スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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そして案の場トラブルが起きます。

正確に言うと、今まで溜まりに貯まっていたものが爆発したというのが正しいのですが……

それはそれとして、対処しなければなりません。





3、遭遇戦

舌打ち。

 

ノワールにメールを出しても、相変わらず黙りだ。

 

姉は相変わらず楽しそうに新兵器を作っているし、それで今シミュレーションが終わり。それを搭載して、演習に出ている。

 

見込みがありそうな新兵や子供との面談を何回かやったが、いずれもが大した力はなかった。

 

やはり遺伝ではなく後天的な経験が問題なのだろうか。

 

そう思いながら、超世王をアトミックピルバグの近くまで移動させる。随伴しているのは狙撃大隊二つ。

 

弾薬を必死に生産していて、少しずつ行き渡り始めているが。

 

アトミックピルバグとの戦闘で使い切った弾薬物資を補給するには、年単位での時間がいる。

 

そう聞かされているし。

 

何より超世王に積んでいる装備は、優先的に物資を回して貰っている事もある。

 

少なくとも菜々美には、周りに文句を言う資格は無い。

 

ただ、周りも超世王に対して文句を言うことはない。

 

アトミックピルバグを倒すには手段が他に無かったことはあの戦闘に参加していたものが皆知っているし。

 

何よりも、実際アトミックピルバグを倒したのだから。

 

広瀬大将から連絡。

 

何かあったのかも知れない。

 

「此方畑中少将。 何事でしょう」

 

「すぐに若狭方面に向かってください」

 

「分かりました。 反転!」

 

随伴している狙撃大隊二つに指示。

 

そのまま、超世王で現地に向かう。

 

今回は斬魔クナイを搭載していないこともあり、時速80㎞ちかくは出る。昔の戦車は重すぎて地面にめり込んで進めなくなるなんてこともあったらしいが。

 

今の時代の戦車は、それらに対しての対策もあり。

 

しっかり動けるようになっている。

 

戦車をベースにしている超世王もそれは同じ。現在メインのベースとなっているアレキサンドロスⅢも、対人を主眼に置いた戦車としては優秀なのだ。

 

あくまで対人兵器としてなら。

 

ジープもこの際に一気に新型に刷新しようという動きがあったらしい。

 

今狙撃大隊が乗っているのは57式陸上四輪駆動車。

 

まあジープなのだが。

 

螺旋穿孔砲との連携を主眼においており、狙撃手のための支援システムを搭載している他。

 

小回りがきくようにしていて。

 

更に最悪の場合、小型シャドウに対してある程度引き撃ちが出来るように、整地機動をかなりパワーアップしている。

 

時速も100㎞を出せる他、舗装道路ならもっと速度を出せるそうだ。

 

まあ今はそれを出してもあまり意味がないのだが。

 

舗装道路なんて都市部にしかないし。

 

都市部にシャドウが入り込んだらもう終わりなので。

 

また、歩兵戦闘車にも、完全無人型ではなくて、支援AIを搭載しており、螺旋穿孔砲を扱いやすいように支援するシステムが搭載されている。

 

いずれにしても、少しずつ名人芸でなくてもシャドウを斃せるようになっているのだが。

 

これらはシャドウと戦った兵士が、それぞれ要望を姉に出し。

 

それを姉が取り入れた結果、研磨されてきたシステムである。

 

多数の被害の上になり立っているものであって。

 

姉が天才だから簡単ポンに造れたものではない。

 

無言で移動を続けていると、追加で連絡が入る。若狭の方で展開しているスカウト11が、シャドウの妙な動きを確認したという。

 

向こうからは手出しをしない。

 

そういう話だった筈だが。

 

ただ、気が変わる可能性だってある。

 

ノワールの奴、何か悪さを企んでいるかも知れない。

 

小競り合い程度で済めばいいのだが。

 

スカウトと連絡が取れた。スカウト11は、現在バイクで移動しながら距離を取っていると言う。

 

「グレイローカストの群れがびっしり山に貼り付いています。 アトミックピルバグに押し出された集団と見て良さそうなんですが、それにしても数が多いのが気になりまして」

 

「いや、常に監視をしているスカウトの判断であれば、調査に出向きます。 戦闘を想定した部隊ではないのですから、即座に後退してください」

 

「イエッサ!」

 

「さて……」

 

グレイローカストの群れなんか、まともにやりあって勝てる訳がない。

 

