スーパーロボット活劇、超世王セイバージャッジメント 作:dwwyakata@2024
ランスというのはいわゆる突撃槍の事です。
欧州などで猛威を振るった重装騎兵の集団突進戦法で使われたアレですね。フル武装した人馬が構えて突っ込んでくる破壊力は凄まじく、小説ドンキホーテでは風車に弾き返されてしまうシーンがありますが、ちゃんとした軍馬(ランスチャージに用いられた軍馬はサラブレットより更にガタイがいい)とフル武装の騎士の突撃だったらどうなったかは分かりませんね。
ランスタートルのランスは、文字通りの突撃に用いるもので、それにより多数のシェルターを屠ってきた恐ろしい代物です。
これを攻略しなければなりません。
シミュレーターがまた更新されている。
姉の放埒な発想は、予算を得て更に無茶な兵器に飛躍しているようだ。それを使いこなす身にもなってほしいものなのだが。
野性的な容姿の菜々美は、男子にはもてないが女子にはもてる。
それもあって、疲れている所を外に出ると、若い女性兵士が黄色い声を上げたりするので。
英雄として答えないわけにも行かず。
余計に疲労を蓄積させる。
厳しい時代だと、肉体的な強度が高い人間がもてる傾向がどうしてもあるのだという話は聞いたことがある。
そういう意味で、菜々美が同性からもてるのは仕方がないのかも知れないが。
不毛な話だと思う。
疲れたので、一度横になって仮眠する。
甘いものが欲しい。
今回は更に斬魔剣の時より負担が明確に大きく。姉が無茶苦茶張り切っている事もあって。
シミュレーターの更新につきあうだけでも一苦労だった。
ちなみになんとか王の本体の回収は後回しのようで、今は新しい武器であるなんとかナックルの調整に姉は整備工を駆り立てている。
そして残像が出来そうな動きで設計図を次々に仕上げて。それをどんどん反映させていた。
3Dプリンタでは素材の強度的に作れない事もある。
ともかく職人芸が必須。
一番出来る職人達が此処に集められている状態だ。
それと、各地で螺旋穿孔砲が量産に入っているらしい。
この間のキャノンレオンとの会戦。京都南会戦と名付けられるらしいが。それで数百のブラックウルフを倒した実績もあって、それぞれの小隊にこれから十丁が配備される事が決定したそうだ。
今まで兵士達の主力兵装だったM44ガーディアンはその分配備を減らすらしい。
これには軍需企業との調整が必須だったらしいが。
実際問題、人間が滅ぶかの瀬戸際である。
大きな戦果を上げている兵器を優先するのは、当然かも知れない。
しばし休憩を入れてから、シミュレーターに入る。
また調整が入っていた。
ランスタートルは突貫してくる。
それを事前に、どういう角度で突貫してくるが、精確に分析出来るように調整が入っていた。
これは有り難いと言いたい所だが。
問題はその後だ。
ランスタートルはバンカーバスターの直撃を想定していたシェルターを余裕でぶちぬくような奴である。
その攻撃をどうやって受け止めるのか。
本当に受け止められるのか。
不安でならなかった。
ともかく、訓練を続ける。
しばらく集中して、アラーム以外の音全てを断つ。
それで必死に練度を上げる。
偶然英雄になっただけ、か。
筋肉しか信仰対象がない今の海兵隊員にはそうなのかも知れない。最強だった時代にすがるしかない哀れな敗残兵だ。
だが、GDFそのものが敗残兵の寄せ集めのようなものなのである。
だから、あまり強く否定する気にもなれなかった。
しばらくして、アラームが鳴る。
かなり疲れた。
とにかく角度の微細な調整が非常に難しい。斬魔剣の操作も超人的な難しさだと聞いていたが。
それでも菜々美には出来た。
ただ、これはそれ以上の精度を要求されている。果たしてやれるかどうか。今から不安になってくる。
休んでいると。三池さんがお菓子を持ってきてくれた。
ドーナッツか。
チョコがかかっている奴である。実はチョコの材料であるカカオは今では世界中の何処でも栽培が出来る。これはレーションとして有用だったからで、シャドウとの戦いの中で品種改良が進められたからだ。
まあ、それはそれとして美味しいので。
有り難くいただく。
