スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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相手は今の時点では動く様子を見せていません。

しかし試験的に試された攻撃では、もしもこっちに進んでくるだけで対応が不可能である事が分かっています。

その気になればいつでも此方を殺せる相手がいる。

備えなければならないということです。







2、もしもに備えて

京都工場に呼ばれたのは二週間経過してからだった。

 

菜々美が出向くと、姉がキーボードを凄まじい速度で叩いている。もう二つ潰してしまったと、三池さんが苦笑していた。

 

なるほど、どうやら対抗兵器を思いついたらしい。

 

シミュレーションマシンに早速入る。

 

入ってみて分かったが、これそのものもかなり改良されているようだった。超世王のコックピットに更に近くなっている。

 

触ってみるが、ホログラフでかなり誤魔化しているようだ。

 

だが、それは同時に、機体が揺れたりしたときに、何がダメージになるかわかる事も意味している。

 

流石だな。

 

そう思って、新兵器に触ってみるが。

 

正直な話、原点回帰というべきか。

 

目新しいものではなかった。

 

シャドウが凄まじいテクノロジーで攻撃して来ている。それは分かる。あれは生物由来の能力なんてものじゃない。

 

物理法則をガン無視したり。

 

反物質を苦もなく作り出したり。

 

いずれにしても、テクノロジーの産物だ。それを思うと、今までの対シャドウ戦は、名人芸で超テクノロジーを持つ相手とやり合っていた。

 

そういう事実に気付く。

 

別にテクノロジーが優れている方が、常に勝つわけではない。

 

実際問題、原始的な民族を鎮圧しようと銃器で武装した部隊が、返り討ちにあったような事例は幾つも存在している。

 

一世代先の装備で武装していた軍が、劣っているはずの兵装で固めた部隊に完敗した例もある。

 

今、シャドウに対しての戦歴で、勝ったものは、全てそれに当たるのだろう。

 

逆に言うと。

 

だからシャドウ……ノワールは、菜々美に興味を持ったと言う事か。

 

とりあえず試してみたが、装備としては悪くない。

 

ただ、これは制御が今までに無く難しい代物だ。

 

超世王はアトミックピルバグの四㎞圏内には入れない。そして今の時点では、アトミックピルバグがどう動くか分からない。

 

あれもシャドウだ。

 

時速百㎞以上は余裕で出すだろうし。

 

もっと出す可能性もある。

 

奴の進路にいたら挽き潰されるだけで、それを考えると、陣取りなども慎重にする必要がある。

 

幾つか試してみた後、三池さんに話をしておく。

 

こういう装備をしてほしい。

 

そう話すと、三池さんはすぐにメモを取ってくれる。

 

実に有り難い。

 

ふわっとした話を翻訳して姉に伝えてくれる。それだけで、どれだけ助かるか分からないのだ。

 

しばし訓練を続行。

 

黙々と訓練を続けていると、アラームが鳴った。

 

少し休憩を入れて、それでお茶でもしばく。

 

あまり良いお茶ではない。

 

緑茶は僅かにあるのだが、紅茶に関しては合成だけだ。最近はやっと作る余裕が出てきたが。

 

そういったものは、傷病者などに優先されるようになっている。

 

菜々美もそれで異存ない。

 

今の時点では、苦しい状況にある人が嗜好品を楽しむべきだ。

 

酒などについても、生産はそれほど多く無く。

 

元々飲まない菜々美は、ずっと縁が無かった。

 

とりあえずの訓練は終わったので、宿舎に戻る。毎回ジープを運転するのは違う兵士だが、寡黙なのとか、饒舌なのとか、色々いる。

 

今日は寡黙で。

 

帰路に色々言われる事もなく。

 

運転もとても静かで、有り難かった。

 

自宅に戻ってからは、メールなどを確認する。ノワールにはちまちまメールを送るのだが、無視されている状態だ。

 

本当に気が向いたときにしかメールを寄越さない。

 

面倒な奴である。

 

今日のタスク終わり。

 

そう呟くと休む。

 

休むのも仕事だ。睡眠障害などになると、これもろくにできなくなる。それが悲惨極まりない事を、菜々美は良く知っていた。今ではそういった病気の害については、催眠学習で幼い頃から叩き込まれるし。それは一夜漬けなる無駄の極みな勉強法と違って、人間の頭に生涯残る。

 

