スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
今まで無害な天津原さんの元で許されていた腐敗と堕落が一気に大なたをふるって改革されていくことになります。
ただこういうのって、必ずしも上手く行くとは限らないのですよねえ。
さて市川さんのお手並み拝見と言う所になります。
それはそれとして。
既に限界が近い畑中菜々美さんの方にも異変が起き始めていますが。
改革が始まった。
天津原が今までなあなあで流してきた汚職やらが、まとめて摘発され始めたのである。そのやり方は徹底していて、公職の上位にいた官僚だろうと容赦がなかった。市川は軍に強力なコネを有しており、特に設立された第五師団、ほぼ公称である「秘密警察師団」は、完全に市川の私兵だった。
この辺りは市川が言っていた、広瀬大将の指揮下を離れて、第五師団の長になるという言葉の本当の意味だったのだろう。
事実、それにほぼ等しい状態になっている。
第五師団の長は聞いた事も無い人物で、軍隊経験者ですらない。正確には軍での経歴がない。
ただ驚くほど無口な女性で、格闘技術に関しては経験者の菜々美が遠くから見ているだけで分かる程のとんでもない手練れだ。
後で広瀬大将に聞いたのだが。
市川が育成していた非公認の特務の一人らしく。それで軍歴がないらしい。
組織戦に関してはほぼ無知な代わり、諜報戦と対人戦を徹底的に仕込まれているそうだ。
こういった戦闘技術も今は催眠教育で行える。
昔みたいに軍隊式のしごきとか、そういう士気を下げ問題を引き起こすものは今はない。それだけは救いだろうか。
ただそれが故に。
簡単に化け物を誕生をさせられるという意味もある。
ともかく菜々美としては、黙々と準備を整えながら、この先にどうするかを考えなければならない段階に入っている。
退院してから、基地で体を鍛える。
これも一日辺りの許容量を医師に言われていて。
携帯端末のアプリに設定して、超過しないように気を付けながら行動している。それくらい体の状態が良くないらしい。
それを理解しているから、狙撃の訓練もそこそこに切り上げる。
呉美大尉はいない、か。
何でも少佐に昇格するらしく、それもあって何かしらの手続きをしているらしいと聞いている。
佐官となると、今まで以上にやる事が増えるのが普通だが。
或いは菜々美と同じように、特務扱いになるのかも知れなかった。
基地から切り上げて、宿舎に戻る。
姉からメールが来ていた。
顔文字だらけで読みづらくて仕方が無いが、これは昔からなので内容は解析できる。とりあえず内容を見ると、アトミックピルバグに対しての有効戦術を今開発しているらしいのだが。
実行は無理だというものだった。
やはり奴には飽和攻撃が必要で。
もし倒すつもりだったら、GDFの弾薬庫がまた空になるという。
そして今、GDFの工場で弾薬類を必死に生産しているが。
材料が無限にあるわけでもない。
各地の国から物資は運ばれて来ているが。今は大型ホバー船を開発するのが始まっていて。それもあって物資の到着が遅い。
バラスト水を使用しないホバー船は、それなりに海に対する影響が小さい。
シャドウに対策するのとしては、考え方としてはありだ。
ただタンカーなどに比べると積載量が極めて小さい。また、外洋を長距離航行するのも難しい。
それを思うと、色々と課題は多い。
姉は今、それの手伝いもしているそうで。
楽しそうではあるが。
大丈夫かちょっと心配になった。
姉は電池が切れるまで動くタイプで、そういう意味では子供みたいなところがある。まあ、精神的には子供みたいなのだが。
電池が切れるまで動いて大丈夫なのは子供時代だけなのが問題で。
今は三池さんが側について補助をしているが。
もしも三池さんが結婚退職でもしたら、姉の活動は多分破綻する。
そういう意味もあって、可哀想だが三池さんには生活の自由なんてものはないだろう。
この間の戦いで負けて。
正直すっきりしたのは事実だ。
完全に負けたが。
あれは負けたのも仕方が無かったし。負けた上で、一矢報いたのだから、それで可とするべきである。
横になって、しばらくぼんやりする。
