スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
史上初、ついに中型種シャドウを撃破する事に成功したスーパーロボット()超世王セイバージャッジメント。
続いての相手はこれまた極めて危険な中型シャドウであるランスタートルです。
シェルターキラーの別名を持つ拠点攻略を得意とするシャドウで、小型を多数随伴させこれを手足のように使いこなします。
困難な相手ですが、どうにか倒さなければ人類に未来はありません。
序、要塞を攻め落とせ
GDF本部に畑中直子博士は足を運ぶ。この間のキャノンレオン撃破の功績もある。また、中型シャドウ撃破の初記録と言う事もあった。
足を運んだ会議室には、各地で生き残っている人々の代表がテレビ会議で参加してきている様子である。
中には北米代表もいるが。
25年前にシャドウ襲来と同時に北米が壊滅し再建の目処も立たない今は、その肩身は狭いようで、テレビ会議の隅に映っていた。これはどこの元大国の指導者もそうだ。
元が大国であったほど、今は痛めつけられてしまっている。
日本も散々な有様だが、それでも北米よりはマシという状態なのである。
まず本部から、正式に中型シャドウであるキャノンレオンの撃破の報告、その方法についての展開がされる。
既に小型種の撃破については、畑中菜々美「中佐」によるもの、更にはそれを可能とする「螺旋穿孔砲」(大げさな名前だが、複雑な機構を備えた対物ライフルである)が展開されていたのだが。
中型種が更に撃破されたことに関しては、各地の人類の生き残りも、おおと声を上げていた。
「まさか中型種をこのような方法で……」
「え、ええと、斬魔剣? なんだか一種のミサイルのように見えるのだが……」
「と、ともかく此方でも生産するんだ! 少しでも人類の領土を奪還しないと」
「お待ちください」
畑中博士が、わざとらしくふわっと髪を掻き上げる。
この博士が筋金入りの変人である事は既にGDF関係者、特に首脳部には知れ渡っている。
だが、その能力についても知れ渡っているし。
何より今回中型種撃破を達成した武器を開発したのがこの人である事は分かりきっているのだ。
だから要人達は黙り込んでいた。
「今回の戦いでは、事前に光学探知で確認されていた十倍近い数の小型種が姿を見せ、それどころか二体目のキャノンレオンも姿を見せています。 シャドウは人間が観測出来ている数よりも遙かに多いのかも知れません」
「確かに倒された訳でもないのに数が減ったのは知っている。 奴らとの戦闘が世界中で行われていた頃から、明らかにおかしな現象だとは分かってはいたが……」
「小型種は今後螺旋穿孔砲の普及により、数さえ揃えば撃破が可能になっていくことでしょう。 しかし中型種は違います。 また、人間が優勢になれば、各地に散っているシャドウがまた人間へ攻撃を再開する可能性があります。 事は慎重に進めなければならないでしょう」
「う……うむ……」
北米代表が俯く。
昔最強の国家だった北米代表は、一秒でも早く国土からシャドウを追い払いたいといつも言っている。
だが、北米は主要都市をあらかた潰され、現在12箇所の拠点で人間が暮らしている状態で、軍隊と呼べる組織もそれぞれの拠点に分散している状態だ。兵力はかき集めても一個師団程度。
現在二百万ほどの人間がいるので、無理をすれば兵力だけを増やす事は不可能ではないだろうが。
数だけいてもシャドウにゴミのように蹴散らされるだけなのは、シャドウとの戦いが始まってから分かりきっている。
GDFの代表。
天津原隆が、はげ上がった頭の汗を拭いながら、提案する。
「ともかく、現在は少しずつシャドウを倒して、倒すためのノウハウを蓄積するしかありません。 畑中博士が言う通り、今は無理をできる状態ではないのです。 今まで何度も決戦を行って、その度に人類は敗北した。 核さえ通用しない相手に、どうにか勝つためには、相応の準備が必要なのです」
「分かった……」
「とりあえず我々からは船で物資を送らせて貰う。 シャドウが出ない海域を通らなければならない上に、残っている船も少ない。 あまり多くは送れないが……」
「我々も同じく。 輸送機が使えれば……」
悔しそうにする各国の面々。
現在も飛翔種のシャドウは要所を押さえて飛んでおり、飛行機なんて飛ぼうものならあっと言う間に叩き落とされる。
シャドウとの戦いの前、万能兵器、戦場の常識を変えたと大絶賛されていたドローンが瞬く間に沈黙させられたように。
「ええと、それで作戦なのですが」
「うむ……」
「この間のキャノンレオンとの戦闘で、第一師団はかなりの損害を受けました。 この再建を考えると、第一師団はしばらくは動かせないでしょう。 京都側は安全を確保できたということだけで可として、今度は紀伊半島側に進みます」