昔は偏見からの病気に対する差別や。

 

筋トレでどの病気も直るだとか。

 

拗らせた挙げ句に医者よりも自分の方が病気に詳しいとほざくような輩が相応の数いたらしいが。

 

今はそれもなくなっている。

 

勿論、それぞれが病気の治療も出来る訳ではないから、医師の仕事は健在であるのだが。

 

眠れる事に感謝する。

 

そしておきだしてからは。

 

いざという時に備えて、シミュレーションマシンで、超世王の新兵器のブラッシュアップを行うのだ。

 

 

 

黙々と数日、訓練を続ける。

 

姉の作る兵器が随分と苦戦しているのが分かる。今は、時速500㎞でアトミックピルバグが動くのを想定して、戦闘シミュレーションをしているのだが。それでも極めて当てづらい。

 

どのシャドウ対策兵器も相手の方が上を行く事が多く。

 

姉が想定の五割増しくらいの性能で作ってくれているのに。それでも毎度超世王をボロボロ、全壊させて勝つのが当たり前だ。

 

本来だったら良いことではないので。

 

それは菜々美が今後、腕を上げていかなければならない事を示している。

 

ただそれにしても、今回のは今まででもっとも使いづらいかも知れない。シミュレーションマシンは超世王のコアシステムとリンクしているのだが。それでも上手く補助し切れていない。

 

姉の変態兵器になれている菜々美ですらこれだ。

 

他の兵には絶対に使いこなせないだろう。

 

そして別に菜々美は天才パイロットでもなんでもない。

 

単に姉の作る変態兵器と相性が良いだけ。

 

兵士としてはちょっと凡人より上。

 

その程度の存在に過ぎないのだ。それを思うと、今回の兵器はちょっと……かなりまずいなと思う。

 

シャドウがもし一段階ギアを上げてきたのだとしたら。

 

これは対応が出来なくなる。

 

元々、今までのシャドウですら厳しかったのに。

 

更に強くなられたら、もう抵抗すら難しい。

 

それを思い知らせるためにあいつは……アトミックピルバグは出て来たのだろう。それは分かっている。

 

だとしても、やられっぱなしではまずい。

 

姉とナジャルータ博士を交えて、何度か話した。

 

シャドウがアクセスをしてきた今が好機。

 

交渉の席を設けることが出来る可能性が生じた。

 

だが、圧倒的な力の差がある場合、交渉なんて事は出来ない。だから、少しでも力の差を今は縮めるしかない。

 

菜々美はその切り札だ。

 

だから、今無理をしてでも、敵を斃せる事を示さなければならないのだ、と。

 

それについては同感。

 

あのGDFの無能な上層部のお気持ちに忖度しろとだけほざいているくだらない会議に万回出るよりも、有意義な時間を過ごせた。

 

シャドウに対する恨みもあまりない。

 

それは菜々美の世代だから、なのだろうが。

 

いずれにしても、シャドウに対して、もしも和平が結べるなら大賛成だし。どうにか生存の保証がされれば。

 

後は引退して、無理をさせ続けた体を労ってやりたいと思うのが本音だった。

 

シミュレーションマシンから出ると、珍しく広瀬大将が来ていた。ナジャルータ博士と話し込んでいる。

 

菜々美が敬礼すると、辞令を出してくれた。

 

「畑中菜々美准将。 本日付で少将に昇進です」

 

「ありがとうございます。 ただ、私は指揮なんてできませんよ」

 

「分かっています。 あくまで少将待遇というだけです。 行動のグリーンライトを渡すわけにはいきませんが、それでも無能な高官を少しでも掣肘しやすくはなります」

 

「そうですね、それはありがたい」

 

将官というだけで充分過ぎるのだが。

 

まあ、バカが階級で黙ってくれるのなら、それは充分過ぎる。

 

とりあえず、幾つか話をしているので、それを聞いておく。

 

シミュレーション内でやっているのだが、今回アトミックピルバグとやり合う場合、勝負は一瞬になる。

 

恐らく記録的な被害が出るだろう。

 

今、GDFはデコイになるドローンを大量生産しているのと同時に、今まで使ってこなかった旧式兵器まで引っ張り出して来ている。

 

自走砲や迫撃砲など、それら全てだ。

 

今回はもしアトミックピルバグとやりあう事になった場合に備え。それらの旧式兵器の訓練。

 

