スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント   作:dwwyakata@2024

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見つかった後継者候補ですが、例によってかなり癖が強い子です。

この子をどうにか一人前まで仕上げなければなりません。

レンジャー訓練などを受けた一人前の精鋭兵士で代替出来ない。

それが変態武装をかき集めたチューンアップ機の悲しいところです。






2、雪中赤華

現在だと、十四歳だと仕事をしていることは普通にある。今回面接に呼んだ子は、そういう既に仕事をしている子だった。

 

パワードスーツなどの支援もあって、背丈などが足りていなくても大人と同じように仕事はできるのだ。

 

車などは既にAI操作で動くようになっていて、交通事故は過去の出来事になった。ただこれは、都市圏が狭くなった事で、全て容易に管理できるようになったことも大きいとは言われている。

 

昔はAI制御の自動車は色々と課題が多かったのだが。

 

今では子供がドライバーをしている事もある。

 

そういう仕事をしているのが、今回の子だ。

 

少年みたいな見た目だが、髪の毛だけはそれなりに伸ばしている。良く焼けた肌と、低めの背。

 

スニーカーとか履いて、見かけよりも動きやすさを最重視した格好。

 

服なんかは多分家事ロボットに全部任せてしまっているのだろう。菜々美も野性的といわれる容姿だが。

 

これは昔だったら、猿とか言われていたかも知れないなと思う。

 

いずれにしてもちょっと野性的すぎて、周りの同年代の女子の会話には混ざれなかっただろうし。

 

学校で能力を開花させることも出来なかっただろう。

 

軽く京都工場で挨拶を交わす。

 

「畑中菜々美少将です。 よろしく」

 

「うっす。 飛騨咲楽(ひださくら)です。 英雄畑中少将に敢えてこーえいです。 敬礼はすみません、この角度で大丈夫すか」

 

「問題ないですよ」

 

「良かった。 なってないっていきなり殴られるかと思いました。 昔の軍隊とかだと厳しかったって聞いていましたんで」

 

しゃべり方もちょっと男子っぽいな。

 

八重歯が牙っぽいので、余計にそういった印象を持たせるのかも知れない。

 

まずは軽く運動神経を見せてもらう。

 

京都基地には訓練場もついている。

 

主に菜々美がつかっているのだが、此処にデチューンモデルの訓練に来る呉美少佐なども使っているのを見る。

 

他の兵士達の要望を聞いて、三池さんが一通り揃えてくれたのだ。

 

それらで見るが、運動神経は図抜けている。

 

軍事訓練で鍛えた今の菜々美程じゃないが、同じ年の頃の菜々美とならば大差ないかも知れない。

 

俗説で、瞬発力が求められるゲームが上手い人間は運動神経が優れているというものがあるが。

 

実際には脳の性能の問題で、必ずしもそうではない。

 

菜々美なんて格闘ゲームで姉に勝ったことが一度もない。

 

ただ、姉が超世王を動かせるかというとそうではないので、色々と難しいのだこういうのは。

 

まあ、運動神経がいいのは良い事だ。

 

超世王にもし乗る事になったら、最悪至近距離でシャドウと顔をあわせて、一瞬の差で螺旋穿孔砲で撃ち抜かなければならないのだから。

 

軽くスポーツで対戦をして見るが、最初としては充分である。

 

まるで勝ち目が無くて悔しいという顔をしているが。最初なのだから当たり前だ。いきなり完成形の人材なんていない。そんなものがいるとしたらバカの妄想の中くらいにだろう。

 

「うわ、全然勝ち目がないや」

 

「いや、最初としては充分過ぎるくらいですよ。 次はこっちをやってみてください」

 

「ういっす」

 

そのままシミュレーションマシンに乗せて見る。

 

菜々美の様子を見て、姉も興味を持ったようだ。様子を見ている。

 

咲楽という子は、問題なく……とまではいかないが。それでも飲み込みが早い。

 

いきなりは勝てない。

 

それでも、一般の兵士達が無理だと音を上げる超世王の操作を、比較的短時間で飲み込んでいく。

 

ただし、である。

 