昔は食べ過ぎないようにレーションのチョコは敢えてまずくしていたらしいという話も聞いているが。
今はそれもないのだった。
「手作りでこれだけ美味しいドーナッツをつくれるのは凄いですね」
「ありがとうございます。 それよりも……」
「……」
頷く。
苦戦しているのは三池も悟っているようだ。
今、調整が行われているなんとかナックルは、四つ足の機構が組み込まれている。
シャドウが現れる前、ロボット犬やらの兵器が戦場である程度投入されるとかしないとかいう話があったらしいが。
それらとは根本的に運用方法が異なる代物らしい。
ただ、人間型で、かっこいい顔がついているようなスーパーロボットトは根本的に違うが。
ますます不格好になりそうだなと思う。
「いけそうですか」
「いけなければランスタートルに対処するのは不可能でしょうね。 それよりも、斬魔剣はどうにかなりそうですか」
「今操作方法について、実戦データから一般兵士でも使えるように支援AIのサポートシステムを支援チームが組んでいます」
「お願いします。 あれはまともに使いこなせる代物ではとてもないですので」
そもそもシステムが大味過ぎるのだ。
今後、キャノンレオンに普通の兵士が対応できるようにするには、人間の名人芸だけでは無理だ。
菜々美がやったような、である。
名人芸を、誰でも出来るところに落とし込むことが大事で。
そうしなければ、世界中にいるシャドウに対応できないだろう。
ただ、そもそもとして。
まだ人類はシャドウが何者かさえ理解出来てないという現実がある。シャドウを倒して行けば、それが分かるかも知れないが。
死体すら残らない現状。
それをどうやって為せば良いのか。まったく分からないのも事実だった。
今日はもうちょっと訓練をしたら上がる。
側で、クレーンが大型の機構を運んでいた。ヒヒイロカネがどうのこうのの装甲を、複層構造にした代物である。
そもそもとして、ランスタートルに此方を脅威として認識させなければならない。まずは其処から開始しないといけないし。
その前に、直衛の小型多数を、部隊を展開しにくい紀伊半島で仕留めきらなければならない。
課題は多かった。
シミュレーターに入る。
菜々美から注文を入れたのは、ブラックウルフやシルバースネークの横やりが入る事、である。
これは前回、キャノンレオンとの戦闘中、接近を許したブラックウルフになんとか王の車体が食いつかれ、それでかなり操作の難易度が上がったことが理由である。
今度のなんとか王は更に機体の安定性を上げるはずだが、それでも絶対は存在していない。
特にランスタートルの場合は、地盤ごと粉砕してくる可能性もある。
安定した場所で、相手と戦えるかなんて分からないのである。
幸いにして、ランスタートルは生物かすら分からない事もあって、突貫してくる時の運動エネルギーそのものは気にしなくていい。
問題は、奴が背負っているランスそのものなのだから。
調整を続ける。
衝撃。
受ける時のシミュレーションだ。ガツンと来て、ショックアブソーバーが効いていてもかなり厳しそうだ。
何度か冷や汗を拭いながら、調整を続ける。
シミュレーターが卵形をしているのは、こういう強烈な衝撃を再現するためでもあるのだが。
それはともかく、怪我でもしそうだ。
操縦席のクッションは柔らかくして欲しいなと思うのだが。
まあ、それは流石に贅沢だろう。
無言で訓練を続行。
やがて、アラームが鳴っていた。
工場から出て、宿舎に戻る。既に空には星が瞬いているが、神戸などの一部を除くと、人は地下に今は住んでいる。
地下ですら安全ではないこともあって、外は夜になると星明かりが凄いし。
虫たちがたくさん鳴いている。
虫が嫌いな女子は多いと聞くが。
虫たちの声は、とても聞いていて気持ちがいいので、菜々美は好きだ。
殺人的な夏の暑さは、既に過去のものとなっているし。異常気象が収まった今は、地球はそういう意味でも安定しているのかも知れない。
鹿の群れが出て来たので、クラクションを鳴らしてから行く。
一応衝突防止のための補助AIも積まれているのだが。それでも事故はどうしても起きる。
軽自動車でもどうにもならないが、ジープだとさらにどうにもならない。
だから、どっちにも不幸にならないように。
