スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
昔は会社の新人研修なんかで軍隊式なんていって、明らかに非人道的なしごきをやっていたケースがありましたね。
それで凄い企業戦士が育ったかというとそんなこともないですし。そもそもいわゆる鬼軍曹なんてのは却って兵士のモチベも力も削ぐことが現在は様々なデータから分かりきっています。
この時代は本当に最果ての時代ですが。
そういった悪習だけは。少なくとも飛騨咲楽さんの周りからはなくなっているのです。
とにかく汗が凄いので、あたい飛騨咲楽は辟易していた。
今の時代は、何もかも効率最優先でやるから、無駄に汗を流すこと何て殆ど無い。昔はサウナなんてものが流行った時期もあるらしいが、医療関係者があれは健康にはまったくつながらないと警告を続けた事もある。
シャドウ戦役の時代に殆ど全てがなくなり。
今では文化遺産として、僅かに残されているだけだそうだ。
運動だって、今では科学的な理論に基づいて行い、理論に基づいて身体能力を伸ばしていく。
そう考えると。
此処まで汗を掻いたのは、初めてかも知れない。
呉美少佐は平気な顔をしているが、流石に疲れ果てたあたいはちょっとグロッキー気味だ。
ちゃんと休憩はさせてくれる。
だが、体を動かす訓練は、連日どんどん厳しくなっている。
スポーツドリンクをくれる。
昔はとても美味しかったらしいが、今は栄養優先だ。あまりおいしいものではない。
並んでそれを飲みながら、呉美少佐が話してくれる。
「パワードスーツの支援無しで長距離動く事はどうしてもあります。 そういうときに備えて、基礎的な肉体は鍛えておく必要があります」
「平均的な兵士は第四師団で訓練しているんですよね」
「はい。 とにかく数を揃えなければならない時期もあって、一時期は選抜基準が緩かったんですが。 例のクーデター騒ぎがあってからは、審査が厳しくなりましたね」
「確か小官くらいの年齢の人間も入れるんですよね」
言葉遣いは少しずつ直している。
呉美少佐は怒鳴るような事はないが、とにかく丁寧に教えてくれる。あたいはそれもあって覚えやすくて助かるし。
何より呉美少佐は軍人として躊躇無く銃を撃てる人間ではあるのと同時に。
普通に優しいので、人として好きだった。
「中型とやりあっていて、人員の消耗が激しかった時期はそうでしたが、今は年齢でも制限をつけています。 ただ法的には、12から補助要員として軍属になる事は可能です」
「あたいより年下で軍に入った人もいるんですね」
「小官と軍での一人称は使いましょう」
「すみません」
分かってはいるが、どうにも素が出てしまう。
とりあえず、それでも怒らず丁寧に教えてくれるので、期待に答えて成長したい。
ちなみに少し前に十五にはなった。
なったが、それで別段何か変わるわけでもない。
昔はこのくらいの年には子供を産んでいるのが当たり前、なんて時代もあったのだったっけ。
シャドウにもっと痛めつけられていたら。
あたいもそういう風に、子供を産むのを強いられていたのかも知れないが。
はっきりいってあたいはガキだ。
ガキが子供を作ってそれで良い結果になるとはとても思えない。
それに、子供が出来れば精神的に大人になるとか言う迷信も、今ではあり得ない話だと否定されていると聞く。
まあそれはそうだろう。
もしそうだったら、「毒親」なんてものは生じない。
無責任に子供を産み散らかしたり、作り散らかすようなカスだっていなかっただろう。あくまで都市伝説だ。
「訓練に戻ります。 動けますか」
「汗はもう引いてきました」
「良いですね。 今のうちに基礎体力をつけましょう」
「はい」
ういっすと言い返しかけて、言葉遣いを改める。
立ち上がると、ランニングマシンで走る。走る事に関しては、シャドウにはどうしても走ったところで逃げられない。