あの例の対グレイローカストのMLRSも、今は軍基地に引っ込んで整備中。一応弾は装填してはあるのだが。

 

元々巨大な装備だし、前線に素早く展開して射撃というのには向いていない。

 

どちらかというと待ち伏せ用の兵器だ。

 

それもあって、グレイローカストの群れが襲ってきた場合は、手持ちの装備でどうにかしなければならないが。

 

そうなった場合。相手に出来る数は精々数百までだ。

 

一旦停止。

 

距離を充分に取って、様子を見る。

 

グレイローカストが羽を広げて、何かしているのが見える。飛ぼうとしているのだろうか。

 

だが、こっちに向けて飛んでこないのならどうでもいい。

 

とにかく監視を続行。

 

「畑中少将。 援軍を呼んだ方が良いのでは」

 

「援軍なんていませんよ」

 

「……」

 

弾薬がない。呼んだところで、弾よけにしかならない。それが現実である。そしてシャドウの機動力、火力から考えて、弾よけなんぞ何の役にも立たない。それは今も変わっていないのだ。

 

ともかく今は、何が起きているのかを見定めなければならない。

 

現状、超世王には今まで有効だった装備に加え、姉が作った新兵器を搭載している。これがまた尖った代物で、そもそも何を相手に使って良いのかよく分からないものなのだけれども。

 

最悪の事態には、常に備える。

 

菜々美はしばし、状態の観察に努める。

 

やがて、グレイローカストが飛び立つ。一斉に北に向かったようである。

 

だとすると海岸線まで移動するのか。

 

いずれにしても、グレイローカストの万単位の群れが来る事は無さそうだ。しかし、移動するのには意味があるはず。

 

しばし無言で観察を続けていると。

 

青々とした山の一部で、何かが動く。

 

それはかなり大きいようだが、距離が遠くてよく分からない。いずれにしても油断はしないように注意を促す。

 

さて、交戦の可能性はあるか。

 

色々な情報を総合しても、距離は十分。遠距離からの攻撃でも、ものによっては耐えられる。

 

また新種だったら、それはそれで情報を持ち帰らなければならない。

 

無言でいる内に。

 

一分近くが経過。ゴリゴリと神経が削られる中、それが山から、ずるずると降りて来たのが見えた。

 

でかい。

 

大きさはざっと五十m以上はある。ただ、あれは。

 

「クリーナー?」

 

「それにしては大きすぎる。 一体なんだ……?」

 

「あの大きさは中型よりも大型に近いです。 未知の能力を持っている可能性があります。 さて、どうするか」

 

一応、広瀬大将に連絡。

 

以降、指揮を取って貰う。

 

菜々美はあくまで個人戦が専門だ。大隊の指揮をしながら、大物とやりあうのはあまり得意では無い。

 

というか、あの大型クリーナー、なんだ。

 

あんなのは今まで目撃されたこともないが。だいたい既存のシャドウであれば、ノワールが嘘をついたと言う事か。

 

メールが来る。

 

ノワールである。

 

苛立ちながら、内容を読み上げさせる。今更何のメールを返してきたというのか。

 

「やあ英雄。 まさか君達が京都という場所に来ているのかな」

 

「そうだが、なんだ」

 

音声でそのまま返事させるようにする。

 

こっちは一秒でもあの大型クリーナーから目を外したらまずい。びりびりと、シャドウとやりあってきた勘が告げている。

 

小型シャドウは弱い。

 

ただしそれは中型に比べての話だ。

 

小型シャドウの能力は決して弱くない。実際問題、もっとも芸がないブラックウルフでも、チーターが裸足で逃げ出す速度で接近してきて、戦車を一瞬でひっくり返す程のパワーを誇るし。動きも俊敏で、直線的でもない。

 

あれが大型化した場合、キャノンレオンなどの中型のような、強力な攻撃手段を備えてくる可能性は十分にある。

 

そういう意味で、油断しては絶対にいけない相手だ。

 

「君が見ているものは、少し処理に時間が掛かるものだ。 出来るだけ距離を取った方が良いだろう」

 

「何の話をしている」

 

「距離を取った方が良いともう一度言っておく。 君達に観測されるのは初めてだろう。 此方も管理はしていたのだが、それでもたまに出ていた存在だ。 この位置で出現するとはちょっと思っていなくてね。 それですぐに私も私達をさがらせたのだが」

 

意味はよく分からないが。

 

やはりろくでもないものであるらしい。

 

