スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
英雄の退役だけで問題は終わりません。
色々な事が重なった結果、戦場を支えていた老雄もまたこの世を去ります。
北米。Nロサンゼルスの近郊。
避難指示が出ている状況。
つまり此方でもネメシスが出たのだ。
ネメシス化したのはシルバースネークである。よりにもよってというべきだろうか。いずれにしても、それに中型種のシャドウが群がって、激しい戦いが行われている。
此処には、対小型で戦果を上げた師団が駐留しているのだが。冷静な指揮もあって、避難に全員があたっている。
最悪の場合は、街を放棄する。
また、一部の部隊は、街にシルバースネークが接近した場合、気を引いて時間稼ぎをする。
そのために、決死隊として動いてもいた。
ただ、その恐れは無さそうだ。
アルムート中将が、指示を出す。離れろと。
アトミックピルバグが、全長60mにまで巨大化したシルバースネーク・ネメシスに接近。
凄まじい火力で、集中砲火を浴びせたのだ。
反物質砲の飽和攻撃。
とんでもない代物だが、一度に2500のターゲットを爆破できるそれが、シルバースネークに途方もない熱を叩き込み続けている。
思わずアルムート中将も、生唾を飲み込んでいた。
シルバースネークが、それでも数分もっただけでも凄い。
最後に、Nロサンゼルスに向けて、凄まじい毒液を吐きかけようとした。もしもそれが届いていたら。
Nロサンゼルスは文字通り半壊してしまっていただろう。
だが、その毒液すら、アトミックピルバグが全て蒸発させた。そして、それでシルバースネークは消滅していった。
「敵沈黙!」
「全部隊撤退。 くれぐれも中型を刺激するな」
「イエッサ!」
「……」
アルムート中将は、情けないと思いながら、引き揚げて行くアトミックピルバグと他の中型シャドウ。
そして、被害痕に群がって、環境の修復を始める小型を見やっていた。
人間は何もできていない。
あの英雄畑中菜々美中将が限界を迎えて退役してから、既に半年が経過しているが。その間。じっとシャドウから距離を取って、相手を刺激しないようにするのが精一杯である。
畑中中将が倒れてから、シャドウは連絡もしてきていないようだ。
興味が無いのだろう。
そういう話である。
シャドウを刺激しないようにし、顔色を窺いながら、檻の中で対抗できる方法を模索していくしか無い。
それしか人間に今できる事が存在しないのだ。
万物の霊長だのと驕り高ぶっていたのが嘘のよう。
シャドウは神の使いでは無いのかなどと言っていた連中も前にはいたが。今ではそんな事を口にしたら袋だたきにされるだけである。
神戸で行われている整理された社会システムを少しずつNロサンゼルスでも導入はしているのだが。
ディストピアだとか言って反発するものも多い。
大統領も相当に苦心しているようだった。
いずれにしても、シャドウという共通の敵を作って、どうにか団結してきた人間は。シャドウに怒りをぶつけられなくなって、振り上げた拳の行き場を無くしてしまっている。それはアルムート中将も感じている。
兵をまとめて、非常事態宣言を解除。
こんな状況でも火事場泥棒をするような阿呆がいて。それについては、避難誘導をしていた兵士達が見つけて、捕縛もしていた。
いずれも厳罰だ。
こんな時だからこそ、助け合わなければならないのに。
いざという時は、他人を蹴落として上に上がれるような人間が偉い。そんな価値観を蔓延させてしまったのは、一体誰だったのか。
状況の収拾まで、二週間が掛かり。
ただでさえ老体であるアルムート中将は、更に寿命が縮まったかなとさえ思った。
それでも、被害は最小限に抑えられた。
もしも無謀な攻撃をシルバースネーク・ネメシスにでも行っていたりしたら。それこそどんな事態が起きていたか分からない。
一応超世王セイバージャッジメントのデチューンモデルはアルムート中将の麾下でも二機だけロールアウトしているのだが。
どちらも接近戦向きの機体であり。
あのシルバースネーク・ネメシスに向かわせても、パイロットを犬死にさせるだけだっただろう。
とにかく疲れた体を引きずって、一段落した所で会議に出る。
