スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
検査入院だのなんだので、時間を取られる。
やはり体中に無理が出ていたらしく、一ヶ月は絶対安静と言われた。そして、二度目の前進をアトミックピルバグはしてこない。
腹が立つほど強力なシャドウだ。
勿論グレイローカストの平押しや、多数の中型を一斉に突入させてきても、シャドウは同様の戦果は得られただろう。
だが、シャドウは。
あまりにも分かりやすい塩試合を組める中型種を出してきて。
それで人間に現実を叩き込んだ。
それに、である。
倉庫を圧迫していた。後生大事にため込んでいた旧世代の武器はこれで綺麗さっぱりなくなった。
シャドウが鉱山なども復元しているらしいという話が入ってきている。
彼方此方にまき散らされた重金属などの危険な廃棄物も、地球であるべき場所に戻っているのかもしれない。
だとすれば、放っておくしかないだろう。
菜々美は病室でぼんやりとSNSを見る。
終わりだと叫んで、自殺行為に走ろうとする者もいるようだ。
実際問題、あれだけの物資をつぎ込んで、斃せたのは一体だけ。それも、GDFの弾薬庫が空になるレベルだったのだ。
それが世界中の生き延びている都市国家至近に現れた。
どうにもならないのは誰にでも分かる。
目的通りと言う訳だ。
SNSを見ていても気が滅入ったので、ぼんやりとベッドの外を見る。そうすると、携帯端末が鳴っていた。
メールだ。
ノワールからだった。
「まさか斃せるとは思っていなかったよ。 適当に君が乗る超世王セイバージャッジメントを痛めつけたら、それで戻すつもりだったのだけれどね」
「褒めてくれているのならありがとう。 それで?」
「はっはっは。 つれないね。 とりあえずGDFとかいう無能な組織の様子を見る限り、動きを止めたようで何よりだ。 此方としては大人しくしてくれていればそれでいい。 攻撃はこれ以上するつもりはないよ」
「そう」
まあ、それなら有り難い話だが。
ただ問題は、まだバカが残っていて。それらが自殺的な特攻を仕掛けないか、ということだが。
多分大丈夫だろう。
「人類と交渉をするのではないの?」
「今の時点ではまだしない」
「……」
「私は基本的に君達に対する干渉は最小限にしたい。 他の生物にしているのと同じようにね」
それについては、何となく分かる。
25年間ずっとそうしてきたのだ。
姉が出現して、中型を斃せるようになって、それで人類が調子に乗った。
ここ最近が異常だっただけ。
或いはだけれども。
姉と菜々美が出なければ、シャドウがここまで積極的に動いてくる事はなかったのかもしれない。
「それで私に連絡をしてくるのは何故」
「貴方が特異点だからだ」
「特異点だって? それは姉の方じゃないの」
「畑中博士も確かに特異点に近い。 だけれど、その奔放な発想を生かせるのは君の力があってこそだ。 なんだったら、私の方で君を迎え入れたいほどだが」
流石に絶句する。
勿論既に三池さんに連絡を入れて、やりとりなどは保存して貰ってあるが。
だからこそ、余計に、余計な事はいえないのだ。
「遠慮する。 いくら何でも、其処まで恥知らずにはなれない」
「そうだろうね。 貴方は散々海兵隊時代に死の危険を覚えるほどの……虐めというのか。 そういう行動を取っている相手達によって、散々酷い目にあわされた。 その時に人間に愛想を尽かしても良かったはずだ。 それなのに、結局毎回死ぬ思いをしながら人間の為に戦っている」
此奴、そんな事まで知っているのか。
ストーカーか。
いや、軍のデータベースか何かにアクセス出来るのだろう。
これだけの訳が分からない技術を持っているのだ。
それくらいはやってきてもおかしくない。
だとすると、である。
今までは作戦も何も全て筒抜けだったのかもしれない。
広瀬大将が、直前まで一切連絡を入れずに作戦を実施していた。それが却って功を奏したのも。
ある意味正解だったのだろう。
「それで、監視だけして終わり?」
「まあそうなる。 技術供与なんてしても仕方が無い。 私を神か何かとして崇めはじめる者が出ても困る。 君達は与えても感謝せず、ただひたすら貪るだけの種族だ。 みたいようにだけものをみて、信じたいようにだけ信じる。 早くその性質を改善した次の世代を作り出すんだね。 その時に、私は君達と交渉を持つだろう」
「……」
それでやりとりは終わった。
三池さんから連絡。
今回も本物で間違いないそうだ。
とりあえず、これで当面は大丈夫か。だが、それにしてもちょっと分からない事を言っていたな。
気になる事がある。
ナジャルータ博士から連絡があった。
「シャドウが人間に詳しいのは分かっていましたが、これはちょっと異常ですね。 人間に種として客観が著しく欠けていること、ずっとエゴのまま文明を回してきたことをあまりにも詳しく知っています。 やはりシャドウは、人間にただならぬほど関与してきた存在なのではないでしょうか」
「うーん。 どうも妙なんですよね」
「何がですか」
「シャドウの連中、人間を滅ぼす事にやっぱり興味が無いと思います。 むしろシャドウなりに人間を尊重している。 ですが、人間を軽蔑しきっているようにも思うんです」
少し考え込むナジャルータ博士。
そして、菜々美の疑念に答える。
「シャドウに感情があるのなら、それはつけ込む隙にはなるでしょうが。 現時点での作戦行動は無意味です。 分析はしますので、今は畑中少将は歴戦の疲れを癒やしてください」
「……了解」
通信終わり。
いずれにしても、シャドウとの戦いは、これで一旦終了……とはならないだろう。
しばらくは戦いどころじゃない。
シャドウも先のアトミックピルバグ戦で、その力を見せつけただけで充分と満足したようだが。
GDFの内部がこれからどうなるか分からない。
それにあれを攻略する方法を、姉が考えた場合。余計な事をまた上層部が言い出しかねない。
ともかく、菜々美に今。
出来る事は、一つも無かった。
(続)
戦術的には勝ちましたが、戦略的には完全敗北となったこの戦い。
しかもシャドウは幾らでもアトミックピルバグを繰り出せることが分かったのです。
もはや戦闘どころではない。
しかし、それでもまだ戦いはくすぶり続けています。
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