こうして配慮はしなければならないのだ。
鹿が行くのを見計らって、帰路を急ぐ。
宿舎でシャワーを浴びて、それで水分補給していると、連絡が来ていた。
広瀬中将だった。
連絡メールであって、返信は求めていないようだったが。
「畑中中佐。 現在の状況をお知らせします。 現在海兵隊は難しい状況にあり、自分達がランスタートルを倒すので、斬魔剣という装備を寄越せと上層部に私的なコネを用いて掛け合っているようです。 海兵隊の戦力は確かに同規模の部隊の倍以上に匹敵すると私も判断していますが、流石にこれは看過できません。 現在、海兵隊を作戦から外し、北米に配備し直す計画を練っている最中です」
大変だなという言葉しか出ない。
血の気が多い海兵隊隊員を、GDFでもついに見放すかも知れないということだ。
北米では孤立した幾つかの街が、必死にシャドウから身を潜めて生きているような状態であり。
古くは資源を大地からむしり取るようにして浪費していた人間が、怖くて外も歩けないような状態になっている。
シャドウが現れる前もおぞましい麻薬が蔓延して地獄絵図のような状態だったという話だが。
一体今とどちらが幸せなのだろう。
「ただ、M44ガーディアンなどを主力武器として、螺旋穿孔砲などのシャドウに有効な武器を頑なに拒んでいる彼等を北米に帰したところで、はっきりいって無駄死にさせるだけでしょう。 シャドウに戦いを挑んだ挙げ句、全滅するのが目に見えています。 そこで、私から掛け合って、今回の作戦では予備勢力として控えて貰い。 超世王セイバージャッジメントの戦闘を見てもらう予定です。 それで自分達にも出来るかどうか、判断してもらいます」
そうか。
確かに今回のは、見ているだけでおぞましい戦いになるだろうし。それで心を入れ替えられないのならそれまでだ。
5000万しかいま人間はいない。
これは2000年前とか、もっと前の水準だろう。
海兵隊が如何に規模を縮小しきってしまっているとは言え、訓練を受けた兵士を活用するのが上層部の仕事。
悲しい話だが。
広瀬中将も、その上層部に含まれるというわけだ。
だからこういう苦労をしなければならないと。
「畑中中佐にも個人的な中傷が飛んでくるかも知れませんので、しばし兵士用のSNSには顔を出さない方がよろしいかもしれません。 今は此方で対応を進めます」
メールは以上だった。
嘆息する。
シミュレーションは更に厳しくなる。訓練もしなければならない。
ただ、姉はあれはあれで、全身の精力を振り絞るようにして研究と調整をしているだろうし。
それは支援をしている三池さんも同じだ。
菜々美には、それも分かるから。今はただ、訓練をして。
そして実戦に備えるしかない。
中佐といっても、軍指揮官ではなく、あくまで一兵士として最高の待遇を受けているというだけの立場だ。
出来る事は決して多く無い。
そういう現実を、こう言うときに思い知らされる。
嘆息すると、酒でも飲めたらなと思う。下戸だから、そもそも飲めないのだが。
それはそれとして、そういうので気晴らしが出来る人は、ある意味羨ましいと感じていた。
更にシミュレーションマシンが進化していたので、乗って確認する。
恐らく今の時点であらゆる要求に応えてくれていると思う。
乱戦を想定。
それで、ランスタートルの突貫を誘えたとして。
それを受け止めるべく訓練を続ける。
いずれにしても、とんでもなく難しい作業ではあるが。
最悪の負荷が掛かったと想定。
なんとか出来るには出来るか。
それでも、クッションは調整して欲しい。頭をうって気絶しかねない。気絶だけで済めばいいのだが。
頭を打つというのは、かなり致命的な事なのだ。
アラームが鳴った。
かなり体中が痛い。
コツは掴んで来たが。まだまだだ。姉に軽く話をしておく。ショックアブソーバーがまだ弱いかも知れない。
「後クッションだ。 これだと頭を打って気絶だけでは済まないかも知れない」
「了解。 調整しておくわ」
「頼む」
その場でぱぱっと書類を作って。三池さんに渡す姉。三池さんも、さっと書類を本部に通しているようだ。
GDFの本部でも、今回の作戦が成功すれば、次は大阪湾をと考えているらしい。