最初のクリーナー・ネメシスが出現してから、八ヶ月ほどだが。それ以降、出現したネメシス個体……あくまで人間の観測範囲内でのことだが。ネメシス個体は9体め。
日本で五体、他で四体である。
シャドウが寿命を迎えると、あのネメシス個体になる。小型はなるが、中型はそもそも寿命がない。
そういう不可解極まりない情報については既に聞いているが。
確かに中型種のネメシス個体は、九体も現れた中には存在しない。
日本で現れたうちの二体は、明確に重要インフラの側で出現したこともあり、畑中菜々美中将がそれこそ相討ちになるようにして仕留めた訳だが。
残りの七体は、いずれも手を出せる状態ではないか、シャドウが問題なく処理してしまった。
人間が反撃をしたからネメシス個体が出た。
そんな話もあるようだが。
正直それが正しいとすると。今後シャドウについてのもっと有効な戦術が編み出されたとしても。
奴らを倒しても倒しても、状況が厳しくなるだけではないのだろうかと、アルムート中将は思わされるばかりだった。
会議では、畑中博士がプレゼンをしている。
畑中中将が倒れてから、今までの余裕がなくなったようだ。
プレゼンのおかしすぎる絵などはいつもと変わっていないが、あからさまに愛嬌が失われた。
なんだかんだで姉妹仲はとても良かったらしいと聞く。
それまでは平気な顔をしていたのが。
畑中中将がああなって、ついに何処か心の堤防が壊れてしまったのかも知れない。
ともかくプレゼンを受ける。
「結論から言うと、ネメシス個体は人間とその創造物を集中的に狙ってくる傾向があります。 出来ればドローンなどを飛ばしてどう動くかの傾向を確認したいところではありますが、今は物資がまだまだ足りていません。 実験的な戦闘をする余裕はあまりなく、またネメシス個体が出現する法則も分からない現状では、手の打ちようがないと言うのが実情になります」
「それをどうにかするのが君の仕事ではないのかね」
「弾薬が尽きているのは此方でも補償します。 創意工夫で出来る事と出来ないことがある。 それについては、理解していただきたいです」
広瀬大将が畑中博士を擁護する。
畑中博士は頷くと、現状出来る事について説明する。
「もしも都市部などにネメシス個体が接近した場合は、被害を覚悟で相手の気を反らすように動いてください。 残念ながら、現時点ではそれ以外に手がありません。 現在育成中の超世王セイバージャッジメントの次のパイロットについても、まだ半年は掛かると見て良いでしょう。 幸い私の妹とほぼ遜色ない操縦ができる筈で、仕上がる頃には、対ネメシス用の装備を使って貰えるとは思いますが」
「分かった。 ともかく、今は耐えるしかないのだな」
「現実的な手段としては、船舶の強化と開発を急いでください。 ホバー式の船舶を、以降は標準装備とします。 技術については、秘匿していないで即時で横展開をしてください。 今は国家という単位で争っている場合ではない。 激しい戦いの結果、我々はシャドウに対抗できる剣を失って、丸腰になっている。 それを理解していただきたく」
市川代表はそういって会議を締めた。
問題はこの後だ。
北米の方でも、会議をしなければならない。
疲れが溜まってきているが、それでも出なければならないのが、一応の高官としての責務だ。
大統領は幸い、歴代のステイツの大統領の中でも優秀な方だ。
ただそろそろ任期の終わりが近い。
次の大統領選のうち、片方は主戦派の生き残りと言われる人物で、シャドウに対する過激な言動が知られる厄介者だった。
クーデターが上手く行っていたら、今頃地球からシャドウを駆逐出来ていた。
そんな放言をしては、周囲を呆れさせている人物で。
しかもある程度の……シャドウに私怨がある層は、そいつを支持する意向まで見せている状況だ。
GDFの支援を全面的に行い。
戦況をどうにか踏みとどまらせてきた現大統領が引退したとき、ステイツはどうなるのか。
アルムート中将は不安でならない。
それに、アルムート中将麾下の第一師団の面子だって、現実を精確に理解出来ているものだけではない。
アルムート中将は年齢からして限界が近い。
そしてそれを虎視眈々と狙っているものだって多いのだ。