元々人間は、殆どの四つ足の動物よりも足が遅い。
史上もっとも足が速い人間でもそれは同じ事だ。
二足歩行になった時点で、人間は四つ足の動物に対して、巨大な身体能力におけるハンデを抱えた。
それは軍での訓練の最中受けた催眠教育で聞かされた。
実際問題、シャドウとの戦闘映像を見ると、あまりにも早すぎて対応できるのかとぞくぞくさせられる。
時速百数十キロでこっちにじぐざぐに迫ってくる相手だ。
普通の肉食獣ですら、人間に比べて速すぎる。集団戦でないと相手に出来ない。
それがシャドウのような物理を超えた理外の相手となってしまうと。
もはやどうにもできないというのが、本音だった。
「だいぶ速度が上がってきています。 このまま身体能力を鍛えていきましょう」
「イエッサ!」
「良い返事です。 そのまま、出来る所まで走りましょう」
「イエッサっ!」
流石にちょっとヤケクソ気味になる。
昔よりはこれでもマシらしい。
昔は精神的にも追いつめて負荷を掛けるのが当たり前だったらしく。戦闘に出る前に病んでしまう兵士までいたらしい。
軍隊式とかいうやり方だったらしいが。
それではダメなのだと人間が気付くまで、随分と時間が掛かってしまった。
そういうことなのだろう。
とにかく走り、限界に達した所でランニングマシンが止まる。
その後は休憩を挟んで、ものを担いで行軍する訓練をする。
重いモノを持ち上げて、担いで運ぶ時にはコツがあると、まずは催眠教育で教わり。その後は実践する。
理屈が分かっていても身体能力がなければどうにもならない。
それもあって、徹底的に鍛えられる。
夕方に、一旦訓練を終える。
夜間訓練をする日もあるにはあるのだが。
それはそれである。体内時計が壊れると治すのに一苦労であるので、そういった訓練をするときは細心の注意を払う。
訓練を終えた後、身体能力を測る。
握力など、鍛えても大して変わらない分野もあるが。
他の身体能力は、明確に伸びている。
それを喜んでいいのかは、あたいにはよく分からない。後は宿舎に戻る。いっそ京都工場に住むのも有りかも知れない。
帰路をいきながら、あたいはそんな風に思うのだった。
シミュレーションでの超世王セイバージャッジメントの操作も、ある程度上手く行くようになって来ていた。
以前は数分の一まで速度を落としていた対中型戦のシミュレーションだが、今では等倍になっている。
ただ、これを相手に毎回勝っていた。
それも戦うまで、相手の本気が分からない状態でやりあっていた畑中中将は、本当に凄い。
掛け値無しに、あたいは思う。
一番最初に斃された中型であるキャノンレオンだって、決して弱い訳ではない。
苦労しながらシミュレーションで戦績を積み上げていくと。やがて打診があった。
本物にのって、訓練をすると。
勿論実弾は無駄には出来ない。
流石に緊張するが。
それでもまず、やれることはやらなければならない。
畑中博士は、以前は良く笑う人だったらしいのだけれど、最近はずっと厳しい表情でいる。あった時からずっと変わっていない。
あたいとしてはあまり関わる事はないのだけれど。
ずっと面倒を見ている三池さんは大変だろうなと、今でも思う。明るい頃を知っていたのならなおさらだろう。
乗り込むところから始める。
シミュレーションで散々こなしているが、実機は流石に重量感とか色々と違う。
内部に入って、一つずつ機器をチェックしていく。
訓練もあって、意図的に不具合を出している。
それを見つけ出さなければならない。
幸い、かなり巧妙に隠されてはいたが。それでも見つけ出すことはできた。
「斬魔剣Ⅱ、エラー発見! 可動部2-21に不具合!」
「了解。 チェックする」
「……」
自分用に調整されたシートとレバー、操作機器類。
それでも緊張する。
だいぶガタイが違った畑中中将が使っていた頃とは、だいぶ違うのだろうなと思いながら。調整を待つ。