これは既に話を聞いている。
大阪湾には現在また厄介な中型がいて、船舶はこれを刺激しないようにこそこそと海上を移動している状態だ。
世界最強を謳われた米軍第七艦隊が瞬く間に全滅させられた現実を例に挙げるまでもなく。
海上でもシャドウは人間を圧倒しているのである。
仮に紀伊半島、大阪湾と中型を排除できれば。
神戸は更に安全圏として、大胆な行動を行える。その時は、遠征を考え出すかも知れない。
無謀だなと菜々美は思う。
とてもではないが、誰も生きて帰れるとは思わなかった。
勝つのも考え物だ。
シミュレーションマシンに乗り込むと、訓練を続ける。早速要望を調整してくれたらしく、シートの挙動が変わっているのが分かった。
最大負荷で訓練を続ける。
意外と悪くない。
黙々と訓練をしていくうちに、コツは掴んで来た。問題は、そのコツ通りにやれるかどうかなのだが。
キャノンレオンの時と同じだ。
実戦でならすしかない。
そうして二週間が更に過ぎ、姉がだいたい超世王を完成させる。菜々美はそれからは、シミュレーターで、使いこなす事。
想定外の事態が起きたときに、対応する事。
その二つを、同時に考えなければならなかった。
GDF総司令部。
広瀬中将が出向くと、中将達が既に揃っていた。いずれもが神戸の周囲に展開する、人類最後のまとまった機動戦力ともいえる四個師団の師団長達である。
広瀬が席に着くと、総司令が来る。
ちなみに階級は元帥だが。
此処まで人類の軍隊の規模が縮小している今。
元帥もクソもないというのが、広瀬の本音だ。
ともかく、作戦について話をしておく。今までの状況を見る限り、超世王セイバージャッジメントはどうにか完成しそうだ。
完成度も高い。
もしも全て上手く行けば、ランスタートルを斃せるだろう。
問題は、直衛である小型の処理。
更には、ランスタートルに、超世王を脅威と認識させる事。それらについては、広瀬がやらなければならなかった。
幾つかの作戦について、説明をする。
畑中博士の悪名高いパワポによるプレゼンと違い。広瀬の参謀をしている陰険そうな中年男性の市川は、糸目で淡々と分かりやすいプレゼンをしている。
とにかく市川は性格が悪い男で、第二師団の中で自分の派閥を構築する事に余念がなく。次の師団長を狙っているという噂がある。
ただその時は、第二師団の師団長ではなく。
紀伊半島、大阪湾の中型を処理し、神戸を安全圏にした場合、海兵隊を中心にして創設される予定の第五師団の長を狙っているようだが。
広瀬からすればちゃんちゃらおかしい。
全て机上の空論に過ぎないし。
そもそもこの状況で一個師団を創設なんて、簡単にできるわけもないのだった。
「以上のように、作戦は幾つかの段階を経て、小型を誘引しながら駆除。 これについては、配備が増やされている螺旋穿孔砲と、狙撃師団、戦車隊の奮戦が必要になります。 作戦の兵力配置は図のように行い、綿密に対応する予定ではありますが。 京都南会戦の戦訓を生かすように、あらゆる不測の事態に備えなければなりませんな」
「それで、想定される被害は」
「前面に出ている戦車隊は壊滅も止むなしでしょう」
市川がさらりというと、流石にどよめきが上がる。
40式は貴重な戦車部隊だ。それを使い捨てにするというのかと。皆が動揺するのも仕方がない。
咳払いする広瀬。
一応補足しておく。
「現在確認されている小型を対処しきれず、中型が更に追加で現れた場合の、最悪の被害が出たらの話になります。 そうならないように、此方で最善を尽くします」
「う、うむ」
「神戸の街の生産能力、自給能力、それに各地からの支援物資。 それらを考えても、第二師団の壊滅は避けたい。 今第五師団を創設するなどと言う話があるようだが、狸の皮算用をする前に、現実的に安全を確保するべきだろう」
そう提案したのは、四人の師団長の中で最年長の樋川中将だ。自衛隊が崩壊する前に陸将をしていた最古参で、現在ではGDFでも第三師団の師団長をしている。第三師団はどちらかというと試験装備や旧式兵器を集められている師団なのだが、それでも樋川中将の指揮もあって安心感がある。
幾つかの質問が出た後、総司令が締めた。