菜々美と同じ水準……現在の戦闘技能と言う意味ではなく。

 

菜々美と同じように、姉の作る変態兵器に対しての適応力を獲得するには、多分一年くらいは時間が掛かるとみていい。

 

若い頃の一年を使う事になる。

 

責任は重いと言える。

 

「今日はもう大丈夫ですよ。 戻ってください。 後、手当てはきちんと支給するようにします」

 

「その、ダメでしたか」

 

「……後で知らせます」

 

機密もあるので、説明は後だ。

 

とにかく、皆を集めて話をする。

 

姉は中々に見込みがあると、菜々美と同じ意見のようだった。まあこの辺りは、ずっと超世王を作っていただけはあるし。

 

そもそもとして、菜々美の四苦八苦する様子をずっと見ていたのだ。

 

操作難易度がどれだけ高いか。

 

これが才能に依存するものではなく相性か何かに依存する別のものであること。

 

それらについては、誰よりも姉が一番知っている筈だ。

 

姉も頭がいいので、一般人向けにデチューンモデルは組めるようにはしているのだけれども。

 

やはりまだ交戦記録がないシャドウ相手の戦闘だと、どうしても尖った性能の新兵器などでやりあうしかない。

 

尖った性能の新兵器は、菜々美ですら一月とか訓練をして。

 

それでやっと使えるようになる。

 

それくらいしないとテクノロジーの差を超えてジャイアントキリングに持ち込めないのである。

 

更に言えば。

 

悠長に技術を進歩させている間。

 

何かの理由でシャドウが殺しに来ないとは言い切れないのだ。

 

だから備えなければならない。

 

隣人として存在しているシャドウは。

 

その気になれば、いつでも人類を滅ぼせる。

 

その状態に代わりは無いのだから。

 

ただ。

 

三池さんが、難色を示す。

 

「畑中博士と畑中少将の発言には私も同意します。 ただ、ちょっと一つ問題があるんです」

 

「どういうことですか?」

 

「冷静に聞いてください。 それと私も、あの子が確かに畑中少将と同じくらい無茶な兵器を操作するのに馴染む才能がありそうだとは思いました。 ただ、あの子がずっと後回しにされていて、今になって話が来たのには理由があります」

 

「……聞かせてください」

 

頷くと、三池さんは言う。

 

犯罪者の子だと。

 

咲楽というあの子、元々シャドウに滅茶苦茶にされて人類社会がクラッシュした直後、その混乱の中大量殺戮をした人間の遺伝子的な子供であるらしい。

 

このやり口が凄まじく、混乱する社会の中で弱者を的確に見つけ出し、殺した人数は八十人を超えたそうだ。

 

火事場泥棒に近い形で押し込み強盗、シャドウから逃げる人々を襲って物資を略奪した挙げ句、シャドウの前に放り捨てて逃げるためのおとりにする。

 

そういう事を繰り返した挙げ句、神戸に逃げてきた男の遺伝子的な子供にあたるらしい。

 

八十人というと、個人としての殺した人数としては世界の歴史でも屈指の数だ。

 

組織的に人間を殺させたタイプの暴君などは例外として、あくまで個人として殺した人数は度が過ぎている。

 

しかも神戸に逃げ込んできてからも、如何に犯罪を出来ないかずっと考えていたような輩であり。

 

殺人未遂を犯したところで、逮捕。

 

それで余罪が発覚したのだという。

 

緊急避難だと本人は主張したらしいが、判決は死刑。

 

今では司法はAIが行っている事もある。

 

即座に死刑は執行された。

 

それについてはまあ分からないでもないのだが。

 

問題はそれが発覚する前に遺伝子データが取得されていて。それと別の女性……此方もあまり素行が良くなかったそうだが。既に死んでいる女性の遺伝子データとをかけあわせ。人工子宮で生まれたのがあの子らしい。

 

それも両親はどっちも遺伝子疾患が生まれながらにあり(生後治療したようだが)。

 

懸念点はそこも、だそうだ。

 

なるほど、たしかに懸念されるのも分からないでもない。

 

ただ、面識もない上に、話していて問題があるようには感じなかったが。

 