ノワールの奴、連絡を入れてこないな。
そう思っていると、メール。
ノワールではなかった。
市川である。
「英雄殿。 貴方に頼みたい事がありましてね」
「GDFの代表が、随分と軽い行動ですね」
「はっはっは。 まあ、この辺りは天津原代表とは違うということですよ。 私はずっと我慢してきました。 これからは好きなようにやらせてもらう。 それだけです」
そっか。
それはそれとして、何をしたいのか。
一応相手は代表だ。
天津原の悲惨な末路を見ているから、ある程度分かる。
精神が鋼鉄製のワイヤーで出来ていそうな市川でも、負担は大きいだろうし。無敵の精神を持つ人間なんて存在しない。
いるとしたらそれは人間じゃない。
だから、話は聞く。
「貴方の遺伝子データから作られた子供が、現在45人います。 人工子宮で育てられた子供が39人、貴方の簡易クローンが6人です」
「そんなにいるんですか」
自分でもちょっと驚く。
たくさんクローンが作られているだろう事は考えていたが。
腹を痛めて産んだわけでは無いが、何処の誰とも分からん相手との子供に等しい子が39人か。
ただ、こういうのはプライバシーの観点から、基本的に知らされないはずだが。
「それって確か法律違反では」
「今は危急時ですのでね。 貴方の体の状態は分かっています。 恐らくですが、後数回、中型が脅威になった場合、戦えれば良い方でしょう」
「……」
アトミックピルバグが膠着状態を作った今。
すぐに中型が攻めこんでくる可能性。
また、中型を倒さなければならなくなる可能性は減ったと言える。そういう意味では、シャドウとの交戦をすぐに行わなければならない可能性は減ったと言えるだろう。だが、その先にどうするのか。
何かしらの理由で、中型との交戦は大いにある。
だからこそ、何かしらの備えは確かに必要だ。
その点では、菜々美も市川には同意できる。だが、クローンの話をしてくるのは何故だろうか。
「クローンの内、一番年長なのが現在8歳になります」
「意外と年上ですね」
「クローンの技術がかなりまだ未熟な上に、以前の貴方はそれほど着目されてはいませんでしたからね。 だから一人だけ偶然で作られた。 その後、貴方が武勲をあげた事で、意図的に多数のクローンが作られたと言うことです」
「はあ」
まあ、はあとしか答えられない。
実際それは想定していた。
菜々美が死んだ後は、クローンにその特異点……ノワールの言葉だが。特異点としての仕事が期待される。
それは分かっていた。
だから、別に驚きはしない。
「この八歳の子を、これから軍向けに教育します。 素性は知らせませんが」
「ちょっと待った」
「どうしました」
「小官の後継者にするにしても、八歳の子供に何をさせるつもりですか。 流石に代表とはいえ横暴が過ぎるのでは」
市川は恐らくメールの向こうで笑っている。
やっと分かってきた。
こいつが広瀬大将に嫌われていた理由が、だ。
合理主義というのとはちょっと違う。
例えばだ。
菜々美のクローンが作られるのも、人工子宮で菜々美の遺伝子を半分持った子供が量産されるのも、それはいい。
今の時代だ。
それに菜々美もそれには賛成だ。
人間は万物の霊長とかいう妄想から解き放たれるべきだ。というか、今こそがポストヒューマンを作る試みをする好機だろう。
ありのままの人間が一番素晴らしいとかいうばかげた思想は、この世代で終わりにしなければならない。
シャドウが現れたのだ。
それについては全くもって同意できる。
だが、本人の意思と違う事をやらせるのは、せめて大人になるか。もしくは躾の範囲内での行動とするべきだろう。
少なくとも、八歳の子供……まだ催眠教育を受けている段階だろう子供に、軍での任務なんて強要すべきではない。
それについて見解を述べると、市川は即座に返してくる。
「その子供でだめならば、他のクローン体に同じ措置をするだけです。 そして、しばらくは平穏である今が好機。 シャドウは此方が動かなければ何もしないと言っていますが、それはあくまで圧倒的強者としての立場からの発言。 力の差を埋めていった場合、相手がどう動くか分からない。 そして当面は、シャドウ対策には貴方たち姉妹の力が必須になります」