「確か次の狙いはランスタートルだという話だが……」
そう。
京都に進出した第二師団が持ち帰ってきた情報によると、ランスタートル二体、キャノンレオン一体が確認されている。
勿論それに今の戦力で挑むのは愚策。
そこで、である。
紀伊半島に向かい、其方にいる中型種を狙う。
紀伊半島でもランスタートルが確認されている。
問題は、ランスタートルは直衛を多数引き連れる危険なシャドウと言う事だ。見えているだけでも、500を超えるブラックウルフ、同数のシルバースネークが確認されている。
その上紀伊半島は、あの織田信長や豊臣秀吉と激しく交戦を続けた難攻不落の土地である。
江戸幕府の時代は要所として紀伊徳川家が配置されていたほどで。
土地が豊か云々以前に、そもそも攻めづらい。
だが、此処の存在のせいで、常に神戸が脅かされているのも事実であり。此処の奪回は、GDFの悲願でもある。
「大規模な兵力を展開出来る場所でもないだろう。 どうするつもりか」
「畑中博士」
「現在作戦を立案して貰っていますが、基本的に敵を誘引して、それで新兵器を試す形になります」
「新兵器だと」
ふふんと畑中博士が胸を張る。
そして、ばっと手を拡げて、自信満々にいうのだった。
「次の兵器は、貫く鉄拳! バーンブレイクナックル!」
「……」
一番唖然としていたのは北米代表。
英国代表も唖然としている。
そして畑中博士は、もう一度誇らしげに武器名を言ったので、誰もが真っ青になっていた。
そのまま恐怖のプレゼンが開始される。
もはや誰が見ても理解不能な図が出されると、全員が完全に凍り付いた。パワポによるプレゼンなのに、そもそも図が理解不能で誰にも理解出来ない。
一人だけそれを「分かりやすく描いている」と本気で思っている畑中博士は、皆の正気度をゴリゴリと削り取りながら、説明を終えていた。
「というわけで、これを先の戦闘でも大きな戦果を上げた新兵器、超世王セイバージャッジメントに装備して、作戦を開始する事になります!」
「ちょ、ちょうせいおう?」
「そのなんとか王というのはキャノンレオンとの戦闘で破壊されたと言う話を聞いているが」
「直しました!」
嬉しそうな畑中博士。
天津原代表は、もう何も言うことはないという表情で、死んだ目で畑中博士を見ているだけだった。
容姿100点、性格言動0点の博士は、更に嬉しそうに言う。
「これを人類最強の戦士である英雄、畑中中佐が操作します! 勝率は現在の計算で、91%、で、す、が!」
「な、なにかね」
「シャドウはどれだけ追加で戦力を出してくるか、どのような奇襲をしてくるか分かりません。 事実この間の戦いでキャノンレオンを相手に、あやうく畑中中佐を失いかけました。 そこで、今回は主力に第二師団を、その支援として第四師団、出向中の米軍海兵隊に動いて貰います」
米軍海兵隊。
古くは世界最強の精鋭と知られたが。それもシャドウとの戦いで壊滅して、今はこのGDF本部がある神戸に二個連隊ほどが駐屯しているのみである。
その戦力は今でも高いが、二個連隊はあくまで二個連隊。
ただ、元々畑中中佐が所属していた時期もある。
生き残りの古強者達が現在でも世界最強だと自負しているだけの練度はある部隊なのである。
それがゆえに、北米から時々帰還を要請してくるのだが。
今帰還させても意味がない事は明らかなので、神戸に駐屯を続けている状態だ。
「次の戦いで、ランスタートルに対する戦術を確立させます」
「分かった。 君は小型種を斃せる対物ライフルを開発した信頼性がある。 今回も任せよう」
「……」
不満な顔を浮かべている者もいたが。
会議は終了した。
るんるんのまま会議室を出る畑中博士は。外で待っていた助手の三池と合流すると、さっそく京都基地に向かう。
基地があるのは奈良南部だが。
まあ、それは仕方が無い事だ。
移動しながら三池と話す。
「随分と暴れていたようですが、予算は出そうですか」
「問題ないかな。 実際キャノンレオンを二体倒した実績があるしね。 前よりも予算は出ると思う」
「それでどうするんですか。 例のなんとかナックル、結構大がかりな装置が必要になりますけど」
「勿論その大がかりな装置を戦場にそのまんま運ぶんだよ。 そのために超世王セイバージャッジメントを修理したんだから」
しばらく三池が何か言いたそうにしたが。
ともかく、そのまま工場へ。
そして工場では、回収してきた超世王セイバージャッジメントを解体し、組み直す作業が開始されていた。
40式戦車の車体に加えて、装甲として今回は全面に畑中博士が開発した対シャドウ装甲、ヒヒイロカネ四重壁を用いて、分厚く重装を施す。