多少体育会系ではあるが。

 

親の能力が子供になんぞ遺伝しない事については、菜々美が一番良く知っている。

 

おかしいくらい頭が良い姉と。

 

その姉が作った超世王を使いこなせる菜々美。

 

かといって親の能力は普通極まりなかったのだ。

 

隔世遺伝だとかそういうのを信じているような輩もいるが。

 

そういった連中は、王侯貴族だのはクロマニヨン人の時代から王侯貴族だったとでも思っているのだろう。

 

いずれにしても論ずるにも値しない。

 

三池さんが咳払いする。

 

「その親に育てられたのなら問題でしょう。 影響はどうしても受けますから。 しかしあの子は、現在行われているビッグデータを利用した最高率の教育を受けて育っています。 今まで犯罪を犯したことはありません。 ただどうしても、遺伝子データが流出すると、余計な問題が起きる可能性はありますね」

 

「……どうする菜々美ちゃん」

 

「とりあえず様子見で。 それと、確か今ってサイコパスを割り出す診断みたいなのできた筈ですよね」

 

「ええ。 言動などから割り出せます。 元々今の時代は、生活から何までロボットが関与していて、プライバシーは基本的に公的機関でも取り出せません。 重要事を除いて。 今回は、そこから割り出して診断をAIにして貰うことになるかと思います。 私達が具体的にあの子の私生活を覗くことにはなりません」

 

まあ、それなら安心か。

 

それにしても、子供の足枷になる親ってのはいるものだな。

 

三池さんの懸念もわかる。

 

菜々美としても、今の話を聞くと、もしかしてと思う。

 

それは人間の……遺伝子を盲信する、古代文明から続く宿痾であるのだろう。実際そう考えてしまうのだから。

 

ともかく今は、情報を集めながら、ようやく出現した適合者と話していき。

 

そして未来の可能性を其処から引き出すしか無い。

 

まだ他にも適合者が現れるかも知れない。

 

いずれにしても、もう菜々美には時間が残されていない。

 

小型の大型化が、都市集落の近くで発生した場合、シャドウが仕留めきれなかったら。それこそ都市が短時間で潰されるだろう。

 

それがいつ起きるか分からない今。

 

あまり、もたついてはいられないのだから。

 

 

 

飛騨咲楽はなんとなく知っている。

 

あまり他人と関わらない今の時代。仕事などでも他人と関わるのは最小限だし。「コミュニケーション」等と言われるものが、個人の才能などに依存することは既に証明されている。

 

このため他人との意思疎通が苦手な人間にはAIなどでサポートがつくようになっていて。

 

それで他人と関わるのに困ったことはない。

 

だからこそ、だろうか。

 

ロボットや監視装置が、咲楽の事を監視しているのを、なんとなく理解出来るのである。

 

今の子供は生産される時代。

 

親という概念は殆ど失せ果てているに等しい。

 

咲楽もそれは同じなのだが。

 

たまに聞くのだ。

 

親が犯罪を犯した場合、子供にも問題があるのではないかということで、監視が強まるという話を。

 

SNS等でたまに目にする。

 

最近ではAIと会話をかなりまともにできるようになってきているが。AIにはそういうのは都市伝説だと言われる。

 

だが、本当にそうなのだろうか。

 

咲楽はあまり自分がお行儀が良くないことは自認している。

 

確か昔は足を出す事自体がとてもはしたない行為だと言われていた時代もあったとかなかったとか。

 

ホットパンツを好む咲楽は、昔だったら淫売扱いされていたかも知れない。

 

運動は好きだが、別にトップアスリートになれるほどではない。

 

今の時代では科学的な育成システムで才能を最大限に容易に引き出せる事もあって(25年前では考えられなかったそうだが)。もし才能があるのなら、トップアスリートになれるのだろうが。

 

咲楽にはそういう能力はなかったらしく。

 

結局今は国から斡旋された物資輸送の仕事の監督と、車の操作をやっているだけ。

 

その操作にしても、基本は監視だ。

 

重量級の運搬用車両を操作するのはAIであって。

 