メールでのやりとりは広瀬大将にも連絡が即座に行くようにしてある。広瀬大将は、即座にさがるように指示を出してきていた。

 

菜々美は頷くと、さがる。

 

あれが何者かもどんな能力を持っているかも分からない以上、下手に接近するのはリスクが高いし。

 

戦えと言われれば能力を探るために戦うし。

 

今はそうではないからさがる。

 

それだけである。

 

距離を取って様子を見守る。巨大クリーナーは、しばらく文字通りの蠕動を繰り返していたが。

 

現れたのは、キャノンレオンだ。

 

山側から、悠々と姿を見せる。それも一体では無い。それらのキャノンレオンが、一斉に巨大クリーナーにプラズマ弾を叩き込む。

 

炸裂するプラズマに、巨大クリーナーが吹き飛ぶ。

 

いや、違う。

 

吹っ飛んだのは、巨大クリーナーの上部だけ。激しい爆発が連鎖する。

 

シャドウがシャドウを攻撃している。

 

姉が連絡を寄越す。

 

「観察データをもう少し取れないかしら。 初めてみる現象なんだけど」

 

「此方にもお願いします」

 

「そう言われても」

 

ナジャルータ博士も興味津々だ。

 

正直興味津々になられても困るのだが、とにかく今はデータを集めるしかない。距離はもう少しとっておく。

 

あれがクリーナーの巨大化したものだとしても。

 

熱攻撃は有効なはずで、キャノンレオンからのプラズマ攻撃だったら、クリーナーくらいなら消し飛ぶはずなのだが。

 

あれはダメージは受けているようだが、消えるようには見えない。

 

そもそもシャドウが集合意識生物のようなものだったら、そもそも味方同士で争うだろうか。

 

それも良く分からない。

 

クリーナーは反撃しない。ひたすらもがいているが、やがてキャノンレオンは火力を貯めはじめる。

 

更に威力を上げるつもりか。

 

それを見て、初めてクリーナーが動く。

 

いきなり此方に接近を開始したのだ。その背中に、キャノンレオンがチャージをやめて、立て続けに攻撃を叩き込み始める。だが、体は削れているが、それでも壊れる様子はない。

 

シャドウは死ぬと消滅する。

 

消滅していないと言う事は、致命打に達していない。

 

「畑中少将! ど、どうします!」

 

「私では無く広瀬大将の指示を受けてください!」

 

こっちとしては、やることをやるだけだ。

 

あのサイズだと、斬魔剣Ⅱで斬り切れるかちょっと不安だ。それにクリーナーは不定形である。

 

切っている間に、此方が溶かされかねない。

 

飛び道具は一応あるにはあるが。ともかくさがりながら、搭載しているオートキャノンで射撃。二個狙撃大隊も、同じように射撃を開始する。だが、それらが効いている様子はない。

 

タフネスは中型並みか。

 

更にキャノンレオンからの攻撃も浴びているが、それでもクリーナーは消える様子がない。

 

大隊は散開。

 

いい判断だ。固まっていたらそのまま一呑みにされかねない。

 

シャドウに接近されるというのは、死を意味する。

 

ビーム装備のデチューンモデルは近くにはいない。

 

だとすると、パイルバンカーと斬魔剣Ⅱだけでやるしかないか。

 

その時。

 

シールドが反応していた。

 

炸裂した熱量に、機体が浮き上がりかける。

 

地面に一瞬おいて叩き付けられるが、着地のダメージは想定したほど酷くは無い。ただ、接近戦でいつも酷い目にあっているから慣れっこだからかも知れない。

 

「螺旋穿孔砲は効果無し! 狙撃大隊、さがってください!」

 

「分かりました! ご武運を!」

 

後退する狙撃大隊。ちゃんと蛇行しながらさがっているのは立派だ。まっすぐさがれば、今の攻撃の的だろう。

 

今のはなんだ。

 

解析する。

 

どうも蓄積した熱量を、苦し紛れに放出したものらしい。

 

だとすると、弱点は他のシャドウと同じというわけだ。キャノンレオンの猛攻を喰らって、自壊しそうになって。

 

それで熱量を。

 

いやまて。

 

今までのシャドウに、放熱なんて機能を持っている奴がいたか。熱攻撃をしてくる奴は相応数がいたが、放熱については初めて見る。

 

あいつ、やっぱり中型相当の存在としてみるべきだ。

 

続いて高熱弾。立て続けに二発。

 