整備工のおっちゃん達が、作業を済ませてくれるのを待つ。
整備完了の声があったので、もう一度チェック。
よし、オールグリーンだ。
「飛騨咲楽少尉、出ます」
「呉美少佐、先導します。 ついてくるようにしてください」
「イエッサ!」
呉美少佐の乗るデチューンモデル超世王セイバージャッジメントが先に行く。形状は殆ど同じではあるのだが。
こっちにくらべて、だいぶ戦車っぽいというか。
斬魔剣Ⅱだけを装備しているからだろう。
全体的に動きからして全てが軽そうだった。
そのままついていく。
今日は演習場になっている奈良県の一部を移動することになる。小型のシャドウが群れていて、監視装置が様子を見ているのは、もっと東だ。
この間琵琶湖で巨大化した小型種が大暴れして。
それが畑中中将の最後の戦いになった。
畑中中将は命こそ取り留めたが、今後当面は病院から出られないらしいし、退院したとしても、松葉杖は手放せないか、下手をすると一生車いすだそうだ。
もしも、である。
小型の大型化した変異種……ネメシスというそうだが。
ネメシスが頻繁に出るようになったら。
あたいも、同じように早々に人生をリタイアする事になるのかもしれない。
畑中中将は、まだ三十になっていなかった。
それを考えると、あまりにも早すぎるパイロット人生の終わりだったと言える。
レジェンドヒーローであることは間違いないだろう。
だが、本人はそれで満足だったのだろうか。
黙々と操縦をする。
前を行っている呉美少佐のデチューンモデルが、機動という観点ではこっちより軽やかに見える。
MBTというのも、シャドウ戦役前にはかなり機敏に動くものであったらしい。
これが戦場で主役だった第二次大戦の頃は、とにかく鈍重さが目立つ事もあったらしいのだが。
超世王セイバージャッジメントは、アレキサンドロスⅢというMBTのガワを利用して、作りあげられている。前に使われていた40式戦車というMBTのガワも混ざっているが、それよりも更に性能が上がっているそうだ。
それを考えると、基本は戦車だ。
ただし、戦車がどれだけ束になってもシャドウには勝てないのに。
超世王セイバージャッジメントは勝てる。
だったら、スーパーロボットで良いだろう。
少なくとも、あたいはこれを操縦できるのを誇りに思う。
しばらく走り回った後、今度は斬魔剣Ⅱの操作をする。
モニタをシミュレーションモードに切り替えて、小型シャドウとの戦闘を想定した動きをする。
支援プログラムが手伝ってはくれるが、対小型は相応に厄介だ。小型であっても、機体に取りつかれたら死ぬ。
特にシルバースネークの毒吐きは危険で。
もしも喰らう事があったら、まず助からない。
それについても、座学を受けていた。
シルバースネークが吐くものは、正確には毒なのかすらもわかっていないという話であるのだから。
まあそれだけ危険というのも、当然の話なのだろう。
呉美少佐とともに、しばらく実機でのシミュレーションをする。
十数体の小型を、上手く立ち回りながら、一体ずつ斬魔剣Ⅱで斬り伏せて行く訓練をするが。
呉美少佐の動きは、あたいよりもずっと洗練されている。
これについては、畑中中将を支援して。
中型と戦う畑中中将に横やりを入れようとする小型を、片っ端から斃して回っていたという話からも頷ける。
これでどうしてあたいの乗ってる超世王セイバージャッジメントは操作できないのか、それが分からない。
斬魔剣Ⅱの実地訓練は一旦終わり。
車内での無線で話す。
「飛騨少尉、どうですか」
「シミュレーションマシンよりも若干重く感じます。 ただ、対応できないほどではないです」
「実はわざと少し重くしてあります。 実戦ではシミュレーションマシンと同等に動かせますよ」
「そうなんですね」
気付いてえらいと褒めて貰って。
ちょっと嬉しくなった。
その後は、呉美少佐の立ち会いのもと、色々な装備を試す。