主戦派もその中にいる。
クーデターであれだけ色々あったのに。まだ近代兵器信仰を崩せない阿呆だって混じっている。
人間の未来は。
決して明るくなどないのだ。
「今回の件についてだが、ついに北米でもネメシス個体が出てしまった。 現状では中型の多くと同じく、対抗策がない。 かといって、兵士達に命を捨てろというのも酷な話だ」
大統領はそう始める。
全くもってその通り。
自爆してこいといって、よほど強力な洗脳でもしていないかぎりそれで自爆してくる奴なんてほとんどいない。
殆どの場合はお前が行けと言い返してくるだろうし。
逃亡でも反逆でもしてくる可能性だって大きい。
そして物資が不足しているのはそれはそう。
GDFの主力である第一軍団ですら、アトミックピルバグとの戦いで力を使い果たして、今は必死に矢玉を補給している段階だ。
北米の各都市で編成している部隊だって、状態は似たようなものである。
「シャドウなんぞに怯えているのはまっぴらであるのは事実ですな。 さっさとあのようなケダモノどもを駆除して、強いアメリカを再建すべきです」
「出来るものならとっくにやっている」
ばかげた楽観論に対して、アルムート中将が苦言を呈する。テレビ会議越しだからか、余計に気も大きくなるだろう。
生き残りの北米の民には、神戸と同じく半地下都市で生活をしているものだって多いのだ。
シャドウと四半世紀遭遇していないものもいる。
そういう者達が、映画のようにシャドウを斃せると考えてしまう事がどうしても出てくるのは、避けられない事態なのかも知れない。
「アルムート中将。 今回、ネメシス個体を見てどう思った」
「とにかく手に負える相手ではありませんな。 全盛期のステイツの全軍をぶつけても斃せなかったでしょう。 それについてはアトミックピルバグと同じです。 熱攻撃が有効だと知っている今の人間は、ステイツ全盛期当時の物量を生かせば斃す戦術があるなどと言うかも知れませんが、軍人と言うのは現在ある手札でどうにかするのが仕事です。 現在ある手札では。あれを倒す事は出来ません」
「アルムート中将も随分老いぼれたようですな」
「さっさと引退して、年金生活に移られては」
失笑混じりの揶揄が飛んでくる。
相手にしない。
大統領が逆に言う。
「随分と勇ましいが、それなら銃を手にとって君が前線にたちたまえ。 五千万しか人間がいない今の時代だ。 地位が高い人間はクーラーが効いた部屋で指揮だけして、ゲームみたいに人間を駒として使うなんてお偉い身分ではいられない。 アルムート中将は、小型相手に実際に戦果を出している。 それに対して、君達は勇ましい意見を穴蔵の中で言っているだけだろう」
「……っ」
「アルムート中将、現実的な作戦は何かあるか」
「畑中博士も言っていたとおり、気を引く以外にはないでしょうね。 人工知能制御の歩兵戦闘車などを用いて気を引くことが出来れば良いのですが、それでも気を引けるのはよくて数秒程度。 数分は始末にどうしても掛かる事を思うと、やはり避難できるように訓練をしておくことが現実的でしょう」
そうだなと、大統領は辛そうにいった。
そして、ホバーの開発に対して、予算を増額するとも。
輸送用の強力なホバーはそれまでも存在していたが、いずれ在りし日のステイツの海軍が有していたような、移動する都市とまでいわれた強襲揚陸艦のような規模のものが必要となるだろう。
海上はイエローサーペントの牙城だ。
とにかく、イエローサーペントの攻撃を受けないように、それも工夫しなければならない。
シャドウの機嫌を伺いながら生きるのか。
そういう反発はどうしても多い。
特に一神教の信仰がある地域では、万物の霊長という思想が強い。それもあって、シャドウのような輩に屈する事など出来るかと考えるものはどうしても増えるのだ。
人類史上、もっとも屈辱的な時代。
そんな声もある。
だが、栄光だと人間が思っていたのは、実際はただの傲慢だった。それが今、シャドウの出現によって可視化されている。
そうアルムート中将も思ってしまうのだ。
とにかく、ギスギスした会議が終わり、どっと疲れる。もう老齢と言う事もあって、体もあまり良く動かない。
兵士達の悪口ばかり聞こえてくる。