シールドが動作して防ぐが、炸裂する熱量が凄まじく、殺しきれない。見る間にアラームがなる。

 

冷房がフル稼働するが、ちょっとこのまま接近戦はまずい。

 

巨大クリーナーは凄まじい速度で、赤熱したまま迫ってきている。あれに覆い被されたら、一瞬で死ぬ。

 

何も残らないだろう。

 

ある意味苦しまずに死ねるかも知れないが。

 

搭載している斬魔剣Ⅱの他に、投擲型の斬魔剣を搭載している。

 

それを、投射。

 

ワイヤーが、ぐんと伸びる。

 

巨大クリーナーに着弾。凄まじい熱を帯びた巨大クリーナーが、ようやく例の悲鳴を上げる。

 

だが。

 

斬魔剣が、あまりの高熱に、見る間にエラーを吐き出す。

 

それだけじゃない。

 

地面が瞬間的に融解して、爆発まで引き起こしている。

 

プラズマ化した物質が空気に触れて、炸裂しているのだ。恐らく温度は数万度に達しているはず。

 

全身がそれだ。

 

シャドウを切っているときですら、そうなっているのは切り口だけである。

 

「まずいなあれ……」

 

斬魔剣が爆発四散。それを取り込んで、一瞬でかき消してしまうクリーナー。あのサイズでも、あの熱を帯びていても。

 

性質に変化はないということか。

 

クリーナーは名前通りの掃除屋だ。

 

そもそもとして人間とその精製したものを全て掃除することが仕事。戦闘は二の次。二の次である筈なのだが。

 

距離が近付く。

 

勝負は一瞬になる。

 

キャノンレオンが更に追撃を叩き込んだが、それでもまだ赤熱した巨大クリーナーは動きを止めない。

 

だが、例の凄まじい音を立てている。

 

最悪の事態……あれが無数のクリーナーに分裂するという最悪の状況は、恐らくは起こらないだろう。

 

それは今までのキャノンレオンの攻撃で、蓄熱だけをして来た事からも明らかである。

 

だが、サイズが問題だ。

 

また熱攻撃が飛んでくる。

 

放熱だけでとんでもない火力だ。どうにか必死に回避行動を取るが、機体の一部が文字通り消し飛んだ。

 

衝撃の余波で、思わずシートに背中を打ち付ける。

 

ちょっとまずい。

 

だが、接近戦を挑むにしても、これは厳しいか。

 

しかしだ。

 

奴は既に瀕死。

 

これは、勝負を仕掛けるしかない。

 

狙撃大隊は引いた。だとすれば、ああいう熱線を打ち込まれても、どうにかシールドで多少の回避は出来るか。

 

殺しきれるか。

 

既に悲鳴を上げている状態だ。一瞬だけの接近だったら、恐らくどうにかなる。問題はその後だが。

 

膨大な熱を蓄えたシャドウが、その後大爆発した例はない。

 

奴も恐らく行けるはずだ。そう判断して、菜々美は後退を停止。

 

一転して、前に出ていた。

 

距離が見る間に詰まってくる。

 

巨大クリーナーが、凄まじい熱量をまた放ってくるが、予備動作は見切った。即座に回避。

 

空気を連鎖的に爆発させながら、熱線が空中に延びる。

 

雲がそれを受けて吹っ飛んだようだ。

 

その熱量放出を補うように、数発のキャノンレオンからの攻撃が着弾する。体を持ち上げる巨大クリーナー。

 

のしかかってくるつもりか。

 

これだけの状況になっても、味方には攻撃しない。

 

攻撃するのは人間とその精製物だけ。

 

その性質は一貫していて。

 

愚直ですらある。

 

超世王のダメージも酷いが、まだ動ける。一気に熱量が上がってくる。エアコンが限界を示している。

 

一瞬で勝負を付けなければ蒸し焼きだ。

 

のしかかってきた巨大クリーナー。

 

菜々美はまずパイルバンカーを打ち込む。内部の高出力プラズマを、パイルバンカーが溶ける前に可能な限り叩き込む。更に、斬魔剣Ⅱで、一刀に右から左に切り裂く。それだけで、エラーが出る。

 

一瞬接触しただけで、超高熱で相手を切り裂く斬魔剣Ⅱが、それだけのダメージを受けるほど相手の熱量があるということだ。

 

そして、使えるとは思っていなかったが、使う。

 

新兵器。

 

ぶっ放したのは、圧縮した酸素である。ただし、零下240℃まで冷やしてある。固体化した圧縮酸素を、叩き付ける攻撃。

 