特に投擲型斬魔剣はシミュレーションでも大苦戦した装備なのだが、実戦だとなおさらである。
非常に当てづらい。
これを百発百中させていたというのは凄いなと、あたいは素直に畑中中将を尊敬する。実際問題、誰も代わりになれなかったというのも納得出来る。
黙々と訓練を続け。
夕方近くに切り上げる。
これはシミュレーションモードなので、実際に各兵装は動かしていない。ただし、超世王を走らせたのだけは本当だ。
そのまま京都工場まで戻る。
京都工場で超世王セイバージャッジメントから降りると、流石に疲れた。どっと疲労が来て、立ちくらみがくる。
だが、どうにか立て直す。
三池さんが、少し横になるようにいうので、そうさせて貰う。スポーツドリンクを飲んで横になって、話を聞く。
「頭を極限まで使うので、疲弊は仕方が無いんです。 畑中中将も、知恵熱が出るってぼやいていましたよ」
「本当ですか。 だったら小官なんて、なおさらですね」
「分かっているのなら大丈夫でしょう。 心拍とかも計っておきます」
てきぱきと三池さんがこなしていく。
そういえば。
あたいの少し前に工場に来た子。
あのぽやっとした子が見当たらない。
不機嫌そうに畑中博士はキーボードを叩いているが。今日は休みだろうか。
「えっと、あの助手さんは」
「ああ、今日はプレゼンに出ています。 GDFの方でも、色々とこなさなければならないんです」
「凄いですね。 お偉方の前でプレゼンなんて」
「亜純さんはああ見えて肝が据わっています。 元々ちょっと変わっているだけで、頭も凄く良いんですよ」
それは分かる。
そもそも頭が良くなければ、畑中博士と一緒に超世王セイバージャッジメントの改良なんて出来ない。
補助が必要かも知れないが。
補助があれば生半可な人間よりも能力を発揮できるのであれば十分だろう。
なんでも出来る人間などいない。
だからそれでいいのだ。
休憩を終えて、それで宿舎に帰る。話が聞こえた。
「どうあの子」
「充分すぎる位ですよ。 やっとこれで、畑中中将も安心できると思います」
「そうね。 もっと早くに休ませてあげれば良かった」
「仕方が無いです。 シャドウはこっちの都合なんてお構いなしですし、何より習性もまだよく分かっていないんですから」
あたいと畑中中将の話だ。
そう思うと、きゅっと心が締め付けられるような気がした。
二人とも、畑中中将のことが大好きだったのだ。
それは、見ていて分かっていた。
だからこそに、再起不能にまでなった畑中中将の事を思うと、心だって痛むのだと思う。
わかっている。
あたいは畑中中将の後継であっても。
畑中中将にはなれない。
それは分かりきっているから、出来る事をやっていくだけだ。
そしてその出来る事は、超世王セイバージャッジメントで。何かしらの問題が発生した場合に動く。
それだけしかない。
宿舎に戻ると、北米の大統領選が終わったとあった。
今まで北米の大統領はそれなりに評判が良い人だったらしいのだが。
今回当選したのは、危険視されていた主戦派の人間ではないものの、無能で無難と言われているだけの人物だったらしい。
北米が世界最強だった時代はもうとっくに過去の話だ。
シャドウが現れた時、真っ先に蹂躙し尽くしたのが北米だったからだ。
それでも、北米は生き残りを集めて、今でもある程度の影響力は持っている。
新しい大統領がボンクラで大丈夫なのだろうか。
そういう声は、SNSでも上がっているようだった。
シャワーを浴びて、それで寝る。
健康はなくして初めて価値が分かる。
そう言われて、こう言うときにも身が引き締まる思いがある。
最初の内に、手指を失った兵士から話を聞いたが。指一本でも喪失すると、あまりにも不便になるので驚かされるらしい。
今は、あたいは五体満足だ。
できればこのまま。
シャドウと戦う、護星の戦士としてありたかった。
プレゼンから戻って来た亜純麟は、レポートだけを出す。
