機の無人機が行く。
この無人式の歩兵戦闘車も、シャドウとの戦闘では何の役にも立たなかった事もあって、今では倉庫に眠っていたのを引っ張り出して来たに過ぎない。
特にブライトイーグルとの戦闘に多くデコイとして使われたこともある。
悉くEMPでがらくたにされた挙げ句、クリーナーに溶かされてしまったのだ。
今動かしているのは、それらの残存戦力。
一応また造れるが。
作った所で、何の役に立つのやら。
結局個々の名人芸がものを言う戦場が戻って来てしまった時代である。ボタン戦争時代とは。あらゆる全てが違っている。
監視を続けるが。
四㎞のデッドラインを越えた瞬間。それぞれ二㎞ずつ距離を置いていた歩兵戦闘車が、同時に全て爆散していた。
「全機ロスト」
「コレはまずいですね……」
あいつは大きさとしては、直径十一m。
以前種子島で超世王と交戦したレッドフロッグと同じように、円形で見た目以上に大きいタイプの中型だ。
そして中型はどれもそうだが。
人間相手の今までの蹂躙戦では、実力なんて見せていなかった。
超世王セイバージャッジメントとの戦闘で、初めて本気を出してきて。畑中博士の想定を軽く超えた戦闘力で、畑中准将が駆る超世王セイバージャッジメントをいつも全壊やそれに近い状態まで追い込んでいった。
特に今回の奴は、監視すら許さないと言う異常な性質で、今までのシャドウとは全く違っている。
今までのも接近すれば攻撃はして来たが。
接近にしても、四㎞先から狙ってくるのは異常だ。
それも今まで調べた所、ドローンなどでも同じ行動をしてきている。
ナジャルータ博士から連絡があった。
「広瀬大将。 よろしいでしょうか」
「問題ありません。 何かありましたか」
「現在敵の分析中です。 それで分かってきた事がありますが、スプリングアナコンダと違って、同時多数の目標を相手に、一斉に火力投射をしてきている事。 人工物であれば、四キロ圏内に入り込めばなんでも一瞬で撃破していること。 これらから、この中型の戦闘力は完全に未知数です。 今までの中型とは恐らくレベルが違うと判断して良いかと思います」
「シャドウがアクセスしてきたこのタイミングで、こんなのが出てくるなんて」
それも、超世王セイバージャッジメントが、二体同時にシャドウを倒すという快挙を成し遂げた直後の出来事だ。
シャドウ……向こうはノワールと名乗っていたが。
何か考えがあるのだとすれば、それを見極めなければならない。
「畑中准将から、ノワールと名乗っている敵に呼びかけられませんか」
「やっていますが、基本的に無視されているようです。 向こうは必要が無ければ一切会話する考えがないようで」
「まるで機械ですね」
「会話から分析するに、生物ではないと思います。 いずれにしても、我々が生物として認識している存在ではないでしょうね。 現実にもプリオンなどの生物と物質の中間に存在するものはいます。 我々が定義する生物なんてものは、極めて曖昧なのです」
宇宙人の侵略兵器でも、ガイア理論で地球が繰り出して来た存在でもなさそう。ナジャルータ博士はそれも付け加えた。
だとすると、これは一体なんなのか。
いずれにしても、人間をこれ以上減らすつもりはクーデターの前まではなかったようではあるのだが。
逆に言うと。
あの馬鹿馬鹿しいクーデター祭を見て。その気持ちも変わったと言うことかも知れない。
ある程度人間を叩きのめして躾けるつもりなのか。
だとすれば、大量のシャドウで平押しして来れば良いはず。
どうして今までにない新種を出してくる。
それもナジャルータ博士が、今までとはレベルが違うとまで断言する奴をだ。
「念の為ですが、スウォームで相手に接近をしてみてください」
「分かりました」
スウォーム。
シャドウ戦前までは、万能兵器、次世代の最強兵器と期待されたドローンによる飽和攻撃だ。