敢えてシャドウには弱点にならないものの筈だが。

 

これは熱攻撃をして来た相手に叩き込む事で、それを相殺する兵器である。

 

名付けて……。

 

コンソールには、アイスネメシスクリッカーとある。どういう意味か分からないしギリシャ神話の神の名前を使う意味もわからないが、とにかくそれが四十発、一瞬で巨大クリーナーの体に炸裂。

 

熱量差で瞬時に大爆発し、その体を押し返す。

 

同時に、超世王にもレッドアラートが出る程のダメージが入るが。後一瞬だけ、やれる。そして、その一瞬で。

 

返す刀の一撃を、斬魔剣Ⅱで横薙ぎにたたき込み。

 

だめ押しで、斬魔剣Ⅱを突き込んでいた。

 

凄まじい熱量で、一気に超世王の内部がサウナになり、更に熱量が上がっていく。

 

これで倒れろ。

 

そう思った瞬間。

 

音が、止んでいた。

 

すぐにハッチが開く。緊急放熱が行われる。

 

肺が焼けそうな熱の中、必死に這い出す。超世王が溶けかかっている。これはまた全部作り直しだな。

 

そう思って、苦笑いするが。

 

それにすら、必死の努力が必要だった。

 

あれほど蓄えられていた熱は、何処かに消えてしまった。そういえば今までのシャドウだってそうだった。

 

切った後、熱がまとめて放出されていたのなら、大爆発で何も残らなかっただろう。

 

爆発する奴もいるにはいたが、それも蓄積した熱量が一気に放出された爆発にしてはあまりにも威力が小さすぎた。

 

大型クリーナーが這ってきた後は、地面が溶けて煮立っている。

 

それだけだ。奴の痕跡は。

 

キャノンレオンが引き揚げて行く。あのクリーナーはなんだったのか。それだけが分からない。

 

放っておけば、キャノンレオンが始末していたのか。

 

いや、どうにもおかしい。

 

出現前にノワールが連絡を入れてきたこともある。

 

とにかくこの件。

 

何だか嫌な方向に向かうような気がした。

 

 

 

救急車が来て、菜々美を病院に搬送する。超世王はレッカーされて、また組み直しである。

 

サウナどころの熱ではなかったが、コアシステムは多分無事なはずだ。

 

それにしても、あいつは本当に何だったのか。

 

ノワールが警告してきたのは何故か。

 

意図的に襲わせたのではないのか。

 

確かに、元々キャノンレオンが始末に掛かっていた上。

 

それでダメージを受けて錯乱したようにも見えた。もっと距離を取っていれば、襲われるのは避けられたのか。

 

いや、いずれにしても情報を得るのは大事だ。

 

救急隊員に治療を任せる。

 

低温火傷になっているかどうかは分からないが、いずれにしてもこれはまた入院だろう。

 

また超世王を扱える残り時間が縮んだな。

 

或いは今ので最後だったかも知れない。

 

いずれにしても分かった事がある。

 

ロボットアニメに出てくるような、羽が生えた格好いい人型のスーパーロボットには恐らく乗る事は出来ないだろう。

 

それだけは確定だ。

 

ただし、これも分かっている。

 

今後、超世王は更に性能が上がる。

 

もしも、姉が癖まみれの設計を改善できるようになり。

 

ある程度乗るための敷居が下がったのなら。

 

その時は、もっと開発や進歩の速度が進み。

 

人型のスーパーロボットが、シャドウ相手に大立ち回りを演じる日が来るかも知れない。

 

その日を菜々美が見られるかは分からない。

 

治療を受けながら、医師に説明を受ける。

 

スプリングアナコンダと交戦した時ほどの酷い状態ではないが、元々皮膚にダメージがあったところに、今回の超高熱に晒された。

 

短時間だが体組織へのダメージが大きく。

 

汗腺が特にダメージを大きく受けているらしい。

 

今後汗腺の機能は相当に低下するだけじゃない。元々傷やら痕やらが目立っていた肌は、更にそのダメージが蓄積して行く事になる。

 

そういわれて。

 

菜々美は大きく嘆息していた。

 

二日くらい治療と検査で時間が取られる。

 

その後に、三池さんが来た。

 

三池さんに軽く話を聞く。

 

「畑中少将が交戦した相手、あれはやはりクリーナーだったようです。 ただ、蓄熱と放熱という、シャドウにとっては致命的な攻撃を回避するための能力を持っていた事もあり、中型と遜色ない能力だったと判断して良いかと思います」

