スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
畑中菜々美少将、シャドウとの戦いで再起不能。
現在後継パイロットを育成中。
このニュースは世界中を駆け回っていた。
そして衝撃を与えていた。
日本だけで活動していたとは言え、初の中型種撃破に始まり、絶望の権化とも言えるアトミックピルバグの撃破にまで成功したレジェンドヒーローである。
近代兵器信仰をしていた者達には蛇蝎のように嫌われていたようだが、それ以外のほぼほとんど全ての人間が敬意を払っていた存在の再起不能。
衝撃を与えるのに十分だっただろう。
現在は病院で治療を受けているが、今後の復帰は不可能。
中将に昇進の上退役。
以降は、次のパイロットに引き継がれることとなった。
会議が行われる。
GDFの会議は、天津原から市川に代表が替わってから、非常にスムーズに回るようになったが。
市川も今回の件は色々と準備が大変だったようで、流石に余裕の様子はなかった。
会議に出ている三池は、黙々と様子だけを見る。
良い気分はしないし。
これからどうするのか。
責任はどうするのか。
そんな事ばかり考えている輩だらけのようで。気分が悪かった。
畑中中将がシャドウを倒している間は、どいつもこいつも文句ばかり言っていた。近代兵器の方が超世王セイバージャッジメントより強いと鼻息を荒くしていたものだって多くいた。
その結果があのばかげたクーデターだ。
今では、傷が深すぎて、再起が遠い。
人類はかろうじて踏みとどまっているが。大きめの都市が一つでもあの巨大化シャドウに潰されでもしたら。
そこから穴の開いた堤防のように崩れるだろうな。
そういう風にしか思えなかった。
「畑中中将については、医師からも限界が近いという話が続いており、この日はいつかくるという事は分かっていました。 既に後継は用意しているのですが、しばらく育成に時間が掛かります」
「そ、それでは例の怪獣が現れたらどうするのかね!」
「小型種が巨大化したものですが、コミュニケーションを取ってきているシャドウ、ノワールの話によると小型種が寿命を迎えた結果なるもののようです。 これについては既に二回の交戦が起きている事もあり、以降は「ネメシス」と命名します。 今まで名前があった小型種が変異した場合、例えばブラックウルフの場合はブラックウルフ・ネメシスとなりますね。 これらについては、人間の観測範囲では日本で既に三例が出ていますが、他の国での出現は確認されていません。 今の時点では、怖れるのではなく、それぞれの内政への注力、それにホバー輸送船の技術強化に注力してください。 最悪の場合は、それで逃れられるように」
「打つ手無しと言う事か……」
まあ、そういうことだ。
スコットランドの代表が咳払いする。
主戦派のアホではなくなってから、理性的に話が出来るようにはなったが。シャドウ嫌いな事に代わりは無い。
「超世王セイバージャッジメントのデチューンモデルの配備を少しずつ進めているが、あのネメシスという種が出現した場合の戦闘のノウハウも共有して欲しい」
「基本的に放置してください」
「無責任だろう」
「現時点で有効な戦術が存在しません。 幸い中型種シャドウはネメシスが出現する兆候を察知できるようです。 始末は中型種に任せてしまうのが現実的です」
もしくは、と市川は言葉を区切る。
おどしをかけているようではあった。
「どうしても被害を減らしたいのであれば、決死隊を使って誘引してください。 街や重要設備から距離を取るように」
「能動的に斃せないのか」
「あの畑中中将ですら大苦戦した相手です。 斃せると思うのならご自由に。 中型に策無しで挑むのと同じ結果になるだけですよ」
「……っ」
近代兵器信仰をしていたアホ共と同じになりたいなら勝手にしろ、か。
市川らしい毒舌だなと三池は思った。
何となく市川の性格が分かってきている。
野心的な上に腹黒い。
ただし、野心を命には優先しない。
しかしながら、度が過ぎたアホ政治屋の面倒を見るつもりもないようだ。
GDFの代表として国を回し、人類社会を適切に動くように手を回す事はどんどんやっているが。
それはあくまで自分のため。
自分の栄誉と地位のためだ。
ある意味最悪のエゴイストだが。国政を回す存在としては有能極まりない。人格がクズでも、今はそれでいい。
「最低でも畑中中将の後継を育成するには一年かかると聞いています。 畑中中将も病院から指導についてはしてくれるようですが、いずれにしてもノウハウがどれだけあってもしばらくは動けませんし、どうしても危険なネメシスが出たら決死隊で誘引する以外には手はありません。 ただし相手は小型の変異種。 移動速度は、時速百数十キロは最低でも出ます。 決死隊は助かりませんので、それは覚悟してください」
「分かった。 後継候補がいるだけでも可とするべきなのだな……」
「最悪に備えて、更に後継候補の捜索は続行します。 それでは、それぞれやるべき事を続けてください」
会議終わり。
無言で席を立った畑中博士。
明らかに畑中中将がああなる前に比べて、雰囲気が変わった。
泣いていたのなんて初めて見た。
いずれにしても、あまり良い方向に変わったとは思えない。
訓練については、既に始めている。
コックピットなどを飛騨咲楽少尉(最初から少尉待遇で採用したのは、超世王セイバージャッジメントのパイロットしてはそれくらいの階級は必要だからである)にあわせて造り替えるだけではない。
内部構造なども、より安全性を意識したものへと変えるそうだ。
悲しんでいる暇は無く。現実的な話ばかりしなければならない。
それがとても、三池にとっても悔しいし。
悲しむ暇が無いことが、何よりも悲しかった。
(続)
こうして人類反撃の嚆矢を放った英雄は去りました。
そして後継が現れます。
過酷な状況に何一つ代わりはありません。
ただひたすらに厳しい状況が続いていくだけなのです。
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