ドローンと言っても性能は様々で、戦闘機と大差ないものから、ラジコンに爆弾をつけただけのものまで千差万別だが。
それも戦術ドクトリンを変えてしまったと言われる程に、シャドウが攻めこんでくるまでは戦場を席巻していた。
そして他の近代兵器同様に、シャドウの前にはゴミの役にも立たなかった。
今では、在庫を引っ張り出して来て、こうやって陽動や、敵の能力調査に使うくらいしか使い路がない。
ともかく5000のドローンを飛ばす。
いずれもが距離を取って、そのまま新型へ向けて飛ばせるが。
新型が反応。
やはりドローンが四㎞のデッドラインを越えた瞬間。
一斉にドローンが消し飛んでいた。
「ドローン全滅!」
「ご、五千機が一瞬で……!」
「EMPじゃない。 確かに爆散させられた! それも爆発時の火力は、歩兵戦闘車が蒸発させられたときとほとんど変わっていません!」
兵士達が動揺する。
動揺したいのは広瀬大将の方なのだが、いずれにしてもこれはまずい。
歩兵戦闘車を蒸発させる反物質攻撃を、同時に5000の目標に対して行える。しかも大気中に反物質なんて放り出したら、普通だったらその場で爆発するのを、遠隔で爆発させている。
どんなテクノロジーでこれをやっているのか、人間には想像もできない。
その上、5000が出来るなら、もっと多数に出来てもおかしくは無い。あれが第二師団に突っ込んできたら、文字通り一瞬で消滅させられることになるだろう。
「これ以上は無駄です。 距離を取っての監視だけに留めます」
「わ、分かりました……」
「あの黒い奴、こっちに来ないよな……」
「しらねえよ。 シャドウが何考えてるかなんて」
四国を取り戻し。
鹿児島との連絡路を確保し。
離島を幾つか解放した。
そこで完全にシャドウは戦略を変えた。
シャドウはこれ以上人間を進ませない戦略にシフトした。
更に発生したクーデターが、シャドウをどういう戦略に転換したのか、今は見極めなければならない。
一度兵士達を撤退させる。あれとは出来るだけ距離を取った方が良い。
一応六㎞ラインに監視用の無人歩兵戦闘車を配備しておく。あの新型が進んでくるようだったら、それはそれで対応を考えなければならない。
問題はその先である。
超世王セイバージャッジメントであれと戦う場合。
シャドウでさえあの新種には近付かない以上、一対一の戦いを行うしかないだろうと結論出来る。逆に言えば一対一での戦闘が可能になる。
ただあの火力。
五千箇所を一斉爆破したあの破壊力は、同じ箇所に集中できない筈が無い。
それをやられた場合、以前使ったスプリングアナコンダ対策のシールドなんて、はっきりいって役に立たないだろう。
熱量を計算して呻く。
局所的に出現している熱量だけで、分析結果は戦術核並み。
あの黒い奴は、戦術核並の熱量を、僅か十数メートル範囲内に納めて。そこで制御しているのだ。
爆破した後は熱は迅速に収束しているのも確認されている。
要するに、どうやって攻撃したのかも分からないし。その熱量がどんな風に消されたのかも分からない。
しかも他のシャドウ同様、一切土地に被害を出していない。
歩兵戦闘車が消し飛ばされた地点には、下草が青々と茂っている。其処で核攻撃並みの熱量が炸裂したとは信じられない光景だ。
つまり、攻撃を受ければ終わりと言う事である。
その上四㎞となると、一瞬で接近するのは無理だ。
何回か時間差をおいて偵察用の無人兵器を突入もさせたのだが、それらも全て関係無しに撃破されている。
相手にはチャージに用いる時間もないらしいし。
なんだったら、最大火力をどれくらい発揮できるかさえ分からない。
局所的に焼き尽くせる核兵器を、なんぼでも体内に内蔵しているとでもいうべき中型というわけだ。
それも核兵器を相手に対してノータイムで当てられると。
ナジャルータ博士が今までの中型とはレベルが違うというのも納得出来る。