鬱病になりかけてくるのかも知れない。
「結局逃げ回ってるばかりで何もできなかったじゃねえか。 うちの爺さん師団長が、今のうちの国で一番まともな将軍閣下だってマジかよ」
「それに日本からの資料で作られたあのだっせえロボ、何の役にも立ってねえ。 あんなもの、金の無駄だろ」
「シャドウを斃せるんだったら斃せばいいのによ。 怖くて結局何もできないだけだろ」
「俺が師団長になったら、一ヶ月でこの辺りのシャドウ全部狩りつくしてやるのにな」
ゲラゲラと笑っている。
基地内ですらそうだ。
兵士達は一度勝っただけで、シャドウを弱いと錯覚している。その勝利だって、広瀬ドクトリンに沿って動き、しかも小型数百という敵からして見たらダメージにすらならないような戦果でしかないのに。
拳銃を見る。
いざという時、自殺用に支給されているものだ。
クーデター祭で、少なくとも現在の各国の最上層から、主戦派はいなくなった。最強硬派だったスコットランドですら、シャドウとの全面戦闘は主張してはいない。
だが、半年。
シャドウに対する戦果を上げられなくなってから経過したたった半年で、此処まで人心は荒廃してしまっている。
それまで中型を畑中中将の活躍で斃せていた時期だって。毎回凄まじい被害を出しながら、辛勝していたというのに。
本当に人間というのは、他人に何があってもどうでもいいんだなと悟ってしまって悲しくなる。
デスクに戻ると、疲れたので休む。
そして、気が緩んだ瞬間。
アルムート中将の何かが、ふつりと切れたのだった。
広瀬大将は、生産された弾薬をそれぞれの部隊に配分し、現在の継戦能力を計算していたが。
急報を聞かされていた。
アルムート中将、急死。
暗殺ではなく、脳溢血らしい。
元々老齢だったこともある。しかもシャドウ戦役でもっとも苦労した世代の人である。健康診断を受ける暇も無かったらしいし。いつ亡くなってもおかしくはなかったことだろう。
必死に北米の大統領が人事をまとめ、どうにか主戦派ではない人物を後任に抜擢したようだが。
北米は大統領選が近く。
大統領候補に主戦派の人間までいて、ある程度の支持を既に集めている、という話がある。
あれから一年も。
あのばかげたクーデター祭から一年も経過していない。
それなのに、またしても主戦派が鎌首をもたげようとしている。
民主主義に異議を唱えるつもりはない。
だが、いくら何でも任期を延長でも出来ないのだろうか。
昔の北米は無限に等しい国力を持つ最強の国家だったが。今は既に違うのだ。
愚痴を言っている暇はない。
作業を進めて、そして仮眠を取る。
畑中中将が倒れて半年ほどだが、まだまだその敗戦処理に近い作業は終わっていないのである。
幸い後継者が見つけられたが、どうして超世王を動かせるのかの具体的な理屈はまったく分かっていない。
畑中博士も分からないと言っていたほどだ。
今後継者として頑張ってくれている飛騨咲楽少尉がものになるまであと半年は掛かると聞いている。
そして今回の事がある。
更に、飛騨咲楽少尉の後任のパイロットも、今のうちから確保しておかなければならないだろう。
一通り書類との格闘を終えて。
今度はレポートに目を通す。
ナジャルータ博士からのレポートは、やはり小型がいつネメシス化……巨大化してもおかしくないというものだった。
特に対小型の戦闘が行われた地区で無作為に発生している事。
密集地でも関係無く発生している事。
これらから分かるのは、法則性がないということだ。
小型の死……というノワールの言葉の意味はまだ推察するしかないのだが。一つだけ好意的な仮説があるという。
シャドウは或いはだが。
地球の浄化をあらかた終えて、戦力を人類の監視に回しているのではないのか、というものである。
これについては、幾つかの資料が出て来ている。
例えば、近年では露天掘りで鉱山を丸ごと掘り崩す例が目だった。
そういった露天掘りによって丸ごと崩された山が、文字通り丸ごと元に戻っているのが観測されている。
未だにドローンなどを飛ばす事は出来ない状態だが、それでも対小型を前提に広瀬ドクトリンで編成した部隊で前進し、領土を奪回していた時に。
それで観測出来るようになった場所は多い。
山が丸ごと元に戻るほどだ。