「まさか姉も」
「ええ。 畑中博士のクローンも現在13人がいて、その全てが恐ろしく高いIQを有しています。 一番年長の子供は十歳で、現在既に軽作業などは許可される年齢になっていますので。 今後は畑中博士の跡継ぎとして、活躍して貰う事になるでしょう」
「……っ」
考えとしては正しい。
だが、それは。
大きく深呼吸する。
確かに、それは手としてはありだろう。だが、菜々美としては、他に何かないのかと言いたくなる。
シャドウは人間を滅ぼしに来たクリーチャーでも侵略に来たエイリアンでもない。
何かしらの別の目的で来ているし、現状の人間を尊重をする姿勢も見せている。
確かに、相手の気が変わったときに備えるのは必須だが。
他にやり方はあるのではあるまいか。
菜々美としては思いつかない。
感情的に市川に反発しても無意味だ。それが分かっているからこそ、余計に腹が立ってくる。
大きく深呼吸して、それで市川にメールを打つ。
「代案は。 それしかないというわけでもないでしょう」
「30程案は考えてありますが、これ以上の有効策はありませんね。 実際問題、超世王セイバージャッジメントを貴方以上に動かせるパイロットはいません。 これについては、呉美大尉というテストパイロットのデータを調べて分かっています。 呉美大尉は軍でも屈指のスコアをたたき出しているエースで、昔だったら恐らく空軍で撃墜王になったいたでしょう。 ですが、呉美大尉ですら貴方ほどの腕ではない。 そして訓練などのデータを見ましたが、呉美大尉は貴方を兵士として全ての点で上回っています。 本来だったら、呉美大尉の方が超世王セイバージャッジメントをより完璧に操作できるはず。 だが、シミュレーションの結果を見ても、実戦の戦果を見ても、貴方に及ばないのは明らか。 貴方である必要がある。 そうとしか結論出来ないのです」
「それで小官自身であるクローンを用いると」
「残念ながら、技術的な問題で、成人のクローン体はいきなり作り出せません。 色々と研究は進めているのですが、どうしても急速成長には無理が出ることが分かっていましてね。 ああ、人体実験はやっていませんよ。 マウスなどで今はやっている段階ですが、急速成長でのクローン精製は、体が崩壊してしまうことが分かっています」
次々と退路を潰してくるな。
いずれにしても、うんざりだ。
確かに広瀬大将が此奴を嫌う理由もわかった。今、菜々美も此奴を嫌いになった。
合理性の権化というのとは少し違う気がする。
こいつには、何かの……ドス黒い悪意みたいなのが、見え隠れしている。それがどうにも分かってしまうのだ。
これは海兵隊で、へらへら笑いながら菜々美を死地に送り込んで。
生きて帰ってきたのを見て、舌打ちをしていたクズ兵士どもを見た感触に似ている。あれと全く同じではないが。
「いずれにしても、正式に会議で決めてください。 代表」
「そのつもりです。 まあ反対意見も出ないように現在調整をしている状況です。 それと……」
「それと?」
「何カ国かは、貴方のクローンを欲しがっています。 超世王セイバージャッジメントとパッケージ化して売って欲しいとね。 天津原代表の頃からそうでした。 これは何も私が始めた事業ではないことを知っておいてください」
メールのやりとりが切れた。
クソが。
そう叫んで、携帯端末を床にたたきつける。昔のスマホだったら破損していただろうが、これは軍用のものだ。
ぶっちゃけ象が踏んでも壊れない。
だから、破損は気にしなくてもいい。
何度か深呼吸して、それで感情を整理する。
分かった事がある。
天津原は無能で無学だった。だが同時に、こういう事を通しもしなかったのだろう。
善人ではなかった。
後で分かってきた事だが、市長時代から公費を横領していたようだし(些細な額ではあるが)。愛人を囲ったりと、私生活では相当にだらしがなかったようだ。
それでも、ある意味では一線は越えていなかった。
市川は違う。
他の国でもそうだが、クーデターを起こしたり。
市民と称して暴れ回る連中と同じ。
こんな状態でもエゴを振り回して平気な顔をしているアホと、ある意味同じ地平に立っている。
昔だったらこう言ったのか。
サイコ野郎と。