こんなの、人間が文明を千年分発達させたとしても、勝てる相手かどうかは極めて疑わしい。
というか、多分勝てないだろう。
弱点を探すにしても、一旦ナジャルータ博士が分析に入ったし。何より監視のためにやっているとはいえ。
これ以上刺激すると、相手がどう動くか分からない。
とにかく異例づくしのシャドウだ。
接近は絶対にするべきではない。それに、出来れば刺激もするべきではなかった。
ナジャルータ博士から連絡がある。
以降、あの中型をアトミックピルバグと呼称。
大型シャドウ、魔王と同等の脅威として認識するという事だった。
ピルバグというのは、ダンゴムシの事である。
確かにたまに気分転換か何かで形態変化しているのだが、球体から平べったい形状に変わっている。
あれはダンゴムシとかワラジムシとかの等脚類に似ている。
等脚類最大と言えば一時期深海生物マニアにアイドルのように愛されたダイオウグソクムシだが、それでも数十㎝程度が最大。
あれはちょっと次元違いのサイズだが。
それでも今いる中型種には遠く及ばない。
いずれにしても、アトミック……核なんて名前がつくのも納得の危険度だ。相手からして見れば核兵器なんて痛くも痒くもなくとも、人間にとっては違うのだから。
ともかく、これで隙を見て進むべきではないかという高官の思想は消えたと判断して良いだろう。
このデータを見てまだ近代兵器でどうにか出来ると判断するようなら、其奴はバカを通り越して精神に問題があるので病院に行くべきだし、そういう人間を高官にしていてはいけない。
最初に思い込むと、人間は最後まで道を間違うことは多い。
それは広瀬大将も、幾つもの例を見て知っている。
だが、これだけの圧倒的な敵を見て、それでもまだ考えを改められないのであれば。それは、上に立つ者の資格は無い。
そして資格が無いものを上に立たせている国家が民主主義国家ならそれは選挙に行った全員に原因があるし。
専制国家だったらその国は寿命を迎えたと言う事だ。
おそらくあのアトミックピルバグ、世界中に出るだろうな。
広瀬大将はそう思った。
それは別に勘でもなんでもない。
ただそう思っただけだ。
その後、関ヶ原から動かないまま、アトミックピルバグは人間に睨みを利かせ続けた。
その間開かれた緊急会議では、すぐにアトミックピルバグには対抗策が発見されるまで絶対に手出しをしないこと。
更には、各地に同レベルの中型が出る可能性を考え。
この間のクーデター前後で消耗した戦力を再編すること。間違ってもシャドウには仕掛けないこと。
それが決められたのだった。
ナジャルータ博士は、何人かの研究者とテレビ会議でデータを交換する。いずれにしても新種シャドウ、アトミックピルバグの能力は常軌を逸している。
今までも物理法則なんかガン無視で暴れ回る中型は幾らでもいたが、此奴はちょっとそれらと比べてもレベル違いだ。
人間の軍隊に放り込んだら、それこそ全盛期の米軍ですら、此奴一体に滅ぼされるだろう。
攻防一体の迎撃能力……それも今は迎撃に使っているだけの可能性が高い……あの火力は、対策が思いつかない。
以前超世王セイバージャッジメントで用いたシールドをシミュレーションで試してみたが、一発で貫かれる。
というよりもそもそも、アトミックピルバグが用いている反物質爆破は、破壊の影響を収束して完全にコントロールしている事もあり、恐らくスプリングアナコンダが用いていた遠距離砲より更に上。
それどころか、技術的には数世代上と見て良いだろう。
同じ鉄砲でも、先込め式マスケットとアサルトライフルでは天地の差がある。それと同じ事だ。
嘆息して、連絡を受ける。
畑中博士からだった。
「新しい中型のデータ、見たわー」
「ちょっと攻略が思いつきません。 すみません」
「いやいや、あれは仕方が無いわ。 ちょっと私もどうしたらいいか困り果てているところなの」
「……」
その割りには随分脳天気な雰囲気だ。