咲楽はそれを監視するだけである。

 

軍基地から戻って、家にある円筒系の家庭用ロボットにくどくど言われる。身繕いをもう少しするようにと。

 

お行儀が悪い。そればかり言われる。自認もしている。だけれども、なんとなく反発したくなるのだ。

 

適当に答えて、それでごろんと横になって、天井を見上げる。

 

確か今の肉体年齢は十四。

 

とにかくシャドウにやりたい放題されている事もあって、今の時代では若年で結婚出来るようになっている。

 

十五で結婚が許されるのはそれが理由だ。

 

だが、そもそも誰も結婚しないし、仮に結婚しても自分の腹を痛めて子供を産む人間なんて誰もいない時代。

 

咲楽も別に誰か男に興味を持つことも。

 

他の女に興味を持つこともなかった。

 

同性愛でも別に遺伝子データの操作で子供を作れる時代だ。政府としては結婚は推奨しているのだが。

 

たまに顔を合わせる同世代の人間に。

 

結婚しているものは殆どおらず。

 

95%といわれるクローンや人工子宮生まれの子供は。今後更にその確率を増やすのは確実と言われていた。

 

ネットではアダルトサイトが幾らでもある。

 

以前はこういうのを教育的がどうの犯罪を助長するだのと批判する声もあったが。

 

批判する人間が、ただ性癖的な好き嫌いでそれをやっていること。

 

何よりもポルノコンテンツの流通と犯罪に全く関係がない事が判明してからは。今ではそういう声もなくなっている。

 

咲楽も年頃だし、そういうものは見るが。

 

かといって、別に異性にも同性にも興味は無いし。

 

それは周囲も同じようだった。

 

別に好きなもの同士で結婚したいなら好きにすればいいと思うが。

 

SNSで言われている。

 

シャドウが現れる前には、人間の社会はあらゆる意味で破綻が始まっていた。シャドウが現れてからは、その破綻が加速しただけなのだと。

 

分からないでもない。

 

咲楽も風呂に入ると、後はぼんやりと過ごす。家の中では半裸で過ごしている事も多いが。

 

流石にそれについては、ロボットも何も言わない。

 

片付けもロボットがしてしまう。

 

少なくとも生活能力という点では、咲楽は皆無に等しいし。

 

昔でいう女子力も、同じく皆無に等しかった。

 

それにしても、どうして軍基地に呼ばれたのか。

 

眠ろうと思って。それを思い出す。

 

呼ばれる理由がない。

 

この間のクーデターの際に、色々と聴取された人間は多かったらしい。普段からGDFに不満を口にしていた人間は、結構聴取を受けたそうだ。

 

咲楽だって、無能で知られるGDFに不満はあったが。

 

それでも、超世王セイバージャッジメントが現れてからは、そういうのはあまり感じなくなった。

 

実際今までどうにもできなかったシャドウを立て続けに倒してくれたのだ。

 

それに感謝するのは当然だろう。

 

それで、聴取は受けなかったのだが。

 

何故に今更。

 

不安はあるが、それで眠れなくなるほどでもない。運動も相応にして疲れていて。体もしっかり健康を保持している事もある。

 

いつの間にか眠っていて。

 

それで、起きだすと。今日の予定について、ロボットが告げてくる。

 

歯を磨いている後ろで言われる。

 

「今日入っていた物資の運搬については、キャンセルになりました」

 

「そう。 一応仕事として割り振られているからやっているだけだし。 何かしら人間出ないとできない仕事の方が良いなあとは思っていたし」

 

「今日はまた軍施設、京都工場に出向いて貰います」

 

「また?」

 

英雄畑中少将に会えたのは嬉しかったが、別にあこがれから舞い上がるほどでもないし。対戦してみて、畑中少将がかなり無理をして戦って来たというのが本当だというのが分かっただけだ。

 

咲楽は全力で勝負してまるで勝ち目が無かったが。

 

それでも分かったのだ。

 

時々、畑中少将が辛そうにしているのを。

 

毎度シャドウ相手にかなり厳しい状況下での勝利をどうにかもぎ取っているという噂はあった。

 