更に改装についてもやっているようだ。

 

「ただ、これらはあくまでデコイです。 もしもアトミックピルバグが動き出した場合は……」

 

「分かっています。 超世王の出番ですね」

 

「はい。 畑中准将……いや少将なら、必ずやってくれると信じます」

 

「信じられても困りますが、できる限りはやってみます」

 

それだけしか答えられない。

 

今は大言壮語は吐くべきではない。

 

そう菜々美は判断していた。

 

さて、此処からだ。

 

またシミュレーションマシンに入る。

 

菜々美が蓄積したデータを元に、姉がどんどん改良を進めてくれている。有り難い話ではあるのだが。

 

それにも限界がある。

 

やはりこれ、とても使いづらい。

 

とにかく数を重ねて、出来るようにならないとまずい。

 

今回は小型や他の中型の乱入の可能性は低いとナジャルータ博士は判断しているようだが。

 

それもあくまで希望的観測だ。

 

アトミックピルバグの周囲に他のシャドウは今の時点ではいないし、明確に距離を取っているが。

 

もし危機が訪れた場合。

 

大挙して支援に来ないとも限らないのだ。

 

ただ、他のシャドウも相手にすることを想定する場合の訓練は後だ。まずは現時点で判明しているアトミックピルバグの性能の上から、奴を倒す事をシミュレーションで完遂しないといけない。

 

弱点は同じだとしても。

 

それでも、飽和攻撃をどれだけ続けても、本当に斃せるのか分からないし。

 

気を反らせるかも、どこまでやれるかはちょっとなんとも分からないと言うのが事実だった。

 

だからこそ、やれるだけ訓練をしておかなければならないのだ。

 

アラームが鳴る。

 

熱中していたが、かなり厳しい。

 

動くアトミックピルバグの速度次第では、絶対に斃せない。

 

もしも斃せるとしても、本当に記録的な被害が出る。第二師団だけじゃない。第一軍団そのものが全滅するかも知れない。

 

舌なめずりする。

 

流石に今回の相手は、菜々美も冷や汗が出る相手だ。

 

今までの中型も、単騎で師団を蹂躙する奴らばかりだった。だが、それでもこれほどではなかった。

 

今回の奴は、師団どころか。

 

単騎で全盛期の米軍を全滅させかねない相手である。

 

それを思うと、軽口なんて出てこないし。

 

余裕だって少しも生じようが無かった。

 

 

 

更に訓練を続ける。

 

どうにか撃破記録が出るようにはなったが、あくまで楽観に基づいたデータによる場合は、である。

 

他のシャドウと明確に違うアトミックピルバグだ。

 

熱耐性も比べものにならないかも知れない。

 

それを思うと、今のシミュレーションマシンの結果に満足していてはダメだ。そんなものは論外である。

 

訓練を続ける。

 

シミュレーションマシンはダメージを受けたときの振動なども再現していて。どうすればどうダメージを受けるかなども分かりやすくなっている。

 

訓練中に死亡判定が散々出るのはあまり良い気分ではないが。

 

とにかく、やれることはやっていかなければならない。それが現実である。

 

淡々と訓練をして、そしてアラームが鳴ったので出る。

 

会議に姉が出ていると言う事で、いつもの場所でキーボードを猫背で叩いていない。テレビ会議を行う部屋に行っているのだろう。

 

三池さんも同席している筈だ。

 

仮眠室に直行。

 

その途中で、兵士達の話を聞く。

 

「他の国でもシャドウがおかしな動きをしているらしい」

 

「北米の事だろ。 なんでもNロサンゼルスの方に、中型がわんさか来たらしいな。 現地の部隊も、泡を食って距離を取るしかできなかったそうだ」

 

「それで正解だよ。 中型は超世王セイバージャッジメントでないとどうにもできない」

 

「ああ。 それを認めるまで、どれだけの人が死んだんだろうな」

 

全くである。

 

旧軍需産業の連中は、今回の騒ぎで完全に権威を喪失。

 

特に主戦論を煽っていた連中は、一部は悪質なプロパガンダ行為で検挙され、既に逮捕されたようだ。

 

死刑になるものも出るらしい。

 

まあ、あれだけの死者を出させたのだ。

 

兵士なんて使い捨てだ。

 