 

「それにしてもアレは一体何だったんですか」

 

「直前のノワールの言葉と、キャノンレオンによる攻撃。 いずれにしても、何かしらのイレギュラーによるものかと思われます。 あの後もシャドウによる攻撃は観測されていません。 何が引き金で引き起こされたことなのか。 それにあのクリーナーは、周囲の自然への被害を完全に無視して暴れていました。 他のシャドウとは性質があまりにも違いすぎます。 それでいながら、一番ダメージを与えていたキャノンレオンに反撃するそぶりはありませんでした。 これもよく分かりません」

 

ナジャルータ博士も、即座に研究を開始してくれているらしい。

 

いずれにしても、弱い相手ではなかった。

 

まさかとは思うが。

 

今まで交戦していた小型も。

 

何らかの切っ掛けで、あのような凶悪な姿になるのだろうか。

 

あり得る話だ。

 

ただ、その法則性が分からない。

 

例えばこの25年間でそれは目撃されていない。

 

シャドウの様子を探るべく、スカウトなどはシャドウがいる地域をギリギリで攻めていたし。

 

その過程で散々死人だって出た。

 

軍属でもない人間でも、例えばシャドウを信仰するカルト教団なんてものが出て。それがまとめてシャドウのいる地域に入り込んだ挙げ句、まとめて殺されるなんて事態だってあった。

 

25年間シャドウは侵攻して来なかったが。

 

かといって交戦例や、シャドウに人が殺されなかった訳では無い。

 

つまりその間に、多数の情報は集まっていたわけで。

 

それらの情報に、あのような小型種の変容のデータはなかったというのが、不可解極まりない。

 

それが超世王で中型を倒した結果なのか。

 

それともノワールが言っていたような不具合の結果なのかは。

 

正直何とも言えないとしか、菜々美には言えなかった。

 

「それと、此方からも」

 

「病状ですか」

 

「……恐らく後数回交戦できれば良い方かと思います。 今回の件で体の汗腺が殆どやられてしまったようですので」

 

「分かりました。 どうにか対策を練ります」

 

後継者になりうる人物も探して欲しい。

 

そういうと、三池さんは静かに頷いていた。

 

クローンの子供らは、多分無理だ。

 

菜々美は何となく分かったが、この超世王を初めとした、姉の変態兵器と相性がいいのは。

 

才能ではなく、恐らく後天的に獲得した一種の努力の結果だ。

 

かといって、何を努力したらこんな事が出来るようになるのかは、菜々美としてもよく分からないのである。

 

海兵隊で酷い扱いを受けたことは関係無いだろう。

 

M44ガーディアンで小型を単騎撃破した時も、別に戦闘経験やらとは関係がなかった気がする。

 

かといって軍に入る前入った後でも。

 

別にシャドウに対して、何かしらの特段変わった事はしたことが無いし。

 

姉の訳が分からない新兵器を積極的に任されるようになったのは、むしろ小型を単騎撃破してからだ。

 

思い当たる事がない。

 

看護師が来て寝るように言ったので、従う事にする。

 

相当に体のダメージが酷いというのは分かった。細胞の再生なんかもそもそも体中のダメージが大きいので、難しいのだという。

 

翌日に医師に詳しい話を聞いたが。

 

それこそ体をそれこそ丸ごと取り替えるくらいの事が必要で。

 

今のまま戦場に出たら、三十前に引退どころか。

 

四十まで命がもたないと言われた。

 

そうか。

 

それでも、戦場に出られるだけ出る価値はある。

 

菜々美は初めて中型を倒した。

 

そしてそれ以降も、シャドウがこっちに興味を持ち。会話まで持ちかけてくるほどに、相手に意識させた。

 

まだ相手が一方的に気が向いたときに話しかけてくる程度だが。

 

それでも今までの、ほぼ完全に管理だけをしてくる状況とはだいぶ違っている。

 

やった事に意味はあるし。

 

まだ菜々美が戦場に出ることに意味はある。

 

そう医師に説明して。

 

医師は大きくため息をついた。

 

菜々美だって、出来ればさっさと引退して悠々自適と行きたいものだが。

 

それもまた、厳しいのも事実だった。








小型種は雑魚などではありませんでした。

それが判明した事は、文字通り戦術ドクトリンを揺るがし。

今までに蓄積できていた全てが、瓦解することを意味します。




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