昔から麟は喋る言葉と考えている事に大きな乖離があった。なんとかいう病気の一種であるらしい。
ただし、それについてはAIが翻訳できるので。それがとても助かる。
昔だったら病院に入れられて、そのまま一生病院で過ごすことになっていたのかも知れない。
それを思うと。
今の時代で生まれて、まだ良かったのかも知れなかった。
AIが、口から出る言葉を他人にわかるように通訳してくれる。
「プレゼンは問題なく終わりました。 プレゼンの過程で出た質問と、私が答えた内容をまとめておきました」
「ありがとう。 目を通しておくわ。 もう休みなさい」
「はい」
こくりと頷くと、そのまま自室に。
京都工場に住み込んでいる麟は、此処でもう暮らしていくつもりだ。どうせ何処に住んでも同じだし。
畑中博士は、ずっと険しい顔をしているけれど。
最初の方は、殆ど口も利いてくれなかった。
ただ、この間畑中中将を見舞いに行ったらしい。
やっと見舞いが許可されるくらいの病状になったらしかった。
それから、機嫌が多少良くなったようだ。
まあ、ずっと一緒にシャドウと戦って来たのである。それを考えると、苦しかったのかも知れない。
麟はずっと孤独だった。
AIが翻訳はしてくれるが、別種の生き物を見るようにして、周囲の人間が麟を見ているのは分かっていた。
今でもそういう差別はある。
フルスペックを誰でも発揮でき。
だいたいの遺伝病は治療も出来る。
昔は致命的な遺伝病などの人間は、生涯どうにもならないような事態もあったらしいのだが。
今はクローンで育てていたり、人工子宮で育てている間に、遺伝子治療を行ってしまう。
それもあって、生まれてすぐに死んでしまっていたような遺伝病の子供でも、今では普通に生活が出来るようになっている。
詳しい話は聞いていないが。
麟もそうだったのかも知れない。
いずれにしても容姿は優れている方ではないし、根暗そうで雰囲気がとか言われる事はある。
催眠学習で改善方法を色々習ったが。
何をやっても相手が自分を下に見ている事。
麟が実はフルスペックで知能を引き出した結果、トップクラスの頭の持ち主である事をしると、余計に態度を硬化させること。
これらが重なって、もう繕うのは止めた。
AIはまだそれでも、ある程度繕うべきだと言ってくるのだが。
何をしても無駄だと思っているので、そうする気にはなれなかった。
寝付きは良い方で。
ストレスが溜まっていると、余計によく眠れる。
きっちり眠っておきだして。
それから、顔を洗って歯を磨く。
これもちょっとぶきっちょで、寝間着を汚しやすい。
髪なんかの手入れを家庭用ロボットに任せて、後はぼんやり座っている。頭はこれから嫌と言うほど使う。
だから、朝の内はぼんやりしておくことにしている。
朝食は三池さんが用意してくれるので、大変においしい。
ありがたくいただいて、それで頭を切り換える。
見た目はまったく変わらないので、「暇そうにしている」とか、「怠けているのではないのか」とか、理不尽な罵声を浴びせられることもあったが。この工場で働くようになってからは、それもなくなった。
今日も畑中博士が、用意してくれた資料をさっと目を通して把握。
そのままAIの支援を受けて、作業を開始する。
立ち上がると、畑中博士が歩いて来ると言って、工場を出て行った。三池さんに聞いたが、行き詰まると時々ああやってフラフラ歩いてストレスを発散しているらしい。ストレスの発散法は人それぞれ。
それにこの辺りはすっかり自然も回復しており、綺麗な声でなく鳥も、珍しい虫もたくさんいる。
そういうのを見て、心の棘を抜いているのかもしれない。
いずれにしても、麟は言われた通りに作業をこなす。
19になってしばらく経つ。
そろそろ畑中中将の後任である飛騨少尉も一人前になると聞いている。
その時には。
ずっと忙しくなるのか、逆に楽になるのか。
それは今の段階では、まだ分からなかった。