「ランスタートルもまた、キャノンレオンと同じく、今まで撃破例がない極めて厄介な中型だ。 特にシェルターキラーともいわれるその攻撃を封殺することが出来れば、人類にとっては大きな前進となる。 ただ、シャドウは京都南会戦の状況を見ても、一体どれだけ、どこに潜んでいるかも分からない。 各自、作戦に参加する部隊も、参加しない部隊も、最善を尽くし、被害を減らすように動いて欲しい」
「イエッサ!」
敬礼して、会議を終える。
そのまま広瀬は外に出ると、嘆息した。
今はかなり暑い時期だ。暑いのが苦手な広瀬には辛い時期なのだが。昔はこの比ではなかったと聞く。
皮肉な話だが。
シャドウが地球の環境をまともにしてくれなかったら、広瀬は生きてはいられなかっただろう。
本当に、そう。
皮肉極まりない話だった。
市川が話しかけてくる。
「みなさんシャドウをあまりにも甘く見ているようですな。 あれらの戦闘力は、既存の軍事技術を全て過去にしてしまったほどのものなのに。 英雄どのの存在で、舞い上がっておられるようだ」
「それはそれとして脅かしすぎですよ市川参謀長」
「これくらいしておかないと、みなさん現実を認識できませんからね。 世界の大半はシャドウに支配されていて、たかが一会戦でかろうじてかっただけ。 それも勝因は名人芸による変態兵器の操作によるものです。 そんなもの、再現性もなにもなく、勝ったとは言えませんよ」
厳しい言葉ではあるが。
市川の言う事に一理在るのも確かだ。
広瀬は戦略家であり戦術家でもあるが、京都南会戦の展開には思うところもある。
シャドウは群れ全体で知識を共有しており、明らかに部隊の弱点をついて更に被害を拡大させる戦術行動を取っていた。
キャノンレオンが今まで戦場で好き放題暴れられたのは、ああいう行動を取れる小型シャドウと緊密な連携を取れていたから。
いや、過去形にするのは早すぎる。
上層部が調子に乗って、近畿全域を取り戻すとか言い出したら、とんでもない被害を出して各師団は最初から作り直しという展開や。
下手をすると、シャドウによるカウンターを受けて、神戸が陥落という事態も想定しなければならないだろう。
「それよりも、螺旋穿孔砲を使いこなすように、兵士達には徹底的な訓練をさせてください。 M44ガーディアンでは、時間稼ぎ程度にしかなりません」
「分かっています。 作戦決行までの時間に、各狙撃大隊はしっかり仕上げておきます」
「ならばよろしい」
「……」
市川の糸目は、本当に感情を読ませない。
怖いとか不気味とかは感じない。
ただ目を見せない事で、相手に考えを読ませないという事に特化していて。それを本人も意図的にやっている。
それが厄介だった。
今は人間同士で内輪もめなんかしている場合では無いし。狸の皮算用なんかしている場合でもない。
まずは目の前の神戸を守るための戦いをして。
それが一段落したら、その後はまた考えれば良い。
最悪の、更に最悪に備え。それでも勝つ。
今、広瀬がしなければならないのは、それだけだった。
※畑中姉妹と三池三月について
本作の事実上の主役である畑中姉妹。姉は科学者、妹は軍人と、完全に真逆。性格も真逆に近いです。姉は超がつくほどの変人で、ルックスは抜群なのに中身は0点。SAN値をゴリゴリ削る恐怖のプレゼンで怖れられています。妹はルックスは超野性的で、いわゆるギザ歯でごっついです。それでいながら実は姉よりだいぶ良識的な性格だったりします。ちなみに姉の変態武器を使いこなす技量は凄まじいですが、軍人としての技量は並みよりちょっと上くらいにすぎません。というか変態武器と相性が良いので、M44ガーディアンで単騎で小型を二回も倒すのに成功しています。
こんな変わり者姉妹と上手くやっているのが助手の三池さん。こちらはごく平凡な(てか超地味)ルックスでありながら、調整役としては抜群の性能を持ち、何より菓子作りが非常に上手いので、畑中姉妹の胃袋を完全に掌握しています。ちなみに畑中姉妹両方が、性別が逆だったら結婚したいなあと考えています(なおどっちも同性愛者ではないので、とにかく惜しいと思っている状態です)。
なんだかんだで畑中姉妹が周囲と上手くやれているのは、三池さんが粉骨砕身しているからなのです。