そう豪語していた連中までいたらしいし。そういう連中が、五千万まで減ってしまった今の人類社会で上層部にいる時点で色々とまずい。

 

自浄作用は残念ながら働かず。

 

シャドウにぶん殴られてようやくGDFは動かなければならなくなったわけだが。

 

その手のカスがいなくなることだけは助かる。

 

仮眠室でしばらく休んでからおきだしてくると、姉が戻ってきていた。軽く話をしておく。

 

「やっぱこれ無理だよ。 今の状態だと扱いが難しすぎる」

 

「菜々美ちゃんでも厳しいか……」

 

「今までの変態兵器と操作難易度が段違いすぎるんだよ」

 

「うーん、それは分かっている。 分かっているんだけれどね」

 

人間から手出しをしなければ、何もしない。

 

ただし、あまりにも愚かしいから、ちょっと分からせる。

 

ノワールは最後にやりとりをしたとき、そんな主旨のことを言っていた。

 

それが実行されるとなれば。

 

都市の一つや二つ潰しに来るのは可能性として想定されるし。

 

何よりも、神戸がターゲットになる可能性は非常に高いのだ。

 

だが、今のままでは。

 

それに対応する事さえ難しいだろう。

 

「とにかく、このままだとちょっとあのダンゴムシ野郎と戦うのは非常に厳しいし、改良を進めて欲しい」

 

「とりあえず何とかはして見るけれど……それだといざという時に対策できないのよねえ」

 

「他の中型や小型との戦闘か」

 

「そういうこと」

 

まあ、この辺はツーカーである。

 

伊達にずっとシャドウとの死闘をともにこなしてきていないのだ。

 

三池さんがお茶を出してくれる。

 

茶葉の質が著しく悪いため、三池さんの技量で淹れたお茶でもあまりおいしくはないが。

 

それでもお茶うけはとても美味しいので、それで満足する事にする。

 

訓練に戻る。

 

出来るだけ、少しでも。

 

姉の変態兵器に関して、実戦運用データをとっておかなければならないだろう。それを思うと。

 

今は、菜々美にできるのは。

 

こう無骨に、訓練を重ねることだけである。

 

その日も夕方までみっちり訓練する。

 

帰路のジープで、風に当たって頭を冷やす。今日の兵士は結構喋る奴だった。

 

「少将に昇進されたのですね。 おめでとうございます」

 

「ありがとうございます。 あくまで特務。 他の人を指揮する立場ではないですよ」

 

別に謙遜でもなんでもない。

 

偉そうにしないと相手が舐めてきて、舐められたら終わりだとかいう世界もあるらしいが。

 

菜々美はそんな事しったことではない。

 

そもそも菜々美は超世王の専属に等しいし。

 

それ以外をするつもりもない。

 

兵士達との連携は当然するつもりだが、その指揮統制は広瀬大将や、他の師団長達の仕事だ。

 

「参謀の市川中将を知っていますか」

 

「はい、それが何か」

 

「それが、今回の戦闘準備について、広瀬大将と意見が対立しているようです」

 

「へえ……」

 

何回か顔を合わせたことがある。

 

狐と陰口を叩かれている糸目の男で、頭脳に関しては申し分なし。兵士としてもそれなりに出来るようだ。

 

ただ、ずっと機会が無くて直に部隊を指揮する事ができず。

 

広瀬大将の参謀としての地位が、ずっと板についているようだが。

 

広瀬大将があまりいい目で見ていないという噂も聞いている。

 

或いは監視のために側に置いているのかも知れなかった。

 

「あまり詳しい事は分からないんですが、世界各地の戦線で隙がある地点で、超世王セイバージャッジメントのデチューンモデルの戦闘を試して、戦況を少しでも有利にするべきだと市川中将は言っているようなんです」

 

「一理はありますね」

 

ただ、あるのは一理だけ。

 

市川中将も知っている筈だ。シャドウとの戦闘はかなり厳しい局面になっている。明らかに警戒のランクを上げてきたシャドウに、無策で此方から仕掛けるのは文字通り自殺行為である。

 

それをやろうというのなら。

 

広瀬大将が制止するのも、まあ当然だなとしかいえなかった。

 

「超世王セイバージャッジメントなら、中型相手なら勝てますね」

 

「いや、それも戦闘経験を積んだ相手のみで、小型も相手とするとなると、デチューンモデルでは厳しいですよ」

 