ちなみにヒヒイロカネという伝承上の金属の名を使っているが、実際には劣化ウランとチタンとモリブデンの合金の複合構造に、複雑なプラズマによるリアクティブアーマー機構を搭載したものである。
以前はブラックウルフに食いつかれると、そのまま放り投げられるだけだった戦車も。
これを装甲に搭載するようになってから、ある程度もつようになったし。
中型種の攻撃一発で蒸発していたのに。
今ではある程度は耐えられるようになって来ている。
ただ製造コストが高い。
40式の中でも最前衛に出る戦車くらいにしかこれは装備出来ないのだが。いずれにしても、それでも贅沢に超世王セイバージャッジメントにはこの装甲を使う。そうするだけの意味があるからだ。
今回相手にするランスタートルは、制圧火力に特化していたキャノンレオンと違って、単発の貫通火力に特化している。
その主力武器であるランスがどういう物質なのかはいまだによく分かっていないのだが。いずれにしても最悪の場合に備えて、直撃でなければ一発は耐えられるようにする必要がある。
だからこそ、正面装甲だけでも盛るのだ。
それに加えて、今回も最新鋭のロボットアームを導入して、精密な操作機構を盛り込む。設計図を見て、三池が黙り込むが。
満面の笑みで、畑中博士はチューンを始めるのだった。
怪我はどうにかなおったか。
菜々美中佐は、そのまま出勤する。中佐ともなると本来はデスクワークや政治将校みたいな仕事をすることも多いのだが。
今の時代はそうもいかない。
昔はそういう階層構造で軍隊が風通しが悪かった時代もあったらしい。
一兵卒が最大まで出世しても准尉、なんて時代もあったそうだが。
これだけ苛烈な戦闘が行われた時代の後だと、そうも言っていられなくなっているのだ。
菜々美は中佐になっても特務扱いで、前線に出る事になる。
だから出勤してからやるのは訓練だ。
体の状態を確認してから、射撃の訓練をする。
どんな武器でも冷静に使いこなせる。
そう言われてはいるが、あまり自分では実感は無い。ただ、キャノンレオンを倒している事もあるので。
姉が天才天才いうのは辟易はしていたが。
ある程度のものはあると考えても良いのかも知れなかった。
ともかく、体作りをした後は、射撃の訓練を淡々とする。射撃の精度は個人的な実績から見て悪くない。
隣で射撃しているのがかなり凄いな。
射撃場でしばらく的を撃ち抜いてから、隣を見ると。
あっと声が出ていた。
この間の戦いで、40式に随伴していた兵士だ。まだ若い女性兵士である。ブラックウルフをまったくためらいなく撃ち抜いた腕前は、よく覚えている。
「貴方は」
「お久しぶりです」
「あの時は助かった。 第一師団の所属?」
「はい。 私は呉美玲奈。 伍長であります」
伍長か。
いや、多分あの冷静なブラックウルフ撃破で昇進したと見て良いだろう。
「君は良い腕をしているが、若いな」
「はい。 まだ高校を出たばかりです」
「え、高校生だったのか」
「つい先日まで」
中学出かと思っていた。体格も小さいし顔も童顔過ぎる。ただ、腕の方は図抜けているようだ。
今はパワードスーツが普及してきていて、兵士にはだいたい支給されている。それもあって、度胸と腕前が試される時代が来ている。
かくいう菜々美も支援用の補助パワードスーツはつけている。
それがゆえに、以前あの崩壊する何とか王から脱出出来たのだ。パワードスーツによる筋力支援がなければ、あのまま蒸し焼きだっただろう。
ちなみにそういう事情だから、中学を出てすぐにGDFに入る兵士も多い。
今はシャドウとの戦闘もそれほど多く無いから、安定していると考える者もいるわけだ。
そういう者が、この間の戦闘で多く死んだ。
退役を考えている兵士も多いかも知れないが、当面は無理だろう。シャドウに歴史上初めて会戦で勝ったのだ。
今後、戦闘が続くのは確定である。
「中佐はまた厳しい作戦に出向くんですか」
「ああ、恐らく。 機密だから詳しくは言えないが」
「私もそうなんです。 次は第二師団に移って戦いに出ます。 一緒の戦場に出られるといいですね」
「……そうだな」
出来れば大学にでも行って欲しいものだが。
ちなみに今は、あくまで学業については催眠装置でまとめてやってしまう。そのため、昔の同じような学生とは比較にならない学力を子供が皆持っている。大学も同じである。姉がおかしいくらい頭が良いのも、そういう詰め込みに耐えられたからなのだが。
まあ、それはいい。
敬礼して玲奈伍長と別れると、宿舎に一度戻る。
食事を取っていると、通信が入った。
デバイスを用いて通話をすると、驚きの相手である。
「第二師団師団長の広瀬史路中将です。 よろしく、菜々美中佐」