だが、優秀な奴なのも事実だ。優秀な奴ほど、倫理から外れていくというのも良く聞く話である。
それに、だ。
そもそもとして、確かに奴が言う事には一理はある。
一理はあるが、それでも踏み越えては行けないラインを平気で踏み越えてきているのも事実だ。
ため息をつく。
確かに、菜々美が倒れた後、超世王を動かせる人間はいない。
呉美大尉でも無理なのは分かっている。その内少佐になるのだろうが、それでも同じである。
それに姉の負担が激甚なのも分かっている。
姉と同じ知能の持ち主が仕事を分散負担したら、確かにマシになる。
それにそれに。
これがあくまで感情的な嫌悪感から来ている事であって。
論理的には市川が言う事の方が正しいことも、菜々美には分かる。だからこそ、頭に来るし。
頭に来るからと言って否定していたら。
頭に来るからと言ってクーデターを起こしたあのアホ元大統領と同じになる。それだけは、菜々美も嫌だった。
ともかく、姉と相談する。
姉は話を既に聞いているという。まあ、これは市川の会話にもあった。そして、姉はノリノリだ。
三池さんの胃が溶けて無くならないか心配だ。
姉一人の面倒だけでも大変だろうに。
まさか三池さんまで増やすのか。それはそれで色々となんというか。言葉も出ない。
幸い今の人工子宮で生まれてくる子供やクローンは、いわゆる新生病を持っていない。ただ、新生病がどうして生じたものなのかは、今も良く分かっていないそうである。
同じような事をする場合は、広瀬大将も。
いや、確か広瀬大将は新生病持ちだったはず。クローンについては本人も慎重だろうし。
ちょっとそれについては分からない。
ただ、そもそもポストヒューマンの作成には前向きなのは菜々美も同じ。
そういう点では。
これは、転換点なのかもしれない。
ナジャルータ博士にはこれは言わない方が良いだろう。一応機密事項になるだろうから。
ただ、それでも。
まずは考えに整理が必要だ。
そしてまずやるべき事は、残りの時間。
あまり長くないシャドウと戦える時間の間。出来る事を、するだけしかない。
深呼吸からだ。
こう言うとき、菜々美は一つずつやるようにしている。
海兵隊時代、小型が彷徨く地域に一人で放り出された時も、そうして生き残った。今は頭に血が上っている。
理屈では正しいと分かっている事が、頭では正しいと理解出来ていない。
だから頭でも正しいと理解出来るようにするところからだ。
深呼吸して、それから三池さんが冷蔵庫に入れてくれていた菓子でも食べる。
時間をおいても大丈夫なクッキーとかがあるので、それをしばらく無心に頬張って、心を落ち着かせると。
それで、ようやく頭が冷えてきた。
こんなことくらい。
一瞬で切り替えられるようになりたいものなのだけれども。
なかなか上手く行かないものだなと思う。
ポストヒューマンを出現させるのであれば。
それは菜々美や姉、広瀬大将みたいな、シャドウとの戦いでもっとも成果を上げてきた存在が、最初に試験台になるべきであって。
そういう意味では、市川の言う事は非人道的ではあっても、何も間違ってなどいないのである。
お湯を出して、自分でインスタントの紅茶を作る。
茶葉そのものが殆どないから合成だし、はっきりいって美味しくないのだが。それでも温まる。
クリームやミルクを入れれば、味も誤魔化せる。
それでしばらく落ち着いた後。
嘆息して、それで考えをまとめていく。
菜々美のクローンを鍛える。
実戦投入は最悪の場合に備えて、の話だ。少なくとも菜々美が戦える時間に黄色信号が点った今、後継者の存在は必須。
呉美少佐はかなり出来るが、それでもやっぱり菜々美ほど超世王を扱う事は出来ないし、これは今後もそうだろう。
あれは名人芸と才能で動かすものだ。
そういう意味では、市川の言う事に賛同し。
積極的に後継者を募るべきだ。
問題は菜々美のクローンだからと言って同じ事が出来るかはかなり怪しいという事であって。
それについては、実際に超世王を触らせて試すしかない。
もしも素質がありそうだったら、菜々美が動けなくなる前に一人前に育てる。
無理そうだったら。
とにかく適性がある人間を見つけるしかない。