「またご謙遜を。 常勝の畑中少将とは思えませんね」

 

「……」

 

苦虫を噛み潰す。

 

毎回死にかけているんだが。

 

それをこう美化されても、どう返して良いか分からなかった。

 

ともかく、である。

 

咳払いすると、運転に集中させる。

 

兵士達の中には、まだこんな風に浮ついている奴がいるのか。後で広瀬大将にも、市川中将との確執については確認しておかなければならない。

 

いけ好かない奴でも、広瀬大将の指揮を支えてきた要因としては、現状では排除は考えない方が良いだろう。

 

だが、それは政治闘争の話で。

 

菜々美の関係する分野では無い。

 

嵐山あたりの仕事だろうが。

 

そういって、嵐山に動いて貰うのも問題があるし。

 

ここまで噂が流れてくるようだと、ちょっと本格的に対立が深刻になっているのかもしれなかった。

 

宿舎に着くと、おしゃべりな兵士が乗っていたジープを見送る。

 

そして広瀬大将にメールを送る。

 

昔はこの電子メールが、企業によっては一日一人に対して千以上飛び交うケースも珍しくなかったとかで。

 

これらの中から、自分宛の重要なメールを探し出すだけで、大変な労力を消耗していたのだとか。

 

今はそういう事もない。

 

25年でAIが分野によっては進歩したため、出来るようになって来たことだ。

 

メールでやりとりをすると。

 

広瀬大将は少し考えた後に、返信をしてくる。

 

「市川中将と問題が発生しているのは事実です」

 

「兵士にまで噂が流れているのはちょっとまずいですね」

 

「ええ。 ただ、ちょっと実際の内容とは違いますね。 市川中将は、現在創設を予定されている第五師団の師団長になりたいと申し出ている状態でして」

 

第五師団。

 

確か、訓練専門の第四師団を二つに分けるという話が出ているというのは聞いていた。第四師団は現在一万二千ほどまで兵員が増えているが、その大半が訓練中の兵士達である。実戦などとても出来ない。

 

このうちアグレッサー部隊を含む訓練に特化した部隊合計八千を第四師団のまま残し。

 

残り四千。

 

軽武装の練度が低い部隊を、主に軍内の監視、警察の支援などで動かす補助部隊として編成しようという動きがあるという。

 

現在第一から第三師団は戦闘が起きれば参加し、消耗も想定されている。消耗した場合は第四師団から補充される訳だが。

 

現在は第四師団に色々と問題が起きている。

 

この間のクーデター祭の時にも、第四師団に紛れていたバカ達が、それに荷担したのである。

 

今は兵士の身元の洗い出しに必死になっていて。

 

それもあって、憲兵……つまりMPの仕事を専門にする第五師団を創設。

 

それの師団長に、市川中将がなりたいようだった。

 

「よりにもよって憲兵のボスになりたいとは。 秘密警察でもやりたいんでしょうかね」

 

「実際問題、第四師団の中に潜んでいる問題分子を調査したのは市川中将なんです」

 

ああ、なるほど。

 

元々陰険な人物であったと聞く。

 

そういうのは得意分野というわけだ。

 

「それでどうするんですか」

 

「憲兵が今問題なく動けているのは、特権が与えられていないからです。 歴史的に見ても、憲兵が特権を得ると秘密警察に近い存在になりがちで、軍内の風紀を著しく乱すこともあります。 もし市川中将が第五師団の師団長に就任して、それになった場合は……」

 

まあ、確かにあまり面白い事態にはならなさそうだ。

 

だが、と区切って広瀬大将は言う。

 

「反対はしていますが、最終的な判断は天津原代表と、嵐山補佐官に任せます」

 

「確かに軍の最高幹部ではあっても、そういった事まで見ていられないですよね」

 

「……畑中少将。 もしもの時に備えてください。 アトミックピルバグと戦闘になった場合。 私は生きていられるかわかりませんから」

 

その返事は、菜々美に背筋を伸ばさせるのに十分だった。

 

確かにその通りだ。

 

先の事を考えすぎても仕方が無い。

 

今は、アトミックピルバグがもしも動き出した場合に備えて、少しでも準備をしなければならなかった。







動き出す市川さん。

この人は結構野心的で、この頃から色々と目的のために動いています。

一見すると憲兵のボスになることを目論んでいるように見えますが。

実は狙いは別にあるのです。



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