「これは。 食事中で失礼しました」
「いえ。 次の作戦ではご同行させていただきます。 よろしくお願いいたします」
「いえいえ、此方こそ」
同年代の出世頭と言えばこの人だ。
菜々美でも知っている天才軍略家。今将官をしている人間の中で、一番若いのだったか。
軽く打ち合わせをする。
次の戦場は紀伊半島だという。
だとすると、厳しい話だ。
彼処はとにかく地形が複雑で、ずっと戦国時代は難攻不落を誇っていたという話を聞いている。
それは今も同じだろう。
師団規模の兵力が、易々と上陸できるような場所では無い。ましてや彼処にはランスタートルとかなりの規模の小型シャドウがいた筈。
まて。
なるほど、それでか。
京都でランスタートル二体、キャノンレオン一体が発見されたと聞いている。これをまともに相手にするよりは、攻めづらいがまだランスタートル一体を相手にする此方を戦場にして、中型を倒すノウハウを蓄積すると言う訳だ。
ともかく、今回も菜々美が出る事になる。
姉が作る変態兵器を操作できるのは菜々美だけだからだ。
ともかくやるしかない。
食事を終えると、工場に。
途中で連絡が入ったので、どういうものを作るのかは聞いていたが。そもそもランスタートルもまた、撃破例がない相手である。
如何にして倒すのか。
それは菜々美にも想像がつかない。
ただ、ランスタートルはシェルター殺しとして名高い。
キャノンレオンのプラズマ以上の火力で、核兵器に耐えるために作られたシェルターを容易に粉砕して回ったという話がある。
それで砕かれたシェルターは多く。
逃げ込んでいた人間が皆殺しにされるようなことはたくさんあったという。
怨敵といえるのだろうか。
今ではもう、それもよく分からない話だが。
シャドウが非戦闘員を大量虐殺していたのもまた事実で。
人間が地球を滅茶苦茶にし続けていたのもまた事実。
それを考えると。
菜々美は一概にシャドウを悪として憎むことは出来ないし。その正体を知らないとなんともいえないとも思っていた。
工場に到着したので、IDカードを用いて中に。
なんとか王は既に回収され、修理が始まっている。というか、中枢のパーツだけ取りだして、後は作り直しだろう。
40式戦車の車体はそれなりに予備がある。
これは各地から敗走してきた部隊の放棄した戦車が彼方此方にあるからだ。それらから資材を回収して、40式に造り替えているのである。
燃料も問題ない。
ガソリンは既に自力精製出来る時代だ。
他の燃料も同じく。
人間が減ったことにより、それで自然に負荷を与えずやって行けているのは、皮肉としかいえない。
シミュレーターは既に出来ているが。
目を引くのは、よく分からない筒みたいなものだ。今度はあれを使うのか。
それはそれとして、斬魔剣も修理とメンテナンスが行われているようである。
姉は完全に入っていて、こっちを見ていない。
集中するとああなる。まあ、五月蠅くなくていいか。
三池さんが来たので、礼をする。話を聞く限り、今の時点ではまだシミュレーターも出来ていないそうだ。今日はまだ下見ということである。
ただ、なんとかナックルという今度の兵器の概要は聞かされて、正気かと思ったが。仕方がない。
ランスタートルの恐ろしさは菜々美も知っている。
もしもシャドウが攻勢を開始した場合、神戸だってどうにもならないのだ。斃せる方法があるなら、それでやるしかない。
一度戻る。今度もまた、命がけになりそうだった。
※40式戦車について
本作におけるやられメカであり、それでいて重要な存在でもあります。
元々シャドウとの戦闘が始まった後、あらゆる兵器が過去の遺物と化したのは事実ですが、大混乱の中それでも戦える兵器を作ろうという動きはありました。歩兵銃であるM44ガーディアンしかり。
そのような中で作られたのが、M1エイブラムスなどのMBTをベースにして、西暦2040年に神戸近辺の最後に残った人間の大型軍事工場でロールアウトした40式戦車です。ちなみにメタルマックスシリーズの戦車がごとく一人で操縦可能です。これは技術の進歩もあるのですが、人が深刻に足りないからそういう技術が求められたからですね。
こいつは140ミリ滑空砲を搭載することが出来、改良次第ではレールキャノンを搭載可能に設計されました。今までの戦車よりも数段強力な走攻守揃った地上の王と……人間だけの戦争だったらなれたかもしれませんが。それでもシャドウ相手には力不足。小型ですら此奴を単騎でひっくり返す上に、なんなら主砲にさえ耐え抜く有様です。
こういう事情もあって、それなりに生産はされたものの、シャドウを押し返すにはいたらず。シャドウに明確に効果がある兵器が登場するには、螺旋穿孔砲の登場を待つことになるのです。