この人はあらゆる状況を楽しめるのだろう。だとすると、困り果てている事までも楽しんでいると言うことか。
「問題はあれの動きが読めない事です。 ただ人類を掣肘するつもりだけだったらいいのですけれど」
「来ると思うわよ」
「えっ」
「恐らくだけれど、ノワールと名乗ったシャドウはある程度分からせるつもりなんだと思う。 人間はこの期に及んでまだ自身は万物の霊長だと思い込んでる。 その驕りを砕かない限り、和解も今後の進歩もあり得ないんだと判断したのだと思う。 広瀬大将が戦死したら全てが終わりだから、どうにか攻略法を探さないとまずいわねえ」
専門家との協議がいる。
それについては、意見が一致した。
広瀬大将と、それに畑中准将も交えて、どうするべきか対策を練らなければならないだろう
まずいのは時間だ。いつシャドウが仕掛けて来るか分からない。
あのアトミックピルバグが前進を開始したら、全てが終わりだ。今は対抗策がない。しかも今は四㎞圏内を攻撃して来ているだけで、それ以上の距離を攻撃出来る可能性は低くないのだから。
時間はあまりないと思う。
いずれにしても、追い返すくらいはしないといけない。広瀬大将や、何より人類最大の都市になっている神戸を潰されたら全てが終わりだ。
「ただ、どれくらいやるかはちょっと判断がつかない。 神戸を潰せば効果覿面と考えているのか、それとも……」
「対応策を何とか練らないとまずいですね」
「あるいは私と菜々美ちゃんが対策してきて、大きな被害を出しながらも勝つ事まで計算に入れているのかもね」
「冗談じゃありません」
ナジャルータも珍しくそんな言葉が出ていた。
普段滅多に怒る事はないのに。
シャドウがギアを上げてきたのは、人間のバカさ加減を観察していて。それが想像以上だったから、の可能性が高いが。
それにしてもこれは本当に困る。
実施されたら、人類は本当に立ち直れなくなるだろう。
今神戸には、多くのインフラがある。
人類最大の都市だからだ。
特に超世王セイバージャッジメントが中型を斃せるようになってからは、GDF主導で物資だって集めた。
それを思うと、此処を潰されると。
いや、だからこそなのか。
此処を潰されれば、人間はやっと恐怖から一丸になれるという結論を出したのかも知れない。
だとしてもだ。
その目論み通りにはさせてはならないだろう。
「最大限の協力をします」
「よろしくね。 これはしばらく徹夜かなあ……」
徹夜は却って効率を落とすのだが、それはまあ仕方が無いと判断しても良いだろう。
ともかく、今はやれることをやっていくしかない。
データをもう一度洗い直す。
第二師団がデータを集めてくれた。これ以上のデータ集めは、戦闘前に物資を消耗するだけの結果に終わる可能性が高い。
それも考えて、ともかく今のデータから、迎撃のパターンや、どう攻撃して来ているのかを見きるしかない。
それが出来なければ負けて。
神戸は跡形も無く消し飛ばされ。
畑中姉妹も戦死。
広瀬大将も戦死するだろう。
ナジャルータ博士も死ぬだろうが、そんなことはどうでもいい。ナジャルータ博士の代わりはいるが、畑中姉妹と広瀬大将の代わりはいないのだ。
データを分析していく。
ちょっとしたことでも分析を逃してはならない。
文字通り危急の事態だ。
ここを乗り切れなければ、全てが終わると判断して良い状況。そして、それの解決はナジャルータ博士の双肩に重荷としてのしかかっていた。
※等脚類について
ダンゴムシとかワラジムシの仲間です。陸だけではなく海にもいます。
最大種は現在発見されているものだとダイオウグソクムシですね。深海生物好きの間ではアイドルのように人気があるあいつです。
ただし裏側は耐性が無い人からはグロ画像に見えるらしいので、注意してください。
この新型はダイオウグソクムシとは比較にならない程のサイズ……というか、そもそも等脚類に見た目が似ているだけです。