今は同性の遺伝子でもクローンでどうにか子供を作れる筈。最悪の場合、菜々美と呉美少佐の遺伝子的な子供とかでも良いだろう。
だが、菜々美の遺伝子が、超世王を操作するのに特化しているのかはちょっと疑問が残る。
この事については、姉に相談し。
幾つかのデータを取った後。
市川に提言し直して、それで実験の後に試して貰うしかないだろう。
これからのGDFの仕事は、シャドウ相手に奴隷とならないための戦力の担保である。
シャドウは今の時点で人間を支配する事に興味が無い。
放任主義と言って良いだろう。
だが、アトミックピルバグを繰り出して来た以上、今後はどういう風に動くかはまったく分からない。
もしも人類がまだバカをやらかすようだったら。
今度こそ抹殺に動くかも知れないし。
奴隷化をしようとするかも知れない。
奴隷化というのは穏当な言い方か。
人間がやってきた行動としては、家畜家が近いと思う。いや、愛玩動物化……ペット化かも知れない。
それをされてもおかしくないくらいの力の差があるのだから。
今はそうさせないように力の差を縮めなければならず。
なんにしても、超世王の改良と、それを操作できる人間の育成は、必須なのである。
しばし頭に糖分を入れて。
それでベッドで横になって気分転換をして。
考えはやっとまとまった。
流石にいきなり市川にそんな話をするつもりはない。まずは姉と三池さんに相談をしてみる。
全てはそれからだ。
一眠りすると、更に考えはしっかりまとまっていた。
京都工場に出向くと、姉は久々にまったりとティータイムを楽しんでいた。三池さんがシュークリームを焼いてくれて。それを整備工のおっちゃん達にも振る舞っている。菜々美も有り難くいただくことにする。
話のことは二人とも分かっているのだろう。
軽くのんびりした後は、部屋を変える。
三人だけで話すべきことだからだ。
「市川代表の話についてだけれど」
「私は乗るつもりだけれど、菜々美ちゃんはどうするつもり?」
「畑中少将、貴方は自分の考えで動いて良いと思います。 手段を選ばずに動いていたら、多分畜生に落ちると思いますので。 市川代表の話は理にかなってはいますが、それでも道理を踏み外すギリギリにあります。 最終的に判断するのは、畑中少将でかまわないと思います」
三池さんは優しいな。
何より菜々美の自主性を重んじてくれている。
この人、時代が違えば良い母親になったのだと思う。
シャドウが現れる前の時代は、それこそ男女での対立なんて言う最果ての時代そのものの事が起きていたらしいのだが。
そういう時代でも、いい母親をやれていただろう。
ばかげた母親の中にあるネットワークでは孤立した可能性もあるが。
群れを作ってくだらないローカルルールで上下関係を常に確認するような連中に混じる必要なんてない。
「ありがとう三池さん。 私は市川代表の提案に乗るよ」
「良いんですね」
「ええ。 ノワールも市川も言う事は腹立つけれど、言う事に一理はあると思っているんだ。 実際問題、既に人間は地球の支配者として我が物顔に振る舞っていた時代を終えている。 滅茶苦茶に地球を蹂躙して、第六の絶滅期を作ろうとしていた時代が終わったのだから。 後は後継の種族にバトンを渡すか、或いはその後継の種族に変わっていく事が重要なのだと思う。 そのためにはシャドウに好きかってされないための力と技術を蓄えなければいけないのであって、それには私と姉貴の協力が必須だから」
「分かりました。 それでは、私もお二人に協力します」
自分で決めた事だ。
市川は間違っても善人などではない。それは分かっている。
それでも、奴が言っている事に、今の時点では間違いは無い。それが分かっているからこそ。
今は。その話には、乗っておくべきだった。
言いたいことだけ言っていくノワールですが、こいつはこいつできちんとした目的の下で動いています。
単に人間を駆除するために地球に来た訳ではないのです。
むしろ不要なことはしないものの、会話は成立する時点で。話が出来ても会話にならない人間よりもマシだったりするのがタチが悪いところですね……
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