どうやっているのかは見当もつかないが。
それでもシャドウには、それができる程の圧倒的なテクノロジーがある、ということなのだろう。
そんなシャドウが、人間のいる辺りに集まっている、のだとすると。
或いはだが、シャドウを殲滅する事がもし出来る様になれば。一気に状況を改善できるかも知れない。
そういう仮説が上がっていた。
ただこれは楽観論だと、ナジャルータ博士も記載を忘れていない。
一応頭の片隅に入れておくくらいでいいだろう。
実際問題、オリエントの頃から、毛細管現象で豊かだった土地を塩害塗れにし。不毛の土地に変えてしまうような事は人間はやっていた。
生物は自分に都合良く環境を整えるなんて言葉もあるが。
塩害で死んだ土地は人間に都合が良い土地などではない。
つまり環境を整えられて等いないのである。
要するに一万年かけて人間は地球をまんべんなく滅茶苦茶に破壊し尽くしたというわけだ。
ここ数十年が特に破壊の規模が凄まじかったが。
それもあくまで速度が上がっただけ。
それを全部元に戻したシャドウと。
未だにシャドウを何処かしらで馬鹿にしていて、勝てると思い込んでいる人間。
どっちが愚かで邪悪なクリーチャーなのか、広瀬大将には時々分からなくなる。それでも、それを誰かに零すわけにはいかない。
広瀬大将くらいの立場になると、発言がいちいち大きな影響を周囲に及ぼすからである。
嘆息して、他のレポートを見る。
呉美少佐から来ているレポートでは、飛騨少尉の動きは十分に優れている、ということだった。
螺旋穿孔砲などの使いこなしも非常に速いらしく。
やはり畑中中将と同じように、畑中博士の作る兵器類との相性は抜群に良いらしかった。
ただ、それでもまだまだ畑中中将にはとても及ばない。
それもあって、まだしばらくは訓練がいる。
そういうレポートの内容だった。
そのまま訓練を続けて、出来るだけ急いで仕上がるようにしてほしい。そう連絡を入れておき。
後は休む事にする。
明日も色々と仕事が入っている。
大将は激務だ。
市川は悔しいが有能だったのだと、後任の参謀長の能力を見ながら思う。とにかくあらゆるところで痒いところに手が届かない印象だ。
これでも催眠教育で能力は限界まで引き出しきっているはずなのに。
それでもなお差が出るのは、それこそ才能の差によるものなのだろうなと、広瀬大将も思う。
その市川も、GDFの代表として相当に苦労しているようなので。
地位が逆転された今も、別に悔しいとかは思わない。
ただ、市川自身は気にくわないから。
感情的に腹が立つことがある。
その程度の事だ。
感情を重要事に優先するような阿呆と同じになるつもりはない。
シャドウ戦役の前は、そういうのがわんさかいて、国を悪い意味で動かしていた時期まであったらしいが。
はっきりいって、そんな世の中に生まれなくて良かった。
そうずっと広瀬大将は思っていた。
仮眠は取れるときにとっておく。
AIなどでのサポートもあるが、それがなかったらとっくに広瀬大将は倒れていたかも知れない。
それくらいの激務だと言う事だ。
そして今はストレスが可視化出来るようになっているため。
部下に同じ事をさせるつもりはない。
人によって労働できる許容量は違う。
精神論はなんら建設的な結果を生み出さない。
それは今では分かりきっている事だが。
昔は情けない事に、そんな事すら理解出来ていない者が、社会の上層にわんさか貼り付いていたらしい。
本当に情けない話である。
仮眠を取って疲れを少しだけ回復してから、まだまだ作業を続ける。
GDFの弾薬は、まだ全軍が動けるほど回復はしていない。
それでも、そろそろ第二師団の半分くらいは、なんとか戦闘が出来るか出来ないかくらいの蓄積が出来たと思う。
後はそれを蓄えていき。
いざという時に、備えていくだけだ。
ただでさえ人が足りない時代。
こうして次々と歯が抜け落ちるように無理をした人が倒れていきます。
足りぬ足りぬは工夫が足りぬなんて寝言を言い出したバカは誰なんでしょうね。
だいたい足りない場合は物理的にどうにもならないのが実情です。
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