いわゆる大本営発表で、毎回圧勝みたいな事を言っていたが、それが大嘘であることは誰でも知っていた。

 

超世王は毎回大破、全壊にまで追い込まれており。

 

それでどうにか勝っているのだ。

 

畑中少将が、無事で勝てている訳がない。

 

勿論、酷く傷ついている状態でも、今の咲楽なんかよりも何から何まで上なのだけれども。

 

それは英雄なのだから、当たり前だろう。

 

「確かあそこって軍基地の中でもトップシークレットだって噂だろ。 現在のエリア51なんて言われてる。 なんであたいみたいなのが」

 

「もう少ししゃべり方を柔らかくした方が良いでしょう」

 

「うっさいなあ。 性分だから仕方が無いだろ。 これがすっきりすんだよ」

 

「ともかく、其方に出向いてください。 少し年上の子がもう一人、呼ばれているようです。 その子は既にばりばり任務をしているようですよ」

 

そういえば、帰りにちょっとだけあったが。

 

ぽやっとした雰囲気の、喋るのも苦手そうにしている子だった。とろそうな子だったけれども、実際は違う。ちょっとだけ見えたが。もの凄い勢いで何か作業をしていた。同年代かと思ったが、もう18だそうである。

 

咲楽も発育は良くないが、咲楽以上に発育が悪いかも知れない。

 

まあ、それはそれだ。

 

今は成長ホルモンとか無理に入れる事もない。

 

腹を痛めて子供を産まない時代も来ているし、別に肉体の成長はそれほど気にされないのである。

 

「性格が正反対に見えるけれど、補助はしっかりしてくれよ。 下手すると一緒に何かやらなければならないんだろ」

 

「それについては可能な限り支援します。 AIは統合されており、どこでも同じように支援が可能です」

 

「分かってる。 頼む」

 

咲楽は自分が粗野であることは分かっている。

 

これは性分であり、どうにもできない。

 

誰かに恋でもしたら変わるのかなと思った事もあるが。

 

それは単に生物的な発情期の話であって、別に人間が知的生命体であるというのなら。それにこだわることもないのではないかとも思っている。

 

昔は恋愛を神聖視していたようだが。

 

まあ、それもシャドウが現れる前には、その神話もなくなっていた。

 

「男性嫌悪症」なんて言われるような言動をしている女が、よりにもよってホストに入れ込むような事が多発していることも知られていたし。

 

知的生命体を気取るのであれば。

 

生物的本能を神聖視するのなんて、確かに馬鹿馬鹿しくはある。

 

今では、そういった欲求の類をコントロールする薬まで使っている人間もいる。あくまで自発的にだ。

 

十代だと欲求に振り回されてしまうものもいる。

 

判断としてはありなのではないかと、咲楽も思う。

 

まあいい。

 

ともかく。黙々と出かける準備をする。

 

身繕いは手伝って貰う。

 

とにかく自分でやると何倍も時間が掛かるので無駄だ。

 

今ではシャドウ戦役後の混乱期と違い、化粧品もある程度出回るようになって来ているが。神戸に多数の人が逃げ込んでいた時期とかは、化粧品なんてとんでもない高級品だったそうだ。

 

更に昔のシャドウ戦役前の女は、人前に出る時分厚く化粧でデコレーションして、別人のように化けたり。美容整形だとかで、顔とか胸とか弄くる真似までしていたとか。

 

まあ気が知れないな。

 

髪の毛を整えさせながら、そう思う。

 

京都工場が神戸からかなり離れた奈良県に存在していて。

 

どちらかというとシャドウの勢力との境界線に近い事に、別に恐怖は感じていない。

 

シャドウに襲われたら100助からない。

 

そして都市だろうがシェルターだろうが、シャドウは容易に喰い破って中の人間を皆殺しにしてきた。

 

もしシャドウに襲われるようだったら。

 

何をしても無駄だ。

 

そう咲楽は達観している。

 

身繕いが終わったので、出る事にする。

 

畑中少将にまた会えるのだろうか。

 

でも、会ったとして。

 

何を求められているのだろうか。

 

それは、よく分からなかった。

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